【コラム】低俗バラエティを地デジの高精細画質で見たいか?視聴者の存在を意識せぬまま地デジへ突き進み続ける愚行 [07/11/02]at BIZPLUS
【コラム】低俗バラエティを地デジの高精細画質で見たいか?視聴者の存在を意識せぬまま地デジへ突き進み続ける愚行 [07/11/02] - 暇つぶし2ch1:本多工務店φ ★
07/11/03 01:13:31
90年代初頭、NHKを中心とする日本のテレビ業界は、
次世代テレビの規格として、アナログハイビジョン方式と呼ばれる高品位放送の技術で世界に打って出ようとしていた。
NHKだけでなく郵政省も電機メーカー(特にソニー)も、
世界中のテレビを日本発のハイビジョンで埋め尽くす夢を描いたのである。

ところが、日本が自動車に加えてテレビでも世界を席巻しかねないと恐れた米国は、
対抗策としてデジタル方式を打ち出した。

すると郵政省はあっさりとアナログハイビジョンを捨て、デジタル方式の採用に傾いていく。
放送が日米貿易摩擦の火種になることを恐れたのである。
そして97年、郵政省に「地上デジタル放送懇談会」といわれる組織が設置され、翌年報告書が提出された。
デジタル化の意義や経済効果(10年間で約212 兆円)などが盛り込まれた推進計画で、現在の流れはここでできあがった。

振り返れば、日本のアナログ方式が純粋な技術競争で敗れたわけでもないし、
デジタル方式のほうが明らかに業界や視聴者のためになるという明確な理由付けがあったわけではない。

現在、放送のデジタル化の目的として、総務省が錦の御旗として掲げているのは「電波の有効活用」だ。
携帯電話利用台数はいまや1億台に迫ろうとしており、電話の帯域が逼迫している。
「放送のデジタル化で余った周波数帯域を、成長著しい移動体に使える」と総務省は説明する。
だが、こうした話が出てきたのは、携帯電話が急速に伸びたこの10年以内の話だ。
都合良く出てきた後付けの理由に過ぎない。

要するに、最初から視聴者不在の決断だった。

もっとも今思えば、未来を見る目は米国にあったのかもしれない。
米国は当時も今も、高品位放送についてはさして興味は示していない。
デジタル技術は高品位などではなく、多チャンネル化や省力化に使うという発想だった。

実際、米国は90年代に、「国民の利益といった場合、次世代の放送は高品位がよいか、多チャンネルがよいか」を議会で議論している。
その結果、“金持ちの贅沢”である高品位ではなく、多チャンネルで多様性を持たせた方が国民のためになると結論づけた。

対して日本では、いまだかつてそんな議論がなされた形跡はない。
そして、新規参入を極端に嫌う業界構造のせいもあり、結果的に放送の多様化は進まなかった。
地デジでは多チャンネルではなく、高品位映像が一つの売りとなっているのは周知の通りだ。

しかし、画質はよくても番組の質はどうか? 
芸能人が無知を競い、ただじゃれ合うだけのバラエティ番組を高精細で見たところで、何の喜びもない。
誰のために、どんな放送をするべきか、きちんと議論しないまま、ここまで来てしまった感は否めない。

おそらく、このまま突き進んだところで2011年7月24日のアナログ停波、地デジ完全移行は不可能だろう。
病的なまでの視聴率至上主義に陥っているテレビ局が、「テレビを見られない世帯が出る」という事実を無視できるはずがない。
遠からず計画延期の決断が下されると考えられる。
そのときが、国民全体で「放送のあり方」を考え直す機会となればいいのだが……。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 深澤 献)

ソース:DIAMOND online
URLリンク(diamond.jp)

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