07/10/18 21:25:34
ロシアでパンや牛乳といった日常食料品の価格が急騰し、
政府が食料品価格を凍結する強硬措置に出た。
プーチン大統領は先月、12月の議会選と来春の大統領選を前に
高齢の元無名官僚、ズプコフ氏(66)を首相に登用したが、
指導部としては食料品問題をきっかけに、首相の人気を一気に浮揚させ、
「最有力後継者」として存在感をアピールする思惑があるとみられる。
価格の急騰は夏場、小麦の不作が予想されたことからパンに顕著に現れた。
ところが、秋に収穫が良好だったことが判明しても状況が変わらないばかりか、
他の食料品まで高騰が波及。
報道などによると、夏場以降、各地でパンや乳製品、植物性油、砂糖などの
価格が数十%から100%高騰している。
ロシアでは貧富の差が40倍超、国民の16%が収入の75%以上を食費に充てており、
年金生活者や若い家族には大打撃だ。
ロシア西部の飛び地カリーニングラード州では先月末、住民が植物性油と砂糖の買い占めに
走って市場で乱闘騒ぎが起きるなど、全土的に不穏な空気が広がっている。
露科学アカデミー経済研究所のゴントマヘル氏は「食料品高騰の背景には国外と国内の
複合的要因がある」と説明する。
代替燃料(バイオ燃料)ブームで穀物価格が高騰する中で、中国をはじめ新興諸国で
中産階層が増大し、乳製品需要も世界的に高まっている。
一方で同氏は「ロシアの消費財市場は連邦レベルでも地方レベルでも少数の業者に
独占されており、官僚の汚職も絡んでカルテルが横行している」とロシア市場の閉鎖性を指摘する。
こうした事態を受け、ズプコフ首相は小売業界の代表者と会合を持ち、必需食料品について
価格を凍結することで合意。
政府筋によると、各地方でも知事が事実上、業界関係者に価格凍結を強制する動きに出ており、
独占禁止当局や税務当局も食品・小売業界への捜査に乗り出した。
政府はまた、麦の輸出税を引き上げて国産品の国外流出を阻止、
逆に牛乳と乳製品の輸入税を引き下げて価格を抑えることも決定し、
首相は「今後2~3カ月で状況は安定する」と自信を見せている。
ズプコフ氏は首相就任直後から地方住民との“交流”を積極的に進めており、
閣議で旧ソ連時代の呼称「同志(トボリシチ)」を使って閣僚を叱責(しっせき)してみせるなど、
高齢者層を意識した指導者を演出している。
政府系テレビもこうした映像を積極的に放映しており、大統領を知る元議会関係者は
「後継者育成のメカニズムが働き始めている」とみている。
ただ、選挙をにらんだ食料品政策には疑問の声も上がる。
ゴントマヘル氏は
「ロシアが独占的体質とはいえ、経済を担っているのは民間企業であり、
利潤を度外視した価格凍結は逆にモノ不足を招く恐れがある」と指摘。
「来春の大統領選まで政府はあらゆる手段で価格を抑えるだろうが、
国際動向や経済メカニズムを無視した政策は長く持ちこたえられず、
選挙後に深刻な反動が出るだろう」と警告している。
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