07/09/12 11:08:41
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「丈夫で長持ち」は日本製品の最大の売り物だった。それを家電業界が返上しようとしている。
きっかけは扇風機による火災・死亡事故。経年劣化が原因だったから、「長持ち」に責任を
負えないと業界が及び腰になっている。経済産業省も消費者の「長持ち」意識を変えようと
動き出した。ただ、「長持ち」文化を変えるとなると、国内や海外で売られる中古品の扱い、
循環型社会のあり方も考え直す必要が出てくる。安全、環境保全を考えると家電品も設計
思想を基本から考え直す時期に差しかかっている。
◆「もったいない」精神は悪いのか?
扇風機事故で世の中には「長持ち」をいさめる空気が強い。火災・死亡事故を起こした
製品は製造時期が30年以上前。それなら事故が起きて当たり前という見方が支配的だ。
しかし、「もったいない」精神で大事に使い続けたことを褒めもせず、被災者に責任ありとして
この問題片づけていいのだろうか。事故は製品がなまじ動くから起きた。動かなかったら
被災者も修理したり買い換えたりして事故に合わなかったに違いない。事故は製品が壊れ
下手だったゆえに起きたと言えなくもない。
家電品は専門知識のない消費者が使う。だから、どんな障害が起きても安全な状態になる
「フェールセーフ」という考え方が重要だ。不良や故障で安全性が危うくなれば、完全に
動かなくなってスイッチが入らない「壊れ上手」こそ、理想である。回路がショートして
過電流が流れれば、ヒューズが切れて動かなくなるという仕組みはその典型例だ。
扇風機はそれほど複雑な装置ではないし、フェールセーフが考え抜かれては
いなかったのだろう。
最近の家電品はハイテクを駆使して高度化している。その技術をもってすれば、どこかに
異常があればスイッチが入らない「壊れ上手」の製品にするのはそれほど難しいことではない。
すでに販売された製品はともかく、これからの製品は多少のコスト増になっても、安全・
安心のためにそうした回路の組み込みを義務づけるべきだろう。
経産省は経年劣化による事故を受けて、「長持ち」文化を改めさせようとしている。経年
劣化が重大事故につながる恐れが高いガス湯沸かし器や石油温風暖房機、浴室
乾燥機など9品目は、標準的な使用期間の表示や購入者の把握・点検促進をメーカーや
輸入業者に義務づける考えだ。さらに扇風機のように重大事故が発生している製品は
注意書きを徹底させようとしている。
使用期間の表示は買い換え時期の明示でもあり、消費者に対し「もったいない」精神を
捨てて一定期間過ぎれば買い換えるものと、割り切るよう迫る政策である。点検費を
意図的に高く設定すれば、消費者に買い換えを促すこともできる。メーカーにとっては
経年劣化の責任回避と安定的な買い換え需要を見込める、望ましい制度だろう。だが、
「使用期限」は恣意的にならないとも限らない。安全を理由に消費者に負担を強いるだけになる
恐れもある。
消費者にとって耐久消費財は「長持ち」する方がよい。長持ちすれば中古品として売却したり、
逆に安上がりに中古品を活用したりすることもできる。経産省は中古品の経年劣化対策として
販売業者による自主的な認定制度を発足させて安全点検をさせるという。しかし、中古品は
この程度の小手先の対策では解決できぬ問題が潜んでいる。
>>2に続く