07/09/10 21:00:35
(略)
構造改革路線の中で拡大した格差というのは、正社員同士の間に生じた格差ではない。
確かに、若年層の一部を見ると、正社員間にも格差が生じているものの、全体的に見ると
まだまだ大きいとはいえない。
問題は、正社員と非正社員の間に存在する格差である。この格差はもともと存在して
いたのだが、昨今の非正社員の急増によって表面化したというのが正確なところだろう。
では、非正社員がこれほどまでに増加したのはなぜか。不況の長期化が原因と考えている
人も多いだろうが、そうではない。そこを誤解していると、この格差問題の根本を見誤ることになる。
非正社員の増加と不況の長期化との間には、必ずしも関係はない。そのことは雇用に関する
数字を比べてみればすぐに分かる。
例えば、完全失業率の推移は、2002年6月に史上最悪の5.5%を記録したが、2007年6月には
3.7%にまで改善している。また、有効求人倍率は2002年1月に0.5倍と最悪水準となったが、
これも2007年6月には1.05倍と急速に改善している。これでも分かるように、このところの
景気拡大によって、雇用状況を表す数字自体は劇的に向上してきたのである。
では、その間に非正社員の数はどのように推移したのか。
総務省統計局が公表している「労働力調査」によれば、雇用者全体に占める非正社員の
比率は、2002年1~3月期に28.7%だったものが、ほぼ一貫して上昇を続け、2007年
1~3月期には33.7%と過去最高を記録している。
つまり、景気が改善したかどうかにかかわらず、非正社員の比率は上昇し続けているのだ。
なぜ、そんなことになっているのか。理由は簡単だ。非正社員の多いほうが、企業にとって
人件費の節約になるからである。一般的に言って、正社員の平均年収が500万円を
超えているのに対して、非正社員は100万円台前半。正社員を減らして、その分を非正社員に
すればするほど、企業にとっては節約になるわけだ。
こうした企業の方針がどれほど効果的だったかは、GDP統計の「雇用者報酬」(全労働者に
支払われた総賃金)の額でも分かる。それによると、景気が底を打った2002年1~3月期に
268兆円だったのに対して、景気が回復したはずの今年4~6月期は263兆円と、むしろ5兆円も
減少しているのだ。率にして1.8%のマイナスである。一方、この間にGDPは25兆円、5.1%も
増加している。
これはどういうことか。
つまり、経済全体が大きく成長しているのに、働く人にはその分け前が届いていない。
それどころか、分け前が減らされているということなのである。
>>2に続く