07/07/28 23:37:10
それがこの1年半の米国人の予想をはるかに上回る住宅・不動産市況の低迷により、
焦付きが急増してきました。今年の2月にはこの問題によりサブ・プライム・ローンの
専業大手が破綻し、「世界同時株安」の一因となりました。その後、住宅・不動産市場は
いっそう悪化しており、また当時よりも金利もかなり上がってきましたので、とうとう
正常債権であったものの価値が突然ゼロであることが判明するような例が目立って
きました。
これが先月起こった「ベア・スターンズ傘下のヘッジ・ファンドの破綻」です。
今月に入ってからは格付け会社も相次いでこうした関連証券の格下げに動いており、
最も大きなものではAAAから一気にBBBまで7段階引き下げられたものまで見られています。
■問題がどこまで悪化するのかは依然不明
こうしたことから、ここ2週間ほどは「どこの金融機関がどれほどの損失リスクを
抱えているのか」という噂が飛び交い、疑心暗鬼が広がっています。不安は米国の
金融機関にとどまらず、欧州の金融機関にも広がっており、世界的に長期金利が
低下し始めています。5月初めの4.6%から6月中旬には5.3%まで上昇した米国の
長期金利も4.9%まで下がってきましたし、ユーロ圏でもこの2週間で0.3%近く
下がってきました。
ただ、繰り返しになりますがこの問題は日本の不良債権問題とまったく同じ構図です。
現状では「サブ・プライム」という「住宅・不動産市場の一部の問題」ととらえられていますが、
仮に市場の悪化が長引けば、普通の住宅ローンの焦付きも増えてくることが容易に想像
されます。そうなると、米経済や金融市場にはかなり大きな影響が出てきます。
こうした動きはまちがいなくドル安要因です。確かに欧州の金融機関の中にも米国の
住宅・不動産に貸し込んできた向きもあるでしょうが、やはり米国の金融機関の方が
圧倒的に多いです。また、住宅不動産の低迷は米国民の消費活動を直撃する可能性も
ありますので、他国に比べれば米国の方が問題は深刻で、金利も今後、より大きく下がる
可能性があります。
恐ろしいことに問題がどこまで悪化しているのか、今後どこまで広がりを見せるのかは
いまのところ全く不明としか言いようがありません。こうした疑心暗鬼が続く限りは、
米ドルは一段の下落となるかもしれません。
グローバル債券ファンドマネージャー 鈴木 英寿
提供:株式会社FP総研