07/06/17 13:26:11
「家相が悪い」などと不安をあおり、高額な印鑑を売りつける「開運印鑑商法」の被害が
全国で相次いでいる。国民生活センター(東京)に寄せられた被害相談は、昨年度1179件で
5年前より倍増。テレビなどでの霊感ブームに乗じて、お年寄りらを狙う手口が目立ち、
同センターは「高額なものを買う時は、家族や友人と相談するなど冷静な判断を」と注意を
呼びかけている。ある業者から突然、訪問販売を受けたという県内などの被害者3人に聞いた。
「姓名判断に詳しい先生が近くに来ている」。兵庫県たつの市の女性(55)は昨年5月、
若い営業マンが連れてきた「先生」と呼ばれる男から、「名前の字画が悪い。印鑑を作れば
運勢が良くなる」と勧められ、象牙(ぞうげ)の実印、銀行印、認め印の3本2セットを
75万円で買った。
娘2人と3人暮らし。夫と両親を相次いで亡くし、落ち込んでいた時期だった。男にもその話を
したという。半年後、再び訪ねてきたこの男から「毎月1日に先祖のことを考えながら印鑑を押す
だけで先祖供養になる。そうしないと娘さんにも迷惑がかかる」と言われた。結局、前回分を含め
計9本を購入、総額300万円を支払った。
女性は「急に家族を失い、心のよりどころがほしかった。だまされた自分がバカだと思って
あきらめるしかない」と肩を落とす。
真庭市の女性(79)は、計10本を250万円で購入した。営業マンと一緒に訪ねてきた
「鑑定士」の名刺を持つ男に「家相が悪い」と言われた。きちんとしたスーツ姿。専門書のような
分厚い本を手に持っていた。悩みなどをあれこれ聞かれ、息子との不仲を打ち明けると、
「家庭円満のためには、10年間、月初めに心を込めて実印を押すといい」などと次々、
勧められたという。
県内の主婦(69)は契約後、一定期間内なら解約できるクーリングオフを業者に申し出た。
ところが、「字画が悪いのを放っておいて、どうなっても知りませんよ」と言われて不安になり、
解約の申し出を取り下げてしまった。
各地の消費者センターによると、この業者についての被害相談だけで年間数十件あるという。
業者は社名変更や本社移転を繰り返し、今年3月に休業。その一方で、元従業員らが昨年9月、
別の印鑑訪問販売会社を設立し、営業を続けている。この会社の社長(40)は読売新聞の取材に
「姓名判断はあくまでサービス。営業活動で不安をあおるようなことは一切していない」と話した。
特定商取引法は、訪問販売で虚偽の説明や脅迫、あるいは人を困惑させて契約を結ぶ行為を
禁じている。国民生活センターによると、占いで不安をあおったり、開運をことさらに強調して
商品を販売したりするケースも、それに該当するという。こうした「開運商法」には、数珠、
水晶玉などの販売や祈とうを行い、高額の代金を請求する手口もある。
堺次夫・悪徳商法被害者対策委員会長の話「人間関係や病気など生活に不安を抱える人は、
怪しげな話でも信じ込みやすい。テレビで霊感を取り上げた番組が人気なのも、不安を抱える人が
増えている証拠。だまされていることに気付いていない被害者もかなりいるだろう。摘発に勝る
啓発はない。特定商取引法に基づく行政指導の強化は言うまでもなく、警察当局も積極的に
刑事事件として立件を目指すべきだ」
◎ソース 読売新聞(岡山版)
URLリンク(www.yomiuri.co.jp)