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▼【書評】『iPodは何を変えたのか?』スティーブン・レヴィ著、上浦倫人訳
■総合的なコンセプトの勝利■
アップルの携帯音楽プレーヤー、iPodの累計販売台数が、1億台を突破した。これはソニーの
「ウォークマン」が13年かかって達成した記録を5年半に縮めた大記録だ。
本書は、スティーブ・ジョブズ(創業者)とも親しいジャーナリストが、その開発史を中心にして、
米国のポップ・カルチャーを紹介したものだ。iPodは革新的な技術ではない。MP3(音楽ファイルの
圧縮形式)を再生する携帯プレーヤーは、iPod以前にもあった。iPodの特長は、音楽再生ソフトや
配信サービスと組み合わせ、インターネットから携帯機器までシームレスに使えることだ。
音楽配信サービスもアップル以前にあったが、特定のレコード会社に支配され、コピーが禁止
されたため、普及しなかった。これに対しアップルは、ジョブズ自身がレコード会社を説得して
(ソニーを除く)すべての大手レーベルから曲を供給させ、一定回数コピーを可能にした。
もちろん「クール」なデザインはヒットする大きな要因だったが、その背後にはサービスとソフト
ウエアとハードウエアを組み合わせる総合的なコンセプト(構想)があった。
これに対してソニーがiPodとほぼ同時に出した携帯プレーヤーは、失敗に終わった。ソニーは
レコード会社を持っていたため、その既得権を守ろうとして、標準的なMP3フォーマットを再生
できないプレーヤーを発売したのだ。
iPodが成功した原因は、ジョブズという類(たぐい)まれな個性によってこうした官僚主義を
乗り越え、コンセプトを大事にしたことだ。その技術は、ほとんど他社のものであり、中核部品の
ハードディスクは東芝製だったが、高い利潤を上げたのはアップルだけだ。「いいものを作る」
だけでは生き残れないことを、日本メーカーは学ぶ必要がある。(経済学者・池田信夫)
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