07/03/29 20:15:45 eAWCT379
情報幾何とは何か?これを一言で答えることは難しいが,基本的には確率分布のパラメトリック
モデルM = {pθ(x) : θ ∈ Θ} を幾何的な対象とするアプローチと言ってよいだろう.もともと統計
推測の問題ではM に対して直接に表現するのではなく,パラメータ空間Θ に対して述べられる.例
えば,点推定論ではデータ分布がM の中にあるという代わりに,パラメータ空間Θ の中に真値θ
があるといい,これを推定するという.このことは,統計推測の表現そのものが微分幾何学の多様
体M と座標空間Θ の関係と符合している.しかしながら理論物理学のようには,統計学と幾何学
は密接な関係がが築けなかった.遅ればせながら,パラメトリックモデルM は情報計量g と呼ばれ
る計量をもつリーマン多様体であると指摘したのはRao[21] だった.情報計量とは座標(真値)θ に
関して,不偏推定量の中での最小分散の逆行列で定義され,θ における推定の限界を与えているこ
とがクラメール・ラオ不等式から導かれる.このことは,コーシー・シュワルツから導かれ,形式的
にはハイゼンベルグの不確定性原理と等価である.しかしながら,統計学において,この計量から
導かれるリーマン接続 ̄∇ が本質的な意味を持たないことが分かり,そのため双対なe-接続∇(e) と
m-接続∇(m) が考えられた.統計学においては統計モデルと推測は一組で考えたとき意味が出てく
るものであってリーマン接続 ̄∇ だけでは関連性がなく,一組の∇(e) と∇(m) がそれぞれの構造最適
性を表現する.これにより統計十分性,指数モデル,最尤法のと関係が理解されるに至った.ここ
で,双対性 ̄∇ = 1
2 (∇(e) + ∇(m)) が成立することは統計モデルと推測の双対性を示唆して興味深い
ことである.