06/12/27 10:22:02 0
・「奴隷ですから……」
この1年、労働現場を取材する中で、派遣労働者や携帯電話で日々の仕事の紹介を受ける
フリーターからたびたびこの言葉を聞き、ドキリとした。憤り、恨み、あきらめ……。
そこには「人として扱ってくれ」という強烈な思いが感じられた。
「格差社会」が注目を集め、正社員と非正社員としての働き方や少子化、教育など、
さまざまな角度から「格差」が論じられた。そんな中、「再チャレンジ」を掲げる安倍首相が
登場した。再チャレンジにケチを付ける気はない。そうした制度を整えるのは大事なことだ。
だが、気になるのは、格差の底辺に置かれた人たちが「労働の尊厳」まで奪われていると
いうことだ。そして、それは働く者すべてに広がりつつあるように感じる。
神奈川県内に住む男性(42)は、携帯電話で日々の仕事の紹介を受けて生計を立てている。
解体現場での仕事を紹介された。「マスクを買って行って」と指示があった。もちろん自前だ。
100円マスクを手に、着いた現場で派遣先の社員は防毒マスクのようないかめしいマスクを
つけていた。アスベストを使っていた施設の解体現場だ。ほこりで1メートル先も見えない。
派遣のバイト4人はせき込みながら貧弱なマスクで作業。これで日給は8000円。
日々紹介を受ける仕事。危ない現場でも断っていたらすぐに干上がる。こんな仕事を
月25日しても、手取りは15万円に満たない。有給休暇も雇用保険もない。自動車工場や
公共施設などを転々とした職歴。どこも1年以上の雇用を約束してくれなかったからだ。
「安い命でしょ。僕らには何をしてもいいんですかね」。働く喜びや誇りはどこにもない。
派遣で事務の仕事につく女性(40)は、数カ月ごとの細切れ契約を繰り返しながら働いた。
留学で鍛えたネーティブ並みの英語力も時給には反映されない。契約外の翻訳もこなし、
賃上げを求めると「あなたの賃金は物件費で扱われているから無理」と言われた。税金の
関係で物件費に回されているのだが、女性は「人件費にさえカウントされないと思うと、
情けなくて涙が出た」とこぼした。(>>2-10につづく)
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