06/12/24 10:18:54 xWBvXNS70
まだ大学に入学して間もない頃だ。彼はもちろん免許取りたてである。彼は入学祝いに
買ってもらったスポーツカーで、禁止されているはずのマイカー通学をしていた。普段
は大人しい人間なのだが、運転はとても乱暴だった。お互いの家が近かったこともあり、
彼の車に乗せてもらって帰宅したこともあったが、我が家に到着するまで生きた心地が
しなかったほどである。彼はいつも、歩道と車道の区別がなく、対向車とすれ違うのが
やっとという住宅街の狭い道路を抜け道として使っていた。この道路で、彼は歩行者を
跳ねてしまう。偶然事故現場を通りかかった別の級友が「死んでいるのかと思った」と
いうほど、被害者は深刻な状態であった。幸い一命は取り止めたものの、被害者はかな
りの重傷を負ってしまった。
事故の翌日、教室で出会った彼は、さすがに神妙な表情で頭を抱えていた。相当なショ
ックを受けている様子である。だが、彼が重い口を開いて発した言葉は、あまりにも意
外であった。
「車が血で真っ赤に染まっちゃったんだよ。どうやって落とせばいいんだろう?」
被害者に対する罪悪感も、事故を起こした自責の念もない。彼はただ、自分の愛車のこ
とだけが気掛かりだったのだ。事故後、修理を終えて元の姿に戻った愛車を、彼は嬉々
として事故前と変わらぬ猛スピードで乗り回すのであった。
URLリンク(homepage2.nifty.com)