06/10/24 07:11:44 0
ある桶(おけ)屋が「大風が吹いて欲しいものだ」と言う。「大風がふく時は砂石(しやせき)
散乱して、往来の人眼(がん)中に入らば必盲人出来べし」。そうなれば三味線屋が繁盛し、猫が
多く捕まる。「鼠(ねずみ)おのづからあれさはぎて、桶をかじりなん」。江戸期に刊行された
「雨窓閑話」の一節だ(『日本随筆大成』吉川弘文館)。「風が吹けば桶屋がもうかる」は、
思いがけない影響が出ることを言う。
自民党が神奈川、大阪の衆院補選で勝利した。従来持っていた議席を確保した形だが、北朝鮮
の「核」問題が突然の風となって影響を及ぼしたようにみえる。
投票前、有権者の一部には、こんな意識の流れがあったのではないか。核実験は許せない——
脅しにとどまらない現実の脅威だ——脅威に対して強いのはどちらか——安倍首相は「北」に対して
強硬だ——今回は自民党に入れようか。
安倍氏が素早く中韓両国を訪れたことは、自力での「風」になった。しかし、小泉前政権が
残した負の遺産を忘れるわけにはいかない。大きなマイナスをプラスの方に向けたとは言えるが、
前政権でのアジア外交の停滞がなければ会談はずっと以前から出来ていたはずだ。
「核」の風が吹き募る中で、民主党の内部に足並みの乱れを感じた有権者も少なくはなかった
だろう。民主党は、国民の皮膚感覚のようなものへの感知の仕方が鈍いのではないか。
「風が吹けば……」には、「あてにならない期待をする」という意味もある。相手の失策や
混乱といった「風」を期待しているようでは、政権の奪取はおぼつかない。
■ソース(朝日新聞)
URLリンク(www.asahi.com)