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「中日新聞」・平成18年10月4日・夕刊
「美しい国考」より
憎いし、苦痛。安倍晋三首相が訴える「美しい国」を逆さまに読むと、こうなる。
東京都内の病院で働く女性(四〇)は、同じ母子家庭の友人に言われてハッとした。
美しさと苦痛という“光と影〝をはらんだように聞こえる国づくり。
「自分たちは切り捨てられるのか」と、怖くなってきた。
ドメスティック・バイオレンス(DV)に悩み、四年間もの調停と裁判を経て医師の夫と離婚。
中学二年と小学四年の息子二人との暮らしを支え七年が過ぎた。年収が約八十万円しかない時期もあり、
簡易保険を解約してしのいだ。三人で川の字になって眠るとき、ささやかだが幸せを感じた。
上の子が小四の時。「学級崩壊の原因をつくった」と先生が名指しした三人のうち、息子を含む二人が
母子家庭の子だった。「あの子たちの家は欠損家庭だから」と、先生が使ったという差別的な言葉を人づてに聞き、
丸太で頭を殴られたような痛みを覚えた。安倍氏がつくろうとする国に自分たちの居場所はあるのか。ため息が出た。
美しい国とは何か。安倍氏は首相就任会見でこう答えた。
「その姿の一つは、美しい自然や日本の文化や歴史、伝統を大切にする国。
そうした要素の中から培われた家族の価値というものを再認識していく必要がある」
>>2-10あたりにつづき
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