06/09/20 11:08:39 WDoqLd9T0
「・・・この前、入院した患者を覚えているか?」
「そこに病で心を亡くした男がいた。」
「男は自分を救ってくれなかった社会と、無慈悲な神を呪った。」
「最初は家族も男を哀れんだが、仕事もせずに家へこもり、神への恨みを吐き続ける男を
次第に気味悪がるようになった。・・・ある日、男はついにおかしくなってしまったそうだ。」
「叫び声をあげて家を飛び出してくるや、悪鬼のごとく奇声をあげ始めたという。」
「しかし男は、世間体を考えた両親によって、ある日から病院にとじこめられたそうだ」
「その結果がこれだ。男は悪魔に心を売り渡し、暗黒の住人となり果てたのだ。」
「殺戮の快楽におぼれることでしか、心の痛みを忘れられなかったのだろう・・・。」
「たとえ、魔に魂を売り渡そうとも、失った物を取り戻せはしないのに・・・。」
「あれは人間なのだろうか?いや・・・、人間だったと言うべきかな?」
「男は全てを失い、絶望した。」
「絶望した心が求めるのは、何だと思う?」
「望みを失えば、なにもいらないと思うか?違う、絶望した心が最後に望むのは・・・『破滅』」
「つまり、自分と世界の破壊だ。
男は、自分の無力さを認められず、その現実に耐えられなかった。」
「そして、自分と自分を取り巻く『自分の存在しない世界』すべてを破壊することを望んだ」
「これは・・・その弱い心の末路なのさ。」