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●南海日日新聞発行の斉間さん、編集現場の取り組みを執筆●
◇「容疑者や家族守るため」◇
八幡浜市内で地域紙の「南海日日新聞」を発行している同市向灘、斉間満さん(63)
が「匿名報道の記録~あるローカル新聞社の試み」(創風社出版刊)を著した。同紙
が20年前から始めた犯罪容疑者らの匿名報道に関して、読者の知る権利と容疑者と
その家族らの人権への配慮とのはざまで、試行錯誤を繰り返した編集現場の苦闘が
つづられている。
●知る権利との板挟みも●
八幡浜市と西宇和郡をエリアにした同紙は75年に創刊された。週3回発行している。
刑事事件の容疑者や刑事裁判の被告人、実刑判決を受けた人たちの名前の呼び捨て掲載
を83年から変更し、敬称を付けることにした。86年11月からは公職者の犯罪を
除き匿名報道を始めた。「理由は犯罪者やその家族の人権を守るためだった」と斉間さん。
「容疑者の実名が出るとその家族にまで差別の目を向けさせる。(実名報道は)社会的
な制裁の面が強く、犯罪者の更生の道を閉ざすことにつながると考えた」と言う。
この編集方針については読者からも賛否の意見が寄せられた。斉間さんは「読者の知る
権利にどう応えるかが大きな課題だった。しかし、知る権利といえども人権やプライバ
シーを超えるものではないと判断した」と振り返る。著書では、知る権利と人権という
相反する問題の中で、匿名報道に踏み切ったローカル紙の日々の編集作業での悩みや
苦労が、地元で起きた脅迫や横領事件などを通じて克明に記されている。匿名か実名か
を巡る、編集責任者の斉間さんと記者との間の生々しいやりとりにも触れられている。
巻末には「新版犯罪報道の犯罪」などの著書がある浅野健一同志社大学教授が「勇気
ある実践。日本の新聞社で匿名報道主義を本格的に導入したのは南海日日新聞だけ」
とする一文を寄せている。斉間さんは「報道機関は何が一番大切なのかと絶えず問い
続けてきた。犯罪には社会や犯罪を起こした人を取り巻く環境も大きく影響している。
匿名報道の判断は正しかった」と話している。新書判、205ページ。税込み1365円。
問い合わせは創風社出版(089-953-3153)へ。
URLリンク(mytown.asahi.com)