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2001年4月7日 ■天声人語■
欧米の人たちは謝らない、とよく言われる。しかし、英米人ほどよく謝る人たちは
いないのではないかと思うときがある。街を歩いているときのことだ。
「すみません」「ごめんなさい」を言い続ける。体が触れたときにはもちろん、
触れそうになっただけでも謝る。先を争って謝る。だから肝心のときに謝罪しない
のではないか、と思いたくなるほどだ。
今回の「接触」は、もちろんそう簡単な話ではない。米国と中国との軍用機
接触事故のことだ。公海上とはいえ、中国にごく近接したところでの事故、しかも
米国の方は偵察機である。火花が散る。まず、中国が謝罪を要求し、米国が拒否した。
体面を重んじる中国と訴訟立国と言われる米国だ。発想の違いが事態を悪くする
のではないかと心配した。しかし、パウエル国務長官、さらにブッシュ大統領が
「遺憾」の意を表明したことで、事態は動きそうだ。ただ、この「遺憾」表明で中国が
納得するかどうか。
ブッシュ大統領が新聞編集者との会合でつかった言葉は「リグレット」である。
悲しみや痛みを表現するが、自分に責任があるかどうかは日本語の「遺憾」同様、
はっきりさせない言葉だ。中国の新華社通信の速報も「遺憾」をあてている。日本語
とほぼ同じ意味らしい。今後の国際情勢を左右しかねない米中の応酬である。まだ
気は抜けない。
日常のことに戻れば、街での体の接触に鈍感な日本人らに英米人はいら立つ
らしい。非礼と感じるらしい。風習の違いだが、ここはあっさり「ごめんなさい」と言って
おこう。