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■《天声人語》 08月03日
新しいお札の顔に決まった2人に共通するのは「貧しかった」ということだ。
東北の農村で赤貧の幼少時代を過ごした野口英世はもちろんだが、
いわゆる没落士族の娘の樋口一葉も生涯を通してお金の苦労が絶えなかった。
また2人に共通するのは、借金の多さである。かなりずうずうしいところも似ている。
しょうゆ代も払えないような一葉は金策に走る。面識のない人にまで借金を申し込む。
しかし貸してくれないと「誰もたれもいひがひなき人々かな」と日記に愚痴を記す。
野口も友人や親類に無心をし、さっさとつかってしまうと、また次を頼む。返すあてのない
借金を繰り返した。と、こう記すとお札の顔にどうだろうかと思わせる2人だが、お金に
苦労しながらそれを超越しているようなところが2人にはあった。
「文学は糊口(ここう)の為になすべき物ならず」、お金に左右されないで思いのままに
書くべきだ、という一葉の有名な宣言は、彼女の文学への決意を示す。野口は、
まわりに迷惑がられながら「他人に金を、援助の手を出させる何かがあった」
(中山茂『野口英世』朝日選書)。
2人の業績についてはいうまでもないし、女性と科学者ということで採用されたのだろう。
しかしお金をめぐる2人の人生を見ていくと、まさに「金は天下のまわりもの」。
つまり、お金は出たり入ったりするもので、貧しくてもくよくよしない。そんな読みもできそうだ。
少々気になったのは1万円札の福沢諭吉の「留任」だ。慶応出身の首相と財務相
との連係プレーではないでしょうが。
これも小池氏の代表作の一つ