06/01/14 19:36:15 J9h0RJ8R0
2040年、ある独身男の一夜
中野新橋あたりの、誰も待っていない、うす暗いボロアパートに戻り、
「やれやれ……どっこししょ」とかタメ息をつきながら、
薄くなった頭からバーガーキングの帽子を外し、縦縞のド派手な
ユニフォームを脱ぎ捨てる……。
年相応なサルマタ姿に戻ると、20年間も買い続けている『フロムエー』
をコンビニ(昔、バイト勤めしたことのある店)の袋から出して眺める。
「60ぅのジジィのオレに、工事現場の交通整理はつらぃやねぇ……」
ヤカンがピィピィ鳴りだした。『緑のたぬき』かなにかをズズッと
すすりながら、魚肉ソーセージを肴に『ワンカップ白鶴』を1杯やる。
テレビであどけない顔の女の子たちが歌っているのを聞きながら、
ふと見上げると、ハンガーから吊り下がった、齢(トシ)不相応に派手な
ユニフォーム。 「げふっ。はぁ~、もぉ寝っがな……」
誰も聞いてくれる人がいないセリフをまたこぼしながら、
傍らにふたつ折りにしていた、せんべい布団を拡げ、寝っころがる。
酒の力を借りて寂しい現実を忘れようと、老爺は眠りの世界へ落ちる。
……夢のクニでは、俺は“?”?成功させたシンガーさ。
吉祥寺駅前でギターをかき鳴らしていた30年前、
レコード会社のプロデューサーが拾ってくれたんだ。
……ん? えっ? あれっ? やっぱり夢かぁ。プロデューサーの
顔をよく見れば、バイト先の店長(28歳年下)じゃねぇか。
やっぱり俺の現実なんてあのボーヤに使われるだけなんだよな。へへっ……。
せめて、夢のなかでぐらい“みじめさ”てもんを忘れさせてくれよ