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食を語らせればいまや当代切っての名手、東海林さだおさんが、毎日新聞に連載中の
「アサッテ君」に、こんな作品があった。アサッテ君が仲間とすき焼きを注文して、
皿に盛った材料が届く。みんなの視線が肉より、野菜の量に集中して落ちがつく。
▼平成十年、天候不順のため野菜の高値が続いた世相を風刺したもの。昔は野菜のかげに
隠れた小さな肉片を奪い合ったものなのに…そんな東海林さんのつぶやきも聞こえた。
確かにビフテキがぜいたくの象徴だった時代があった。
▼米国・カナダ産牛肉の輸入が二年ぶりに再開された。牛丼や焼き肉、牛タンのファンには
朗報だろう。ただ、かつて米国産が日本の消費量の四割を占めていたわりには、きのうの本紙に
よれば、スーパーの多くは販売再開に冷ややか。豚肉も鶏肉もある。最近はラム肉が人気だ。
国産高級和牛は別にして、消費者の牛肉そのものへのあこがれが薄まったせいか。
▼米国のBSE(牛海綿状脳症)対策への不信感が根強いことも理由のひとつに違いない。
日本消費者連盟では、不買運動を検討しているというが、少し待っていただきたい。
▼専門家が検討を重ねた上で出した結論だ。今後は輸入条件が守られているか、
政府が目を光らせることになる。そこからは、食べる食べないは消費者の自己責任ではないか。
この世に100%安全な食品など存在しない。
▼筆者は、BSEの牛の肉を食べて感染すると考えられている変異型ヤコブ病が
初めて確認された英国に住んでいたおかげで、献血も臓器提供も禁止されている。
いわば100%の安全はないと、お墨付きをもらっている身。だからというわけでもないが
久しぶりにビフテキでも焼こうと楽しみにしている。
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