06/12/04 23:48:26
■支局長からの手紙:胸に迫る神戸判決 /兵庫
国に中国残留孤児61人への賠償を命じた神戸地裁の判決文を読んで、頭をごつんと小突かれたような
感覚にとらわれました。
君たちはどこを見てきたんだ。北朝鮮の問題に関心を奪われて、まさか、あの人たちのことを忘れていた
のではあるまいな、と。
1日の判決文はこう述べています。
「拉致被害者が自立支援を要する状態となったことにつき政府の落ち度は乏しいが、残留孤児が自立支援
を要する状態となったことにつき政府の落ち度は少なくない。したがって、残留孤児の自立に向けた支援策が、
拉致被害者におけるそれよりも貧弱でよかったわけがない」
つまり、日本政府の責任が乏しい拉致犯罪の救済に手厚い内容が盛り込まれているのに、国家としての責任
がより大きい残留孤児にそれ以下の支援策しか用意していないのは不条理である、との指摘です。
虚を衝かれたような思いがしました。もっと早くここに気づくべきでした。
北朝鮮による拉致被害者への支援策は、02年12月に全会一致で成立した拉致被害者支援法に基づくものです
(03年1月施行)。
帰国した被害者に5年を限度として毎月24万円(2人世帯)の給付金を支給することや、国や地方自治体の
責任で被害者らの自立を促進することなどが定められています。
これに対し、永住帰国した残留孤児の場合は、自立支度金16万円の支給(1回だけ)と、帰国後6カ月間に
限った日本語講習、生活指導などにとどまっています。拉致被害者が優遇されているというよりも、国は残留
孤児に対して冷淡すぎるのです。
拉致被害者支援法が作られている時、私は政治部のデスクでした。スクラップを読み返したら、明らかに自分
で手を入れたと記憶している部分がありました。
02年11月21日朝刊のクローズアップで、毎日新聞は中国残留邦人支援法との違いを指摘したうえで
「給付内容の違いが『法の下の平等』原則に抵触するとの論議を呼ぶ可能性もある」と書いています。
問題になるかもしれないと当時は思いながら、それ以上掘り下げる作業を怠っていました。
蓮池薫さんら5人が「一時帰国」の条件で羽田に降り立ったのは02年10月15日です。その後沸き起こった
「二度と5人を北朝鮮に戻すな」という世論をにらんで支援法は成立し、法制化を主導した安倍晋三首相
(当時官房副長官)は今日の基盤となる国民的人気を博しました。
さあ、安倍さん、どうなさいますか。あなたは私以上にこの判決文が胸に迫るはずです。
【神戸支局長・古賀攻】
〔神戸版〕
ソース:毎日新聞 2006年12月4日
URLリンク(www.mainichi-msn.co.jp)
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