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■【コラム】米国人にとって「戦争」とは
米国の書店で今年2月以来、10カ月連続でベストセラーになっている本がある。著名な伝記作家で、
ピューリッツァー賞を受賞したデイヴィッド・マカルーの『1776年』だ。
1776 年といえば、米国が独立を宣言した年。独立戦争の総司令官ジョージ・ワシントンがいかに戦争
を遂行したかという、独立戦争の実情を描いた本が『1776 年』だ。兵士は飢えに苦しみ、火薬も枯渇した
状況下にある中で、病と寒さに耐え、当時既に世界最強国家だった英国と戦った、230年前の先祖たちの
悽惨(せいさん)な戦記が400ページにもわたるこの分厚いハードカバーには綴られている。
しかし、なぜ今、米国人たちが数百年前の独立戦争の記録にそれほど熱中しているのだろうか。
独立戦争は米国人たちにとって特別な意味を持つ。彼らがこの戦争の指導者らを呼ぶ時に使う用語が
「Patriots(愛国者たち)」というものだ。このほか、「Founding Fathers」(建国の父たち)、あるいは「Framers」
(設計者)という表現も、独立戦争の指導者らを指すものだ。表現こそ違うものの、同じ意味をなすこれらの
言葉には、戦争を通じた米国の建国と、その戦争を率いた人々に対する自尊心、また彼らが夢見た米国の
理想に対する信頼感が込められているのだ。「テロとの戦い」から、アフガニスタン侵攻、イラク戦争と続く、
終わりなき戦争に疲れた米国人たちが今、建国の精神に再び目を向け、思い返そうとしてるのだ。
米国民主党の黒人若手上院議員バラク・オバマ氏は最近、自叙伝を出版した。『希望の大胆さ』と題した
この本は、これまた 400ページ近くの分量だが、ニューヨーク・タイムズ紙が選ぶベストセラーのトップに輝いた。
彼が2008年の大統領選に意欲を見せる新しい世代の候補だからだろうか。45歳のオバマ議員がこの本で
語っている内容は、やはり最初から最後まで米国の建国精神が込められている。戦争と苦難を克服して米国
という国を打ち立て、発展させてきた米国の歴史に対する自負心を再確認しながら、彼は建国の理念、
「建国の父たち」が作った憲法の精神に立ち返ろうと訴えているのだ。
この2カ月間、この2冊の本を読みながら、ソウルから伝わってくる数々の「戦争」話を聞いた。次期外交
通商部長官に内定した、青瓦台(大統領府)の宋旻淳(ソン・ミンスン)安全保障政策室長は「歴史上最も
多くの戦争を行ってきた国は米国」と発言し、米国が核実験を行った北朝鮮への制裁を行うべきだと主張
すれば、「戦争しろということか」といった反応が韓国の与党からも返ってきている。ついには、米国が懇願
してきた大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)への参加も、「武力衝突につながる可能性が高い」として拒否
してしまった。
「戦争」とは何も、韓国だけに国家の運命を決める生死の問題ではない。米国にとってもそれは同じだ。
ただ、米国人たちにとっての戦争とは、悲惨さとともに勇気と犠牲の象徴でもあり、自国の歴史において
最も大きな自負心を抱かせるものでもある。
韓国が「戦争だけは避けなければならない」と言って、米国が求めてきた北朝鮮に対する措置を避け、
拒否するようなことが度々繰り返されるがために、米国では韓国を指す新たな用語が誕生した。当地の
ある韓半島(朝鮮半島)専門家は数日前、ワシントンの安全保障専門家らとの会合で「いわゆる同盟国
だという韓国」という表現を聞いた。その発言が出るや、出席者らがみな韓国をあざ笑うかのように、一斉
に大笑いしたという。別のある専門家も、韓国を「同盟国だと主張している国」、「同盟国と想定される国」
などと呼ぶ表現を耳にしたことがあるという。戦争に疲れた米国に向かって「戦争狂」とでも言わんばかり
の罵詈雑言を浴びせながら、その一方で米国を「同盟国」と呼んで、鉄のように強固な安全保障体制を
求めてくるようなダブルスタンダードぶりを米国人たちがどう受け止めているのか、これらの用語以上に
それを実感させるものはないように思う。
ワシントン=許容範(ホ・ヨンボム)特派員
ソース:朝鮮日報/朝鮮日報JNS 記事入力 : 2006/11/18 08:00
URLリンク(japanese.chosun.com)