06/11/10 21:40:22
(>>1の続き)
◆無条件には認められていない再入国
そもそも、「再入国の自由」とは何だろうか。それは、端的には言えば、日本をいったん出国したあとに、日本に戻ってくる
権利のことである。日本の現行制度のもとでは、外国人であるわれわれ在日同胞は、このような再入国の自由が無条件
には認められていない。日本を出国する前に、法務大臣の「再入国許可」を得なければ、日本には(当然)戻って来られな
いようになっているのである。この再入国許可には、1回限りの許可(=「シングル」)と数次再入国許可(=「マルチ」)が
あり、「マルチ」の許可を得ると、有効期間内(特別永住者の場合一般に4年間)であれば、何度でも再入国が可能となる。
日本の出入国管理及び難民認定法(入管法)は、事前に再入国の許可を受けて出国した外国人に限って、当該外国人
が有していた在留資格を失うことなく、再び日本に入国することを認めている(入管法26条)。そして再入国を許可するか
否かは、法務大臣の裁量に委ねられている。
在日朝鮮人が再入国許可を受けずに日本を出国した場合、「特別永住」の在留資格を失い、日本への入国、在留が
保障されない。いわゆる崔善愛事件では、指紋押捺を拒否したため再入国許可を得られなかった在日同胞(韓国表示)
が、再入国許可を受けないまま日本を出国した結果、「協定永住」資格を失っている(この事件の当事者は、結局、「特別
在留許可」を受けて日本に再入国した)。
家族や財産等の生活基盤が全て日本国内に存在する在日朝鮮人にとって、特別永住者としての在留資格を失うことは、
日本における生活の根幹が破壊されることを意味するのであるから、再入国許可を得ないまま日本を出国することは
事実上不可能である。グローバル化が進む現代では、海外渡航(観光目的、商用など、目的はさまざまである)は、個人
の自己実現を図るうえで欠かせない重要な行為であり、渡航の権利を意味する再入国の自由は、基本的人権の一つと
して最大限尊重されなければならない。
そして、在日朝鮮人にとって再入国の自由は、単なる海外渡航の権利にとどまらない。在日朝鮮人にとって再入国の
自由は、祖国往来、親族訪問を担保するものでもある。
在日朝鮮人が、祖国を訪問するためには、必然的に居住地である日本から出国せざるをえない。とすれば、朝鮮を
渡航先とした再入国が許可されなければ、日本での永住を前提としている在日朝鮮人は、事実上祖国への往来手段を
断たれることとなるのである。
日本による植民地統治と第二次大戦後の南北分断という歴史的悲劇の被害者となった朝鮮民族は、同じ民族の構成員
が朝鮮半島の南北のみならず、海外にも散らばって住むことを余儀なくされた。朝鮮民族はみな、「離散家族」の一員で
あるといっても過言ではない。これらの親族との面会、交流を行うためには、日本と朝鮮半島との間の自由な往来が保障
されなければならないのであって、在日朝鮮人にとっての再入国の自由は、祖国往来、親族訪問を担保するものであり、
人道的観点からも必ず保障されなければならない権利なのである。(李春熙、弁護士、田村町総合法律事務所)
ソース:朝鮮新報
URLリンク(www1.korea-np.co.jp)
(終わり)