06/10/16 17:59:21
発信箱:台湾新幹線の不協和音
先週出張していた台北の居酒屋で、たまたま日本人駐在員2人と隣り合わせた。
2人は会社は違うが、ともに大阪に本社のある電機関係の企業に勤め、
台湾高速鉄道(新幹線)の開業支援にかかわっているという。
私も以前、台北で勤務したことがあり意気投合したが、新幹線の話題になると、2人は途端に歯切れが悪くなった。
台湾新幹線は日本が初めて新幹線システムを輸出する重要なプロジェクトだ。
メーカーと商社の企業連合が、車両や信号など中心となる機械電気システムを請け負っている。
本来は日台友好・協力の絶好のシンボルとなるはずなのに、2人の口が重いのは、
運転士の養成の遅れなどから、今月末とされる開業がまだ不透明だからだ。
このプロジェクトは当初、欧州勢が優先交渉権を得て基本設計が進んでいたが、日本勢が逆転受注した。
このため、通信はフランス式、ポイントはドイツ式など日欧のシステムが混在する。
工事は遅れ、事業主の台湾高鉄公司は昨年10月末の開業予定の1年間延期を発表した。
日台が互いに責任をなすり付け合う発言が相次ぎ、双方に不信感が広がった。
日台の文化の違いを指摘する声もある。何事も細かなところまで自己流でやらないと気がすまない日本人気質が、
台湾人には「押し付け」「メンツをつぶされた」と映ることもあったという。
だが、安全でスムーズな運行を目指す目標に日台で違いはないはずだ。
相互理解と信頼が大切なのは外交も国際ビジネスも同じ。
心を一つにして不協和音を乗り越え、国際協力のモデルとしてほしい。(論説室)
毎日新聞 2006年10月14日 大阪朝刊
ソース:毎日新聞
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