06/10/12 22:05:48
■既存メディアの靖国報道の「嘘」を暴いたネット世代の「追及」「検証」能力 西村 幸祐
2006年ほど熾烈な情報戦が仕掛けられたことはなかった。日本経済新聞の杉田亮毅社長が4月13日に
北京の釣魚台国賓館で唐家旋国務委員と会見したが、その時唐国務委員はこう述べている。
『日本経済新聞』はじめ日本のメディアが現在の中日関係と中国の対日政策を日本国民が正しく認識する
よう導き、中日関係の改善と発展のために積極的かつ建設的役割を果たすよう期待している」(中国新華社電)
つまり、中国共産党は日本メディアに情報操作を依頼していたのだ。日中首脳会談が中国の対日戦略で
ボイコットされている状況下では、日本メディアの代表が中国高官と会談しただけでニュースになるはずだが、
このように日本メディアへ情報操作を依頼した会談の内容どころか、会談が行われた事実すらいっさい報じ
られなかった。(※1)とすれば、4月13日の杉田社長と唐国務委員の会談は一種の工作指令であり、7月20日から
展開された日経の「富田メモ」キャンペーンに直結しているとも考えられはしないか。
「富田メモ」で最も危険で奇妙だったのは、通常なら一メディアのスクープを他メディアはなかなか追随
しないのだが、この時は産経を除く全てのメディアが無批判に、検証なしで熱に浮かされたように日経の
報道に追随し、情報を増幅したことだ。なぜ、そのような事態になったのだろうか?
それは、昨年10月の小泉前首相の靖国参拝後、世論調査で参拝賛成が上回ったことが、必然的に反日メディア
に隊列を組ませることになったと考えられる。朝日だけでなく、他の反日主要メディアも中国共産党の対日戦略
に加担せざるを得ない状況になっていた。
▼ハイド発言の誤訳がネット言論に火をつけた
さらに、問題を複雑化するために米国からの反靖国報道が巧妙に仕組まれていたのだが、逆にこれが今年の
靖国を巡る情報戦のメルクマールとなった。その情報戦を制したのが、ネット言論によるメディアリテラシー
能力だった。
1ヶ月後に小泉訪米を控えた5月末、小泉首相が米議会で演説を行うには、靖国参拝をしない約束が必要だと、
下院のヘンリー・ハイド委員長は下院議長に書簡を送ったという報道があった。ハイド氏は大東亜戦争に従軍
した長老であるが、それにしてもこれは特殊な意見だった。なぜなら、大東亜戦争従軍の存命者が多かった過去
において、首相の靖国参拝に反対する米議員はいなかったからである。
ところが靖国参拝反対派はまるで「金科玉条」のようにこの「ハイド発言」を珍重し、米国からも批判が出た
という証文として使い出し、勢いづいたのである。
-略-
だが、その報道が増幅される過程で、TBSが愚劣な捏造報道をして馬脚をあらわしてしまう。6月29日に
『筑紫哲也NEWS23』は「幻に消えた?米議会での演説」という特集を報道したのだが、そのなかでハイド議員の
インタビューを正反対に歪曲した報道を行ったのだ。
-略-
実は、このTBSのハイド捏造報道が一気に、靖国を巡る情報戦争の形成を逆転させる契機となった。さしずめ
TBSと筑紫哲也は、大東亜戦争における「ミッドウェイ作戦」を敢行したことになる。放送後、「2ちゃんねる」
を中心に多くのネット掲示板やブログがハイド発言の捏造を取り上げ、TBSに抗議が殺到。7月5日にTBSは「誤訳」
を認め、謝罪に追い込まれた。だが、TBSは決して捏造報道を認めて責任を取ったわけではないので、「受け手」
側の一層の不信感を募らせてしまった。
7月20日に「富田メモ」が日経から発表された直後にも、ネット言論は「富田メモ」についての疑問をさまざまに
追求した。従って、小泉前首相の靖国参拝後の各種世論調査では、参拝判定を上回ったのだが、特にネットを
介した調査では圧倒的に参拝賛成派が反対派に圧勝した。
-略-
>>2以降に続く
ソース:SAPIO 10月25日号 PP26-28 記者がテキスト化