06/09/12 16:16:21
湖国の人たち:オピニオン’06 県立大人間文化学部講師・河かおるさん /滋賀
◆県立大人間文化学部講師(朝鮮近代史)河かおるさん(34)=彦根市
◇「在日」高齢者が抱える問題、想像力働かせ理解を
今年5月、県内の在日コリアンのお年寄りを対象とした生活実態などの調査がスタート
した。始めたのは県立大人間文化学部講師(朝鮮近代史)の河かおるさん(34)ら研究
者や、大津市のNPO「滋賀コリアン生活サポートセンター」のメンバーらだ。国民年金
制度から排除され「無年金」状態のため経済的に困窮したり、地域の中で話し相手が
少なかったりという問題を抱えるとされる「在日」の高齢者たちの実態を把握し、今後の
状況改善に生かそうという意欲的で珍しい取り組みだ。河さんに調査の経緯や思いなど
を聞いた。【服部正法】
--調査に至る経緯は。
「在日」の歴史は文章に残っておらず、聞き取るしかない。当初は滋賀の在日の人を
対象に、歴史についての聞き取りを念頭に置いていたが、全(チョン)さん(全敬子
(キョンジャ)・滋賀コリアン生活サポートセンター理事長)から「多くの人にアンケート
して、生活実態を明らかにし、行政に働きかけも」と言われた。在日の無年金問題に
ついては自分自身勉強不足もあり、福祉の専門家でもないし「出来るかな」と思ったが、
この問題を置いておいて「歴史だけ聞かせて」というのも虫がいいと感じた。
在日社会も高齢社会だが、日本人とは違う状態があり、それはこれまでの差別が集約
された結果。指摘し、状況を変えていかないといけない。専門外だけど「やるしかないな」
と思った。
--どのような調査か。
研究助成を1年間受け、対象は県内の70歳以上の在日コリアン699人。ニューカマー
が含まれる一方で、日本国籍取得者は入っていない。(厳密には)在日の母数は分から
ない。質問は地域への参加や識字、介護保険など福祉サービスの利用状況など29項
目。民族団体の協力も得て、面接や親族にお願いしたりして少しずつ調査している。
別に生活史調査も予定しているが、まだ着手していない。
--調査して感じたことは?
字が読めないことをどれほどコンプレックスに思っているかなど、在日の高齢者が抱える
問題はこれまでの論文や実践報告から頭では分かっていたが、まさにその通りだった。
例えば「老人福祉センターに行きますか」と聞くと「字を書かされるやろ。行かへん。
気ひける」。また、「朝鮮人が、と言われるから」(地域の)老人会には行っていないとか。
注意しないといけないのは、差別され、抑圧された人たちは権力の“磁場”に身を置き、
そこに合わせながら生きている。だからすぐに本当の気持ちを聞けるわけではないとい
うこと。差別されることが当たり前になってしまっている。例えば「どうすれば『在日』が
気兼ねなく過ごせると思うか」と聞けば、「別にないよ」と言われてしまうのが落ちで、
数字の上では「在日の人たちは何も望んでいないようだ」となってしまう。
ソース:毎日新聞・滋賀版
URLリンク(www.mainichi-msn.co.jp)
>>2-5あたりに続く