06/08/26 23:32:31 nZqgRcdN
>>736
べきん、と僕の後方から聞こえた音は僕の気のせいだと思いたい。
確か結城さんの持ってたのは、スチール缶だった筈だから。
それが素手でへこませるなんて、有り得ない。というより、有り得て欲しくない。
「酷いわ、あたしを置いて何処かへ行っちゃうなんて」
今すぐ逃げ出したいけど、僕の首に念入りに回されたこの子の腕がそれを邪魔していた。
「あたし、お礼も言えなかったんだから」
めきめきとスチール缶らしきものがひしゃげていく不気味な音が僕の背後で展開されている。
時間との正比例で増大する殺気で、夏真っ盛りだというのに僕の身体は冷え切っていた。
―殺されるかも。
そんな、いつもなら冗談で済ませられる事も、この場では妙に説得力がある。
そういえば結城さんがへまをした執事をアイアンクローで沈めている場面に、僕は一度だけ遭遇した事があった。
思い出したくない記憶だった。
「悪い男に絡まれてるあたしを助けてくれた、格好良い人。これ、運命よね?」
「え?あ……」
随分安い運命である。だが命の危険が目前に迫った僕はそれ所ではなく、
この気の強そうな女の子に対して、まともな受け答えも気の利いた説得も思い浮かばなかった。
(省略しました。自称軽小説屋・榊 一郎は最k)
まで読みました。
各論で総論を分かった気になるのは愚かな事ですよ。