06/07/28 16:42:26
(前略)
「韓国史教科書における前近代日本に関するほとんどの叙述で、日本は主体の
一つとしてではなく、客体として叙述されている」
二十四日、財団法人・韓国学中央研究院が主催し、ソウル市内で開かれた「日韓
教科書セミナー・高等学校歴史教科書にみる韓国と日本の相互認識」で主題発表
した光州大学の高栄津助教授は、このように指摘した。
高助教授は、現在韓国の高校で使用されている歴史教科書の中から前近代日本に
関する記述例を挙げ、「自国史の延長」として描かれていると説明した。
例えば、「三国(百済、高句麗、新羅)文化は六世紀ごろの大和朝廷の成立と七世紀
奈良地方で発展した飛鳥文化の形成に大きな影響を及ぼした」などといった記述に
表れた日本の姿は、「古代から朝鮮時代まで絶え間なく朝鮮から先進文化を受け入
れた文化後進国、文化享受国の姿」(高助教授)であるという。
高助教授はまた、前近代日本で最も分量が多い豊臣秀吉の朝鮮出兵について、「た
だ文化後進国の略奪的な性格ばかりを強調している感じが強く、一見妥当といえる面
がなくもないが、正確な姿とはいえない」として、日本が朝鮮出兵を起こした理由や影
響に関する客観的な叙述に欠けると指摘。その上で、「韓半島をめぐって今現在進行
中の難題を解決し、望ましい韓日関係を築いていく上で何の役にも立たない」と批判し
ている。
次に近現代史について語った国史編纂(へんさん)委員会の宋炳巻氏は、「開港期の
政治史の叙述で、日本に対するイメージが『日本』から『日帝』へと大きく変化する過程
を見ることができる」と述べ、植民地支配で日本の侵略者としてのイメージが強力にグ
レードアップされていることに触れた。
しかし「日本の敗戦後、わが国の独立以来の現代史の叙述では、日帝どころか日本の
イメージ自体が急に失踪(しっそう)してしまうようになる」点を挙げながら、「日帝植民地
の残滓(ざんし)の一掃という課題の中で、日本との関係を断絶しようとした無意識的発
露とも見ることができる」と分析している。
こうした記述の“おかげ”もあってか、韓国の高校生の日本意識は極めて悪いことも判
明した。今回のセミナーでは、今年五月までにソウル市内の高校一、二年生二百七十
三人を対象に行った意識調査の結果が発表され、「日本といえば思い出すのは」という
問いに最も多かった回答は「独島(竹島の韓国名)」。続いて「植民地」(二位)、「倭の奴
(チョッパリ)」(三位)、「歴史教科書」(五位)という順だったという。これは芸能人やアニ
メなど日本の大衆文化に接する機会が増えているにもかかわらず、日本の否定的なイ
メージが依然として根強いことを物語っているといえよう。
韓国高校歴史教科書に表れる偏った日本の記述の背景について、高助教授は「自己
を客観化できない傾向が強い韓国人の国民性」を挙げた。また今回のセミナーにパネ
ラーとして参加した在日韓国人で早稲田大学の李成市教授は、「日本に対する満足の
いく記述がないのは他者として日本を扱っていないことであり、心理学的には自我が成
熟していない深刻な状態」と指摘するなど、内部問題として重く受け止めているようだ。
いずれにしろ、このように韓国人の教育者の口から“自虐的”とも言える自国教科書批
判が展開されるようになったのは、日本の歴史教科書がクローズアップされるようにな
ったのを契機にして、韓国内で自国の歴史教育と教科書にも目が向けられるようになっ
たからだといわれる。そこには、日本に対する否定的な認識を進化させるのに一助をな
したのが、ほかならぬ歴史教科書であるという「反省の思い」があったといえよう。
常に大国のせめぎ合いの中で呻吟(しんぎん)してきた韓民族にとって、自らの正当性
を認識させる「悪役」であり続けた隣国・日本。しかし、偏った発想と記述を修正し、韓国
歴史教科書を見直そうという動きが、ようやく始まろうとしている。
主題発表者の一人で現職高校教師の朴中鉉さんは、「韓国の歴史教科書に対してある
識者が『外国勢力がわが国歴史を突っつかないと歴史の力を感じられない不感症が、
日本の歴史教科書の歪曲よりももっと深刻な病気である』と指摘したのは、テキストを作
る歴史家たちをしてもう一度教科書について考え直させる」と語った。
朴さんがいるような教育現場では、そうした思いがことのほか切実であるかのようだった。
ソース:世界日報 韓国/北朝鮮 ワールドスコープ
URLリンク(www.worldtimes.co.jp)