06/05/02 12:13:30
グローバル・アイ:中国国家モデルの台頭 権威主義と経済が両立=西川恵
中国の胡錦濤国家主席が28日、11日間にわたる5カ国外遊を終えた。最初の米国とは異なり、サウ
ジアラビア、モロッコ、ナイジェリア、ケニアの中東・アフリカ4カ国では、手放しの歓迎ぶりだった。
「テレビで見る胡主席は米国での緊張ぶりとはまったく違って、すっかりくつろいでいました」と本紙中国
総局長は言う。長年、援助をしてきたアフリカ、また原油ビジネスを通じて急速に関係を深めているサウ
ジアラビアと、中国の存在感が大きい地域である。
サウジでは外国元首としては異例の諮問評議会(シューラ)での演説が認められ、ナイジェリアではオバ
サンジョ大統領が空港に出迎えた。歓迎式典でギクシャクがあった米国と比べても破格の厚遇ぶりだ。
中国が第三世界や中東諸国に対して持つこの吸引力の源泉は、言うまでもなく経済力である。ただカネ
の力しか見ないのは近視眼的だ。
中国の新たな魅力、それは一群の国々に、あるべき一つの国家モデルを提供したことである。中国は経
済社会主義の名のもと、権威主義体制を維持しつつ経済発展を遂げてきた。90年代半ばまでマレーシア、
インドネシアなど東南アジア諸国も同様だったが、これらの国がアジア通貨危機(97年)で頓挫した後も
中国は成長をひた走っている。
冷戦後、米欧は援助をテコに第三世界・途上国に「開放体制で経済発展」か「独裁体制で経済衰退」の選
択を迫ってきたが、中国は別の道筋を示したのだ。中国モデルは9・11、イラク戦争後、より魅力を加えて
いる。民主化圧力を強める米国に対し、経済関係や援助をその国の人権や民主化とはからめない中国の
内政不干渉は、権威主義的体制の国々を引きつける。
興味深いのは、中国が日本モデルと交代する形で台頭していることである。私が中東に勤務していた80
年代、しきりに日本モデルが言われた。敗戦でゼロから出発し、一生懸命働くことで経済繁栄を築いた日本
を見習おうとの動きだ。
テレビドラマ「おしん」もこの日本イメージ補強に貢献した。日本を念頭に置いたマレーシアの「ルック・イー
スト(東方外交)」が打ち上げられたのも80年代。日本が対アフリカ外交に力を入れていた90年代は、アフ
リカでも日本モデルは説得力を持った。
しかし、いまや権威主義的な中東諸国、アフリカ、アジアの国々にとって、体制を維持しつつ経済発展を実現
する上で中国はお手本である。25日、ドイモイ(刷新)の加速を決めて共産党大会を終えたベトナムにもそれ
はうかがえる。中国モデルが世界で一定の魅力を放っていることは知っておいていい。(専門編集委員)
ソース:毎日新聞
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