05/10/17 16:01:24
突撃取材で中国の闇を追求
凄(すご)い行動力である。
著者の水谷さんは、たとえばこんな例をひく。反日暴動の上海で「日本人かっ?」と
いきなり殴られて半死の重傷を負った留学生が、地元警察が「色恋沙汰(ざた)」で
適当に処理しようとしたことに立腹し、日本領事館に相談に行ったらケンモホロロだった。
騒ぎ立てるな、が助言だったそうな。
こうした日本人被害者を現場へ飛んで綿密に取材している。何人も特派員がいる
大手マスコミが取材を怠った分野だ。
また反日サイトの主宰者、尖閣諸島上陸など札付きの「反日活動家」の多くに
直撃突撃インタビューを繰り返す。このような著者の蛮勇的行動力には驚くが、
反日活動家らの知的レベルの低さも呆(あき)れるばかりだ。
江沢民の反日教育に洗脳され、純粋培養された、「反日カルト」は数の上では
無視しても良いほどの少数だが、政治的武器として政権に利用される。
本書の行間を読むと、そのばかばかしさも同時に浮かんでくるのである。
中国の反日は毛沢東が『矛盾論』でいみじくも指摘した内部矛盾を外部にすり替える
戦術である。天安門事件の再評価、共産党の悪政をすべて日本の所為にし、ついで
伝統的な中華思想が嘗(かつ)て東夷と侮蔑(ぶべつ)してきた倭の国が、経済的文明的に
中国より発展したという現実を許容しがたい傲慢(ごうまん)な心理の裏返し。
そしてアジアにおける覇権の確立に日本が邪魔だからである。
しかし中国の民衆は日本の製品に憧(あこが)れ、命懸けでも密航するか偽装結婚
してでも日本人になりたがる。この巨大な矛盾を北京の「愛国」などという人為的世論
工作で糊塗(こと)しようとしても限界があるだろう。
日本は宿命的に地理的に中国が隣国である以上、反日エネルギーの源が本当は
何なのか、左翼のいう公式的な日本の謝罪不足とか、日本のナショナリストが説く
論理を越えて、その原点にある「中国の闇」が何かを著者は懸命に追求している。
評論家 宮崎正弘
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