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■人権擁護法 救済の法律は必要だ
人権の侵害を、どのようにして救済するか。その手続きを定める人権擁護法案が今国会に
提出される予定だったが、自民党は見送る方針を決めた。(中略)
差別や虐待に苦しむ人たちをすばやく救済する仕組みや、それを保障する法律は必要で
ある。私たちは、問題のある条文を修正したうえで、法案の成立を急ぐべきだと主張してきた。
そうした修正のために法案提出を見送ったというのなら、自民党の方針を理解できなくもない。
しかし、今回の見送りは、まったく別の問題をめぐって党内の議論が紛糾し、まとまらなかっ
たのが理由だ。
法案では、各市町村で人権擁護委員が委嘱され、相談や調査・救済の実務に当たる。そ
の委員に外国人がなれるのは問題だ、などの意見が急に噴き出した。
朝鮮総連や部落解放同盟の名を挙げ、特定の国や団体の影響が強まるのではないかと
いう批判も相次いだ。人権擁護委員から外国人を締め出すため、国籍条項を加えるよう求め
る声も高まった。
だが、心配のしすぎではないか。
今も続く部落差別をなくすことが、この法案の原点だ。部落解放に取り組む人が人権擁護
委員に就くことを、この法案は想定している。
国連規約人権委員会は98年、入国管理職員や警察官らによる人権侵害を扱う独立機関
をつくるよう、日本に勧告した。この勧告も法案につながった。外国人への差別や虐待も救済
しようという法案である。委員の中に少数の外国人が加わるのは自然なことだろう。
そもそも、新しい人権擁護委員は市町村長の推薦を受けて委嘱される。その活動は、国会
の同意を受けて首相が任命する中央の人権委員会が監督する。
そんな仕組みで運営されるのに、特定の団体が委員の多数を占めたり、牛耳ったりするこ
とが起こり得るだろうか。短絡的にすぎるのではないか。
法案に問題がないかどうか、党内で事前に論議するのは結構だ。だが、人権にかかわる大
事な法案が、的はずれの意見にとらわれて提出できないようでは、政権党としての度量と責
任が問われる。
人権侵害に苦しむ人びとは、救済の法律を待ち望んでいる。自民党は、なによりもこの現
実に目を向けるべきだ。
法案の最大の問題は、人権委員会の独立性とメディア規制である。広範な支持を得て法
案を成立させるために、政府はこの修正をためらってはいけない。
ソース:朝日
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