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2005年3月27日 朝日新聞 朝刊
風考計/若宮啓文(論説主幹)
「竹島と独島」 これを「友情島」に…の夢想
それは、嵐の中に飛び込むようなものだった。島根県が「竹島の日」を定めて間もない18日、日本批判が
燃えさかる韓国を訪れたのだ。
大先輩にあたる韓国のジャーナリスト・権五琦(クォン オ ギ)さんとの対談で作った『韓国と日本国』(朝日
新聞社刊)が韓国語になって出版され、この日にソウルで記念の催しが行われた。そこに降ってわいたのが
この問題だった。
日の丸が焼かれる。抗議のために指を詰める。『日本人お断り』のゴルフ場が現れる。「竹島の日」に対抗
して「対馬の日」を定めようとの自治体まで出てくる。韓国政府は「断固対処」の対日新原則を発表し、やがて
盧武鉉大統領は「外交戦争」と言い出す。出版会こそ無事に終わったものの、私の心は晴れないままだ。
いつか見た光景が目にだぶる。
日本の高校の歴史教科書が「歪曲(わいきょく)」だと問題になり、「反日」旋風が吹き荒れたのは、私が
ソウルで留学生活を送っていた82年のことだ。新聞もテレビも「日本はけしからん」で明け暮れ、韓国政府は
強硬姿勢を譲らない。
「克日」の言葉が生まれ、国民の募金で独立記念感ができた。
だが、あれから23年。サッカーW杯の共催を経て、空前の韓流ブームの中にいる。今年は「日韓友情年」
とも呼ばれ、NHKの「のど自慢」も6月にソウルで開かれる。『韓国と日本国』では権さんと率直な自国批判
を語りあったが、大きな時代の変化を実感すればこそだった。それなのに、これは一体どういうことか。私も
大きな戸惑いを禁じ得ない。