06/10/01 12:12:00 0
韓国ドラマ「ゆっくりと長い時間軸を」
今月からユン・ソクホ監督の新作ドラマ「春のワルツ」がNHK・BSで放映される。
「秋の童話」(2000年)からスタートした四季シリーズの最後を飾るのが、この作品である。
シリーズ第二作「冬のソナタ」が、日本における韓流ブームの火付け役となったことは、周知のことだろう。
なぜ韓国ドラマに、あれほど多くの人々が引きつけられたのだろうか。
もちろん韓国ドラマも千差万別で、一概に良しあしを論じることはできない。
だが、ユン監督作品を現代日本に最も受け入れられた韓国ドラマとして考察することは可能だろう。
ドラマを見てまず感じるのは、ストーリーのゆったりとした展開である。登場人物の性格や人間関係など、
いろいろな側面に触れながらゆっくりと話が展開していく。そうして登場人物の細かな心の動きを感受しながら、
事の成り行きを見守ることになる。このテンポに慣れてくると、
日本のドラマは場面展開も速く、何か落ち着かない印象すら受ける。
もちろんこのことは、日本のトレンディードラマが十話完結型であるのに対し、
韓国ドラマが20話完結を基本としていることも無関係ではあるまい。
けれども、問題はそれだけではないようである。
四季シリーズに共通するテーマとして「記憶」というものがある。
ヒーローとヒロインは、かつて素晴らしい時間を共にしたが、事情により長い別離を経験することになる。
ストーリーはその両者が、運命的な再会を果たすことによって展開し始める。彼らは新たな関係を築こうとする。
そこで記憶という共有財産は、一度切断された過去と現在をつなぎ合わせる役割を果たすのである。
それによりドラマの中に流れる時間は、現在から過去へと長く引き延ばされたものとなるだろう。
その長い時間軸の中で、登場人物の存在は充実したものとなる。
繰り返される回想シーンや四季の美しい自然風景は、それを効果的に演出している。
視聴者の多くはこの点に、韓国ドラマ特有の魅力を感じたのではないだろうか。
陸奥新報 (弘前学院大学助教授 森田猛)
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