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こうした事態を改善するためには、「開発期間を十分に取って、適度な数に携帯電話機の
開発数を抑える必要がある」(前出のソフト会社幹部)。
ところが、そんな状況は見込めそうにない。携帯電話会社各社の競争激化によって、携帯
電話機の新機種投入ピッチは以前にも増して上がっているからだ。
例えばシャープの場合、昨年はドコモに5モデル、ボーダフォンに9モデルを出荷した。実に、
毎月1台以上のペースで新機種を投入しているうえ、今後はKDDIへの携帯電話機供給も決まって
おり、開発機種はさらに増える。
こうした状況を打開するため、NECとパナソニックモバイルコミュニケーションズが共同の
開発会社設立に向け動き出すなど、メーカー同士の連携は進んでいる。だが、決定的な改善策
にはならず、このままの状況が続けば携帯電話のソフト品質が低下していくのは明らかだ。
そこで、携帯電話会社自身が本腰を入れてソフト開発の効率化に乗り出した。
7月19日、KDDIは携帯電話メーカーが共通で利用する基本ソフトなどを共用できる仕組み作り
を進めることを発表した。従来個別に開発してきたソフトを減らし、負担を減らす狙いがある。
ドコモも既に同様の仕組み作りを始めており、今後さらに共通開発するソフトを広げていく考えだ。
■社会インフラとしての自覚を
国内契約者が9000万を突破した携帯電話機は、社会インフラとしての重要度が一層高まって
いる。電子マネーなどの機密情報を保存した機種が増えているほか、今後は110番などの緊急
通報の際に携帯電話の位置情報を送信して居場所を知らせる仕組みも導入される予定だ。
だが、ソフトの不具合が恒常的に続く現在の状態が続けば、思わぬ事故を招きかねない。
ソフトのバグで、知らぬ間に電子マネーが消えていた、といった事故が頻発すれば、携帯電話
サービス自体の信頼が失墜するリスクもはらむ。今から業界を挙げて開発体制の見直しに取り
組むことは、決して早すぎることはない。
日経ビジネス2006年7月31日号8ページより