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本書は、おもにソフトウエア業界で発生する過酷な開発プロジェクトを「デスマーチ」と命名し、
その原因や対策を分析したもの。原著は1997年に出版されて話題になり、「人月の神話」
(フレデリック・P・ブルックス,Jr著、ピアソンエデュケーション刊)とともに、プロジェクト
マネジャー必読の名著とされている。今回、内容を全面的に見直し、エクストリームプログラ
ミング(XP)をはじめとした新しい開発手法についても言及した第2版となって刊行された。
■プロジェクトにかかわることはデスマーチにかかわること
著者ヨードンの思考を特徴付けるのは、デスマーチに対する徹底した考察である。第1章では、
デスマーチの定義とその発生理由、そしてデスマーチに参加する者の動機を分析、分類する。
第2章ではデスマーチを巡るメーカー上層部や顧客との政治的な駆け引きを分析し、第3章では
デスマーチを巡る様々な交渉を分析・分類―。つまり、全編にわたって、まず分析、次いで
分類、そして考察を繰り返し、曖昧な部分が皆無なほどに、デスマーチという現象を論理的に
解剖し尽くしている。
例えばデスマーチは「プロジェクトのパラメーターが正常値の50%以上超過したもの」と明快に
定義される。納期、人員、予算などが見積もりに対して半分しか与えられなかったり、要求性能
が通常の2倍だったりすると、それはデスマーチプロジェクトというわけだ。さらに著者はもう
一つ辛らつな定義を行う。すなわち「失敗する確率が50%以上のプロジェクト」と。
さらにデスマーチの発生理由については「政治」「営業部門、経営陣、プロジェクトマネジャーの
天真爛漫(らんまん)な将来展望」「若者のカワイイ楽観主義」「ベンチャー企業立ち上げ時の楽観主義」
「海兵隊方式:本物のプログラマーは寝ずに働く!」「市場の国際化による競争激化」「新技術による
競争激化」「予期せぬ公的規制」「予測不能の事件、事故」―と分類して、解説を加えていく。
本書は誰にでも分かる事実と用語を駆使して、デスマーチという現象を分析していく。この
ような態度はあまり日本人には見られないものだ。