04/05/16 15:50
引き揚げ女性の堕胎証言 元助産師ら、二日市保養所跡で水子供養 /福岡(毎日新聞:5/15)
◇ソ連兵などが暴行…妊娠
戦後、大陸から引き揚げ途中にソ連兵などに暴行され妊娠した女性の堕胎をした
筑紫野市武蔵の二日市保養所跡で14日、水子供養が行われた。堕胎に携わった
元助産師らも参列し「処置した水子のことを忘れたことは1日もなかった」と、
重い口で語った。終戦から来年で60年。戦争の記憶が人々の脳裏から消え、
まるで新たな戦前が始まったかのような昨今、「忘れてはならないものがある」と
訴えかけるように。【福岡賢正】
二日市保養所は1946年3月に開設され、引き揚げ途中で暴行された女性の
中絶や性病治療を1年半、続けた。堕胎は当時非合法だったため、カルテには患者の
名前も記さないなど、極秘裏に行われた。中絶者は400~500人に上ったと
言われる。
証言したのは、大分県杵築市の青坂寿子さん(79)と、筑紫野市紫の村石正子
さん(78)。いずれも朝鮮から引き揚げ後、保養所に勤務し、青坂さんは助産師
として、村石さんは看護師として医師の処置を手伝った。2人の医師は既に鬼籍に
入ったという。
「毎日のように処置しました。7カ月にもなると、もう1人前の赤ちゃん。
赤い髪の毛で指が長くて、ソ連人の子とはっきり分った。そんな胎児をバケツに
入れて、桜の木の根元に穴を掘って埋めました」と村石さん。
「2、3カ月の赤ちゃんだとすぐ掻(か)き出せますが、5、6カ月にもなると
ちょっとやそっとじゃ出てこない。先生と夜を徹して引っ張って…。麻酔もない中で
患者さんはさぞ苦しかったでしょう。未熟児でもすぐには亡くなりません。
息が切れるまで動いている。見かねた先生がメスで…………。水子のことを忘れた
ことは1日もありません」と、青坂さんはとぎれとぎれに語った。
心ならずも妊娠した女性を救うためとは言え、2人とも後ろめたさにさいなまれて
来た。青坂さんは今でも、当時のことは家族にも話さない。
「どなたか1人でも、元気になられた患者さんにお会いしたいなと思うけど、
かなうことはないでしょうね」
そう言うと青坂さんは寂しげに笑った。
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