09/06/10 04:14:35 5D2HdXLz
>>261の続き
旅の途中で、喪子の弟離れや弟の姉離れのイベントを挟む。
喪子はなんとか弟への独占欲を抑えられるようになっていたが、結局あらゆる行動はすべて弟のためだった。
弟も、萌子にかっこつけたい手前ちらほらと反抗期らしい行動もとったが、いざとなればなんだかんだ姉を頼った。
恋を経験した弟。
愛する者を愛するが故距離を取らなければならなかった姉。
それぞれが旅の途中で成長を遂げるが、人生の大半をべったりとくっついて成長した二人にとって、真に互いが個人個人として独立することは難しかった。
姉は、抱きしめれば小さな腕で必死にしがみ付いてくる弟を守ることで生きてこられたから。
弟は、自分を包み抱きとめる優しい腕に必死でしがみ付くことで生きてこられたから。
すったもんだあって、世界の果てに辿り着き、世界の危機を企てた魔王を倒した喪子一行。
よかったこれで救われたと仲間たちと共に一息ついていた中、一人喪子だけが世界の危機がまだ終わっていないことに気づく。
魔王は、もうすでに世界を終わらせる魔法を発動させていたのだ。
その魔法の依り代となっている核を直接破壊しなければ、世界が終わる。しかし核を破壊すれば、核に溜まっているエネルギーがその場で瞬時に爆発する。
つまり、核を破壊するということは死を意味した。
魔法が発動すれば、弟がこれから生きる萌子との幸せな将来も弟の命も消えてしまう。
喪子は言葉巧みに弟と仲間たちを船に乗せ安全圏まで離脱したあと、再び世界の果てへと向かうためこっそり小型船で出発しようとする。
「一人でかっこつけようったってそうはいかない」
出発したその時、小型船に飛び乗ってきたのは仲間の一人の剣士。
普段は一匹狼タイプで態度も冷たく、正面切って仲良くすることはなかったものの義理固い男でもあり、
喪子と男はお互いを実力ともに認め合い、恋が芽生えることはなかったが、深く信頼し合っていた。
喪子は男を船へと返そうとしたがかわされ、二人はひとまず核のある世界の果てのさらに深淵へと急いだ。
深淵には禍々しく光る核があった。
剣を突き立て、エネルギーを包む核の表面を裂いてしまえば魔法は発動しない。
喪子は一人小型船を降り立つと、男に帰れと告げる。
「お前には待つ人がいるだろう。私にはもう何もない。行け。」
男は喪子に弟はどうするんだと尋ねる。男から見ても、弟は喪子がいなければ生きていかなかった。
「弟には萌子がいるだろう。これからは、弟の傍には萌子がいてくれる。
萌子は本当に良い子だ。彼女があの子の傍にいてくれるなら、なんの心配もない。あの子はきっと幸せになれる。
たが、あの子がいつまでも私ばかり見ていては萌子が悲しむだろう。嫉妬は別れを生む。そしたら、あの子は酷く悲しむ。
私がいては、あの子はいつまでも姉離れ出来ない。私もおそらく、弟離れなど出来ないだろう。
私の役目は終わった。いや、もうすぐ終わるんだ。あの子の未来や人生を終わらせなんかしない。
私は、あの子を救うんだ。」
至極当然といった様子でそう語る喪子を、思わず男は抱きしめる。
「喪子は喪子、弟は弟だ。お前にはお前の幸せがあるはずだろ?
どうして、どうしてそこまでしてお前は」
「ありがとう、男。だが、私のために悲しむことはない。私は、弟を守るために世界の危機を救う旅に出たんだ。
いつもと同じ…あの子を守るんだ。私は、あの子を守って死ぬんだ。」
喪子は満足そうに微笑みながら、優しい男の背を撫でてやった。
喪子は想った。弟と萌子が寄り添いあい、幸せに暮らす情景を。
喪子の心に躊躇いの気持ちはなかった。弟の幸せが、喪子の幸せだった。
男が小型船に乗り船に戻った頃、船に残った仲間たちも世界の危機がまだ過ぎていないことに気が付いていた。
そして、喪子と男がいなくなっていることも。
弟や萌子や仲間たちが、項垂れて戻ってきた男を出迎える。
「姉さんは…?」
弟が男に尋ねる。男は、静かに深淵を振り返った。
男につられて一同が遠い深淵を見遣ったとき、眩い閃光が空へ弾けた。
問いに答えず深淵を見つめたままの男に、弟はすべてを悟りただただ立ちつくす。
その傍らに萌子も寄り添い、一行は一瞬の閃光などなかったように綺麗な空を見上げていた。
男は故郷に恋人がいてもいいし、妹がいてもいい。
それプラスで、喪子といい感じになっててもなってなくてもいい。
リアルに弟がいる。ブサピザヲタクだけど愛してる。超絶キモくて重い姉ですまんねw