09/06/05 07:07:23 71SBHFDm
異界に捧げられる妄想
模序村に住む、平凡な喪乃、親を幼い頃に失い、姉と二人暮らし
畑仕事、水汲みなど忙しいが、それなりに平和に暮らしていた
そんな、模序村にはとある掟があった
数十年に一度、一番夜が長い日、社に御旗が立ったら
異界の者たちに娘を一人捧げること
普段は平和な模序村、当然、若い子達はそんな事知らない
村の長老達によって秘密裏に伝えられて行くのだ
掟は絶対で、選ばれた娘は美しい着物をまとい境の祠に行かされる
ある日、社に御旗が、そんな掟に選ばれたのは喪乃……ではなく喪乃の姉
喪乃の姉は誰もが認める器量良し、性格もとてもよい美人だ
喪乃の姉は掟と内容を告げられ、悩み悲しむ、彼女には恋人が居たからだ
そんな姉を喪乃は見ていられなくて、掟の夜に喪乃は姉と彼を逃がす
代わりに異界の祠に行った喪乃
選ばれた姉で無い己など、直ぐに殺されるやも知れないと震える
辺りは音を消し、草木も眠る程の深い闇の中
月が天の真ん中を支配し、物の怪が騒ぐといわれる時間帯
数人の影を見たとたん、喪乃は頭を下げ、三つ指ついて震える声で話す
「このような何一つ秀でぬ身、ですが此度は私めでご勘弁を……」
喪乃を迎えに来たのは、煌びやかな見た目の青年達だった
ポカンと少しの間、双方あっけに取られていたかと思うと
青年達は喪乃に近寄り、くんくんと香りを確かめると顔を綻ばせた
「これはまた……やっとこっちの人間も分ってきたということか」
「そうですね、うん、身も心も清い、何より手を出されてないところが良いですね」
「怖くないから、大丈夫、とって喰ったりは……いや、別の意味では喰うのか?」
「喰うって……正直だが、下品だぞ」
小突きあい、騒ぎあいながら、花嫁殿だ、妻殿ですねと騒ぐ青年達
あやす様に頭を撫でられ、喪乃は軽々と抱えられ、祠の裏の岩穴を抜けるのだった
つづく