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特集ワイド:この国はどこへ行こうとしているのか 経済評論家・内橋克人さん - 毎日jp(毎日新聞)
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◇日本は防波堤が弱い--経済評論家・内橋克人さん(76)
なぜ今、普通に働く勤労者が、かくも多数、いっせいに切り捨ての悲惨にさらされなければならないのか。昨秋のリーマン・ショック
以降、さらに深刻さを増す世界同時不況。そのなかで、非正規雇用労働者が職・食・住を同時に奪われ、寒空の下に放擲(ほうてき)された。
人間の尊厳を足げにする「派遣切り」「雇い止め」の横行。内橋克人さん(76)はすでに90年代半ばから、労働の分断と階層化が格差
を広げ、このままでは社会統合が崩壊する、と警鐘を鳴らし続けた。
「“多様な働き方の時代”などとうたいながら、実際に企てられたのは、企業の思いのままに超低コスト労働力を調達し、“多様な働かせ
方”ができる労働市場を新たにつくることだった。戦後、営々と築き上げた労働基本権をご破算にする。プログラムを完成させたのが、
製造業への派遣労働を解禁した小泉構造改革だった。私たちのウオーニング(警鐘)がいまになってようやく“可視化”される時代がきた
ということです」
製造業への派遣労働解禁を待ちあぐねたように、中国はじめアジアに出ていた工場の「日本回帰」が始まった。日本のメディアは
「やっぱりモノづくりは日本で」と口をそろえて歓迎し、甘い拍手を送ったものだ。
「調べてみれば、日本回帰と解禁(製造業への派遣労働の解禁)の時期は見事に符合している。解禁を見越して大企業の“工場の出戻り”
が目立つようになった。政界、財界、そしてこれを理屈づけた労働経済学者ら3者の呼吸は見事なまでの一致ぶりです。中国に工場を
移さなくても、この日本でアジア並みの解雇自由・低賃金労働の調達が可能になり、併せて技術の流出も防げる。日本での“労働解体効果”
に引かれて回帰してきたそれらの工場から、今回、真っ先に派遣切りが始まった」