09/03/06 21:19:51 BjRILRNh
アメリカよ・新ニッポン論:第2部・改革の構造/5
◆「年次改革要望書」は黒船か
◇「カブキの黒衣」に限界
構造改革は「対米屈従」だとして、しばしばやり玉に挙がるのが「年次改革要望書」だ。
日米両国が年1回、規制緩和や制度改革が必要と考える相手国の問題点について指摘し合う文書で、
クリントン政権の1994年に始まった。毎年秋に外交ルートで交換後、必要な改革の進み具合を整理し、
翌年6月ごろの日米首脳会談で結果をまとめる。
日本も米国に要望書を渡しており、米国の一方的な要求ではないが、日本の改革は郵政民営化など、
米要望書に盛り込まれた政策が実現した例が少なくない。要望書は「米国の日本改造命令書」なのか。
「ほとんどは目を通したらポイ、ですよ」。霞が関の官僚たちは口をそろえる。実際、ないがしろにされた例はいくつもある。
05年に論議になった「グレーゾーン金利」廃止。法律ごとに上限金利が異なるあいまいさを利用し、
消費者金融などが高金利を取っていた日本独特の仕組みだ。金融庁が各界の意見を募った際、
米ゼネラル・エレクトリック(GE)の消費者金融子会社「GEコンシューマー・ファイナンス」の山川丈人社長(当時)は
「上限金利規制がヤミ金を生み、自己破産を引き起こす」と制度の廃止と金利の自由化を主張。
12月の要望書で、米政府も廃止を求めた。官民挙げたストレートな要求だった。
翌06年12月、日本は法改正でグレーゾーン金利の廃止を決めたが、自由化を求めた米国側の主張と反対に、
多重債務者保護を理由に、低い方の法定金利に上限を下げた。
GEは経営不振に陥った消費者金融子会社を新生銀行(旧日本長期信用銀行)に売却した。
お金の代わりに株を交換する企業買収法「三角合併」の解禁も同様だ。米要望書に載っていたが、
「時価総額の巨額な外資系が日本企業を買収しやすくなる」と経済界が反発し、マスコミも大騒ぎした。
投資促進のメリットもあり、経済産業省内の意見も割れた。法改正で06年5月施行が決まったが、騒ぎに配慮し導入は翌年に延期された。
だが、実現したのは、米金融大手シティグループの日興コーディアルグループ買収のみ。
むしろシティは今、金融危機による経営不振で売却を進める有り様で、三角合併による外資支配は起きていない。