09/01/04 09:53:10 3Ve5bAUz
[Background: fish and fishing in the Barents Sea]
[背景:バレンツ海における魚と漁業]
カラフトシシャモは小さな魚で北極圏海域のいたるところに分布し、バレンツ海生態系の
重要な構成要素である(しかしこの議論はバレンツ海のカラフトシシャモについてのもの
であり、アイスランド海域のカラフトシシャモとは別の個体群であることに留意されたい)。
カラフトシシャモは夏の日照が到来するとバレンツ海北部で大繁殖するプランクトンを餌
としている。後に彼らは南方へと回遊し、フィンマルク(北部ノルウェー)とコラ半島
(北西ロシア)沿岸で春に産卵する。
ロシアとノルウェーはカラフトシシャモを産業的に漁獲しており、共同で漁獲枠合意を
行っている。
カラフトシシャモのバレンツ海における産業的漁獲は比較的新しい。本格的に操業されだした
のは1970年代であり、漁獲高のピークは1977年の300万トン弱である。この当時、この漁は
単一種としては欧州最大の漁業であった。ノルウェーの1977年のカラフトシシャモ水揚げ高
は200万トンを越え(ロシアは漁獲高80万トンと報告している)、これは単一種世界最大の
漁獲高であった。
この漁獲圧にあってカラフトシシャモ個体群は崩壊し、オリジナル量の約20分の1となり、
1975年の最大推定量900万トン近くから、1987年の約10万トンへと減少した。
その結果、シシャモ漁は休漁となった。
1987年の最初の休漁から2006年までの20年間で、カラフトシシャモ漁が解禁されたのは
8年間であり休漁期間は12年間だった(すべて、情報はOctober 2006 ICES advice on capelinによる)。
これまでの20年間のうちで、休漁期間は操業期間の150%にのぼったのである。
解禁された二つの期間(3年間と5年間)それぞれの期間水揚げ高は1977年一年分の
水揚げに及ばない。2004年には再び禁漁となり、それ以来再開されていない。
264:名無しさん@3周年
09/01/04 09:54:54 3Ve5bAUz
16頁
なぜ大崩壊が起ったのだろうか。2004年に発表された論文 (Hjermann et al. 2004)が
いくらかの回答を与えている(これは最初の二つの大崩壊しか扱っていない)。
生態系と漁業の両者が役割をはたしている。
カラフトシシャモは寿命の短い魚であり、最長5歳で一度だけ産卵をすると死ぬ。
タイセイヨウタラは油ののったカラフトシシャモの成魚を食べる。若いニシンはカラフト
シシャモの稚魚を食べる。バレンツ海のニシン個体群は1960年代後期と1970年代初期に
ほとんど獲り尽くされたが、1980年代後期から回復をはじめた(Hjermann et al. 2004)。
バレンツ海のタイセイヨウタラは減耗しているにもかかわらず、生き残っている最後の
大タラ個体群であり、産卵個体群生物量は60万トンと推定されている(このpdf、Table 3.4.1.3 参照)。
カラフトシシャモの過剰漁獲が崩壊の発端をつくった。問題はタイセイヨウタラが、その
産卵場へ向かう回遊のために、油脂の多い成長したカラフトシシャモを食べてエネルギー
を備蓄する必要があるということである。カラフトシシャモの数が相対的に少なくなっても、
タイセイヨウタラはわざわざ彼らを捜し出すのである。このことがカラフトシシャモ個体群
の回復を遅らせた。
265:N ◆5UMm.mhSro
09/01/04 09:55:47 3Ve5bAUz
2回目の崩壊(1990年代初期)を駆動したのはニシン個体群の回復だった。これはカラフト
シシャモの稚魚を食べるニシンと、年長のカラフトシシャモとニシンの食物をめぐる競合という
複合になった。さらにふたたびタラのカラフトシシャモ捕食が回復を遅らせた。
「クジラが魚を食う」議論との関係で重要なのは、ヒルマン他(2004)論文は、カラフトシシャモ
の大崩壊を魚類個体群と漁業だけでモデル化していることであり、海洋哺乳類のカラフトシシャモ
捕食の影響は、もしあったとしてもトリビアルなものだということを示唆している点である
(漁業と他の生態系構成要因すなわち魚、との相対的関係においてということだが)。
データを満足に説明するモデルを構築するには、海洋哺乳類の捕食を取り入れる必要はなかった
のである。
266:名無しさん@3周年
09/01/04 10:15:10 i9U0NR6y
>>265
最後の一行だけで十分ですよね。
267:名無しだけど@外国人参政権反対!
09/01/04 10:24:48 H2Oif/3x
鯨の先祖は駱駝と一緒w
オーストラリアの連中は、駱駝は食うくせに、鯨は獲るのも駄目だとw
さすがは、白豪主義で人種差別を続けた国だけあるねw
今度は、鯨で人種差別のストレスを晴らしたいんだろw
268:名無しさん@3周年
09/01/04 15:03:11 i9U0NR6y
>>267
記事読めよ。馬鹿じゃね?
269:名無しさん@3周年
09/01/04 16:07:10 U8tDXQ7A
>>241
勝川さんがその主張を、小松氏にさそわれ一緒にオーストラリアの漁業事情を視察をして
参考にしてるとこが、何とも不思議なめぐり合わせというか皮肉というか。
270:名無しさん@3周年
09/01/04 16:20:40 5NppVsrU
+-kaizu.02117 94/04/09 00:54 [ 島の娘 ]__________ 水口憲哉講演録
URLリンク(fenv.jp)
Q:プレステージのときに、突然ミンク鯨の異常発生という話が出て、こちら
は度胆を抜かれてしまったんですが、間引論というのはどうなんでしょう。
A:間引論というのは、捕る側がいつもやる話です。今言った、年令とか成熟
とかを考えて捕るというのはひとつの間引の考え方で、これは、実際には、養
鶏、それから、牧場、豚牛でもやっているわけでしょ。昔だと廃鶏といって、
卵を産まなくなっちゃった鶏をつぶしてたわけでしょ。考え方そのものは特別
じゃないんです。利用しようと思ったら出てくるわけです。
その前に異常発生というのが曲者で、ミンクでもニタリでも、特にミンクにつ
いては諸説様々で、100万のレベルだといったり、何10万だといったりして、
それで、だいたいこのぐらいいるんじゃないかというのが、IWCの中で了解事
項になってきているというだけで、そんな細かい話で増えるメカニズムなんか
わかってないんです。だから、そんなのはもう、都合のいいいい方ですよ。
だから、原さんが、大隅氏に言わせてるでしょ。資源論争の中で。最後彼が何
といったかというと、「私も役人ですからね」と、これに尽きるんですよ。だ
から、うちの大学で、田中昌一さんというこの人はまともなまじめな人なんで
すけれども。その人でも、日本の一番のブレーンになっているんですよね。国
際捕鯨委員会の。その人と、87年に学内で研究会やったときに徹底的に質問し
たら、最後には彼も同じことをいうんです。「最後は政治ですからね」と。
だから、わからない人間に対しては科学論で来るんです。科学技術論。だけ
ど、政治の問題であり、経済の問題だといわれれば、だれでもわかるんです。
みんな金使って生活しているわけですから。そういう見方でくくると向こうは
困るし怒るんです。原発もそうです。ですから皆さんも、日常考えていること
や常識から考えてけば、向こうはすぐ参りますよ。そういうケンカは非常に難
しいんですけれども。
271:名無しさん@3周年
09/01/04 19:15:48 5NppVsrU
Q:過去の捕鯨は確かに金儲だったでしょうが、いまの調査捕鯨は金にならな
いから、批判する対象にならないのではないですか。また、少なくとも10万や
20万はいるはずのミンクを、たかだか300頭捕ったって、影響ないんじゃない
かと思うし、実際捕ってみなければわからないこともあるわけですから、そう
すると、調査捕鯨反対、という立場には立ち切れないのですが。
A:僕は調査捕鯨なんかやらなくてもいいと思っています。ただ、本当に調査
捕鯨だったらね、ウォッチングでいいんですよ。殺さなくてもいいんです。た
だ、これは本当に金儲にならない。何の見返りもなしに船走らせるんですか
ら。いっぱいの人乗せて。もともとの資源量推定に一番役だっているのは目視
ですからね。本当に鯨のことを思えば、衛星使えばあっさりわかるんです。戦
車が個々に識別できるし、鯨はかならず浮いてくるんですから、それを計算す
るプログラム考えるのは簡単ですから、船出さなくてもわかるんです。画像を
買うお金さえあればね。
272:名無しさん@3周年
09/01/04 19:21:16 5NppVsrU
Qさっきのミンクの異常発
生についてはどうなんでしょう。
Aだいたい、そういう議論にはインチキが多
いんですよね。何が増えて餌の取り合いだとかっていうのはね。基本的に生態
学の考え方で、餌の取り合いなんていうのはないんだという考え方もあるんで
すよ。これはもう、ダーウィンの進化論とも絡んでくるんですけれども。餌の
取り合いがないんですから、片方が増えたから片方が減るということは起こら
ない。たいてい人間の側の思い込みがあるわけです。それは先程のキリスト教
の考え方ともくっついてくるんですが。
ヒゲ鯨の餌、オキアミを例にとりましょう。水産業界は、鯨が減ったから、オ
キアミ捕ってもいい、っていう考え方だったんですよ。いまになって、餌が足
りないような話をするのはおかしいし、逆にオキアミを捕るんだったら、それ
を人間が食うよりは、オキアミを鯨資源に変えて捕ったほうが有効だ、という
考え方もあるんです。そういういろんな考え方があるんだけれども、オキアミ
の量すらちゃんとわかってないんです。レベルとしてどれだけいるか。餌のほ
うもわかってないし、食う側もわかってないし、まして、歯鯨の仲間の餌にな
っているイカなどは全くわからないわけですから、漁業の資源の対象になって
いないからわからないのを、わからない人に勝手にいってるだけです。
273:名無しさん@3周年
09/01/04 19:27:35 5NppVsrU
85年の記事で次のようなのがあります。
『鯨の恩返し』なんかは、鯨にも自動車にも強い日本。ですよね。
『捕鯨撤退に摩擦の影、犠牲に補償の声も』
すぐに補償というのが出てきますね。自分たちの責任じゃない、という。調査
捕鯨を強行するのもそうですね。自分たちが悪いんじゃないんだと。われわれ
はまっとうなことをいって、経済的な、科学的なことを知りたくて調査するに
もかかわらず、これもやめさせられるという、いかに理不尽かという世論が作
られているでしょ。そうすると補償は出やすいわけですよ。
274:名無しさん@3周年
09/01/04 20:12:23 5NppVsrU
+-kaizu.02117 94/04/09 00:54 [ 島の娘 ]__________ 水口憲哉講演録
URLリンク(fenv.jp)
鯨のことについてはいろいろ発言してきいます。この5月の集会のときに、400字で意
見をといわれましたが、400字でなんか書けない、ということで、電話で30分ぐらい話し
たら、じゃ、一度みんなで話す機会を作ろう、ということで伺ったわけです。で、いま
まで発言したことなどを資料としてお渡しします。
私は1972年から水産大学に勤めておりまして、増殖学科という、いろんな水産物の殖
やし方、殖やしてどう捕るかということをやっています。講座の名前が「水産資源」で
す。そういうところにいて、いろんな殖える魚を調べてきました。そういう中で、1974
年に、創刊間もない雑誌の『アニマ』の、主張という欄で鯨のことについて書いたの
が、多分、初めての発言だったと思います。「いま、もう鯨は捕り方が間違っていたか
ら、非常に危険な状態にあるから、捕獲10年禁止というのはやむを得ない」という内容
でした。
275:名無しさん@3周年
09/01/04 20:15:20 5NppVsrU
そのときに、「水産庁とか業界は、乱獲ではないし、科学的に獲っているのだから、
と言っているが、実際に捕鯨船に乗っている人たちから実状を聞くと、捕りすぎだから
やめたほうがいいということを言っている。そして、業界として捕鯨をやめていった場
合にはいままでそれで生活していたひとたちのことをも考えて水産庁と水産会社は転換
をしていくべきだ」、ということをいったわけです。
水産の中でそういうことを言う人間はほとんどいないんですね。水産の人間は今も昔
も変わらず、大政翼賛主義で、みんな一丸となって、捕鯨はいいことだから、捕りすぎ
ではないし、捕っていい、というのが大部分ですから、水産の側でそういうことをいう
のは少ない人数です。この年と、その3・4年後にテレビで鯨のことについて発言してい
ます。1974年は、『アニマ』を読んだ12チャンネルのディレクターの依頼で、働く人の
場から、という切り口が必要だからということで、そういう点から、鯨の問題について
話しました。NHKの『明るい漁村』という番組で、鯨問題を取り上げて、いまだったらあ
あいう作り方にはならないと思いますが、その当時は、一応、捕鯨交渉の団長の、水産
庁の、米沢という代表と、それから小原秀雄さんとが対談する前に、いろいろなコメン
トが流れるところで私もしゃべっているんです。そのときには、どこを探しても、鯨は
とりすぎだからやめたほうがいい、という人は水産の側ではいなかったのでNHKとしても
私なんかには話させたくなかったのでしょうが、「鯨を捕る側は問題のすり替えをして
いる」点について述べました。
276:名無しさん@3周年
09/01/04 20:18:07 5NppVsrU
水産側は大型のシロナガスとかマッコウについては完全に捕りすぎであるにもかかわ
らず、科学的に調査して捕りすぎではないということを言っています。当時はいま問題
になっているミンクやニタリは捕ってなかったんですね。これらは小さいから、経済的
に合わないということで、同じ油をつかって南氷洋まで行ったら、2~30倍なんですね、
重量にして。というのは長さで3倍ということは重量にすると3の3倍ですから三九-二十
七でま、だいたい、2~30倍なんです。そうすると、同じ手間かけて一発ドンと撃ったら
ば、2~30倍のものを捕ったほうが得だということは、資本の論理で、そういう小さいの
はほとんど捕ってなかったわけです。ですから、いっぱいいたのは事実ですが資源の状
態もわかってませんでした。
その当時1973年に、鯨のほうの研究では多分一番利害抜きに水産庁の役人として、も
っともよくやった人として、いまでも彼のその資料をつかっていると思いますが、土井
さんという人が、魚類の資源診断ということで、中央公論の『自然』という雑誌に書い
てて、その中ではっきりと、「今やっている鯨の10年間取り止めは当然だ。ただし処女
資源であるミンクやニタリはまだ捕れるだけのレベルはいるんだ」ということを書いて
います。その当時、もう一人、いま遠洋水産研究所に行っている、その前、鯨類研究所
や東大の海洋研究所にいた粕谷さんなんかも、ストックホルムの環境会議を受けて、
『公害研究』なんかにも書いています。
277:名無しさん@3周年
09/01/04 20:21:23 5NppVsrU
当時は、ミンクやニタリのことや、太地や鮎川や和田浦での沿岸の小型捕鯨について
は何も水産庁や業界は言わなかったわけです。ただ、大資本がやっている遠洋の大型の
鯨について守ろうと、それは正しいんだということだけだったんですね。だから私は、
ひとつはそういう問題のすり替えでですね、いままで乱獲だったにもかかわらず、その
ことを反省しないで、次にミンクやニタリを捕るときに、それらについては、資源はい
っぱいあるし、乱獲もしてないという言い方をして、鯨の種類をすり替えて議論をはじ
めたんですね。この点は、おかしい。
もうひとつは、その当時、水産業界の中に心積もりとしては、いまから15年前にすで
に捕鯨業から撤退を決めてましたから、鯨研の人全部を移して、鯨研というのは元々企
業が自分たちのために作った研究所ですから、企業の論理を優先させた研究所ですか
ら、それをいまさら鯨研がどうのと言ってもしょうがないんですが、もうからなくなっ
たらそういうことに金をかけるのは馬鹿らしいから、生首切るわけにいかないから東大
とか水産庁とかそういうところへみんなやったわけです。で、そういう中で、実は補償
という問題が出てきた。国際的な(ストックホルムの環境会議を含めて)世論で日本の
水産業界は何も悪いことがないにもかかわらず、捕鯨をやめざるをえなくなるのだか
ら、それは業界について補償すべきだという論理です。日経あたりがそれを書いてまし
た。そうなりますと、米沢という水産庁の次長はやめて水産庁を定年になりまして、日
本水産に勤める。天下りですね。のちに副社長になります。そうしますと、彼は国際交
渉をして結局は鯨はだめだという話になって、世論として漁業補償ということになれば
手土産つきの天下りということになりますよね。そういうことをやっている。
もっともこのくだりはNHKがカットしまして、そのコメントのあとに、小原さんと米沢
さんの対談が続いたわけですが、彼がカンカンになりまして、僕はたたかれっぱなしに
なりました。
278:名無しさん@3周年
09/01/04 20:25:22 5NppVsrU
世論的には、その後プレイボーイなんかが取り上げて、つまり庶民感情にあいさえす
れば、マスコミはやるんですけれども、鯨の問題を取り上げて、私のコメントも取り上
げて、結局は、鯨の問題はわれわれが鯨鯨で騒いでいると税金をそういうことにつかっ
て、馬鹿を見るのは国民だという記事にしたんですね。鯨を守れ守れということをいっ
ていて結局はしょうがないという形でみんなが同情して水産会社に漁業補償が行くとい
うこんな馬鹿な話はないんです。
それを読んだうちの学生から、大学祭で話すよう頼まれて、今度は、それを、水産業
界でキャンペーン雑誌で、イカとかマグロの大手中小の企業を相手にして売れている
『水産世界』という雑誌の記者が聞きに来てまして、それ以後つきあうようになって大
分議論して、いろいろお互い、情報を交換しながら話をしています。
NHKに出たらその後すぐ、日本捕鯨協会の蓮井専務が、どっさりパンフレットを送って
きて、あわててオルグしに来たんですけれど。ま、こっちが普段思ってることを聞くと
否定できないんですよね。事実として。一般的に世論操作でされている部分と、業界で
の本音とか実情というのは、そういうことがあるんです。
279:N ◆5UMm.mhSro
09/01/05 01:41:15 sfWLqpRN
>>270-278
わーお、もう今から15年前に捕鯨問題の裏事情は完璧に明らかにされていたのですね。
世論がそれを無視して、官庁、鯨研、広告代理店発表の居心地のよいストーリーのほうを選んだと。
それでナショナリズムの対抗ムードや被害者意識満開のスネ夫君モードに浸っていたと、
そういうことかな。
>>265まででは、ノルウェーのオーソドックスな水産学者たちが、カラフトシシャモ、ニシン、大西洋タラの
個体数変動を説明するのに、クジラやアザラシの食害を全然計算に入れなくても十分有効なモデルが
できた、というところまでだったけれど、いよいよ次からクジラ食害<思い入れ>理論の人たちの
試みと破綻の紹介に入ります。
破綻したはずなのに、ミンククジラが一頭増えると5トンのタラとニシンが漁獲減になる、という科学的には
根拠薄弱な明快セリフが、いまだに世論の頭脳を駆け巡っているというところまで似てるね。
日本ほどドロドロじゃないみたいだけど。
どっちにしても、財政と非公開情報握ってる官庁<科学者>には、一般国民は勝てないのかな。さみしいね。
_____________________________________
>>264で (このpdf、Table 3.4.1.3 参照)、となってるのは外部リンクですが
(URLリンク(www.ices.dk))今見たら切れてました。
バレンツ海の大西洋タラの推定ですから、勝川さんのサイトでも探せば最新情報があるでしょう。
280:名無しさん@3周年
09/01/05 01:44:51 sfWLqpRN
URLリンク(www.wdcs-de.org)
Iceland, whaling and ecosystem-based fishery management. 『アイスランド、捕鯨と生態系ベースの水産管理』
Peter Corkeron Ph.D.
>>265からつづく。
[Consumption Estimates][消費量推定]
(17頁ー>18頁)
この論文と、同じ場所、同じ期間、同じ商用魚について、他のノルウェーの科学者たちが試みた
海洋哺乳類の果たす役割に関する20年近くにわたる研究を対照してみよう。
研究プログラムが作り上げられたのは最初のカラフトシシャモ崩壊から間もなくである。
理論的には、海洋哺乳類の捕食が魚類個体群サイズにどのように影響を与えるのかを探る
というものだった。野外調査は2番目と3番目のカラフトシシャモ個体群崩壊を貫くもの
となった。この作業にはタテゴトアザラシ( Phoca groenlandica)、ズキンアザラシ
(Cystophora cristata)、北半球ミンククジラの胃内容検査、全3種の致死調査が含まれる。
これらの動物たちが何をどれだけ食べているかという概観が、この作業からの一連の学術
論文として公表されている(e.g. Folkow et al. 2000, Nilssen et al. 2000)。さらに関心のある
魚種に対する海洋哺乳類の捕食の影響がモデル化された (e.g. Bogstad et al. 2000,
Tjelmeland and Lindstr?m 2005)。
281:N ◆5UMm.mhSro
09/01/05 01:45:22 sfWLqpRN
ミンククジラに関するプログラムのデザインは『生態系に対するクジラの役割を解明する』
日本の第8条捕鯨の視点のテンプレートとして鯨類研究所によっても利用されている(例えばMurase
et al. 2007 等参照)。
食餌研究と餌消費推定の違いを区別することは重要である。食餌研究は動物が何を食べているか
ということをつきとめる非操作的研究であり、餌消費推定は一定期間(通常1年間)で、ある
海洋哺乳類個体群が消費する餌量をつきとめるためのシンプルなモデルである。
クジラが何を食べているか、毎日どれだけ食べているか、関心の対象となる海域で何日間食べるのか、
関心のあるクジラ個体群には何頭いるのか、簡単に言えばこれだけわかれば利害関心のある海域で
クジラがどれだけ食べているかということを推定できる。
違う餌種の比率が異なっている状態に遭遇すると、クジラはどう対応するのかということを
知るのも有益である。海洋哺乳類が消費する量の推定のためにデータを集めるというのは、
捕鯨国の科学者たちにとってこの2、30年ほど優先順位の高いテーマだった(上記参照文献
を除く。たとえばMurase et al. 2007)
282:N ◆5UMm.mhSro
09/01/05 01:46:48 sfWLqpRN
これらすべての変数の推定値は、最終的な消費推定を導き出すために複合され演算される。
この演算には二つの問題がある。インプットする変数はそれぞれ不確実性をともなっている。
この不確実性というのには二種類の姿がある。プロセスの不確実性と測定の不確実性である
(Hilborn and Mangel 1997)。
プロセスの不確実性というのはシステムに内在する変動性である。クジラは毎年正確に
同じ場所で同じものを食べるというわけではない。環境の変化に応じて変動が出るのである。
測定の不確実性というのは、われわれが変数の値を入手する能力に内在する変動性である。
科学は手品ではない。サンプリング理論はわれわれが推定する変数の値、たとえば生息数
はすべてなにがしかの不確実性を含んでいると教えている。
変数は演算操作されるので、これらの誤差は複合する。最終的に、(幅を伴わない)点推定は
合理的に見えても、それにともなう不確実性を考えに入れれば無意味だという場合が往々にしてある。
(20頁)
たとえば東スコシア大陸棚(カナダ東岸)のタイセイヨウタラが回復しないことについての
ハイイロアザラシの捕食影響の調査研究がある。この最近のモデルは2003年にアザラシが
1670万のタイセイヨウタラを食べたという点推定値を出した。
しかしこの推定の不確実性は95%信頼区間(不確実性をあらわす標準的な方法)でプラス
マイナス5540万のタイセイヨウタラというものだった。
この論文で注意を引くのは、この海域ではタイセイヨウタラがかつての歴史的生息数に比べて
ごくわずかな数しか存在しない一方、ハイイロアザラシはかつてない最高数に達している
ということである。にもかかわらず、この論文の著者たちは「ハイイロアザラシ(Halichoerus grypus)
が東スコシア棚タイセイヨウタラ(Gadus morhua) 個体群の自然死亡主要因であるという証拠は
ほとんどない」と結論づけている (Trzcinski et al. 2006, p 2286)。
283:名無しさん@3周年
09/01/05 01:48:34 sfWLqpRN
これらの推定でもう一つの問題は、彼らがシステムの理解という時に用いる傲慢とも言える
思考法である。たとえば、豪クイーンズランド州、モートン湾でミナミハンドウイルカの
地方的個体群が消費する餌料を推定するためのデータはすべてそろっている。
しかしこの海域には別々の社会性をもった二つの同種イルカが存在する。エビのトロール漁に随伴し
餌を取るタイプ(したがって、「通常の」ミナミハンドウイルカが自由に泳ぐ魚を食べるほどには
魚を食べない)と、そういうことはしないタイプである(Chilvers and Corkeron 2001)。
この行動学的な違いを計算に入れなければ、消費量推定は無意味になる。
最後に、消費量推定をやろうとした人々の中でしばしば見られる海洋生態系に関する見方の問題、
コンセプチュアルな問題というのを指摘しておく。
これは彼ら自身の研究を語る時の彼らの言葉遣いにもっとも明瞭にあらわれる。
学術雑誌の中から最近の例を引用しておくと、「われわれは_ミンククジラの摂食がバレンツ海の
生態系に与える影響_についての将来の調査に関して、二つの重要な方向を示唆する。」(_強調_は引用者)
(Smout and Lindstr?m 2007,p 289)
この言い方が含んでいるのは、ミンククジラがその生態系とは何らかの意味で切り離されている
と意識されていることである(彼らがシステムにたいして「インパクト」を持っているという言い方)。
さらに含意されているのは、ミンククジラが生態系に対して果たしている役割というのが、
ミンクが商業的に価値のある魚種を食べているというところだけに絞られているということである。
このアプローチが無視しているのは、(一例だけを挙げておくと)食物段階の将棋倒しという現象である。
これはすでに海洋システムに関してよく示されているもので (たとえば ?sterblom et al. 2006,
Myers et al. 2007)、上位の捕食者を過剰に漁獲すると、予期せざる大規模な生態系(エコシステム)の
変化が起るという問題である。
284:N ◆5UMm.mhSro
09/01/05 01:57:01 sfWLqpRN
“Five tons of cod and herring”
『5トンのタラとニシン』
海洋哺乳類の消費が経済的に重要な魚に与える影響を評価するという別のアプローチは、モデル化
作業で、その目的は海洋哺乳類捕獲戦略が水産業に与える効果を査定すると述べられている(Hagen
and Schweder 2005)。(注意すべきはこの目的が前記Hjermann他の作業とは微妙に違うという
ことである。Hjermann他はバレンツ海のカラフトシシャモ個体群崩壊の原因を探ろうとしたのだった。)
この一組のシミュレイションは当初、バレンツ海で北半球ミンククジラが捕獲されたら、ニシン、
タラ、カラフトシシャモの漁にとって何が起るかというモデル化だった(Schweder et al. 1998, 2000)。
このシミュレイションはタテゴトアザラシを含むものに拡張された(Hagen and Schweder 2005)。
この最初のシミュレイションは簡素でエレガントなせりふとなり、海洋哺乳類間引きの論議で
くりかえし用いられている。ヴィキペディア’whaling’の項目でも見ることが出来る。(2007年9月現在、
*訳注;今でもありますURLリンク(en.wikipedia.org))
|『バレンツ海ではミンククジラの個体群で、一頭のクジラが増えると、その魚類消費のせいで
|5トンのタラおよびニシンの漁獲に対するネットの経済損失が発生すると推定されている』
285:N ◆5UMm.mhSro
09/01/05 01:58:49 sfWLqpRN
この引用はこのことに関するモデル演習の二つの論文のうちのひとつを引用元としてあげていて、
これは北大西洋海洋哺乳類委員会(NAMMCO)で公刊されたものである (Schweder et al. 2000)。
しかしこのモデル化アプローチを学術論文として公刊した二つの論文を注意深く読んでみると、
著者たちは ― 彼らの信用のためにも言い添えておくが ― このモデルが現実的なものでは
ないということが書かれているのである。
たとえば「この研究をめぐっては、確実な結論を導き出すにはまだあまりにも多くの不確実性がある」
と記されている。(Schweder et al. 1998:92)。
モデルはバレンツ海生態系を理解する道筋を探るための知的な演習なのである。
にもかかわらず2004年にノルウェー海洋哺乳類政策を改訂した白書では、この5トンに言及し、
調査がまだ前段階的なものであるということを小さく付記しているだけである(少なくとも、
その後の7年間にわたる作業にもかかわらず)。
この『シナリオC』と呼ばれているモデル・アプローチに、タテゴトアザラシの食餌と消費量の
データを付加すると、モデルは非現実的なアウトプットを出す(NAMMCO科学委員会第14回会議
報告5頁、URLリンク(www.nammco.no) 5/18頁参照)。
このモデル化で、基本的データか仮定か、その両方に欠陥があったということをこれは示唆している。
『シナリオC』が、海洋哺乳類捕獲と漁業の関係についてアドバイスを与える基盤として失敗した
ことは、NAMMCO科学委員会のコメントではっきりしている:「科学委員会はふたたび、2海域
(バレンツ海とアイスランド)、2種(ミンククジラとタテゴトアザラシ)での漁業と海洋哺乳類
の相互干渉の経済的側面について、要請されたアドバイスを提出することが出来ないという状況を
強いられた。このアドバイスは、評価のために実行可能と認定されていたものであるが。科学委員会
が設置した作業部会はこれとこのことに関連する要請を扱うために5回の会議を開いた。」
NAMMCO科学委員会第14回会議報告5頁、URLリンク(www.nammco.no) 5/18頁参照)
286:N ◆5UMm.mhSro
09/01/05 01:59:44 sfWLqpRN
どういうわけか、このモデルのこちらの側は、「5トンのタラやニシン」が見いだしたような、
世論の意識への道筋を見いだせなかった。
バレンツ海の重要商用魚生息数で何が起ったのかという大きな図柄については説明がなされている。
この説明は学術論文で公開されている。
利用可能なデータから兆候を探知した調査アプローチは、バレンツ海で起こったことを理解する
というところから出発した。
この研究をおこなうために、しかし研究論文著者たちは「シナリオ実験」を推し進める人たち
とはかなり異なったアプローチをとった。
「シナリオ実験」のほうは、海洋哺乳類の捕食が十分に重要であり、バレンツ海での魚類ー漁業
エコシステム(生態系)を理解するためのモデル化に組み込む価値があるという仮説から出発した。
シナリオCが有意な結果を出すことに失敗したにもかかわらず、NAMMCOの結論はどのような
ものだったのだろうか。
直接引用しておく:「科学委員会はかつてと同様、この分野での展開は、明確な追加的リソースが
もたらされないかぎり、先へ進めないと強調した。委員会は特に「シナリオC」がノルウェーで
再開されること、アイスランドがその領域でGADGET モデルに海洋哺乳類を含める努力を続ける
よう推奨した」(NAMMCO科学委員会第14回会議報告5頁、URLリンク(www.nammco.no) 5/18頁参照)
“GADGET” プログラムを遂行しているアイスランドの研究者たちは、ノルウェーのシナリオC研究者
たちと似たような基本仮説を設けている。海洋哺乳類の捕食が関心のある商用魚種の生息数変動に
主要な規制的役割をはたしているというものである。同じ思考が場所を占めている。
287:N ◆5UMm.mhSro
09/01/05 02:04:44 sfWLqpRN
ヒルマン(Hjermann)とその共著者たちの科学的アプローチは、利用できるデータの評価からはじまり、
バレンツ海の状況に関して機能するモデルを作成した。
シュヴェーダー(Schweder)とその共著者たちは海洋哺乳類の捕食が重要でないはずがないという
予見から出発し、機能するモデルをつくれなかった。しかしこの成功しなかったアプローチの発展が
いまだに呼びかけられている。
この作業の更なる進捗を呼びかける科学者たちの思考習慣について、このことはわれわれに
何を物語っているのだろうか。
バレンツ海で、過剰漁獲による生態系効果が依然として感知されているということが、
おそらくこのシステムへの人間の影響を管理する立場にある人々にとっては不快なものなのであり、
しかしそれが現状をもっとも良く説明する要因なのだということだ。
バレンツ海でのタラの漁獲枠がICESの勧告を上回っていることを見れば、乱獲を再発させない
という政策と手続きがまだ実現していないということがはっきりする。
そのかわりに管理者と政策立案者たちは不適切な道を選んで、本当の選択よりも政治的に
居心地の良い調査研究を支持している。この調査研究というものが、他のノルウェーの科学者
たちの研究よりも、当該システムを説明する上で情報量がはるかに劣っているということが
明らかになってもである。
ここまではノルウェーの話である。アイスランドの海洋研究界にも、同じような構造問題があるのだろうか?
288:名無しさん@3周年
09/01/05 07:10:05 911jCRvv
梅崎義人さんはおっしゃってます、「一次発見個体だけ捕る」と。
↓
今の調査捕鯨は、科学
者が予め決めたルートを一定の速度で目視調査をしな
ければいけません。ルートは直進ではなく蛇行するので
す。前に3つのキャッチャーボートがいて、いまはキャ
ッチャーボートと言わないんです、「目視標本採集船」
と言います。目視標本採集船が三隻、その後方に母船が
いる。その後に餌をとる専門のトロール船がいる、この
隊列を崩してはいけないのです。調査コースをきちんと
守って、捕獲対象のクジラを見つけた時だけコースを離
れる。見つけた船が獲りに行くのですが、その時、子ク
ジラであっても痩せこけたクジラであっても捕獲しな
きゃいけない、第一発見したクジラを獲らなきゃいけな
い。獲ったらそれを母船に持っていって、またすぐその
ポジションに戻らなきゃいけないんです。これは陸上で
実施されている世論調査の無作為抽出法なんです。大き
いのを選んで獲っちゃいけないんです。それで一回発見
して追尾をしたら横に大きなのが現れてもそれを獲れ
ないのです。以前のように乗り替えできない。
URLリンク(sohmeikanto.upper.jp)
289:名無しさん@3周年
09/01/05 07:15:58 911jCRvv
でも実際は「二次発見個体まで捕っている」ってこと。
だから『実質、商業捕鯨じゃねーかよ』と言われる。
(2003年)・・100頭捕獲
ミンククジラ 一次発見 74群 75頭、二次発見 48群 50頭
URLリンク(icrwhale.org)
(2004年)・・100頭捕獲
ミンククジラ 一次発見 71群71頭、二次発見 48群48頭
URLリンク(icrwhale.org)
(2005年)・・100頭捕獲
ミンククジラ 一次発見 73群73頭 二次発見 36群37頭
URLリンク(icrwhale.org)
(2006年)・・100頭捕獲
ミンククジラ 一次発見 81群83頭、二次発見 52群53頭
URLリンク(icrwhale.org)
(2007年)・・100頭捕獲
ミンククジラ 一次発見 63群64頭、二次発見 79群80頭
URLリンク(icrwhale.org)
290:名無しさん@3周年
09/01/05 07:20:01 911jCRvv
どこが“ランダムサンプリング”(科学)なんだい?
291:名無しさん@3周年
09/01/05 07:27:49 911jCRvv
ところが、チクチク言われるのがイヤだからなのか
2008年は「一次及び二次発見の合計」なんて書き方になっておりますですはい。w
↓
(2008年)・・59頭捕獲
ミンククジラ 64群66頭(一次及び二次発見の合計)
URLリンク(icrwhale.org)
292:N ◆5UMm.mhSro
09/01/06 00:21:13 zo/+BLU8
>>288
梅崎義人のような人がいまだに通用してしまうというのは、日本のメディア状況が
かなり酷いことになっているという指標ですね。
ノルウェーの研究所でしごとをしているオーストラリア人、ピーター・コークロンは、
ノルウェーやアイスランドにも情報歪曲はあると指摘してるけれど、梅崎陰謀論ほど
念の入った策略にまではいってないようですね。
使ってる税金や裏金の規模が違うって?
変なとこで威張っても、日本経済パープリン化現象を食い止めることはできないだろうなあw
293:N ◆5UMm.mhSro
09/01/06 00:24:35 zo/+BLU8
>>287から続く
URLリンク(www.wdcs-de.org)
Iceland, whaling and ecosystem-based fishery management.「アイスランド、捕鯨と生態系ベースの水産管理」
Peter Corkeron Ph.D.(URLリンク(aleakage.blogspot.com))25頁
これはノルウェーの話である。同じような構造問題がアイスランドの海洋調査簿コミュニティーに
存在しているのだろうか( GADGETとシナリオ Cのコンセプト上の類似以上にという意味である)。
第8条捕鯨の問題はとりあえず無視するとして(これは科学の遂行プロセスでの濫用という主張が
おそらく可能なのだが)、最近の海洋研究所上級スタッフの発言や、アイスランド水産省の発言は
似たような問題がここにも残っているということを示している。
[Discussions of whale surveys in Iceland]
[アイスランドでの鯨類調査に関する議論]
アイスランドの捕鯨再開決定についての水産省の声明(2006年10月20日)は以下の叙述がある。
「漁業及び捕鯨の捕獲割当は_科学者たちの勧告に基づいており_この科学者たちは定期的に
ストック(資源/系群)の状態をモニターしている。従って漁労活動が持続的であるということが
保障されている」(_強調_は引用者)。
この表明に含意されていることは次の仮説である。(a)科学者は質的に適切な情報を提供する、
(b)科学者は特定の世界観(この場合「クジラは魚を喰いすぎる」という見方)に沿った結果を
出すようにという政治的な圧力の下にいない、である。
別の言い方をすると、科学者は相対的に自由であり、あからさまな政治的干渉無しに調査が
できるということになる。
最近の目視調査に関する二つの発表で、データがどう政治的に取り扱われるかということが
わかりやすく示されている。
一方にはNAMMCOウェブサイトのニュースがある。7月22日で、アイスランド海域の航空調査をした
メンバーの発言が引用されている。サイトから直接引用すると、「しかしミンククジラの目視数は以前の
年より少なかった。カマイルカの数も少ないようだった。北西部で相当数のザトウクジラを目視したが、
アイスランド東沖合で2001年に見られた高密度分布は確認できなかった。」
294:N ◆5UMm.mhSro
09/01/06 00:26:27 zo/+BLU8
(26頁)
この目視調査メンバーの発言の前には前書きがあって(これはおそらくNAMMCO事務局の誰かによる
ものだが)次のような部分がある:「以下にダニエル・パイクのログを調査結果のレポートとして
掲載する。これはあきらかにうまくいった調査だったが、_相対的生息数に関するすべてのコメントは
暫定的なものであり、_TNASS調査の全領域からのすべてのデータが出そろい、照合されるまでは
解釈を行うことはできないということが強調されねばならない。_」(_強調_引用者)
これは完全に合理的である。調査で集められた生データから、分析の前に過剰なものを出してくるのは
不適切である。
しかし次の日、7月23日にIcelandReview.comは以下のように報道している。
「アイスランド海洋調査研究所は今週、ナガスクジラの計測を終えた。...これはいままでで最も
広範囲な鯨類ストックの計測であり、特にナガスクジラ系群の大きさをつきとめることに重点がおかれた。
_鯨類の専門家G?sli A. V?kingssonによると、この資源(ストック)はナガスクジラが数えられ始めて以来
最大のものであるようだ_。」(_強調_引用者)
このコメントには、誰も暫定的結果から深すぎる解釈はすべきではないという前書きの限定を付けていない。
そのかわりにアイスランド水産相、グドフィンソンのこの結果についての発言が引用されている。
「これは捕鯨国民としての我々の主張を支持している。鯨ストックはとても大きく、サイズは増え続けており、
これは他の海洋生物種にネガティブな影響を及ぼしている。この結果は疑いも無く_捕鯨の生物学的先要条件
が存在している_ということを示している。」(_強調_引用者)
ナガスクジラの計数は伸びた、だからデモンストレイトする。アイスランド海洋調査研究所(MRI)にとっては
「ナガスクジラの記録的な数」なのであり、したがって水産大臣は「疑いも無く」...「捕鯨の生物学的
前提条件」と言えるのである。
しかしミンククジラとカマイルカの数は落ちている。したがってそれに対するコメントは、NAMMCOに
とって「暫定的であり、解釈することはできない」のである。
NAMMCOのアプローチは正しいのであり、MRIのはそうではない。
295:N ◆5UMm.mhSro
09/01/06 00:27:30 zo/+BLU8
(27頁)
MRIのスタッフはミンククジラの計数が落ちたことは発表せず、ナガスクジラの計数が上がったことを
発表するという選択をした。このことが提示するのは、同じ生データのセットが二つの別のやり方で
使われ、一つのケースでは明らかに政治的目的で使われたということである。
[Future options]
[将来の選択肢]
アイスランドの水産業は第一に輸出産業である。「責任ある水産業にかんする声明」が2007年8月7日、
アイスランド水産相と海洋調査研究所、アイスランド水産局、アイスランド漁業組合それぞれの代表者たち
の間で調印された。
この声明は「魚類資源(ストック)の状態と責任ある漁業に関心を持つすべての人々に宛てられたものであり、
_特にアイスランドの水産製品を買い、消費する膨大な関係者たちに_対するものである(_強調_引用者)」
となっている。
声明が挙げているいくつかのアプローチは生態系ベースの水産管理(EBFM)が規範項目としているもの
である。
海洋環境に対する漁具の影響を評価し、悪影響を低減すること;利用しうる最良の科学的アドバイスに基づく
捕獲枠設定;混獲の低下;(規格外漁、外道等の)廃棄量規制の厳格化;効果的な水揚げ高規制と実行、
がこれにあたる。
目を引くのが、それが不在ということによってだが、水揚げ高の改善を期待して海洋哺乳類個体数を
減らすということに言及が無い点だ。
アイスランドの水産政官経エスタブリッシュメントはこの声明と、難しい決定の断行、すなわち最近の
大西洋タラ捕獲枠削減については賞賛に値する。
296:N ◆5UMm.mhSro
09/01/06 00:28:14 zo/+BLU8
(28頁)
鯨の間引きというのは不必要だし生態系アプローチとは正反対のものである。
海洋哺乳類の間引きが漁業生産高を引き上げるという証拠は無い。
入手しうる最善の証拠が示唆しているのは、海洋哺乳類の商用魚に対する捕食量は漁業と比べるなら
トリビアルな水準だということだ。
間引きを呼びかけている人々は、水産の「生態系アプローチ」の内容というのが、生態系を健全な状態に
戻してやるということとりも、海洋生態系のいくつかの生物種を鋳掛け屋のやるように手直ししてやる
ということを含意していると信じているようだ。
「アイスランドの責任ある水産業にかんする声明」が提示しているのは、アイスランド水産業界の
人々が、アイスランド水産製品輸入国の消費者感情の重要性を理解しているということだ。
海洋哺乳類の間引きは表面的には水産業を補助するように見えるが、消費者から好感を持って
受け入れられるかというとこれはありそうもないことだ。
アイスランドはその水産業を持続可能なもの(もっと言えば再建可能なもの)にするということに
着実に歩を進め、環境破壊を最小限に抑えることによって、海洋漁業が国の富と、人間の食糧安全保障
に寄与するという方向でのチャンスを握っている。
アイスランドは生態系アプローチの水産管理への適用が、エコロジカルにも、ソシアルにも有利に
機能しうるということを欧州の他の部分へ示すことができる。
[Acknowledgements]
[謝辞]
Philippa Brakes, Jack Chalfin, Arthur Clarke, Kate O'Connell, Mark Simmonds およびSofie Van Parijs が
このレポート草稿を査読してくれたことに感謝する。
Kate O'Connell にはアイスランド語翻訳に感謝する。
297:N ◆5UMm.mhSro
09/01/06 00:30:14 zo/+BLU8
[References]
[文献]
(略)あと、英文本文中に埋め込まれた各ウェブサイト・リンクがあって、和訳では適切に示してないので、
興味のある方は原文確認してください。ページ数もところどころずれてたり略したりしてます。
____________________
訳注)シュヴェーダー(Schweder)はノルウェーの永年のIWC科学委員
G?sli A. V?kingssonはアイスランドIWC主席科学委員、IWC総会アイスランド政府委員(正式にはコミッショナーアドバイザー)
_________________________
以上
URLリンク(www.wdcs-de.org)
Iceland, whaling and ecosystem-based fishery management.「アイスランド、捕鯨と生態系ベースの水産管理」
Peter Corkeron Ph.D.(URLリンク(aleakage.blogspot.com))
の全訳おわり。
298:名無しさん@3周年
09/01/06 06:27:52 m5jK+pyh
URLリンク(www.stuff.co.nz)(5時間前)
Search for whaler off 落ちた捕鯨者の捜索
The Dominion Post | Tuesday, 06 January 2009ドミニオンポスト,2009年1月6日
A Japanese whaler is missing in the Southern Ocean, presumed drowned.
日本の捕鯨者が南大洋で行方不明となっており、溺れたと推定されている。
The 31-year-old crewman was noticed missing from the Kyoshin Maru No 2 at 7.30am yesterday.
31歳の乗組員が第2共進丸から昨日午前7時30分に見失われたと伝えられている。
The New Zealand Rescue Coordination Centre was alerted by the Japanese Coastguard at midday.
ニュージーランド救助コーディネイション・センターは正午に日本の海上保安庁から警報を受けた。
Search and rescue officer Mike Roberts said a search by the whaling fleet was suspended after it was decided there was no hope.
探査、救助士官マイク・ロバーツによると、捕鯨専断による探査は、望みが無いと決定された後中止された。
"The missing man was only wearing overalls when he went into the water.
The water temperature was about zero degrees celsius and there was a four-metre swell.
The maximum survival time in those conditions is an hour."
「行方不明の人物が水に入った時に着ていたのはオーバーオールだけである。
水温は約0°cであり4メートルの大波があった。この状態で最長生存時間は1時間である。」
299:名無しさん@3周年
09/01/06 06:28:27 m5jK+pyh
Foreign Affairs Minister Murray McCully said New Zealand's search and rescue capability in the area was very limited.
マレー・マカリー外相はニュージーランドのこの海域での捜索、救助キャパシティーは非常に限られていると述べた。
Mr Roberts said an Orion would have taken 10 hours to get to the search area.
ロバーツは、オライオン(航空機)が捜索海域へ達するには10時間かかるだろうと言った。
The incident drew criticism from whaling protest ship Steve Irwin, with captain Paul Watson saying
it would have helped search for the missing man but was not asked.
この事故は捕鯨抗議船スティーブ・アーウィンからの批判を招いた。船長ポール・ワトソンは
行方不明者の捜索を助けたであろうけれど、その要請は無かったと語った。
300:名無しさん@3周年
09/01/06 06:35:43 m5jK+pyh
>>298 第2共進丸=> 第二共新丸
301:名無しさん@3周年
09/01/06 08:56:46 jB6hLZKy
スレリンク(newsplus板:666番)
666 :名無しさん@九周年:2009/01/06(火) 02:12:27 ID:TYXu8JnB0
「人命と海の安全に関わる問題である。」
か。ふーん。
これで日本の調査捕鯨船で死んだ人は、6人。
1997年に出発間もなくに1人消え、
1998年には火災鎮火後に1人首を吊り、
2007年2月には火災で逃げ遅れて1人、
2007年8月には機材に挟まれて1人、
2008年5月には出航間際の船内で1人自殺。
こんどは目視調査船の第二共新丸で1人、か…。
3年連続で死人を出して、「人命と海の安全に関わる問題である。」は恐れ入った。
この船は、一昨年2月に南極海で日新丸が火災起こしたときに逃げ遅れて死んだ人の
遺体を日本まで運んだ船だよ。
302:名無しさん@3周年
09/01/06 10:36:12 2JkU9N5I
International Whaling Commissionの略。 1946年に作られ1948年に発効した国際捕鯨取締条約(International Convention for the Regulation of Whaling - 略称 ICRW)に基づき捕鯨の管理を実施する機関。その名称から国際連合の下部機関と誤解される可能性があるが、
国連とは無関係である。実際、日本は第2次世界大戦後、国連加盟より5年早くIWCに加盟している(条約起草時に、将来国連の機関にしたい意思があった事は条約文の第3条第6項に見てとれるが、実現はしていない)。どんな国でもアメリカ政府に通告すれば、加盟国となる事
ができ、脱退は1月1日までにアメリカ政府にその意思を通告すれば同年の6月末日をもって有効となる。
IWCとしての意思決定は本会議(Plenary)で決められるが、専門的な事項に関しては下部組織としての技術委員会(Technical Committee)、科学委員会(Scientific Committee)、財務運営委員会(Finance and Administration Committee)であらかじめ審議され助言や勧告
を本会議に対して行う。議長の任期は3年。出版物の発行や会議開催の準備など事務一般は事務局(Secretariat)が行う。また、IWCの運営に関し、財務運営委員会の範疇外にある事項に関して助言を与える諮問委員会(Advisory Committee)の設置が1997年に決められた。
反捕鯨団体などのNGOは1970年代終わりころから本会議場で傍聴できたが、報道機関の傍聴が議場で可能になったのはつい最近の1998年の第50回会議からで、それまでマスコミは議事が始まる前に会議場を出て別室で会議の模様をスピーカーで聞なければならなかった。したが
って長い年月、会議を直接傍聴していたNGOの発表は捕鯨に縁のない国のマスコミの記事に大きな影響を与えてきた。
条約には1946年に起草された本文の他に付表(英名 Schedule)と呼ばれる付属の部分がある。捕獲頭数、捕鯨シーズン、鯨の系統群の定義、その他捕鯨に関わる細かい具体的な規定は付表に記述され、頻繁に修正されてきている。商業捕鯨のモラトリアムやサンクチュアリー
なども付表に記載される事項である。この付表を修正するのは、本会議に参加して投票で棄権しなかった国の4分の3の多数決で可能である(加盟国の4分の3ではない)。付表は条約の一部分であり、国際法上の拘束力がある。
303:名無しさん@3周年
09/01/06 10:44:17 2JkU9N5I
一方、加盟国の意思表示である決議は、2分の1の多数決で可決されるが、こちらには法的拘束力がないのは、例えば国会決議(「法案の採択」と混同しないように)が法律でないのと同様である。ただし、モラトリアムやサンクチュアリーの採択など、付表の修正に対して異議の
ある加盟国は異議申し立ての手続きをとる事によって、決定事項の適用の対象外となる。例えば、1982年の商業捕鯨モラトリアムの決定の際、ノルウェーは異議申し立ての手続きをとったため、現在でも合法的に捕鯨をしている。 1994の南氷洋のサンクチュアリーの採択に際して
も、日本は異議申し立ての手続きをとっている(モラトリアム決定の際にも異議申し立てを行ったが後年撤回している)。この異議申し立てのメカニズムは、1946年の条約起草の際、アメリカの強い主張によって加えられた。 付表の修正に際しては条約第5条第2項により「科学的
認定に基づいて」いる事が要請されるが、科学委員会の意見に無関係に単に本会議での多数決をもって採択されるケースが近年多い。 IWCには、意思決定手続きが条約に沿っているかどうかチェックして勧告するメカニズムはないので「条約無視、多数でやれば怖くない」というの
が最近の実態である。現在、世界中の国の数は190余りある(台湾など、国家として認められていない地域は除く)。その中で、現在IWCに加盟している国は以下の83カ国である。もともとIWCにおける新加盟国のリクルートは、「資源量が多い少ないにかかわらず、すべての鯨の商業
捕鯨を禁止する」商業捕鯨モラトリアムの採択のために反捕鯨NGOが1970年代終わりに開始したものである。日本など捕鯨国側は、「鯨資源の保存と適度な利用」という条約本来の目的の実現を目指してきたが、固定化した投票パターンを打ち破るには捕鯨側の主張に同調してくれる
新規加盟国をリクルートせざるを得ないとの判断から対抗措置に打って出た。その結果、非ヨーロッパ圏を中心に加盟国が増えて2006年のIWC総会で「商業捕鯨モラトリアムはもはや必要ない」というセントキッツ・ネービス宣言が採択されるにまで至ったことに反捕鯨国側は危機感
を強め、2007年2月にはイギリス政府がEUやアフカの非加盟国を反捕鯨陣営に新規加盟させる意思を表明している。
304:名無しさん@3周年
09/01/06 10:54:23 2JkU9N5I
昨年の年次会議以降、スロベニア、クロアチア、キプロス、エクアドル、ギリシャなどが新たに加盟したのはその反映と思われる。ヨーロッパとNIS諸国:29カ国 (53カ国中)Austria, Belgium, Croatia, Cyprus, Czeck, Denmark, Finland, France, Germany, Greece,
Hungary, Iceland, Ireland, Italy, Lithuania, Luxembourg, Monaco, Netherlands, Norway, Portugal, Romania, Russia, San Marino, Slovak, Slovenia, Spain, Sweden, Switzerland, U.K. 北米・中米・南米: 20カ国 (36カ国中)Antigua and Barbuda, Argentina,
Belize, Brazil, Chile, Costa Rica, Dominica, Ecuador, Grenada, Guatemala, Mexico, Nicaragua, Panama, Peru, St. Kitts and Nevis, St. Lucia, St. Vincent and the Grenadines, Suriname, Uruguay, U.S.A.
アジア: 7カ国 (21カ国中)
Cambodia, China, India, Japan, Korea, Laos, Mongolia
中東: 2カ国 (15カ国中)Israel, Oman
アフリカ: 17カ国 (53カ国中)
Benin, Cameroon, Côte d'Ivoire, Congo, Eritrea, Gabon, Gambia, Guinea, Guinea-Bissau, Kenya, Mali, Mauritania, Morocco, Senegal, South Africa, Tanzania, Togo
オセアニア: 8カ国 (14カ国中)
Australia, Kiribati, Marshall Islands, Nauru, New Zealand, Palau, Solomon Islands, Tuvalu
こうして見ると、ヨーロッパの国や、ヨーロッパ人が移住して開拓した国が半分以上を占めていて、アジア・アフリカの比率が低い事がわかる。調査捕鯨に対する反対決議案は法的拘束力はなく、IWCの会議で投票に棄権せず参加した国の2分の1で可決されるが、
こういう地理的・文化的バランスを欠く構成での多数決をもって、反捕鯨団体は「反捕鯨は世界の世論」と言う。
305:名無しさん@3周年
09/01/06 10:59:43 2JkU9N5I
IWCは、アメリカ政府に加盟の意思を通知さえすれば、鯨に関する知識や漁業管理の経験や見識の有無にかかわらず、どの国でも加盟できる。これまでのの加盟国の様子を見ても、分担金が未払いで投票権が停止されている国、重要な投票のある日にだけ参加する国、一度も自国
のコミッショナー(「主席代表」と訳される場合もあるが、要は代表団の団長で本会議での投票権を持つ)を任命しなかった国、会議の休憩時間に反捕鯨NGOから手渡されたメモを自国の声明として読み上げる国など、実態は様々である。
90年代に入って日本は発展途上国を中心に複数の国にIWCの加盟を促ししている。 1976年以来IWCの事務局長を務めてきて2000年の会議を最後に引退したレイ・ギャンベル(Ray Gambell)博士に言わせると、「自分の意見を支持してくれる国を加盟させる事はどの国もが使いうる
戦略である」(The Guardian Weekly、18-Nov-1999)という事になるのだが、国連と違ってIWCでは加盟国の分担金が一律なため、経済的に恵まれていない国にとっては海洋生物資源の持続的利用という日本の意見に賛成であっても、自分の利害に直接は無関係なIWCに高額な金を
払って加盟して代表団を送るまでには至らない事が多かった(IWC加盟国の分担金を経済力に応じた額にする国連方式の導入は1999年に提案されたが、その後は経済的に力のない国の分担金はだいぶ減ったようである)。街頭募金のように募金額が自由な場合でも募金に応じないで
通りすぎる経験は誰でもあると思うが、まして、「最低限1万円以上で」などという条件がついていたら募金の主旨には賛成でもおいそれと応じられないのと同じである。日本円で数百万円に相当するIWCの分担金は、経済規模の小さな国にとってはおいそれと出せる額ではない。
そこで、「日本の意見には賛成だけど、捕鯨問題に利害関係のない我国にとっては経済的な負担が高い割にはメリットがないから、せめて何か見返りが無ければ加盟はできない」という場合もでてきて、ODAのような経済援助を見返りにという事にもなるのも無理もない話だと思う
が、それが反捕鯨国などでは「日本が金でIWC票を買う」というような報道が出てくることになる。
306:名無しさん@3周年
09/01/06 11:04:00 2JkU9N5I
仮にそういう事態であったとしても、捕鯨問題に対する彼らの本来の意見はそのまま尊重されているわけであり、後で述べる例のように反捕鯨団体が経済ボイコットをちらつかせて投票を変えるよう脅しをかけるといった、言論の自由の圧殺とは根本的に次元が異なる。
国際外交の世界では、国同士が友好裏に利害の調整を済ませて協力関係を結ぶ事はシビアーな国際社会で少しでも有利に生き残るための当たり前の方策だと思うのだが、日本国内でも、ナイーブな学級会的倫理観をそのまま国際社会に延長して物事を見る人や、外国の政
策には目をつぶって常に日本の政策のみを論じたがる人は妙に抵抗を覚えるらしい。
反捕鯨側の政治圧力の一例だが、1994年に南氷洋のサンクチュアリー案に反対しようとした南太平洋のソロモンは、反捕鯨国から輸出品であるバナナの禁輸の可能性でもって脅された。同様にカリブ海の4ヵ国には、アメリカの反捕鯨団体から多量の抗議文書がFAXで送られ、
観光地のホテルに大量に予約してキャンセル料が発生する直前の日にキャンセルされるといういやがらせに遇っている。ノルウェーはアメリカの国内法に基づく経済制裁で脅された。その結果、これらの国々は南氷洋のサンクチュアリー案採決においては棄権している。
このような、主権国家の自由な意思表明に対する圧力の存在が、IWCでも秘密投票制を導入しようという日本提案の動機となっている。マフィアの暴力が支配する町の住民投票で記名投票するような状況を想像してみてほしい。
IWCの歴史を見ると、自分たちの支持基盤を強固にするために加盟国を増やすというのは、もともと反捕鯨陣営が先に用いた手法であり、1980年前後には多くの国がIWCに加盟している(表参照)。これは商業捕鯨モラトリアムの採決に必要な4分の3の多数を得るためだが、
セントルシアなど現在では日本の立場を支持しているカリブ海の島国の多くも、もともとは反捕鯨側が加盟させたもので、分担金などもグリーンピースなどが出したという事は過去何人かのジャーナリストが指摘してきたし、IWCへのアメリカ政府代表団のコミッショナー
であったマイケル・ティルマン(Michael Tillman)も1998年のラジオ番組で認めているところである。
307:名無しさん@3周年
09/01/06 11:08:30 2JkU9N5I
中には、反捕鯨団体からもらった小切手をそのままIWCへの分担金の支払いに使ったために資金関係が露見した国もあったという。そして、それらの国の国籍を持たないグリーンピースの活動家やその仲間が代表団のコミッショナーや代表団員としてIWCの会議に参加していた。
このような状況の中で1982年、商業捕鯨のモラトリアムは棄権5票を除いた有効票32のうち賛成25という4分の3プラス1で可決されたわけだが、この年の代表団リストを見てもアンティグアのコミッショナーのR. Baron、セントビンセントのコミッショナーのC.M. Davey、セント
ルシアのコミッショナー代理のF. Palacio、セイシェルのコミッショナー代理のL. Watsonなどはそれぞれの国の国籍を持たない反捕鯨活動家であった。 より詳細に言うと、Francisco PalacioはマイアミのTinker Instituteという団体に属するコロンビア国籍の活動家でグリー
ンピースのコンサルタントでもあり、弁護士であるRichard Baronはその友人であった。英国籍のLyall Watsonは「生命潮流」などの著書でも知られる一種の思想家であり、イランの故パーレビ国王の弟が率いるスレッショルド財団(Threshold Foundation)という資金豊かな組
織の事務局長でもあった。また、加盟国政府のコミッショナーにはならなかったものの、グリンピース会長のDavid McTaggartの友人であったバハマ在住のフランス人のJean-Paul Fortom-Gouinの存在も見逃せない。もともとは投資関係のアナリストであったFortom-Gouinは、19
77年にグリーンピース・ハワイが北太平洋でソビエトの捕鯨船に妨害活動を行った際に資金援助を行い、自らもWhale and Dolphin Coalitionという団体を率いて、当時まだオーストラリアで行われていたCheynes Beach Whaling社の捕鯨に同様の妨害活動を行っている。 70年代
終わりにパナマの代表団にもぐり込んでIWCの会議に出ていたが、パナマが脱退した後は1982年からPalacioがいるセントルシア代表団に移っている。 投票権を持たない立場の顧問、専門家、通訳という代表団員ならまだしも、本会議において独立国家の意思表明手段である投票
権を持つコミッショナーやその代理が外国人だったわけである。
308:名無しさん@3周年
09/01/06 11:12:29 2JkU9N5I
たとえば、日本に在住していない外国人が日本の国連大使やWTOへの日本代表団の団長や副団長となって日本の代表として発言や投票をしていたら、たとえ日本政府の承認のもとであっても奇異であり、誰をどう「代表」しているのか考えさせられるが、少なくとも
モラトリアム採択前後のIWCはそういう事が行われる場所だったのである。
日本が行っている調査捕鯨は、英語による報道ではResearch Whalingという言葉よりはScientific Whalingと呼ばれる場合の方が多い。 IWCの用語ではScientific Permit(科学許可)やSpecial Permit(特別許可)と呼ばれる範疇に属する。国際捕鯨取締条約(ICRW)
の第8条第1項により、加盟国政府には自国民に対し科学調査のために鯨を捕獲する許可を与える権利が与えられており、それに基づいた鯨の捕獲調査をいう。調査計画の名称は、南極海で行っているのがJARPA(Japanese whale Research Program under special permit
in the Antarctic)、北西太平洋で行っているのがJARPN(Japanese whale Research Program under special permit in the North Pacific)である。
このように、条約上の正当な権利ではあるが、日本の調査捕鯨の自粛を求めるような決議が毎年IWCで採択されているのは、例えて言えば、憲法で保証された権利を否定するような決議が議会で採択されるようなものである。
★ JARPA (1987/88-2004/05) ★
商業捕鯨の最後の時期、日本が南極海で捕っていたミンククジラについて、IWCの科学委員会は資源量が豊富である事を調査データによって認めていたが、IWC本会議においては未だ科学的知識には不確実性があるという事で、モラトリアムの採択となった。その背景には、
商業捕鯨では鯨が多い場所を探し捕獲するため、そこから得られたデータにはサンプリング上の片寄りがあるという意見もあった(商業捕鯨においても捕獲したすべての鯨からサンプルの採取は行われ、生物学的なデータは解析されていた)。モラトリアムの決定に際し
ては、「遅くとも1990年までに資源量の包括的評価を行って再度見直す」という条件がついていたため、南極海のミンククジラに関して、より信頼性の高いデータを得るために新たに調査方法をデザインして開始した、というのが南極海で調査捕鯨が開始された大ざっぱ
な経緯である。
309:名無しさん@3周年
09/01/06 11:16:35 2JkU9N5I
1987/88シーズンと1988/89シーズンに2度の予備調査を行い、翌シーズンから16年にわたる本調査が開始された。当初の計画では、ミンククジラ825頭とマッコウクジラ50頭の捕獲で調査を行い1990年に予定された資源量の包括的評価に望む計画だったが、中曽根政権の対外的な政治
配慮により捕獲量を減らされたため、調査結果の統計的有意性を保つには、調査期間を延長せざるをえなくなった)。調査海域としては 南極海で6つに分けられた区域 のうち、日本が商業捕鯨時代に操業を行ってきたIV区とV区を交互に行ってきたが(捕獲頭数は各区で300頭プラス
・マイナス10%)、系統群分布の広がりを調べるために隣接したIII区やVI区の一部も含めるようになった(捕獲頭数は各区で100頭プラス・マイナス10%)。よく、反捕鯨国で「調査のために数100頭も捕るのは捕りすぎ」などという人がいるが、統計学上、母集団からサンプリングし
て、その分析結果から母集団に関して確かな事をいうには、サンプル数がある程度十分である必要がある事を理解していない人の言である。喩えて言うなら、人口50万程度の都市でたった10人程度からアンケート調査をして、その結果から住人の実態についてどれだけ正確な事が言え
るのか、というのを考えてもらえば判ると思う。商業捕鯨と違い、調査捕鯨においては母集団から地理的、生物学的(性別、年齢など)に片寄りのないサンプリングをするのが大事なため、船団のコースは数学的に決められ、鯨の群れを発見した際には乱数表を用いてどの鯨を捕獲す
るのかが決められる。また、鯨の体から採取されるサンプルの項目も多岐にわたる。 これらの研究報告は毎年IWCの科学委員会で検討されるが、それらに加えて南極海での調査捕鯨に関しては16年計画の中ほどが過ぎた1997年に専門の会議が開催されて詳細に検討された。その報告書
の中で「JARPAの結果はRMPによる管理には必要ではないものの、以下の点でRMPを改善する可能性を秘めていることが留意された。・・・」で始まる文の「JARPAの結果はRMPによる管理には必要ではない」だけを取り上げてIWC科学委員会が調査捕鯨の成果に否定的であったように宣伝
しているのが内外の反捕鯨団体である。報告書を良く読めば、調査から得られた様々な結果が高く評価され、改定管理方式(RMP)
310:名無しさん@3周年
09/01/06 11:22:20 2JkU9N5I
を改善する可能性も合意されている。また、反捕鯨団体のいう「鯨を殺さない調査でも必要な情報は得られる」という言い分に関して、報告書は科学委員会内の両論を付属文書に併記した上で、様々な調査項目のうちミンククジラ集団の年齢構成に関する部分に関しては「会合では
年齢構成の情報をもたらし得る非致死的調査方法(例えば、自然標識)があったことが留意されたが、調査船団への補給およびIV区とV区でのミンククジラの豊富な頭数が、それらの調査を成功させることを恐らく妨げたであろう」としている。もちろん、報告書におけるこういう
個所は反捕鯨団体の宣伝では都合よく無視される。 ★ JARPA II (2005/06-) ★
1987年から始まった南極海での第1期の調査計画(JARPA)も2004/05シーズンに無事終わり、2005/06シーズンからは内容を更に広げた新しい調査計画(JARPA II)が開始された。
当初、南極海での調査捕鯨が始まった背景としては、当時の南極海で最も資源量が豊富で繁殖力も旺盛なミンククジラの商業捕鯨再開に向けた科学的データの収集という側面が大きかった。ミンククジラはヒゲクジラ類の中ではかなり小さな種だが、資源管理が極めて甘かった初期の
商業捕鯨によって激減した大型クジラに取って代って資源量を増やしたことが種々のデータで示唆され、南極海で商業捕鯨を再開する際には当面の唯一の捕獲対象と考えられていた。しかし調査が進むにつれて、ミンククジラの増加傾向も頭打ちであることが、性成熟年齢、、体長、
皮下脂肪の厚さ、胃の中の餌の量のデータなどからうかがえ、一方、かつて資源量が枯渇した大型クジラであるザトウクジラやナガスクジラが回復し始めていることが目視調査から判明し始め、これらが餌をめぐってミンククジラと競合している可能性が濃厚になってきた。なお、最
大の鯨であるシロナガスクジラについては増加傾向は認められるものの過去にあまりに激減したせいか回復の程度は低いし、同じ南極海のヒゲクジラ類でもイワシクジラなどは索餌海域が温暖な中緯度であるためにミンククジラと餌を争う相手ではないと考えられている。
311:名無しさん@3周年
09/01/06 11:26:45 2JkU9N5I
このような背景のもと、データから得られる統計的な有意性を高めるためにミンククジラの捕獲量を増やし、ナガスクジラとザトウクジラを新たに対象に加えて鯨種間の相対的な勢力関係を解明し、更に地球規模の環境変化が鯨に与える影響の調査を拡充し、これまで一種類の鯨の
管理しか想定していなかったIWCの捕獲枠算定法である改定管理方式(RMP)を複数種管理に発展させることも狙うというのが、今回の第2次調査計画の大きな目的となっている。
最初の2回の調査は予備調査として妥当な調査手法の追求に重きを置き、ミンククジラを850頭±10%、ナガスクジラを10頭までの捕獲となるが、本格調査ではミンククジラを850頭±10%、ナガスクジラとザトウクジラを各50頭の調査を予定している。初回の2005/2006年の調査では
グリーンピースとシーシェパードの2つの反捕鯨団体が過去同様に一般市民の寄付金をドブに捨てるような空疎で見かけ倒しの妨害活動を行ったものの調査は無事に終了し、反捕鯨国が唱える非致死的手法のみの調査では得られない貴重なデータがミンククジラ以外にも蓄積され
始めた。 ★ JARPN (1994-1999) ★一方の北西太平洋での調査は、日本近海の北西太平洋におけるミンククジラの系統群の分類に関して反捕鯨国の一部の科学者から出された仮説に反証するために1994年に開始された。もともと商業捕鯨時代の生物学的データから、北西太平
洋のミンククジラは以下の2つの系統群(おおまかにいって繁殖集団)から成ると考えられていた。
J系群: 黄海-東シナ海-日本海に生息。 推定頭数は7,000.O系群: オホーツク海-北西太平洋に生息。 推定頭数は25,000.
ところが反捕鯨側が唱えた新説は、J系群とO系群が更に細かな亜系群から成り、更に北太平洋中部にW系群という新たな系統群が存在してO系群と混ざっているというもので、IWCの捕獲枠算定方式である改訂管理方式(Revised Management Procedure - 略称 RMP)が適用された
場合に捕獲頭数が極めて低くなるような、ほとんど政治的意図のためとしか思えない仮説なのだが、これまでの調査の結果では従来どおりの系統群分類を支持するデータが得られている(亜系群の存在は否定されたが、新たなW系群の存在は完全には否定できていない)。
312:名無しさん@3周年
09/01/06 11:30:54 2JkU9N5I
調査海域は、 IWCが区分けした海域のうち、7、8、9、11の海域で行われ、 捕獲頭数は100頭プラス・マイナス10%であり、調査手法は南極海と同様である。2000年2月にこの調査計画の成果についてIWC科学委員会主催のレビュー会議が開催され、反捕鯨派の科学者が
提唱した新仮説を支持するデータは見つからなかったものの、それらを完全に否定するまでには至らなかった。
★ JARPN II (2000-) ★当初は系統群分類に重点を置いて始まった北西太平洋の調査であったが、捕獲された胃の内容物の調査から予想外に多くの魚類、それもサンマやイワシをはじめ明太子やタラコの親であるスケトウダラなどが見つかり、また漁業の現場
でミンククジラがこれらの魚をごっそりと食べて漁業と競合している事が判ったため、比較的豊富なニタリクジラやマッコウクジラにも調査の対象を加えて魚と大型鯨類の捕食関係などの生態系を解明する事に重点におき、2000と2001年にそれぞれミンククジラを100頭、
ニタリクジラ50頭、マッコウクジラ10頭を捕獲する予備調査に着手する事となった。実際に捕獲した鯨の胃から見つかった魚類の写真は、日本鯨類研究所や水産庁の捕鯨班のページに見ることができる。 この調査における主目標は、漁業における複数種管理にある。
どういう事かというと、従来は例えばミンククジラ捕鯨ならミンククジラのみの資源量から捕獲量を決めていたのを、餌としている生物との数量関係によるモデルを用いて複眼的に行なっていこうという点にある。同様の試みはすでにノルウェーで始まっていて、ミンク
クジラとその餌であるオキアミ、マダラ、シシャモの関係を数式で表して、どの種をどれだけ獲ると、他のどの種がどれだけ増減するかという研究がなされている。鯨が多量の魚類を捕食する以上、ミンククジラの数倍の体重を持ち資源量も同等あるいは数倍もある北西
太平洋のニタリクジラやマッコウクジラも調べなければ、この点の解明はできない。よく、反捕鯨論者の中には、鯨を殺さない非捕殺的調査のみで充分という人がいるが、鯨の群れを観察したり皮膚から少量のサンプルを取っただけでは、鯨と魚の数量的捕食関係などは
判らないのである。もちろん、従来からのミンククジラの系統群の問題に加えてニタリクジラの系統群分類なども調査対象となるし、臓器などを調べて環境汚染の影響の具合なども調べられる。
313:名無しさん@3周年
09/01/06 11:34:50 2JkU9N5I
2000年と2001年の2年間に予備調査を行ない2002年から本調査となったが、本調査からはミンククジラは新たに沿岸での50頭の捕獲が追加され、さらにイワシクジラ50頭が加わった。沿岸でのミンククジラは釧路と三陸で毎年交互に、それぞれ違う時期での捕獲である。
更に2004年からは、イワシクジラの捕獲枠が100頭に、沿岸域でのミンククジラは釧路と三陸でそれぞれ毎年60頭(計120頭)と変更になった。現在の捕獲予定数をまとめると、
ミンククジラ: 220頭 (沖合いで100頭、沿岸で120頭)、ニタリクジラ: 50頭、イワシクジラ: 100頭、マッコウクジラ: 10頭である。
なお、調査海域におけるニタリクジラは現在の推定頭数は2万3000程度(IWC科学委員会、1995年)であり、捕獲開始前の推定頭数は3万5000から4万程度であるから、大体、NMPの説明で述べる MSYレベル に近いと思われる。ニタリクジラは日本近海ではモラトリアムで
商業捕鯨が停止する1987年まで捕獲されていた。
一方、イワシクジラについては、日本の研究者による調査海域の推定頭数は2万8000程度である(IWC科学委員会ではまだ最新の資源評価に着手していない)。この推定頭数が妥当ならば、年間50頭(全頭数に対して0.2%程度)の捕獲では悪影響は考えられない。日本近海
での捕獲は、70年代に採用された新管理制度(NMP)によって保護資源になったために商業捕獲は1975年が最後であり、27年ぶりの捕獲となった。
北太平洋西部におけるマッコウクジラの推定頭数は10万程度であるが、初期資源量は不明である(江戸時代末期、まだ日本人が遊泳速度が遅くて死んでも沈まないセミ鯨などを中心に沿岸捕鯨を行っていた時代に、欧米の捕鯨船が大挙して押しかけて日本近海で捕っていた
捕獲歴史の古い種であるから、今世紀始めにノルウェーの国際捕鯨統計局がまとめ始めた資料だけでなく、古い歴史的資料まで遡って解析して大ざっぱな推定ができるかどうか、といったところではないだろうか)が、年間10頭の捕獲ではとうてい資源状態に影響しない。
マッコウクジラは大型鯨類の中では最も豊富で全世界での推定頭数は100万以上なのだが、なぜかアメリカ国内では絶滅に瀕した種に分類されていて、これをタテに日本の調査に対して圧力をかけている。
314:名無しさん@3周年
09/01/06 11:37:41 2JkU9N5I
マッコウクジラが豊富で全世界の推定頭数が100万から200万である事はアメリカ政府の海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration - NOAA)のページ にも記載されていたのだが、自らの政策の馬鹿さ加減を裏付ける数字であるためか今では削除されている。
2001年1月に、アメリカのノーマン・ミネタ商務長官が来日して日本の農水大臣と会談した際、日本側がこのページを引き合いに矛盾を指摘したところ、さっそく翌日から数値の記述が削除されたのだという。このように豊富な種でも絶滅に瀕した種に指定されるのは、ワシント
ン条約(CITES)における分類と同様、鯨を取り巻く政治状況の歪みの産物である。
なお、条約第8条第2項では捕獲した鯨を「実行可能な限り加工」する事が規定されている。従って、捕獲した後に研究用のサンプルだけを取って鯨を廃棄してはいけないのだが、一般には条約の規定などあまり知られていないため、日本国内でさえ、「調査捕鯨で採った鯨がなぜ
売られているのだろう」という声はたまに耳にする。また、このような一般市民の知識不足を利用して「調査捕鯨は科学を隠れみのにした商業捕鯨」と主張する反捕鯨団体の宣伝がもっともらしくまかりとおる。実際には、こうした副産物の販売によって、調査にかかる費用のか
なりの部分がまかなわれている。これは、例えば惑星の研究のために探査機を送り込んでも、それにかかる費用を補う副産物が得られるわけではない事と比較すると、科学研究としてはコスト面で効率の良い部類にはいると思う。
いずれの調査も (財)日本鯨類研究所 が主体となって計画され、科学者以外の乗組員と船は共同船舶株式会社からチャーターされている。調査計画は毎年IWCの科学委員会において事前に審議され、計画内容に対し助言などが行われている。調査結果は、国外の科学者も交えて
解析され、IWCに多くの論文が提出されているものの、一般の市民にはアクセスしにくいし、英語の専門論文は読んでもたぶん理解できないと思うが、日本鯨類研究所が毎年発行する年報や年4回発行される「鯨研通信」で各年の調査結果の概要を知る事はできる。
315:名無しさん@3周年
09/01/06 11:45:50 2JkU9N5I
IWCの年次総会には毎年何十ものNGOが参加し、それらの大多数は反捕鯨団体である。徐々に解説を加えていくとして、とりあえず、その主なものを列挙しておこう。各団体のページを訪ねて、捕鯨問題に関する主張を読み、それらが何を語って何を隠しているかを洗い出せば、
反捕鯨運動における情報戦略の性格というものが見えてくるであろう。また、掲示板やゲストブックがある場合には、それらを見ることによって、彼らを支持する一般市民の知識の程度や見識のレベルなども見えてくるであろう。
GP - (Greenpeace International、グリーンピース)
日本ではおなじみの反捕鯨団体である。 1971年にアラスカでの核実験に反対する活動をしたのが始まりらしい。捕鯨に関しては、1971年にアリューシャン列島のかつての捕鯨基地の廃墟で、かつて乱獲された鯨の骨を見たのがき
っかけだったというのが公式のストーリーである。が、実際には、自分が飼育するシャチが自由になりたがっていると主張してバンクーバーの水族館を解雇されたポール・スポング(Paul Spong)に1973年に出会って感化されたの
が、本格的な始まりだったようで(Fred Pearce、"Green Warriors"、1991)、これは当時バンクーバー在住で初期のGPのメンバーとも交流のあったC.W. ニコルの回想とも符合する(「日本人と捕鯨」、1982)。捕鯨船団に直接
行動を取ったのは、1975年夏に北太平洋での旧ソビエトの船団に対するものが最初である。1985年には反核運動でニュージーランドに停泊していたGP所有の「レインボー・ウォリアー号」が核実験国であるフランスの工作員に爆破
されるなど、話題にはこと欠かない。また、旧ソ連が崩壊する少し前の1991年、東ドイツに配属されていたソ連軍将校からスカッド・ミサイルの核弾頭を買うつもりだったものの、その将校が転属になったため断念したという
(URLリンク(homepage.mac.com) 8/18/94の項)。買った核弾頭を公開してセンセーションを巻き起こすつもりだったらしいが、注目を集めるには何でもアリ、という姿勢の一例である。
なお、もともと北米で誕生したが、現在の本部はオランダのアムステルダムであり、各国の支部は集めた資金24%を本部に払うことになっている。
316:名無しさん@3周年
09/01/06 12:31:13 2JkU9N5I
WWF - (World Wide Fund For Nature、旧名はWorld Wildlife Fund、世界自然保護基金)
1961年設立の大手環境保護団体でスイスに本部がある。反捕鯨運動ではグリーンピース、IFAWと並ぶ勢力である。名誉総裁をエリザベス女王の夫であるエジンバラ公フィリップ殿下が務めるが、彼が日本の新聞とのインタビューで「日本にWWFの会員が少ないのは日本人の環境への
意識が薄いからだ」というような趣旨のことを言っていたのが思い出される。また、1993年に京都でIWC総会が開催された際、WWFで長年捕鯨問題を担当するカサンドラ・フィリップス(Cassandra Phillips)女史がテレビ・インタビューで「IWCが白人の優位性を失い、道義を失う
と人類は危機に陥る。」と述べていたが、フィリップ殿下の言葉と併せて、欧米人の一部に根強くあるゆがんだ意識を想わせる。
ところで2002年4月1日に、WWF日本支部が会員向けの会報において「数が多く絶滅の心配がない種類は、徹底した管理制度などの条件が整えば商業捕鯨の再開が可能であるという論理を否定できない」という旨の見解を載せて注目された。これがスイスの本部の方針に影響を与え
るのかどうか未知数だが、オーストラリアやニュージーランドの支部は、そう簡単に姿勢を変えないのではないかと想像する。なお、ノルウェーのWWF支部はすでに1996年に 「ノルウェーの商業捕鯨の捕獲量は資源に影響のないレベルであり、IWCで定管理制度が完成すればもはや
反対することはない」という旨の声明を出して 本部の姿勢との違いを明らかにしている。
IFAW - (International Fund for Animal Welfarek、国際動物福祉基金)
1969年に設立。カナダにおけるアザラシ猟への反対運動で知名度を上げた。捕鯨に関しては、代表的な反捕鯨科学者のジャスティン・クック(Justin G. Cooke)への資金援助関係やシドニー・ホルト(Sidney Holt)との関係が知られる。
317:名無しさん@3周年
09/01/06 12:32:40 2JkU9N5I
シーシェパード - (Sea Shepherd Conservation Society )
「海の羊飼い」と訳されることもある。グリーンピースの創立メンバーの一人でありながら組織を追放された活動家ポール・ワトソン(Paul Watson)が1977年に創立した。日本では知名度が低いが海外では知られた存在である。 1970年代終わりから80年ころまで「シエラ号」など
の海賊捕鯨船へ自身の船を体当たりさせたり、爆破したりして有名になったが、その後1986年にアイスランドの捕鯨基地で陸上の捕鯨施設を破壊し、捕鯨船を浸水・沈没させ、結果としてIWCへのオブザーバー参加権を剥奪されている。
また、1992年にノルウェーの捕鯨船を浸水・沈没させようとしたのを始め、1994年にノルウェーの沿岸警備艇に船を体当たりさせるなどの活動でワトソン自身がノルウェーから国際指名手配されて1997年にオランダで逮捕されている(80日の拘留の後釈放)。これまでに沈めた捕鯨船
の数は10隻であるという。また、1998年にはアメリカ・インディアンのマカー族の捕鯨復活への妨害でもメンバーから逮捕者を出している。今年(2001年)の夏はカリブ海の原住民生存捕鯨に注目を集めるべく、セント・ビンセントへ向かったそうである。ピアース・ブロスナン
(Pierce Brosnan)やルトガー・ハウアー(Rutger Hauer)など、ハリウッドの俳優にも支持者が多いようで、ワトソンの半生を描いた映画が作られるという話が以前ネットに流れていたが、その後どうなったのであろうか。このニュースに対してあるノルウェー人が、「出来上がっ
たら、その年の代表的コメディー映画になるだろう」と評していたのが思い出される。
これまでは日本と直接対峙したことがなかったが、2002年末には南氷洋における日本の調査捕鯨に対する妨害活動を開始する予定で、8月からニュージーランドのオークランド港において、自身の活動船ファーリー・モワット(Farley Mowat)号の準備をしている。報道を見る限り、
過去のグリーンピースと類似の行動をとるつもりのようで、「類は友を呼ぶ」という言葉が思い起こされる。最近の報道によると、捕鯨に反対する理論武装を強化する意味も込めて、妨害活動船の乗員40数名は全員菜食主義者であるという。
318:名無しさん@3周年
09/01/06 12:35:14 2JkU9N5I
また、出航を間近に控えた11月には、活動船に魚雷が搭載されているという情報を受けてニュージーランド当局が捜査をした。その結果、密漁船などに対する威嚇目的で載せた、内部が中空の模造品の魚雷がデッキ上に確認されている。
なお、彼らにとっては敵にあたる ハイノース・アライアンス のページのゲスト・ブックにポール・ワトソン自ら書き込みをしているのを以前よく見かけた。
EIA - (Environmental Investigation Agency)
「環境調査エージェンシー」と訳される場合もある。フェロー諸島のゴンドウクジラ漁に対する反対キャンペーンの中心的存在であり、また近年は日本のイルカ漁に難くせをつけてきている。元グリーンピースの活動家アラン・ソーントン(Allan Thornton)に率いられる。
ソーントンはグリーンピース時代、1977年にそのイギリス支部を作り、マスメディアを通した呼びかけによって、1978年にグリーンピースの船、初代「レインボー・ウォリアー(虹の戦士)号」を調達した人物でもある。数年前、EIAはロンドンの法務局では株式会社として
登記されているという報道があったが(Themis 1994年8月号)、今でもそうなのかは不明である。
FOE - (Friends of the Earth International)
訳名の「地球の友」で呼ばれることもある。捕鯨問題ではグリーンピースよりも早く、1971年からIWCに姿を見せている。当時はFOEの反捕鯨組織「プロジェクト・ヨナ」がジョーン・マッキンタイアー(Joan McIntyre)に率いられ、アメリカのニクソン政権との密接な連携
で反捕鯨運動を世界的に広めた。マッキンタイアーがIWCの場で演説できたのもニクソン政権の力であり、後に彼女がまとめた「クジラの心(原題:Mind in The Waters)」には、ニクソン政権で反捕鯨政策を推し進めたリー・タルボット(Lee M. Talbot)も一文を書いている。
319:名無しさん@3周年
09/01/06 12:37:12 2JkU9N5I
彼女にまつわる逸話を1つ引用しておこう。文中「米澤」とあるのは当時IWCでの日本代表団のコミッショナーであった米澤邦男氏である。
米澤がホテルにチェックインした時に反捕鯨派の攻撃は開始されていた。 米澤はホテルで次のように言われた。
「あなたの部屋に花が沢山届いていますが、どうされますか? 棄てろというなら、棄てます。それから、プロジェクト・ヨナという反捕鯨団体のマッキンタイアという女性が、あなたにお目にかかりたいと言ってきてますが、どうしますか」
米澤が「花を持って来い」と言うと、葬式の花である白ユリが部屋に入り切らないぐらい届けられた。 それからマッキンタイアが部屋を訪ねて来て、「ミスター米澤、今日は何の日か知ってますか?」と言うから、「知らないね」と言うと、
「今日はクジラのお葬式の日です。そう思って私は花を持って来たんです。クジラみたいな利口な動物を殺すのは許せません。人間以上に利ロなんですよ、コミュニケーションもしているし」と真顔で言った。そこで、「クジラは本も書かないし、
建物も建てないし、あまりいい仕事はしないようだね」と言うと、「そこなんですよ。 クジラは本当はできるんです。 でも残念ながら手がないんです。 手さえあれば人間に負けないものを作りますよ」と彼女は言った。
米澤は、40分ほどマッキンタイアにつきあったが、最後に、「あなたのお話を聞いていると、クジラが一部の人間よりは利ロかもしれないと思えるようになりましたよ」と皮肉を言ったが、それが相手に伝わったかどうかは、分からなかった。
マッキンタイアは、その後、プロジェクト・ヨナの金を横領して3年ほど後にクビになっている。 運動家になるには金を集める才能がなければならないし、日本から来たコミッショナーのホテルに押しかけて、デモンストレーションをやったという
実績を積まねばならなかったのだろう。 運動家は純粋なだけでは務まらない仕事である。
(小川晃 「鯨と日本外交」、「月刊日本」 2001年7月号)
320:名無しさん@3周年
09/01/06 12:44:27 2JkU9N5I
International Wildlife Coalition
名前からわかるように国際捕鯨委員会(IWC)同じ略称を持つ反捕鯨団体である。この略称を活用して、あたかも国際捕鯨委員会の見解のような誤解を与えかねないパンフレットを配布したことなどあるという。 1994年の南氷洋サンクチュアリ採択に際して、カリブ海諸国の観光
ホテルに大量に予約を入れ、キャンセル料が発生する直前に予約を取り消すという嫌がらせで、サンクチュアリーに反対票を入れないように圧力をかけたのも、この団体である。また、1998年のIWC総会において、この団体とECCEA(Eastern Caribbean Coalition for Environmental
Awareness)がそれぞれ、日本がカリブ海諸国の票を金で買っているとか、共謀してホエール・ウォッチング船を爆破しようとしているなどと主張するオープニング・ステートメントを発表したために会議が紛糾し、結局議長の裁定で、1つの文書は公式文書から除外し、残りはNGO
の声明であると明記させるという騒ぎになっている。
Breach - 1994年に結成された新しい団体で、1999年のIWC総会開催中、IWC事務局に押し入ろうとして警察沙汰になり、IWCへのオブザーバー参加権を剥奪されたのが記憶に新しい。
WDCS - (The Whale and Dolphin Conservation Society)HSUS - (The Humane Society of the United States、米国人道協会)
RSPCA - (Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals、英国動物愛護協会)
「鯨は生態系の上で頂点に立つ生き物である」とか「鯨は食物連鎖の頂点にいる生き物である」というような文は、おそらくほとんどの人は目にした事があるだろう(例えば著名な反捕鯨啓蒙家であるロジャー・ペイン(Roger Payne)に言わせると鯨は食物連鎖上、下から第7番目
であり頂点に立つという)また、植物プランクトンから始まって、様々な生物が階層構造をなして上へ延びてゆく図も一度は目にした事があるのではないだろうか。以前から、鯨類の食物連鎖における地位(食物段階)については疑問を感じていたのだが、この場で整理してみたい。
321:名無しさん@3周年
09/01/06 12:49:04 2JkU9N5I
なお、生物を捕食者と被捕食者の1次元的つながりで捉える「食物連鎖(Food Chain)」という概念はやや古典的で、現実の捕食関係はもっと複雑な網の目状の「食物網(Food Web)」であるが、ここで述べる話では鯨種ごとの餌の違いを論じる程度なので、簡単でわかりやすい
「食物連鎖」で話をすすめる。まず、捕鯨問題との関連で考える上で、これまでIWCが管理の対象としてきた大型鯨類とその餌をおおざっぱにまとめると以下のとおりである。
ヒゲクジラ亜目 ナガスクジラ科 シロナガスクジラ 動物プランクトン(オキアミ) ナガスクジラ 動物プランクトン(オキアミ、カイアシ)、群遊性魚類 イワシクジラ 動物プランクトン(オキアミ、カイアシ)、群遊性魚類 ニタリクジラ 群遊性魚類、動物プランクトン
ミンククジラ 動物プランクトン(オキアミ、カイアシ)、群遊性魚類 ザトウクジラ 動物プランクトン(オキアミ、アミ)、群遊性魚類 セミクジラ科 セミクジラ 動物プランクトン(カイアシ、オキアミ) ホッキョククジラ 動物プランクトン(カイアシ、オキアミ)
コククジラ科 コククジラ 底生甲殻類 歯クジラ亜目 マッコウクジラ科 マッコウクジラ イカ、底生魚類
ここで、歯を持たないヒゲクジラ類が食べる魚類とはサンマ、シシャモ、ニシン、イワシといった小型のものやサバ、タラといったものである。なお、同じ鯨種でも生息する海域が違うと餌も違ってくるし、同じ海域の同じ種類の鯨でも、年によって餌に変動がある。例えば、
日本が調査捕鯨で捕っているミンククジラは、南半球に生息するものはオキアミ類などの動物プランクトンが餌の大部分を占めるが、北太平洋のものではオキアミは半分程度で、あとはマイワシ、イカナゴ、サンマなどの魚類が占め、それらの割合が年によってかなり変動して
いる様子は、胃の内容物も調べる捕獲調査がもたらしてくれる、今現在の生態系に関する貴重な知識の一つである。
さて、こうして表を見ると、いくつかの疑問が生じるが、まず、このような餌の多様性を無視し「鯨」という言葉でひとくくりにして、その食物連鎖上の地位を論じられるかという疑問がある。
322:名無しさん@3周年
09/01/06 12:54:22 2JkU9N5I
食物段階が植物プランクトンよりひとつ上の動物プランクトンを偏食するシロナガスクジラと、イワシやサンマなどの小型の魚を食べるその他のヒゲクジラ類、さらに表には載っていないがマグロ、カツオなど大型魚類を食べるゴンドウクジラ(歯クジラ類)などを、あたかも一つ
の食物段階にあるかのように語るのは、個々の鯨種の資源量の違いを無視して「鯨が絶滅しかかっている」と言うのと同じ類の粗雑な言い方ではないだろうか。
次に「食物連鎖上で頂点」という点について考えてみる。野生の動物で鯨を襲って食べるのは同じ鯨類のシャチくらいであり、鯨を食べる野生動物種がいないという、相対的な意味では頂点と言える(余談だが、世の中には鯨は人間と同等の知能を持つ生き物であり、鯨を食べるの
は食人に等しいと信じている人もいるが、彼らが鯨を食べるシャチの行為を嘆くのは聞いたためしがなく、本当に彼らの意識の上で鯨と人間は同等なのか疑問である)。だが、食物段階がどのレベルものを食べているかで考えるならば、シロナガスクジラはオキアミを食べる他の生
物より高いとはいえず、小型魚類を食べるイワシクジラなどの種は、同じく小型魚類を食べる鳥や中型・大型魚類より高いとはいえない。もし相対的な意味で「頂点」と言っているとすれば、例えるなら5階建ての建物の5階と10階建ての建物の7階を比較して、前者は最上階だから
頂点であるというのと同じ論法であって、地上からの高さが反映されているわけではないのである。このような位置づけが生態系を考える上でどれだけ重要な指標となりうるのか疑問が残るが、これまでのところ、この疑問に答えてくれる説明には出会った事がない。
このような事から、冒頭の「鯨は食物連鎖の頂点」という言い方は、かなり誤解を招く言い方である事が言えると思う。大型魚類を食べる一部の歯クジラ類はかなり高い段階にあるかも知れないが、鯨類が共通の食物段階にいるわけではないのであり、地球上で最大の動物として賛美
されるシロナガスクジラなどは、「頂点」という言葉によって一般の人々がイメージするよりは、食物連鎖上はるかに低い位置にいるわけである。また、最近よく話題になる環境汚染物質の体内への蓄積という点では、問題になるのは食物段階が下から何番目かという点になるはずで
あり、
323:名無しさん@3周年
09/01/06 12:59:59 2JkU9N5I
そうなると議論は鯨の種類ごと、あるいは生息域ごとの餌の違いを抜きにしては論じられないはずであるが(さらに体の部位によって蓄積の度合いが全然違うから鯨製品ごとに論じる必要もある)、反捕鯨国での報道をネット上でみるかぎり、「鯨の体内から高濃度の汚染物質が
発見」というレベルにとどまるものが多く、詳細を伝えない事によって鯨であればどこで捕れたどの鯨のどの部位の食品でも危険であるかのような印象を持たせようという意図が見え見えである。
さて、食物段階が上位の動物は汚染物質が蓄積しやすいから環境のバロメーターであり、従って保護されるべきであるという論もあるが、汚染物質が蓄積しやすいなら、そうでない生物よりはいっそう注意を払って捕りすぎないようにすれば良いだけの事で、捕獲量をゼロにしな
ければならない必要など何かあるのだろうか。さらに「バロメーター」だからこそ、その体内からは汚染物質の蓄積具合いや、その体内への影響など、環境汚染の生物への影響を研究する手がかりが多く得られるのであり、鯨を殺さないで皮膚からサンプルを採るだけというのでは、
「私達が愛する"お鯨様"を殺すなんて許せません」という一部の愛好家の価値観に迎合する上では有効でも、海洋生物と環境に関する知識を迅速に深めようという立場から見れば、入手可能なデータのごく一部を効率悪く利用する手法であり、例えて言うならば、惑星探査機があり
ながら天体望遠鏡だけで惑星を研究せよというようなものであって、得られる知識も限られる。実際、調査捕鯨で得られる知識の中には、反捕鯨論者がとなえる非致死的調査では決して得られないもの、あるいは得られてもはるかに多くの年月を要するものが多いが、この点は専門家
による説明に詳しい。もし、日本の調査を否定する国に非致死的手法のみで調査させて、日本の調査とどちらが確かで多くの結果を効率良く導くかを比較すれば、この点はすぐ明らかになるであろう。日本が現在南氷洋で調査捕鯨の対象としているのはミンククジラ(Minke whale)
という、体長が7-8メートル程度の小さな種類である(商業捕鯨を復活させたノルウェーの捕獲対象も同じくミンククジラである)。「ヒゲクジラ類の中では最小」と紹介される場合も多いが、ヒゲクジラ類の中で最小なのは南半球のみに生息するコセミクジラというセミクジラの亜
種で、こちらは体長5-6メートルである。
324:名無しさん@3周年
09/01/06 13:03:10 2JkU9N5I
「ミンク」の名称は、この小さなクジラばかり捕っていたノルウェーのマインケ(Minke)という新米砲手に由来するといわれ、英語での発音は「ミンキー」である。沿岸での小型捕鯨では以前から捕られていたが、南氷洋での本格的な捕獲は1970年代初めからである。
大型鯨類が次々と禁猟になる中、南氷洋で日本が商業捕鯨の最後の年まで捕獲していたヒゲクジラであり、他の大型鯨類と違って悪名高いBWU(Blue Whale Unit - シロナガス換算制)という捕獲枠設定方式の洗礼をほとんど受けなかった。また他の大型ヒゲクジラ類の
雌が2-3年に一回出産するのに対し、ほとんど毎年出産する。
2002年9月現在、 IWCのホームページにおける推定資源量 は以下のとおりである。
海域 期間 推定値 95%信頼区間 南氷洋 1982/83 - 1988/89 76万1000 51万 - 114万 現在 改定中 科学委員会による再評価中であり、信頼できる数値なし。
北大西洋(カナダ東部沿岸を除く) 1987 - 95 約14万9000 12万 - 18万2000 北西太平洋とオホーツク海 1989 - 90 2万5000 1万2800 - 4万8600
「95%信頼区間」というのは、資源量がこの範囲にあるのは95%確かであるという、推定結果の信頼性の目安である。1970年代後半、日本の大隅博士は南氷洋のミンククジラは捕獲の対象となる成体だけでも40万頭はいると推定していたが、反捕鯨派科学者のリーダー的存在
であるシドニー・ホルト博士(Sidney J. Holt)による推定量はたった2万頭というものであり、実際に大規模な調査を行って検証する必要があった。そこで、IWCが1974から始めていたIDCR(International Decade of Cetacean Research、国際鯨類調査10年計画)の一部
として南氷洋のミンククジラの資源量の調査が開始した。
この調査によって、ミンククジラの数が極めて豊富な事が判明し、商業捕鯨モラトリアムが採択された1982年にもIWCの科学委員会はミンククジラは捕獲を続けてもなんら問題ない豊富な種であるとして、資源状態に関わらずにすべての対象鯨種の捕獲を禁ずる包括的モラトリ
アムの必要性はない、と結論していた。当時の推定資源量は30万頭程度であるから、シドニー・ホルトの推定量がいかに荒唐無稽なものだったかがわかる。
325:名無しさん@3周年
09/01/06 13:06:48 2JkU9N5I
なお、これ以上調査でミンククジラの豊富な資源量が裏付けられては困るのか、1984年のIWC科学委員会の会合では反捕鯨派科学者グループが調査を継続すべきでないと言い出したが、日本側の強い主張で結局継続となった。以後調査は毎年続いてきており、95/96年の航海では
調査期間の最初の1ヶ月ほどが日本が独自に企画したシロナガスクジラ調査、残り2ヶ月程度がIDCRのミンククジラ調査という2本立てになり、翌年からはこの2段構成の調査航海がIWCの新調査プログラムSOWER(Southern Ocean Whale and Ecosystem Research)の名のもとに行わ
れるようになって現在に至っている。IWCの科学委員会の1971年におけるミンククジラ推定資源量は15万頭から20万頭であり、その後の研究でも本格的捕獲開始前の資源量はこのレベルらしいから、シロナガスなどの大型種が減った事によって豊富なエサを得たミンククジラが、
その短い妊娠周期も手伝って飛躍的に増加したという仮説がある。実際、1940年代以降、ミンククジラの成長曲線の変化は体長が大型化している事を示していて餌の摂取状態が良くなったことが伺え、また、性成熟年齢が下がったこともこれと整合している。これは、第二次大
戦後の日本人の食料事情の改善と、それに伴う体格の変化と類似している、と言えばわかりやすいであろうか。
このように豊富なミンククジラだが1983年にボツワナで開催されたワシントン条約(CITES)会議では絶滅の恐れがある種を記載する付属書 I に掲載された。提案国はセイシェルだが、上述のシドニー・ホルトはこの時期セイシェル代表団員としてIWCに参加しているから、この
提案も彼が関与したものであろう。 IWCと違って参加国が必ずしも鯨の資源状態に明るくなく、「事実」よりはロビー活動がものを言うCITESの場だからこそ、このような分類が可能になったともいえる。
さて、IWCの調査航海といっても各国からの参加科学者以外の要素、すなわち、資金、船舶、乗組員などは、ほとんど日本が提供してきた。「公海の鯨は全人類の財産」などと言いながら、IWCが行う大規模な調査に殆んど金を出さず、調査結果にケチをつける口は出す、という
反捕鯨国の姿勢はこういうところにも現れている。調査は鯨の数を数える目視調査が主だが、草原にいるキリンの数を数えるようなわけにはいかない。
326:名無しさん@3周年
09/01/06 13:10:20 2JkU9N5I
南氷洋のミンククジラの場合、平均して1時間に36-37回(一回当たり3-6秒)浮上し、遊泳速度は平均3-5ノットである(調査船のスピードは11.5ノット)。海面に数秒間見える噴気や体の一部をもとに、近距離から1-2キロ先までの鯨種を判断し群れの大きさを判定していくのには
視力だけでなくかなりの熟練を要する。天候に恵まれずに波が高かったり、調査員が交代して目視の習熟度が下がるなど、調査時の条件によって鯨の発見数が減って推定資源量が減る可能性もある。調査方法の細部は専門家の説明に詳しい。
ミンククジラ資源に関する南氷洋の管理区域
第1、2ラウンドでは、I区からVI区まで6つに区分けされた南氷洋の各海域を毎年1つずつ調査していたので、6年で1ラウンドを終了できた。ただし、緯度的には北端の南緯60度まではカバーされていなかった。第3ラウンドでは、緯度では南端の氷縁から南緯60度までカバーする
方針に変わり、その分、経度では調査海域全体を1回でカバーできなくなった。
第1ラウンドではシャープペンシル大の標識銛を鯨に打ち込み、商業捕鯨で捕獲された鯨から発見される標識の割合から資源量を推定するという標識調査も行われていた。目視調査はライントランセクト法という方法で行われるが、今現在採用されているジグザグのトラックライン
(調査コース)が使われだしたのは第1ラウンド最終の第6回からで、それまでは「コ」の字型を互い違いにつなげたような格子状のトラックラインが使われていた。
また、接近法と通過法(1)を交互に行うという、現在採用されている目視調査方式は第2ラウンドから始められた。このように、推定精度を向上させるために調査方法や解析手法は細部にわたって年々改良されてきている。また、このIDCR航海で鯨の目視調査方法の研究が進んだ事は
北大西洋など他の海域での目視調査にも寄与している。なお、日本の調査捕鯨でも捕獲調査の他にこのIDCR方式の目視調査も行なっている。
327:名無しさん@3周年
09/01/06 13:24:25 2JkU9N5I
IWCの科学委員会は南氷洋ミンククジラ資源の包括的評価を1990年に行ったが、この段階では調査は第2ラウンドの大半が終わっており、この時点の合計として上記の76万頭という数字が出てきている。なお、調査海域に南緯60度以北の海は含まれていなく、また調査船が
入れないパック・アイス(2)が密集した海域の鯨は目視のしようがないため、南氷洋全体での実際の数は、この推定値よりも多いと考えられる。 IWCのIDCR/SOWERにおける南氷洋ミンククジラ目視調査航海 回 調査年 調査海域 調査船()内はソ連船 ミンククジラ目視調査
期間* 調査団長 経度 緯度
第1ラウンド 1 1978/79 IV 南緯61度以南 2 28.Dec - 7.Feb P.B. Best 2 1979/80 III 南緯63度以南 2 27.Dec - 14.Feb J. Horwood 3 1980/81 V 南緯62度以南 3(1) 22.Dec - 6.Feb P.B. Best 4 1981/82 II 南緯63度以南 3(1) 27.Dec - 6.Feb D. Hembree 5 1982/83
I 南緯64度以南 3(1) 2.Jan - 15.Feb D. Hembree 6 1983/84 VI 南緯61度以南 4(1) 4.Jan - 19.Feb G. Joyce
第2ラウンド 7 1984/85** IV 南緯61度以南 4(1) 29.Dec - 19.Feb G. Joyc
11 1988/89 IV 南緯61度以南 2 29.Dec - 11.Feb F. Kasamatsu 12 1989/90 I 南緯64度以南 2 28.Dec - 10.Feb G. Joyce 13 1990/91 VI 南緯61度以南 2 3.Jan - 11.Feb G. Joyce
第3ラウンド 14 1991/92 V(130E - 170W) 南緯63度以南 2 31.Dec - 8.Feb P. Ensor 15 1992/93 III W (0 - 40E) 南緯60度以南 2 25.Dec - 4.Feb R. Rowlett 16 1993/94 I (110W - 80W) 南緯60度以南 2 3.Jan - 14.Feb P. Ensor 17 1994/95 III E (40E - 70E),
IV W (70E - 80E) 南緯60度以南 2 13.Jan - 25.Feb P. Ensor
18 1995/96 VI W (170W - 140W) 南緯60度以南 2 14.Jan - 21.Feb P. Ensor 19 1996/97 II E (30W - 0) 南緯60度以南 2 16.Jan - 14.Feb P. Ensor 20 1997/98 II W (60W - 25W) 南緯60度以南 2 18.Jan - 14.Feb P. Ensor 21 1998/99 IV (80E - 130E) 南緯60度以南
2 20.Jan - 22.Feb P. Ensor 22 1999/00 I E(80W - 60W),II W (60W - 55W) 南緯60度以南 2 15.
328:名無しさん@3周年
09/01/06 13:32:47 2JkU9N5I
第4ラウンド 27 2004/05 III W (0 - 35E) 南緯60度30分以南 2 18.Jan - 26.Feb P. Ensor 28 2005/06 III W (0 - 20E) 南緯55度以南 1 25.Dec - 14.Feb※前半は南緯55 ‐ 61度でナガスクジラが主対象 P. Ensor
* 調査期間は南氷洋の管理区域におけるもの(母港との往復期間は含まず)。** 84/85年では、前半が東海域で各種実験、後半が西海域で目視調査が行われたが、独立観察者方式(IO : Independent Observer mode)という、
通過法において後に標準的になる手法が西半分の海域では用いられなかったため、調査法の整合性の点からこの回のデータは後年の資源量評価では用いられていない。
なお、2001年のIWC科学委員会で討議したミンククジラ資源量の評価の議論を、 科学委員会の報告書から抜粋 しておく。第3ラウンドの調査はまだ途中だが、調査が終わった海域を従来の手法で解析した資源量は過去の数字と
比べて低く見えるため、さっそく反捕鯨団体がこれに飛びついて、あたかもミンククジラの資源量が前回の評価よりも「減ったことが合意された」などと宣伝したり、極端な例では、委員会報告書でわざわざ「不完全」と注記
している268,000という数字(これは97/98年までの調査のうちで既に評価が終わった、全海域の68%をもとした数字で、しかも、過去の調査で資源量が大きかったIV区とV区が抜けているのである)をそのまま示している例すらあった。
科学委員会の報告書では、第3ラウンドのこれまでのデータをもとに従来の手法に基づいて求めた各種試算結果が過去より少ないことについて、
実際に資源量が減った。 たまたま、調査時に調査海域にいたミンククジラが少なかった。 過去2回のラウンドとは調査手法も変わっているので、同列に比較して増減を論じられない。
の3つの仮説が記され、現段階では判断できないとしている。 ただ、報告書等をもとに素人なりにまとめると、第3ラウンドの調査データの解析について次のような点が指摘される。
329:名無しさん@3周年
09/01/06 13:39:35 2JkU9N5I
過去に比べて調査航路が、概して天候も悪く、群れを作らずに単独で行動する鯨が多い北側に拡張しているため、目視条件が悪化している。おそらく上記の理由のためと推定されるが、過去のラウンドに比べて、目視で「ミンククジラ」とは
断定しきれず「ミンクらしい」と判断されたデータが過去より大幅に増えて30%以上になっており、これらのデータは解析で除外されている。 最初の2ラウンドではほとんどの調査員が経験10年以上であったが、第3ラウンド2回目の92/93
年からは、世代交代によって経験が5年以下の初心者が半分程度にまで増えて、目視量が落ちている可能性がある。 過去のデータから、ミンククジラの南氷洋における密度がピークになるのはだいたい1月中旬から下旬で、2月に入ると急速
に減るが、第3ラウンドでは調査期間が過去より後期にシフトしており、時期的にピークをはずれている可能性がある。この調査時期の遅れは、氷縁の変化をにらんで調査航路を決める際の便宜のためらしい)。
捕獲データから求められた自然死亡率や妊娠率などの資源動態上のデータの解析は、資源の減少を示唆していない。 IDCRよりも調査日数が長くて時期もほぼ一定している、調査捕鯨の目視調査の解析では資源の低下傾向は見られない(ただし
調査捕鯨が行われているIV区とV区に限られる)。 このようなことから、以下の点を念頭に解析方法を更に洗練させ、最終的な資源推定を行うことになる。
航路上の鯨の発見確率g(0)や、接近法と通過法の間の補正を行う係数は、群れの大きさに依存するので、この点の見直し。 未調査海域のミンククジラ密度を推定する方法の研究の必要性。 生物学的パラメータを用いた資源動態モデルも使う
研究の必要性。 調査捕鯨における目視調査データの、より詳しい解析。パック・アイス内部のミンククジラ密度の研究の必要性(今回初めて、いくつかの研究が提出された)。 可能なら、調査開始時期を以前のように前にずらす。 ミンクク
ジラの新しい推定資源量の算出か2007年の会議で行われる見通しである。 ただ、あくまで調査の詳細に疎い素人の立場で言わせてもらえば、第3ラウンドに入ってから調査にずいぶんと時間がかかっていて、10年以上経っても結果が出ていない
現状はペースが遅いように思われる。
330:名無しさん@3周年
09/01/06 13:49:28 2JkU9N5I
今現在の南氷洋のミンククジラ資源量に関して納得させる公式数値がない事態は、IWCやワシントン条約における各加盟国の意思決定において日本側に不利に作用するのではないだろうか。近年の目視調査における結果を見るとザトウクジラやシロナガスクジラの回復傾向が見られて
おり、今後はミンククジラだけでなく数種の鯨種について精度の高い資源推定を長くない年数で行って資源量の変化の多様な様相を明らかにすることが要求されるような気がする。だとするとなおさら、現在のような日本が拠出する2隻の船だけでは間に合わず、調査規模の拡大や
調査手法の改革が必要になりそうに思える。南氷洋への往路・復路において他の環境・漁業関連の調査も行うなどの工夫によって予算を増やして調査船の数を増やすことができないものだろうか。また、資源量の把握は科学的な資源管理の基礎であるはずだから、この点についても
っと多くの加盟国の積極的参加を強く促す決議をIWCで行うことも期待したい。 現在、日本の市場で流通している鯨肉は次のようなものである。
調査捕鯨で捕獲した鯨の肉 国際捕鯨取締条約第8条第2項に従って、調査目的で捕った鯨は市場で有効利用されねばならず、また、販売から得られる収益が調査費用を補ってもいる。ミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラ、ナガスクジラ、マッコウクジラが該当する。ただ
し、マッコウクジラについては水銀やPCBの含有量が多いために販売はされていないようである。 マッコウクジラの水銀について言及したついでに補足しておくと、反捕鯨系の団体は鯨は食物連鎖上で上位に位置し、階層上で下位の餌生物から順次蓄積してきた汚染物質が濃縮して
鯨に摂取されるため、鯨の肉は汚染されているから食べるべきではないと宣伝している。しかし、実際はそんなに単純なものではない。まず、歯を持たないヒゲ鯨と歯鯨では食べる魚の種類が異なる。歯鯨だとマグロなどの大型魚類を食べることが可能だが、ヒゲ鯨が食べる魚とい
えばイワシやサンマなどの小型のものに限られる。これらは食物連鎖上ではそれほど上位ではないから、汚染物質の蓄積具合も大型魚類とは異なる。更に同じ鯨種でも、例えば南極海のミンククジラが食べるのはオキアミなどの動物プランクトン類が主体なのに対して、北太平洋の
ミンククジラは魚類の摂取比率が高いために汚染物質の蓄積具合も異なる。
331:名無しさん@3周年
09/01/06 13:57:52 2JkU9N5I
一方、南極海のミ
ンククジラの肉は極めてクリーンであるために、通常の家畜の肉ではアトピーを起こす子供でも安心して食べられる動物蛋白源のひとつとなっている。また、ベーコンの原料となる皮脂の場合は、汚染物質の濃度が高い場合にはさらし処理などによって全く害が無いレベル
にして販売されている。さて価格だが2006年現在、肉類の市場への1キロ当たりの卸価格は以下のようになっている。ミンククジラの赤肉の場合、2000年における3760円という価格からは半分近くに下がっているが、末端の小売価格ではあまり実感が無い。小売り段階では3
倍程度の価格となっていると言われており、末端レベルでの価格をもう少し下げて欲しいものである。
2005-06年の南極海調査捕鯨分 鯨種 尾肉 尾肉徳用 赤肉特選 赤肉 赤肉徳用 ミンククジラ 無し 7000 6000 1950 1700 ナガスクジラ 無し 9500 7000 1950 17002005年の北太平洋調査捕鯨分(沖合) 鯨種 尾肉 赤肉 赤肉徳用 ミンククジラ 無し 1950 1700
イワシクジラ 18000 1900 1700 ニタリクジラ 16000 1950 1700 また、従来は調査研究機関である日本鯨類研究所から、調査船や乗組員を提供している共同船舶を経由して市場へ売られていたが、2006年春から新たに 鯨食ラボ という会社が5年限定のプロジェクト会社とし
て新市場の開拓に加わった。 IWCの管轄外の捕鯨によるものIWCが管理の対象にすべきかどうか長年の論争に決着がついていない小型鯨類であるツチクジラ(商業捕鯨停止後、年間54頭の捕獲上限を設定してきたが、1999年からは北海道南部の日本海側で8頭の枠を追加)、
ゴンドウクジラ(商業捕鯨停止後の捕獲上限は100頭程度)、イルカ類などは日本で資源状態を調査した上で自主的に捕獲上限を設定して捕られている。これらはいずれも歯クジラ類だが、流通過程では単に「鯨」と表記される場合が多く、ミンククジラのようなヒゲクジラ
類とは風味が違う事を考えると、やはり最低限「歯クジラ」か「ヒゲクジラ」かの区別は書いて欲しいものである。