09/12/27 03:07:26 uxrcVf38
306 :4 :sage :2007/11/08(木) 07:52:30 (p)ID:caduqLEn(8)
以下そのイギリスの子爵の方の回想。
「あの時私は10歳でした。まだ幼かったとは言え、私の父は将軍であり、
いずれ私もそうなるのですから、日本とロシアの戦争の行方をずっと気にしていました。
もっと正確に言えば、同盟国である日本が敗れた後のことを気にしていたのです。
あの日の前夜も、私はそんなことを思いながらベッドに入りました。
日本の艦隊とロシアのバルチック艦隊が近々決戦するかもしれないということで
父はもうしばらく帰っていませんでしたし、もうまもなくロシアにアジアの覇権を握られる、
そうすれば我が大英帝国はどうなるだろう、と幼いながら不安を抱いていたのです。
今でもはっきり覚えています。
あの素晴らしい日の朝、私は執事の呼ぶ声に起こされたのです。
『ロード、ロード、起きなさい』
まだ眠いのにうるさいな、まずそう思ったことを覚えています。
『うるさいな、どうしたというんだ』
『日本とロシアの艦隊が対馬沖で戦闘をしたのです』
『そんなのわざわざ起こすようなことじゃないだろう。それでロシアが勝ったんだろう?』
『違います。日本が勝ったのです』
『なにっ!』
ベッドの上に跳ね起きたのを覚えています。まさかそんなことが起こるなんて、
夢にも思っていませんでした。しかし私の驚きはそんなものでは終わりませんでした。
『今朝方、お父上が急使をよこしたのです。ロード、バルチック艦隊は全滅しました』
『全滅!あのバルチック艦隊が!』
『ロード、それだけではありません。バルチック艦隊を撃滅した日本の艦隊は、
まったくの無傷だそうです』
私は絶句してしまいました。我がロイヤル・ネイビーでさえ何度も苦い思いをさせられた、
当時世界で最強とも思われたあのいまいましいバルチック艦隊が、
相手に何の損害を与えることもできずに全滅した、そんなことがありうるなんて。
死者が甦ったと言われた方がまだ信じられたでしょう。
307 :5 :sage :2007/11/08(木) 07:53:20 (p)ID:caduqLEn(8)
『その日本の艦隊はどんな天才が率いていたのだ?』
『アドミラル・トーゴーという男です』
アドミラル・トーゴー!その名前は以来私の心にずっと刻まれています。
失礼ながら、私は我が大英帝国が栄光ある孤立を捨て日本と同盟を結んだことを
はなはだしい愚行だと思っていました。
野蛮なアジアの未開国と誇り高き我が大英帝国が対等の立場であるなどと!
しかし、あの時私はあまりにも幼稚であったことを思い知りました。
アドミラル・トーゴーのような天才が生まれた国が、野蛮な未開国であろうはずがない。
それどころか、我々こそがこの偉大な国を尊敬し教えを請うべきなのだ、と。
ロード・I、それからの80年、私の日本に対する敬意が薄れたことは一度もありません。
たとえその後の戦争に敗れようとも日本は常に誇り高く偉大でありましたし、
戦争に勝った我々が今日のような苦境にあえいでいるのに
負けた日本は以前よりずっと大きな繁栄を手にしているではありませんか。
ロード・I、日本はこれまでも、これからも、
我々の誇るべき友人であり、偉大な師であるのです。
そのような日本の、それもアドミラル・トーゴーに連なる海軍の血筋の方と
列席できたことは、私にとって生涯の喜びです」
こう語りながら、老子爵が『アドミラル・トーゴー』と口にするたびに
本当に子供に戻ったように目を輝かせるのが印象的だった、
とI先生はおっしゃっておられました。
以下略
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