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2009年2月23日 東京新聞朝刊 13面
言いたい放談 今の大河ドラマは面白い 古崎康成
大河ドラマが面白い。「篤姫」も快調なうちに終了し、今のと
ころ「天地人」も順調な滑り出しだ。とりわけ、「映像派」とし
て定評ある高橋陽一郎氏が演出する回は果敢な冒険を見せてくれ
て目が離せない。
私はもともと歴史ドラマというものにしばしば違和感を抱いて
きた。歴史ドラマの登場人物たちはその劇中の場面より将来のこ
とはすべて未知のことのはずだ。我々はその後の歴史を知ってい
るが、劇中の彼らはまだ知らない。その後何が起こるのか知らず
に行動している。
ところが歴史ドラマでは、登場人物たちが今後、どういう運命
をたどるのか分かった上で演技しているように感じられるときが
ある。また歴史ドラマの中では一つの場面において、登場人物の
言動すべてが後世の歴史に意味のある事柄だけで構成されるとい
う、現実にはありえない場面が出てくることがある。物語の全体
構造と関係ない余計な事柄は削るというのは作劇のセオリーだか
ら、ドラマ全体に意味をなさないやりとりは描写しないこと自体
は正しいのだが、後世に意味をなさなかった事柄は「その場には
存在したがドラマ上の時間の省略で省かれた」形にすることが大
切なのだ。
幸い、今の大河ドラマは、このあたりを理解しているのか、違
和感を覚えない範囲でうまく進めてくれている。
(テレピドラマ研究家)