10/05/07 01:35:37 KG8HB8Zk
「「ウォォォォォォォッ!!」」「「閣下ー!」」「「ちひゃぁぁぁぁ!!」」「「りっちゃーん!」」
この惑星の住人は、アイドルというものに夢中になっている。
一体、何が彼等をここまで駆り立てるのか。全くわからない。
「今度から新しく伊織ちゃんのプロデユーサーになるジョーンズさんよ」
「アンタが新しいプロデューサーね。ダンディで中々イイ感じじゃない。これから一緒に頑張りましょっ♪」
「イオリンノ、デコ、マジサイコー」
「……いきなり何を言い出すのよこのバカー!」
……くぎゅう。
……以上、宇宙人ジョーンズアイマス編、これにて終了それでは失礼。
58:創る名無しに見る名無し
10/05/07 03:11:12 UfoF6wKs
>>57
ワロタ
ナイスクロスw
59:創る名無しに見る名無し
10/05/09 02:32:02 cytwbmyn
どもです。一本落とします。
タイトルは「はい。その真っ赤なのをお願いします。」 使用レスは1レスです。
60:はい。その真っ赤なのをお願いします。(1/2)
10/05/09 02:34:03 cytwbmyn
ぽかぽかと暖かい陽気に、思わず出掛けてしまいたくなる春の午後。都心から離れた田舎にある、どこにでもありそうな小さな家のどこにで
もありそうな小さな部屋で、一人の女性が
座っている。ピンクの壁紙で小物があちこちに置いてある、いかにも女の子が使っていますという部屋の真ん中にいる女性の前には1つのダンボ
ール箱。開いたままの扉の向こうに見える
クローゼットの中の様子から、どうやら仕舞い込んであったものを出してきたようだ。
いま女性が見ているのは一枚の紙。ダンボールの中に閉まってあったそれには拙い文字でこう書いてあった。
『 わたしのお母さん 2年1くみ あまみはるか
わたしのお母さんはえらいです。おうちでたくさんはたらいています。なんでもします。おそうじにおせんたくにおりょうりをします。わた
しが手つだっても、お母さんみたいにうまく出きません。
お母さんはわたしとお父さんをよくおこります。そのときはとてもこわいです。
お母さんはいつもうたをうたいます。おりょうりをしてるときにうたっています。
お母さんのうたはとってもじょうずです。わたしはお母さんのうたがすきでわたしもいっしょにうたいます。そのときはとてもたのしいです
。
わたしもお母さんみたいにうたがうまいなんでもできる人になりたいです。
わたしはお母さんが大すきです。
お母さんいつもありがとう。』
61:はい。その真っ赤なのをお願いします。(2/2)
10/05/09 02:34:44 cytwbmyn
最後まで読み終わってふと顔を上げた女性は、いつのまに部屋に入って来たのか、一人の男性に見下ろされていることに気が付いた。
「あなた」
「思い出に耽っていても、片づけは進まないぞ」
あなたと呼ばれた男性が声をかける。言葉こそ厳しいものの、顔は微笑んで口調は柔らかく怒気は微塵も含んでいなかった。
「それは?」
男性の、何を読んでいたのか気になっている様子に、女性はそっと紙を差し出す。
「どれどれ…… これは、春香の?」
「そう、小学生の時の作文」
ふーん、と言いながら目で文章を追っている。
「もしかして母の日の作文かな?」
「うん」
しかし答える女性の顔はどこか浮かない。
「そんな顔して、どうかしたか?」
「ねぇ」
不安のふた文字を瞳に浮かべて
「私もなれるかな、そんなお母さんに」
強張り気味の表情。自身のお腹を、臨月を迎えていることが一目でわかるくらいに膨らんだお腹を撫でながらの質問は、憧れた母親のように
なれるかどうかへの緊張とはじめてする体験への恐怖からくるもの。
でも、夫は自信に充ち溢れた顔で答える。
「大丈夫。なれるさ、春香なら」
「あなた……」
「それに、オレもいるしな」
「…………」
「…………」
「…………ふふふっ」
「わ、笑うなよ」
「あ、照れてる」
クスクスと楽しそうに笑う妻と、恥ずかしそうに笑う夫。
「さあ、それよりお義母さんの所へ行く前に花屋に寄るんだろう? そろそろ出ないと時間に遅れるよ」
「あ、本当だ。ちょっと待ってて、すぐ用意をするから」
「慌てるなよ、いまは」
「『自分一人の体じゃない』でしょう? わかってまーす」
「……まったく」
パタパタと部屋を出ていく春香。男性もそのあとをゆっくりと追う。
残された部屋の中に残った紙には、作文の最後に赤い文字でこう書かれていた。
『あまみさんはお母さんが大好きなんですね。いつかあまみさんに子どもが生まれたら、天海さんのお母さんとおなじようなすてきなおかあさ
んになってくださいね』
62:創る名無しに見る名無し
10/05/09 02:39:29 cytwbmyn
以上です。改行規制にやられて予定より増えました。申し訳ないです。
でも時期ネタなんで書き込み規制に巻き込まれなくてよかった。
感想、批評、あるいはアドバイス等いただければ幸いです。
では。
63:創る名無しに見る名無し
10/05/09 08:35:33 znY6D2xu
>>62
いきなりちょっと厳しめのこと言っちゃって、申し訳ないけど…
春香がらしくないと言うか、らしさがないと言うか、キャラ名のところだけ入れ替えると、
誰にでもなっちゃう内容に思えました。それこそアイマス以外のキャラでも行けちゃう感じ。
もう少し、春香ならでは、という部分が欲しかったところです。子供の頃の作文の中身でも、
現在のところでも。旦那が一言「転ぶなよ」と言うだけでもかなり違うんじゃないかと。
内容的には、この旦那が誰なのかが気になります。Pなのか?他の誰かなのか?
(それも春香ならでは、と思えなくする点ではありますが)
でも春香が幸せそうなのは何よりでした。
64:創る名無しに見る名無し
10/05/13 22:47:08 2P9DcFoU
こんばんは、メルヘンメイズやよいの大冒険 第6話投下します
規制やら何やらで遅れましたが、では
65:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第24節(第6話 1/5)
10/05/13 22:49:24 2P9DcFoU
第6話 みずの国 ~律子さんは水がお嫌い!?~
亜美ちゃんと真美ちゃんを元の世界に帰して、やよいたちは次の世界に。
「次は水の国ですね」
「どんなところなの?」
「んー… まぁ見てもらったほうが早いでしょうか」
そんな会話をしながら鏡の中を進んできて、出てきたのは…
…一面水で埋め尽くされた世界でした。
正確に言うと、ポツリポツリと浮島がある他は、ほとんどが水、それも流れの早い水というところです。
「これは… 川?」
やよいがそう訊いてみます。
「ええ、以前はもっと穏やかな川だったのですが、ここも女王の魔力でこんなことになってしまいました」
ウサギが答えました。水の流れるほうを見てみると、そこは滝壷になっていました。
下の様子は分かりませんが、恐らく危険なことになっているのでしょう。
「でもこれじゃぁ前に進めません~」
そうです。やよいたちが今いる所も浮島。
どこを見ても、橋も無ければ通路になるようなところもありません。戻ろうにも鏡の通路は跡形も無く、
ふたりが困り果てていた、その時…。
「誰かいるのかしら~?」
向こう岸でしょうか、遠くのほうから声が聞こえます。
「はーい、誰かいますよー!」
とりあえず返事をしてみます。川の流れる音にかき消されない、やよいの大きな声(これはやよいの自慢
だったりします)が響き渡りました。
「誰かいるのは間違いないようですが」
「でもどうやって向こうに行こうかな…?」
二人が話し合っていた、その時。
川の向こうから何かが流れてくるのが見えました。
それはいくつも連なって、流れと同じ方向にどんどん進んできます。
「あれは…」
「いかだ!?」
上流からたくさんのいかだが流れてきます。これに飛び移っていけば…!
考える間もなく、やよいはそのいかだに飛び移って、次々と進んでいきました。
いくつかのいかだを飛び渡って、やよいたちは向こう岸らしきところに着きました、そこにいたのは、
ゆったりした薄緑の服を着た、軽くウェーブのかかった長い目の髪の女の子でした。
「こ、こんにちは」
やよいがとりあえず挨拶をします。
「え… やよい?」
「…? あの、私のこと知ってるんですか?」
そう言われた女の子は、軽く頭を抱えるポーズをした後、
「私よ、律子」
返事をします。
「えーーーーーーー!?」
今度は本格的に女の子が頭を抱えてしまいました。
「…そりゃ確かに、普段は眼鏡におさげの格好だけどさ」
「だからと言って、いつもいつもそんな格好をしてる訳無いでしょう?」
律子さんは不満そうに言いました。
「でもとてもそうは見えませんよ、そんなにお美しいのに」
「…あー、そのウサギのぬいぐるみといい、この状況を説明してくれないかしら、やよい?」
66:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第25節(第6話 2/5)
10/05/13 22:50:45 2P9DcFoU
「なるほど、私は鏡の国にいつの間にか来てしまって、そこから帰るにはこの川を昇らないと、ってこと?」
「そうなりますね、出口はこの向こうです」
「…だんだんこの奇天烈な状況にも慣れてきたわね…」
律子さんはそう言って、目の前の川を眺めました。相変わらずの急流が、律子さんの顔に水玉を飛ばしていきます。
「で、どうやって向こうまで行くの?」
「流れてくるいかだに飛び移っていくのです、ちょっと疲れますけれど」
ウサギが流れてくるいかだを指差しながら言います。
「…分かったわ、足を滑らせたらおしまいよね、うんそうだわ」
律子さんが言いました。顔が妙に引き締まった気がします。
「それじゃぁ行きましょー!」
しばらくは岸に沿って歩いてきたやよいたち。
その岸も程なく途切れてしまい、やよいたちはまたいかだと浮島を飛び移って進んでいくことになりました。
途中、くるくる回りながら飛んでくるトンボ、そしてまっすぐ向かってくるトランプのカードの魔物を
吹き飛ばしつつ、慎重に慎重に…。
そうして何とか進んでいくと、いつものような広い床が見えてきました。しかし…。
やよいたちは目の前の光景に呆然と立ちすくんでいました。
どう見ても3mぐらいはあろうかという隙間。
そしてその下は激しく水が流れて、大きな音をたてていました。
「さすがに上流まで来ると水の勢いも凄いわね…」
律子さんが表情を変えずに一言。
しかし、出口に向かうにはどうしてもここを飛び越えなくてはなりません。
「落ちたらひとたまりもありませんからね… 一気に助走をつけて飛び越えましょう」
まずはウサギから。
少し後ろに下がったかと思うと、猛ダッシュからのジャンプで見事隙間を飛び越えました。さすがですね。
「高槻やよい、いきまーす!」
やよいも同じように、こちらはぎりぎりまで後ろに下がった後、走りながら両手を揃えてのジャンプ。
ウサギほどではありませんが、見事に向こう岸に着地できました。
「次は律子さんですよー!」
…しかし律子さんはピクリとも動きません。ただじっと水の流れを見つめたまま…。
「どうしたんですかー?」
やよいの呼びかけも全く聞こえてない様子。
「…無理よ…」
「え?」
やよいの問いかけに、
「私やよいたちみたいに運動神経良くないし、それに…」
「…私、ここから落ちたら… 泳げないのよ…?」
消え入りそうな声で、そう律子さんは答えました。
「そんな!」
「律子さん!!」
やよいたちの呼びかけにも答えず、律子さんは体を震わせ、そしてその場にしゃがみこんでしまいました。
「どうしましょう…」
ウサギの言葉に、
「どうしましょうって、律子さんを助けに来たんだよ、私達!」
やよいはそう叫びながら、岸の端まで駆け寄ります。そして…
67:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第26節(第6話 3/5)
10/05/13 22:52:15 2P9DcFoU
「届かないなら、私の手に捕まってください!」
律子さんのほうに両手を差し出しました。
「やよい…」
「さぁ!」
「でもそんなことして失敗したら、やよいまで一緒に…」
「私なら平気です、律子さんが勇気を出せば絶対大丈夫です!」
やよいのその目には一点の曇りもありません。ただじっと、律子さんが動いてくれるのを待っています。
「…分かった。やよいに私の命預けるわよ…」
「律子さん…!」
「さぁ、そうと決まったら」
律子さんはやよいたちと同じように後ろまで下がって、そうして目の前のやよいをじっと見ました。
(いつもと違って眼鏡が無いから、目測とかあてにならないわね…)
(…ううん、私は目の前のやよいの所に全力でジャンプすればいいのよ、がんばれ私)
走り始めました。
やよいたちに比べるとそれほど足は速くありませんが、それでも懸命に走り、そして…
少し手前のところからジャンプを!
片手をやよいのほうに伸ばしてのジャンプ。
やよいも律子さんの手を掴もうと必死に手を前に出します。
そしてその二つの手のひらが触れたかと思った瞬間…!
バシャーーーーーーン!
大きな水音がしました。
「律子さん!!」
どうにかやよいは律子さんの右手を掴みました。
しかし律子さんの体は半分以上が水の中に。何とかして引き上げないと、このまま沈んでしまいます。
自分も律子さんの重みで一緒に落ちてしまうのを懸命にこらえつつ、やよいは小さな体で必死に律子さんを
引っ張りました。
「やよ… い…」
「律子さん、しっかり!」
やよいのその言葉で元気が出たのか、律子さんも助かろうと残る左手を懸命に動かし、そして岸の端を
なんとか掴みました。
「んっ…!」
そのままやよいに引き上げられて律子さんは見事岸まで上がり、そしてその場に倒れこみます。
「や、やよい…」
「…やりました、やりましたよ律子さん!」
「うん… 良かった… あ、ありがとう、やよい…」
律子さんは見事に川を渡りきったのです!
68:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第27節(第6話 4/5)
10/05/13 22:53:44 2P9DcFoU
「やぁやぁお見事」
突然、前のほうから声がしました。
見ると、そこには耳のとがった小男が、やたら大きな魚のようなものと一緒にたたずんでいました。
「こんな時になんだけど、何か買っていかないかい? そっちのお姉さんには水着もあるよ」
「み、水着!?」
律子さんは露骨に嫌そうな顔をして見せます。
「こんなところまで来て商売かパップン? 盗品故買屋なんてやめろと何回言ったら…」
ウサギも不快そうな顔でそう言いました。
「何だか分からないけど、この人は悪い人なの?」
「ええ、盗んだものを人に売りさばくケチなコソドロですよ」
「コソドロとは失礼だなぁ、今日はこんなものを持って来てあげたのに」
パップンと呼ばれた、その小男が見せたものとは…
「「鏡!!」」
ケタケタ笑いながら、パップンはその手にした鏡をひらひらと見せびらかしています。
「その鏡渡してもらうぞ!」
「へぇ、お前がそんなことを言うなんて、これはやっぱりたいしたものなんだねぇ」
ニヤニヤと笑い続けるパップン。
「どうせどれもこれも盗んだものだろう、渡さないと言うなら…」
珍しく怒気を含んだウサギの言葉に、
「おーこわいこわい、だったらこっちも本気でいくからねー」
そばにあった魚のようなものにパップンが乗り込むと、それは大きなエンジン音を立てて振動し始め、やがて
少し浮き上がりました。
「こいつ… 動くの!?」
律子さんの言葉に、
「当たり前だぜ、このレイドックってのはすごいんだぜ~」
パップンはそう言って、律子さんの方にレイドックの向きを変えました。
その瞬間、大きな音と共に、レイドックの体がキラッと光ったように見えました。
「さぁて、誰から突き飛ばしてやろうかね~、フヒヒヒ…」
目の前ではパップンの意地悪そうな笑い声が。
「できれば平和に行きたかったんだけど、仕方ないわね」
「任せてください!」
やよいが前に出て、レイドックにシャボン玉を飛ばしていきます。
しかし、レイドックはそれを横に動いて避けてしまいます。
そして後ろに下がったかと思うと、そのままやよいたちの方に突撃して来るではありませんか。
「わぁぁぁぁっ!?」
すんでのところで、やよいは身をかわします。律子さんもその場でくるりと体を廻してやりすごしました。
端のほうまで飛んでいったレイドックは、そこで旋回してまたやよいたちのほうに。
横に動いては、やよいたちのほうに向かって突撃し、横に動く、その繰り返しです。
魚の頭の部分… ちょうど飛行機で言うとコクピットでしょうか、そこに乗り込んだパップンの高笑い。
一方のやよいたちは逃げ回るばかり…
69:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第28節(第6話 5/5)
10/05/13 22:55:30 2P9DcFoU
…ではありませんでした。
「さっきから思ってたんだけど…」
律子さんの落ち着いた声。その顔には笑顔すら浮かんでいます。
「…?」
その律子さんの様子に、みんなは驚きの表情を見せました。
「結構単純な動きしかしないのね、それって」
律子さんが冷静に、パップンに向かってビシッと指を指しながらそう言いました。
「な、なんだと?」
「どうせそれも盗品なもんだから、自分では満足に操縦も出来ないと見たっ」
「う、うるさい!」
そう、それは見事なまでに正解でした。
律子さんの言葉に腹を立てたパップンは、ますますスピードを上げてやよいたちに向かってきます。
しかし怒りで冷静さを失った操縦士のこと、その動きはますますワンパターンになるばかり。
ウサギにもやよいにも、そして律子さんにも楽々と避けることが出来ました。
「へっへー、こっちですよ~」
「こ、このやろー!!」
「やよい、あの尾びれの部分とかどうにかできない?」
レイドックのほうを指差しながら律子さんが。
「しっぽですね、分かりました!」
やよいはレイドックの突撃を横にひょいとかわし、すれ違いざま、尾びれにシャボン玉をぶつけました。
数回繰り返すとあっさり尾びれは壊れて外れてしまい、レイドックの動きが段々遅くなって行きます。
「今度は背びれ」
バランスを崩してまっすぐ飛べなくなり、
「最後は頭ね」
前につんのめって、そのままひっくり返って大破してしまいました。
ちゅどーーーーーーん…
頭を中心として、盛大な爆発が起こると共に、
「ちくしょー!!」
コクピットから勢いでパップンが飛び出してきて、地面に転がり落ちてきます。
「残念だったわね、コソドロさん」
その前に仁王立ちになる律子さん。
「さぁ覚悟するです」
「鏡を渡してもらいましょうか」
ボロボロになった上、三人に囲まれてしまってはどうしようもありません。
「お、覚えてろー!!」
持っていた荷物などをそのままに、パップンはジャンプしながら逃げていってしまいました。
「逃げられちゃいました…」
「でも鏡は無事なようですよ」
荷物からウサギが鏡を取り出しました。
「これで律子さんも帰れますね」
「ええ、一時はどうなるかと思っ… くしゅん!」
律子さんのくしゃみがあたりに響きます。それもそのはず、律子さんはさっきからずぶ濡れになったまま
だったのですから。
「あ、水着もありますね… 濡れたままだと風邪引きますから、これに着替えてはどうです?」
しかし、ウサギの親切心(…だと思います)による提案にも、
「…結構です」
律子さんは、あくまで冷静にそう言うのでした。
70:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第29節(第6話 6/5)
10/05/13 23:00:24 2P9DcFoU
「やよい、ありがとう」
「えへへー」
律子さんも元の世界へ帰っていきます。
「こうやって帰れるのも、やよいに勇気をもらったおかげかしら。その勇気があればきっと何でもできるわ」
「勇気… はい!」
やよいの笑顔とともに、また手にしたストローにキラリと光が灯ります。
両手を広げたまま、やよいは律子さんにお辞儀を。
それを満足げに見た後、律子さんは鏡の中へと入っていきました。
「さぁ、それじゃぁ私達も」
「そうだね、気合入れていきましょー」
「ええ、いよいよ手下達も本気を出してくるでしょう、でもやよいなら出来ると確信しましたよ」
そんな話をしたあと、やよいたちも鏡の中に。
「…でも、帰るまでに服乾くといいね、律子さん」
「ええ、目が覚めたときに体がべしょべしょなんて洒落になりませんし…」
「ん…」
可愛らしい女の子の声。
寝起きらしいまぶたをこすって、辺りを見回します。でも、そこには何もありません。
あるのは真っ暗な空間ばかり。
「…!? …こ、ここどこ!? 誰かいないの!? 私は」
そこまで言いかけた、その時。
どこからとも無く、何かが女の子のほうに向かって飛んできます。
周りの暗闇よりも、更に黒い何か。
それは女の子にぶつかると、一瞬だけ光を放ち、そして…
あたりはまた、静かな暗闇に戻っていきました。
71:創る名無しに見る名無し
10/05/13 23:02:12 2P9DcFoU
第6話は以上です
後半に入って、だんだんこの世界の秘密みたいなものが分かってきます
あと出てきていないアイドルたちも、うまく活躍させられたらいいなと思ってます
72:創る名無しに見る名無し
10/05/18 03:57:35 Ci0cG5EI
ほ
73:創る名無しに見る名無し
10/05/18 15:41:27 I7BPaw3U
>>72
毎度頑張ってるやよいが素敵です。俺も執筆頑張れぅ!
お話自体がすっかりやよいの冒険譚として出来上がっており、安心して読んでいられます。
もともとのゲームのストーリーがうまくアイドルたちに噛みあい、一話ごとにしっかり起承転結を
意識できるのがいいですね。またなにやらヒキが出てきてこの先も気になります。
ぜひ書きとおしてください。
それまでには俺も復活したいorz
74:創る名無しに見る名無し
10/05/20 01:45:49 MDWo6nNR
なんだか最近スレに元気が無いので保守代わりに小ネタを投下
「そろそろ付き合いも長いしな」は人生で一回は言ってみたい台詞
「伊織、やよい、千早、ランクアップおめでとう!今日は俺の奢りだ、好きなだけ食え!」
「あんたの安月給でおごりなんて、何が出るかと思ったけど意外と良い雰囲気の店じゃない」
「ええ、水瀬さんの言う通り、落ち着いた雰囲気のお店で素敵だわ」
「こんな高そうなお店でご馳走になるなんてなんだか悪いです……」
「心配には及ばんよ、酒を頼まないんだったらそこまで高い店じゃ無いしな」
「やよい、大丈夫って言ってるんだから素直に甘えれば良いのよ、
プロデューサーだって見栄の為に生活費まで使い込む程バカじゃないでしょうしね」
「信頼して貰って何よりだ」
「ま、そろそろアンタとの付き合いも長いしね」
「ふふっ、水瀬さんもなんだかんだでプロデューサーの事を信頼してるのね……ところで、ここで何を頼むつもりですか?」
「ああ、ここは鍋が旨くてな、水炊きなんか最高だぞ?」
「それでは、皆で一つの鍋を囲って食べる形になりますね」
「ああ、そうなるが、皆で鍋をつつくのは嫌だったか?」
「いえ、ただ懐かしいと思っただけです、本当に小さな頃はよく家族でお鍋をしていたもので」
「私も懐かしいって程じゃないけどお鍋は久しぶりね、家でやろうとするとテーブルが大きすぎてお箸が届かないもの」
「やっぱり伊織ちゃんのお家は凄いですー!」
「そういうやよいはどうなの?結構お鍋とかつついてるのかしら?」
「ううん、私こういうの初めてだから、すっごく楽しみだよ!」
「えっ……?」
「初めて……?」
「鍋が……?」
(やよい、もしかしてお鍋すら出来ない家庭なの……?)
(お鍋って多人数で食べるなら寧ろ安くなるはずだけど……)
(高槻家の主食がもやしってもしかして本当なのか……?)
「ほら、私の家って家族が多いから一斉にお鍋をつつくと取れない子が出てきちゃうの、、
それで、取り合いになると困るから、こういうお鍋をする時でも最初から小分けにして出しちゃうんですよねー」
「「「…………」」」
「だから、こうやってお鍋から直接取るのは初めてで……って、みんななんで黙るんですか?」
「い、いや……やよいが鍋をつついた事が無いってのが意外だったからなぁ、伊織?」
「そ、そうね……鍋を一度もした事が無いなんてそうそう無いわよね……」
「み、水瀬さん!」
「あっ……!」
「あの……みんなもマスコミの記者さんみたいに家がもやしを齧ってるって思ってます?」
「「「そ、そんな事は……」」」
「これだけは言っておきます。私の家、三食普通にごはんを食べるくらいはできますからね?」
「「「すいませんでしたぁ!!!」」」
注文をとりに来た店員が見た光景は、幼い少女に土下座する三人の男女と言う奇妙な光景であったと言う
やよいに失礼な想像をした奴は腹筋72回な、無理なら27回でも良し
75:創る名無しに見る名無し
10/05/22 18:02:45 ZAO1NT+z
鍋って多人数だと後の人の順番がくるころには肉がなくなってるんだよねw
食べ放題ならいいんだけど
ともかくGJでした
76:創る名無しに見る名無し
10/05/26 00:59:02 xx6glqA/
こんばんは、メルヘンメイズやよいの大冒険7話目投下します
今回は繋ぎ部分なので、あまり面白くないかもしれませんが… では
77:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第30節(第7話 1/4)
10/05/26 01:01:07 xx6glqA/
第7話 そらの国 ~あずささんと迷子のひよこ~
少し冷たい風が吹いています。
下を見ると、そこには図鑑でしか見たことのないような高い山がいくつも、そして雲すらも足元を悠然と
流れていました。
「ここは空の国… 鏡の国の中心部に向かう通路みたいなところですね」
「じゃぁ女王にも…」
「ええ、まだもう少し道はありますけどね」
見渡す限り青い空、まぶしい太陽、そしてどこまでも続く床。
普段だったら、こんなところでお弁当でも広げておしゃべりとかしたくなるようなところです。
でも、やよいは遊びに来たわけではありません。ここにも誰か助けを待っている人がいるはずです。
「誰かいれば、すぐに見つかるよね?」
「ええ、見通しもいいですし、間違ってもここで迷子になるようなことは無いでしょう」
その頃…。
「え~と、ここはどこなんでしょう…」
「私は寝る前にコンビニに行って、お買い物をしてきたはずなのに…」
背の高い女の人が、なにやら言いながら歩いていました。
とは言っても、同じところを右往左往しているばかりで、気が付くとまた同じ所に戻ってきている始末。
「はぁ… 私にもやよいちゃんみたいに元気があったら…」
そう言いながら、近くにあった大きな箱に座って空を眺め始めました。
「どこまでも青い空ね~、さっきまでは綺麗な星空だったのに」
さて、やよいたちのほうは、くるくる回って飛んでいるトンボやトランプの兵隊たちを吹き飛ばしつつ順調に
進んでいました。
シルクハットを頭にかぶった小人たちがたくさん道をふさぎつつ、やよいたちに向かってきました。
やよいはシャボン玉をぶつけてどいてもらおうとしますが、小人たちはその度にシルクハットをすっぽり
かぶって飛んできたシャボン玉を防いでしまいます。
「まったく、ハッタのやつもあいかわらずキチガイじみた物を作るものだ」
ウサギがシルクハットを見ながら言いました。
「こういう相手には普通に挑んでも意味がありませんから」
「どうするの?」
「一度向こうを向いてください」
やよいが言われたとおりにすると、小人はやよいの背中を突き飛ばしてやろうとして、シルクハットから
出てきます。
「そこです」
振り向いてシャボン玉をぶつけると、小人たちはまとめてシャボン玉と一緒に飛んでいってしまいました。
「やったぁ!」
「こういうタイプはどこの世界でもこうやって倒すものですよ」
一方。
「三浦あずさの青空レポート~」
さっきの背の高い女性… あずささんは、まだのんびりと歩いていました。
でも、さっきと違って同じところばかり歩いていたわけではありません。
「ぴよぴよ」
あずささんの足元にはひよこが歩いていました。
不思議なことに、そのひよこは黄色の毛の中に一房だけ緑色が混ざっていて、どこからともなくあずささんの
側にやってきたのでした。
そしてまるであずささんを案内するかのように先へ先へと歩いていきます。
「かわいいですね~」
やがて大きな広間までやってくると、ひよこは懸命に羽をばたつかせて飛ぼうとしました。でも悲しいかな、
ひよこは空を飛べません。
「あらあら、この先に行きたいのかしら?」
あずささんはひよこを両手に持つと、そのままジャンプして向こう側に。
そしてひよこを降ろしてあげます。
「ピヨォ」
ひよこはそう鳴くと、嬉しそうにその先へと向かって走っていきました。
「ひよこさん、良かったわね~」
78:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第31節(第7話 2/4)
10/05/26 01:03:28 xx6glqA/
「やよい、もうすぐですよ」
「うん、でもここには誰もいなかったね」
一方、こちらはやよいとウサギ。
あちこちを歩いてきましたが、結局誰かがいる様子はありませんでした。
もうすぐ出口も見えてくるはずです。
「見通しのいいところですし、誰かいればすぐに見つかりそうなものなのに」
「ひよこさん、無事におうちに帰れたかしら?」
あずささんはひよこと別れた後も、その去っていったほうに向かって歩いていました。
「でも、どうやって私は帰ろうかしら~」
いつの間にか、あずささんは広々とした床があるところまで来ていました。
見る限りここで行き止まりになっていて、これ以上行くところは無さそうです。
「ふぅ…」
ここまで歩いた疲れもあったのでしょう、いつしか、あずささんは暖かい日差しの中でうとうととお昼寝を
始めてしまいました。
「zzz…」
「さぁもうすぐ出口があるはずです」
「うん、それじゃぁジャンプして…」
やよいたちはいつもの広い床までやってきました、そこで見たもの、それは…
「あずささん!」
「こんなところに倒れているとは… きっと魔物に襲われたのでしょう」
二人が辺りを見回すと、ちょうど空中から大きな鳥が降りてきて、ギャァギャァと不快な鳴き声を上げて
いるところでした。
「デッドルースターか…」
「でっかい鳥…」
「いや、あれも機械仕掛けです、さっきのレイドックみたいなものですね」
近くで見ると、それはニワトリのような格好こそしていますが、アヒルのような大きな嘴に茶色い翼、
青や白の派手な体。そして首の下には鏡が…。
「これは女王の魔力で操られているだけ… 何とか止めなくては」
「うん!あずささんのかたき、覚悟ー!」
やよいがシャボン玉を用意してデッドルースターと向き合った、正にその時。
「ピピィ」
突然、1羽のひよこが二人の目の前に現れました。
それはシャボン玉を構えているやよいの方を見ると猛然と走って来て、そしてやよいの足をひっきりなしに
つついたりしています。
「痛いです~」
「これは… ただのひよこのようですが…」
ウサギがひよこを抱き上げると、今度はウサギの顔をつついたり手の中で暴れたり。
緑色の毛が一房ある以外、どうみても普通のひよこのようですが…。
「あらあらまぁまぁ」
あずささんが目を覚ますと、大きな鳥とウサギのぬいぐるみ、そして見知った女の子が目の前にいます。
「…これは…」
そしてもう一度前を見てみると、さっき助けてあげた小さなひよこもいました。
「ひよこさん、無事に帰れたのね」
突然後ろから声が。
振り向くと、魔物に襲われたはずのあずささんが元気にこちらに向かって歩いてくるではありませんか。
「あずささん」
「無事だったんですか?」
「ええ、ここに来るまでにちょっと迷子になっちゃったけど、そこのひよこさんに連れてきてもらったのよ」
「それで歩き疲れたから、ここで休ませてもらってたの」
事も無げに、あずささんは言いました。
79:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第32節(第7話 3/4)
10/05/26 01:04:23 xx6glqA/
「え゛…」
やよいたちの額に汗が。
それにも気が付かずに、あずささんはひよこの方に言いました。
「そちらはお母さんかしら~」
大きな鳥を見ながら、のんびりとした口調であずささんが。
「お母さん…?」
やよいはひよことデッドルースターを交互に見ますが、もちろん似ても似つきません。
この2羽が親子だなんて…。
「そうか、インプリンティング!」
突然ウサギがそう叫びました。
「それって、雛が最初に見たものを親だと思い込むという、あれかしら?」
これはあずささん。
「そっか、だからこのひよこさんはお母さんをいじめていると思って私に…」
「もともとここに置かれていたおもちゃを、偶然このひよこが見つけたのですね」
みんな納得した様子。でも、デッドルースターを止めないことには先に進めません。
どうしようかと、やよいが思っていると…。
「ひよこさん、いらっしゃい」
あずささんがひよこの前まで来て、手をひよこのほうに伸ばしました。
「みんな優しい人だから大丈夫よ、ね?」
「…」
「…」
言葉が通じたかどうかは分かりませんが、しばらくしてひよこはあずささんのほうに歩み寄ってきます。
そして、しゃがんでいるあずささんの胸のふくらみに、ぽふっ、と飛び込みました。
「もう大丈夫よ~」
そう言いながら、あずささんはやよいたちから離れて、そしてやよいたちにうなずいて見せました。
これで安心して戦えそうです。
80:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第33節(第7話 4/4)
10/05/26 01:05:04 xx6glqA/
程なくデッドルースターはその動きを止め、やよいたちはその首にかかっていた鏡を手に入れました。
「これでまた次の世界に…」
と言いかけて、やよいはハッと気が付きました。
「あずささん、ひよこさんは…!」
「…気絶しちゃったわ…」
悲しそうにあずささんが首を横に振ります。目の前で自分のお母さん(と信じているもの)がこのような
ことになってしまっては…。
「ひよこさん… ごめんね…」
やよいの目からも涙がこぼれます。
「…連れて帰るのも無理ですし、残念ですがこのまま…」
とウサギが言いかけた、その時でした。
「…何かしら?」
向こうのほうの空から、何か飛んでくるのが見えました。
「鳥の群れ… ですね。恐らくはこの辺に住んでいたものでしょう」
「みんな帰ってきたですー」
その中から何羽かの鳥が出てきました。それらは全体をライトグリーンの羽に覆われた、やよいが見たことも
ないような美しい鳥でした。ところどころの羽が、太陽の光を反射してきらきらと輝いています。
「ひょっとして、このひよこのお母さんかも知れませんよ」
あずささんがひよこを地面に降ろすと、鳥達が近寄ってきます。
そして目の前の小さなひよこを羽で包んで、しばらくコロコロと揺らして…。
そうしているうちに、ひよこも目が覚めた様子。しばらくは目の前にいる大きな鳥におびえた様子でしたが、
「…ピピィ」
やがて、そっと鳥のほうに体を摺り寄せていきました。
「これで安心ですね」
「良かったね、ひよこさん」
「ひよこさん、さようなら~」
あずささんは鳥達のほうに手を振りながら、鏡の中へと入っていきます。ちょうどひよこはさっきの鳥と
一緒に飛ぶ練習をしているところでした。
「ピィッ!」
ひよこも返事をして見せます。
「さぁ、では私達も。いよいよこれからが本番ですから」
ウサギの真剣な表情に、やよいも緊張の面持ち。でも、ここまで来たら後には引けません。
やよいは目の前の鏡をじっと見つめて、しばらくそのまま風に吹かれたままになっていました。
女王とはどんな人なのでしょう? そして、そこに待っているのは…。
81:創る名無しに見る名無し
10/05/26 01:07:48 xx6glqA/
第7話は以上です
…あずささんだけは、どうやってもバトルに絡めることは出来ませんでした…
82:創る名無しに見る名無し
10/06/01 23:02:02 Y+rNz+gM
ほ
83:創る名無しに見る名無し
10/06/02 19:46:20 g030cuza
も
84:創る名無しに見る名無し
10/06/02 19:51:35 jJT8pdOE
さ
85:創る名無しに見る名無し
10/06/02 22:44:38 jhSWesaA
ぴ
86:創る名無しに見る名無し
10/06/02 23:16:08 eWlLKSGC
え
87:創る名無しに見る名無し
10/06/02 23:49:58 5c++uL5l
ん
88:創る名無しに見る名無し
10/06/03 00:26:27 weCbAScB
埋めるなww
89:創る名無しに見る名無し
10/06/04 00:25:42 cPYOJt1t
>88
いや、ネタになるかと思ってw でも、ほもさぴえん埋
これではチト厳しいな
90:創る名無しに見る名無し
10/06/08 00:27:00 GQBFZrcd
>>74 それではこちらからも小ネタを投入です。
ある日の午後、プロデューサーは律子が普段と違う様子なのに気づいた。
「律子、コンタクトに変えたのか?」
「え?いいえ、ちょっと目薬をさすので外してただけですけど」
律子はそう言うと、そばに置いてあったいつものメガネをかけた。
「そうか…」
「なに残念そうにしてるんですか。前に『律子のチャームポイントは、やっぱりそのメガネだよな』
とか言ってませんでした?」
「あー、そうだっけ?」プロデューサーは覚えてないなあ、というように頭をかいた。
「そうですよ!だからこっちだって、コンタクトじゃなくてずっとメガネを…じゃなくて、そうじゃなくて!」
「なにそんなにうろたえてるんだよ」
「うろたえてなんかいません!私はいつでも沈着冷静です!」律子はどう見てもそうとは思えない様子で叫んだが、
急にいぶかるような目つきでプロデューサーをにらんだ。
「ひょっとして、メガネがキライになったんですか?」
「いやほら、そうじゃないけど、わりとジャマだろ?」プロデューサーは自分の目のあたりで、メガネのフレームを
持って動かすような格好をした。律子は首を振った。
「長年のつき合いですから、もう体の一部みたいなもんですよ。本を読むのにも、仕事をするのにも、じゃまに
思ったことなんてありません」
プロデューサーは何も言わず、口をヘの字に曲げている律子に近づくと、じゃまなメガネをそっと持ち上げた。
91:創る名無しに見る名無し
10/06/17 00:43:10 FDv5VMEM
お久しぶりです、メルヘンメイズやよいの大冒険第8話いきます
すっかり忘れられてるかもしれませんが、完走までお付き合いくださいませ
では6レスほど使わせてもらいます
92:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第34節(第8話 1/6)
10/06/17 00:45:23 FDv5VMEM
第8話 かがみの国 ~春香さんがいっぱい!?~
「うぬぬ、ウサギの奴め…」
暗い暗い、闇の中。
水晶玉を眺めながら、恐ろしい形相で何やら呟いている人影。厚いコートを身にまとったまま、いらいらと
歩き回っていました。
…これこそが、鏡の国を支配しようとしている女王でした。
その視線の先には、水晶玉に映ったウサギ、そしてやよいの姿が。
「ただでさえこのような体になって窮屈しておるのに、人間を連れてこの私に立ち向かうとは…」
女王のいらいらは、周りにいたトランプの兵隊達にもはっきりと伝わってきます。
「お前達、何としてもあの二人を捕らえて、首を刎ねてしまうのだ、よいな!」
「へ、へへー」
「…これが、鏡の国?」
「…そうです、もっとも今ではここも女王の支配下になってしまって、すっかり変わり果てた姿になってしまって
ますが…」
やよいとウサギの二人は、そんな話をしながら目の前の光景を呆然と眺めていました。
そこは鏡の国というにはあまりにも暗くて、うにょんうにょんしていて、ついでに楽しそうな雰囲気の
欠片もないようなところでした。
鏡の国なんて生まれてこの方見たことも無かったやよいでしたが、これが鏡の国だといわれても絶対に納得
できない、そんな自信さえあります。
見てるだけで憂鬱になってきそう、でもここを進まなくては鏡の国に平和を取り戻せません。
ウサギの言葉どおり、ここでは少し歩くとすぐにいろんな魔物に出くわします。
特にこのトランプに足が生えたような魔物は頻繁に出てきては、やよいを追い掛け回してきます。
「トランプ兵ですね… 女王が一番よく使う奴らです」
やよいはその突撃をジャンプで避け、背中を向けている兵隊たちにシャボン玉をぶつけていきます。
床を飛び移っていくと、二人は大きな広間にたどり着きました。
不思議なことに、そこには大きな鏡のようなものがいくつも並べられています。
やよいがその中の一つにそっと近づいていきます。しかし、その鏡にはやよいはおろか、何も映ってません。
「…?」
と、その時。
鏡の中の景色が動いたような気がしました。
それはゆらゆらと動きながら、やがて一つの形を作っていきます。
「春香さん…?」
それはやよいの良く見知った女の子でした。でも、いつもと違う点が一つ、それは服でした。
青と白のドレスに水色のエプロン、色だけ変えればやよいの着ているドレスにそっくりのものです。
「こんばんは、やよ… あ、わぁぁぁぁ!?」
見ているうちに、春香さんは鏡から出て来て挨拶を… しようとして転んでしまいます。
うつぶせに倒れてる春香さんを助け起こそうと、やよいが駆け寄りました。
「あいたた…」
「はわっ、大丈夫ですか… ?」
そこで、やよいは妙なことに気が付きました。
「あの… 痛くないんですか?」
その春香さんは転んで『痛い』とか言ってるはずなのに、顔の表情が笑顔のまま、全く変わることがありません。
まるでお面でもかぶっているかのような…。
その様に、やよいは思わずビクンッと肩を震わせます。本能的、とでも言うのでしょうか。
そうしている間にも、他の鏡からも次々と春香さんが出てきては、やよいの周りにわらわらと集まって…。
「やよいちゃんだいじょうぶ」
「おかしつくってきたんだよ」
「いっしょにれっすんいかない?」
いろいろなことを言っています、どれもこれも同じ顔の表情をしたまま。
93:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第35節(第8話 2/6)
10/06/17 00:46:37 FDv5VMEM
「うう~…」
恐怖のあまり、じりじりとやよいは後ずさりを。しかしすぐに床の切れ目まで追い詰められてしまいます。
それでもやよいの方に寄ってくるたくさんの春香さん。
「こ、こんなの春香さんじゃありません!」
叫びながら、やよいは向こうの動く床に素早く飛び移り、そしてシャボン玉を構えます。
めいっぱいシャボン玉を膨らませて、春香さんたちを吹き飛ばそうとした、その時。
「え…!?」
なんと春香さんたちもストローを取り出し、そこからシャボン玉を出してくるではありませんか!
そこかしこから飛んでくるグレーの小さなシャボン玉。
それぞれが逃げ場の無いやよいにぶつかって、嫌な痛みと共に体中で弾け、頭がくらくらと…。
「やよい、逃げるのです!」
そんな声がします、しかし、全てが遅すぎました。
やよいの体は、床が動いた拍子に崩れ落ち、そしてそのまま奈落のかなたへと消えていきました…。
「や…」
「やよいーーーーーーーー!!」
ウサギの声だけが、いつまでもその場に空しく響いていました。
「…」
床から落ちて、くるくると回りながらやよいは空中をどんどん落ちていきます。
やよいにも、高いところから落ちて地面にぶつかったらどうなるかぐらい、分かっていました。
遠くからはウサギが自分を呼ぶ声。
ぼんやりとした頭で、ウサギさんもあんなに大きな声で叫んだりするのか、とか考えてみます。
「ごめんね… 私、もう帰れそうに無い…」
妙にゆっくり流れている景色を眺めながら、やよいはそう言いました。家にいる家族たちはどう思うかな、
せっかく助けた雪歩さんや真美ちゃん、そしてまだ会えてない伊織ちゃんは…。
やよいはまだ空中を落ち続けていました。
派手で綺麗な色の洋服…
おいしそうなお菓子…
『100%オレンジジュース』と書かれた大きな瓶…
テレビでしか見たことのない外国の風景…
流れていくそれらがはっきりと見えている、不思議な空間。
けれど下を見ても真っ暗で、これからどんなところに行くのかさえ分かりません。
「…」
どれぐらい経ったでしょうか、やがて下のほうにかすかな光が見えてきました。
それが何なのか分かる前に、
ぼふっ…
やよいは自分の体に衝撃が走るのを感じました。
しかし、不思議とそれはすぐに治まり、そしてもうそれ以上体が落ちることもありませんでした。
とりあえず無事に着地できたことは間違いありません、でもここはいったい…。
体の下には小枝と枯葉の山。
クッションになってくれたその上から飛び降りて見ます。しかし辺りを見ても何もありません。
空も見えず、辺りも真っ暗に近い空間…。
「ここも… 鏡の国?」
もう真っ暗とかそういうのには慣れたつもりなのに、こうも何も無いところだとさすがに寂しくなります。
それを振り払うかのように、やよいは元気良く歩き始めました。もちろん当てがあるわけではありませんが、
ここでじっとしているよりはよっぽど良いと思ったのでしょう。
「♪な~やんでも、しっかたない、まそうさ、きっと明日は違うさ…」
94:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第36節(第8話 3/6)
10/06/17 00:47:51 FDv5VMEM
そうしてしばらく歩いていると、
「その声… やよい?」
突然、暗闇から声がしました。
さっき沢山聞いた声、それは春香さんの声でした。
「……!」
いつもならすぐに駆け寄って挨拶とかするのでしょうが、さっきひどい目にあったせいか、やよいは体を
震わせながら、
「こ、来ないで!」
と大きな声で叫びました。
「ど、どうしたのやよい?」
「春香さんがいっぱいいます~!」
「ちょ、ちょっと何がどうなってるの?」
「春香さんは黒くありません、黒いのは中の人だけです!」
もはや何を言ってるのかさえ分かりません。それでも、
「やよい、私だよ」
「落ち着いて、ね?」
と、春香さんは呼びかけます。そこから春香さんが近付いてこないのは、やよいが余計パニックになると
見たからでしょうか。
「…ほんとに、春香さんですか?」
ようやく落ち着いたのか、やよいも春香さんの声に答えます。
「うん… やよいも何かひどい目にあったみたいね…」
ようやく姿を現した春香さんは、青と白のドレスではなくピンクと白の上着、水色のスカート、そして髪には
可愛らしいピンクのリボン…
「…はうぅぅぅ…」
それを見て、やっとやよいも安心できたようです。
しかし…
そこにいたのは春香さんだけではありませんでした。
ふと前を見ると、春香さんの向かいには、おばあさん… でしょうか…。
妙に大きな鼻に紫色の服、そして杖を持ったおばあさんがいつの間にか立っていました。
思わず身構えてしまうやよいたち。そんな二人におばあさんは優しく、しかし力のある声で言いました。
「お前たちは何者じゃ」
「わ、私たちは…」
そう言いかけたところに、さらに言葉が被さりました。
「こんなところに人間が来るとは、珍しいこともあるものだ」
おばあさんの言葉に、
「め… 珍しいんですか?」
と、やよいが尋ねます。
「ああ、珍しいともさ。最近は夢を持った子供なんてものはとんと見かけなくなったからの…
この鏡の国… いや、夢の国に来られるのは、夢を持った純粋な人間だけなんだよ」
「あ、じゃぁ私も…?」
「そうかも知れんの」
春香さんの言葉にも、おばあさんはあっさりと答えました。
「まぁゆっくりしていけ、どうせここは夢の国、時間などたっぷりとある。訊きたいこともあるし、うちで
休んでいかんか?」
どうやら悪い人ではなさそうです。
やよいたちはおばあさんの厚意に応えることにしました。
たどり着いたのは、ゆうに数百年は経っているかのような古めかしい家でした。
しかし中は綺麗に整った家具や調度品、部屋の隅には黒い子猫がのんびりと寝転がっています。
まるで、ここだけ時間の流れが止まっているかのようでした。
「すごく古いお家なんですね…」
やよいは正直な感想をおばあさんに言いました。
「さっきも言ったろう、ここは時間なぞたっぷりあるのだ、と。その辺の椅子に座って待っておれ」
言われたとおりに、二人は椅子に腰掛けます。不思議と、そこに座っていると自分たちまで時間の流れが
遅く感じられるようでした。
95:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第37節(第8話 4/6)
10/06/17 00:50:51 FDv5VMEM
「そうだ」
お茶を飲んでしばらく休んだ後、おもむろにやよいはおばあさんに言いました。
「あの… 私鏡の国の女王を倒しに行かないと…」
「女王だと…?」
「はい、鏡の国の女王を倒すために、ウサギさんと一緒にやってきたんです、私」
「そうか… それでこんなところに人間が…」
おばあさんはそう言って、しばらく黙り込みます。
「ふむ… ウサギというのは知らんが、そのドレスにストロー… もしかして…」
「知ってるんですか、これのこと?」
「ああ、そいつは女王、そして守護者と一緒に封じ込められていたものだ。もっとも、誰でも使いこなせる
ものでは無いから、実質意味の無いものとなっておったのだがな」
「私、これを使っていろんなところを廻ってきたんです、シャボン玉で敵を倒したりして…」
やよいはそう言って、ストローからシャボン玉を出して見せました。
「ほう… 見事だな」
おばあさんの顔が少し緩んだように見えました。
「お前さん… やよいとか言ったか… やよいが今まで通ってきたのは通路だな」
「通路… ですか?」
「昔守護者が女王を封印しに行くときに使った通路、そして敵をおびき寄せるための罠だよ」
おばあさんが説明してくれます。
「鏡の国にいる魔物をまとめて一網打尽にするためにわざわざああいう通路を作ったのだろう、女王への
最短距離、しかも守護者がそこを通るとあらば、そこを魔物で塞いでしまおうとするのは当然のこと」
「その通路が今でも残ってる…」
「左様」
「でも、封じ込められてたって、どういうことですか?」
そこに春香さんが口を挟みました。
「そいつはさっき言ってたウサギとやらに訊いてみるがいいじゃろ。わしの考えが合ってるなら、きっと
答えてくれる… っと、ウサギのところに帰れんことには訊くことも出来んか」
そんなことを言いながら、おばあさんはどこからともなく何やら持って来ます。
「…これを使ってみるがいい」
「これは… 風船?」
やよいたち二人に一つずつ手渡されたそれは、小さな赤い風船でした。
「それを膨らませて、捕まれば上の世界に戻れるはずだ、お前さんたちが本当に夢を持った人間ならな…」
それを聞いて、知らないうちに二人はうなずきあいました。
「「…やってみよう!」」
二人は早速外に出てみます。
もらった風船を膨らませると、何もしないのにふわふわと空中に浮かんで、ちょうど目の高さで止まり
ました。その下にはちょうど両手でつかめるぐらいの紐がぶらさがっています。
「これが…?」
不思議そうに、二人はその風船を眺めていました。
「紐を掴んで地面を蹴ってみぃ」
おばあさんの言うようにすると、風船がふわふわと昇って行きます、そしてやよいと春香さんも…。
「飛べた!」
「すごいですー!」
二人の体がどんどん空中を駆け上がっていきます。
「そのまま上まで戻ったら風船を離せばいい。もうこのような所に落ちて来るでないぞ」
おばあさんが声をかけてくれました。
既に小さく見えているおばあさんに、
「ありがとうございましたー!」
頭だけでお辞儀をするやよい、そして春香さん。
そして… やよいたちはまた、不思議な風景の中を戻っていきました。
泡だらけで、良い匂いのする空間。
たくさんの人に囲まれて、楽しそうに歌う女の子の姿。
そして、やよいが可愛らしい服を着て楽しそうに歩いている姿…。
96:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第38節(第8話 5/6)
10/06/17 00:52:17 FDv5VMEM
「くっ…」
まだウサギは下を眺めています。
たくさんの春香さんからは逃げてきたものの、この姿のままで出来ることは知れています。
「もはや鏡の国は…」
そう言いつつ、ウサギが着ているタキシードの中に手を入れかけた、その時…!
「…!?」
目の錯覚でしょうか。
何も無いはずの奈落のかなたに赤い点が二つ。
それはウサギの見ている前で見る見る大きくなり、やがてウサギの頭上高くまで昇っていきました。
何事かと思って、ウサギは空を見上げます。そこにいた姿、それは…。
「やよい… それに、春香!」
二人の女の子たちは、ここに戻ってきました。
「もう同じ失敗はしません!」
やよいは声高らかに、ウサギにそう言うのでした。
三人はようやく落ち着いて、前を見据えます。
「さぁ、それでは」
「この世界のボスのところに…」
と、そこまでやよいが言いかけた、その時。
「その必要はないでおじゃる~」
突然どこからか、奇妙な声が聞こえました。
「…!?」
周りを見回しても、誰もいません。と思ってると、突然やよいたちの周りが暗く…
「上です!」
ウサギの声に上を見上げると…、何やら丸くて大きなものが空から降って来るではありませんか!
みんな別々の方向に走って、なんとか潰されないようにします。
しかし、
「きゃぁっ!?」
春香さんが足をもつれさせて転んでしまいました。
「春香さん!?」
やよいが春香さんを助けに行こうとしたその時、
ズゥゥゥゥゥゥゥゥン…
土煙とともに、その丸いものは地面にぶつかって、そして着地しました。
春香さんの転んだ、そのすぐ横に。
「た、助かりました…」
春香さんが、倒れたまま大きく息をつきます。
しかしこれは、なんでしょう… 丸いものと思っていたそれには、頭と短い足も付いているようです。
「ワシはビッグトータスでおじゃる、あんまり遅いからこちらからやっつけにきたでおじゃる」
頭の部分から声が聞こえます。
土煙が晴れると、みんなの目の前にはくるっと丸まったひげを生やした、大きな顔がありました。
「ず、ずいぶんせっかちな奴ですね…」
「時計を持って慌てて走ってるような奴に言われたくないでおじゃる… ところで、そこの娘!」
そう言うと、ビッグトータスのひげがびしっと春香さんのほうを指しました。
「え、わ、私ですか?」
きょとんとしてる春香さん。
「そう、お前はどうして走ってるだけで転ぶでおじゃるか」
「…」
97:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第39節(第8話 6/6)
10/06/17 00:53:14 FDv5VMEM
…え?
「普通、こんな何も無いところを走って転ぶ奴なんていないでおじゃる」
「そ、そんなこと知りませんよ~」
ビッグトータスの言う通り、ここには平らな床があるだけです。
「そういえば、鏡から出てきた春香のそっくりさんも…」
「転んでました…」
ウサギとやよいのふたりが、妙に納得したような表情を浮かべます。
「せっかく走ってきたところに着地して踏み潰してやろうと思ったのに… 頭に来たでおじゃる!」
そう言うと、ビッグトータスは短い足で高々と飛び上がりました。
「喰らえ~」
走って逃げる春香さん、しかし…
「…あ!」
何も無いのに、春香さんは床に蹴躓いて、思いっきり空中に。
その横にビッグトータスが落下すると、床がズシンと揺れます。そのせいで、やよいたちは転んでしまいました。
「わ、わぁっ!?」
しかし、既に転んでいた春香さんは、くるっと空中で回って足から着地しました。見事です。
「お、おのれぇぇぇ、またしてもぉぉぉ!」
「わわわわ、私は何も悪くありませんよぉ」
春香さんに腹を立てたビッグトータスは、今度はその短い足で走って春香さんを追い掛け回し始めました。
「春香さん!」
やよいが春香さんを呼びますが、
「いや、これはチャンスですよ? 奴は春香以外目に入っていないようですし」
ウサギはそう言って、やよいを止めました。
「…そうか、じゃぁこのシャボン玉で!」
「ですね、甲羅は固いですから、顔にバチーン、と」
ウサギから離れると、やよいはビッグトータスたちの方に近付いていきます。
「はぁっ、はぁっ、しつこい奴でおじゃる」
「いい加減諦めてくださいよぉ…」
ビッグトータスと春香さんの追いかけっこはまだ続いています。
二人の方に近付いていって、やよいはシャボン玉を用意しました。
走ってくる春香さんの正面に立って、
「春香さん!」
いきなり呼びかけます。
「え、やよい、わ、わぁぁぁっ!?」
春香さんが横に転んでしまうと、その真正面にビッグトータスの顔が!
「そこです!」
そこにやよいは大きなシャボン玉をぶつけます。
春香さんの影に隠れていたやよいの攻撃を避けられず、ビッグトータスの顔面にシャボン玉が炸裂します。
その拍子に、ビッグトータスは足をもつれさせ、そして…
「ぬぉぉぉぉぉっ…!?」
前のめりになったかと思うと、そのまま転んで、そしてひっくり返ってしまいました。
「…」
「…」
足の短いビッグトータスのこと、自分ひとりでは起き上がるのも大変でしょう。
「助けるでおじゃる~」
「…どうしましょう?」
やよいが問い掛けると、
「転ぶのを馬鹿にする人は、しばらくそのままの格好で反省してるといいと思いますっ」
すかさず春香さんが言いました。
「…そうですね。少なくともやっつける手間は省けましたし」
「行きましょうか」
ウサギとやよい、そして春香さんの多数決で、このまま先に進むことに決定したようです。
「た~す~け~て~~~~…」
ビッグトータスの声だけが、その場にいつまでも響いていました。
98:メルヘンメイズ やよいの大冒険 第40節(第8話 7/6)
10/06/17 00:54:10 FDv5VMEM
先に進むと程なく行き止まりに。
そこで、やよいたちは鏡を見つけました。今までのよりも大きくて、そしてキラキラと虹色に光っています。
「これを、こうするといいはず…」
ウサギが呪文を唱えて鏡を持ち上げると、そこからまばゆい光が放たれ、周りの暗闇を消し去って行きます。
そして、そこからは青空の爽やかな光が…
やよいがウサギを持ち上げ、そこらじゅうに虹色の光をふりまいていきます。
そうして、やよいたちは鏡の国の魔物をほとんど消し去ってしまうことに成功したのでした。
「やったぁ!」
「これで… 終わりなの?」
「いいえ、まだ… 女王はこの先に…」
ウサギが言いました。
そうです、まだ終わりではありませんでした。
この先に待ち受ける女王、それを倒さない限り、本当に鏡の国に平和を取り戻したことにはならないのです。
「じゃぁ春香、気を付けて帰るのですよ」
ウサギたちに見送られて、春香は鏡の中に入っていきます。
「うん、ありがとう。 …あ、やよい、一つ訊いていいかな?」
「え、何ですか」
「やよいの夢って… 何?」
「夢…」
やよいは困った顔になってしまいます。
「…春香さんは、何かあるんですか」
今度は逆にやよいが春香さんに問い掛けました。
「私は… そう、やっぱり好きな人と…」
と、そこまで言いかけて、春香さんは顔を真っ赤にしてしまいます。
「…?」
その意味が、果たしてやよいには分かっていたでしょうか。
春香さんを見送って、やよいたちも鏡の中に。
ここから先に進めば、さっきのおばあさんの言ってたことの意味が分かるのかな…?
でも、今のやよいには、それを訊く気は不思議と起こりませんでした。
「さぁ行きましょう。いよいよラストですよ」
99:創る名無しに見る名無し
10/06/17 00:55:17 FDv5VMEM
第8話は以上です
…この表情の変わらない春香みたいなネタを好まない人ごめんなさい
100:創る名無しに見る名無し
10/06/24 01:40:33 tpsf/CpN
冗談抜きで過疎ってるな…;
101:創る名無しに見る名無し
10/06/24 23:02:58 XbVmDTsO
キャラスレ等では忌避される長文の踏み込んだ感想がここに書く最大の魅力なのに
書いても感想が無いんだもの、そりゃ過疎りもするさ
多分、いつもその手の感想を書いてる人達が軒並み規制に引っかかってるんだろうけど
規制が緩む気配は一向に無いからなぁ、参院選も近いし。
後、作品はあるけどPC携帯共に規制でろだに上げる手段すら取れない人とかもいるかも
102:創る名無しに見る名無し
10/06/24 23:46:45 tPNhTuEu
他の人が気合の入った感想書いてると、
一言だけの感想とか雑談ネタとか書き込んでもいいのかなーとか、
逆にしり込みしてしまうとです。
千早中心の短編とか、こっちとキャラスレどっちに投下したら良いかホントにわかんねえデス。
103:創る名無しに見る名無し
10/06/25 00:20:51 Fdbi+h3f
>>102
何度か書いた事がある身としては一言感想でも
興味を持って貰えてるって事で凄い励みになるから大歓迎ですよ、うん
104:創る名無しに見る名無し
10/06/25 02:40:24 qBGF/G9B
>>103
舞台からは客席が見えないから、一人でも二人でも、拍手とかブーイングとかがないと、
見てる人がいるかいないか、わからない、ってことかな。
105:創る名無しに見る名無し
10/06/25 12:13:43 PA558QPR
住人いるんじゃんw と言うかそこでこそ感想投下じゃないのか諸君www
ということで感想未投下の作品総ざらえします。書き手のみなさんほっぽらかって
すみません。
なんか新作書きあがらないと書き込めないようなカンジに追い詰められてました。
>>62
少し前にも春香絡みのフェイクものがありましたが「将来幸せになる春香」はやはり
読んでいて嬉しくなります。いろいろなことがあっても最終的に愛する家族に囲まれる
ビジョンは、春香にはとても似合いかと思いますね。
直下の感想にもありましたが、この男性がPであってくれればと願います。たとえば
「……まったく。俺がプロデュースしてた時と変わらないじゃないか」なんていう説明
セリフがあれば(こういうの嫌う人もいるんですがね)その辺りが想起され、読み手
として安心できます。
ともあれGJ、母の日SSナイス投下でした。
>>74
○> <サン、シ、ゴ...
∧/
というか鍋のあとの雑炊こそ大人数の腹を膨らませるベストアイテムだと言うのにw
この手の話題でやよいが怒るのは珍しいですね。ランクも上がってきたところで雑誌に
不本意なこと書かれてむーってしてたのかも知れない。
鍋ネタはみんなが和気藹々するのがよいですな。たぶん彼女らもこの後、みんなで
楽しくパーティしたんでしょう。
GJ!俺にも一口!
\_○ <ダメデシタ
 ̄ ⌒
>>90
律子のメガネは「律子にとって」ではなく「Pにとって」じゃまってことですか?
理由云々より赤面うろたえ中の律ちゃんにそんなジゴリーなアクションかますのって
スーサイドにもほどがあると思いますがw
一瞬後、電光石火のハリセンが炸裂する中カラダ張ってメガネを守るPと、ばったり
倒れたPからメガネを奪い返す律ちゃんが脳内に降臨しました。
お体お大事にP。そしてGJでした。
>メルヘンメイズ やよいの大冒険
毎回楽しく読んでおります。
あずささんのお母さん臭は大物の域!そして春香さんは転んでこそ春香さん!
キャラクターが特徴的なアイマスですが、うまくエピソードに絡めて進めていると思います。
もうこの辺は原典ゲームでも全く知りませんし、普通に冒険譚の読者として手に汗握って
追わせて頂いてます。
さあ、いよいよラストらしいです(最終話とは限らないでしょうが)。ここまででまだ『出演』
していないアイドルはわずか。ここまで広がった大風呂敷の畳み方やいかにッ!
固唾を呑んで待たせていただきます。このスピードなら慌てることはないでしょう、
どうぞご存分に書き上げてくださいませ。
ではまた。
106:6月25日の事件簿
10/06/25 23:43:50 +/cWLCu+
その事件が起きたのは6月25日の事でした。関係者のE.M.さんは事件当時の事をこう語ります。
「あれは地獄?もしくは地獄の方が生やさしい?」
友人と共に現場に居たというY.S.さん、彼女も事件で大きな後遺症を抱えたといいます。
「あの事件から数日は中々寝られなかったですね。だって耳の中でずっと響いてるから」
事件が起こった会社の社長のM.I.さんも会社が壊れないか心配したそうです。
「事務所全体が震えていました。ガラスが割れるんじゃないかとか色々不安でしたね」
「まあ少なくとも、会社に居る人間は本当にダメージが大きかったと思います」
事件で最も大きな被害を受けたと言うR.Oさん、A.S.さんのお二人。
「絵理を守ろうと夢中だったわ、まあ絵理を守れたからそれでいいけど」
「って何嘘言ってるんデスかこのロン毛!センパイを守ったのは私デスヨ!」
「事実を捏造しちゃダメよ、鈴木さん。貴方は泡吹いて倒れてなかったかしら」
「その言葉はそっちにそっくりお返ししますヨ!」
以下略
事件当時、現場に居た有名アイドルのH.A.さんも事件の影響が大きく出ているようです。
「あの事件の後で変わった事? そういえば転ぶ回数が減った気がしますね、えへへ」
事件の元となったパーティーを主催したと言われるR.A.さんは後悔していると言う。
「もし、あの時僕がどんなのか見せてって言わなかったらあんな事にならなかったとは思います」
「でも気になったんです。でもまさかあんな事になるなんて思いもよりませんでした」
「ただ一つ良かったのはあの事件にも負けず主賓を気持ちよく帰せたことだと思います」
最後に事件の首謀者である、A.H.さんに話を聞いた。
「え、6月25日? 私の誕生会の事ですね!」
「事務所の皆が誕生会してあげるって言ってくれたので、凄く嬉しくて」
「前の日はちょっとだけドキドキして眠れなかったんです」
「あ、それに春香さんも忙しいのにわざわざ来てくれたんですよ!」
「みんなが集まった所で絵理さんが私の年の数だけろうそくが挿してあるケーキを用意してくれて」
「涼さんがろうそくに火をつけてくれたんです。その後皆がハッピー・バースデイを歌ってくれて」
「ろうそくの火を消した時、皆が拍手してくれて。私、凄く幸せだなって思いました。」
「みんなで仲良くケーキ食べました。ケーキはいちごのショートケーキのホールです」
「その後皆がプレゼントをくれたんです。誕生会に来れなかった人たちもわざわざ用意してくれてたみたいで」
「いっぱいプレゼントもらって、改めて思ったんです。私アイドルになれて良かった」
「諦めなくて良かった。皆と会えて本当に良かったって」
「え、プレゼントですか? 細長いの?」
「あー、ありましたね!涼さんにどんなのか見せてってお願いされたから開けました」
「最初何か分からなかったんですけど、楽器だっていうのを絵理さんに教えてもらって、じゃあ吹いてみよーと思って」
「ええ、めいっぱい吹きました。吹き終わった後ですか? 気持ちよかったです!」
「みんなですか? そういえばみんなちょっと疲れてる様に見えました」
「そういえば絵理さんと尾崎さんとサイネリアさんは三人仲良く寄り添って寝てましたね」
「その後ママから、もうそろそろ帰ってくる? って電話が来て」
「片づけをして帰ろうと思ったら、涼さんが後は自分達でやるから帰っていいよって言ってくれました」
「あー、あの楽器ですか。帰って家で吹いたらママに怒られて没収されました」
「酷いですよね! 絶対そのうち返してもらおうと思います!」
おまけと言っては何だが、当日行けなくてプレゼントだけ贈ったと言うM.O.さんに何をプレゼントしたか聞いてみた。
「愛ちゃんへのプレゼントですか? えへへ、今流行のブブゼラです♪」
876プロ ブブゼラ騒音事件 -終-
愛ちゃん、誕生日おめでとうございます
107:創る名無しに見る名無し
10/06/26 01:53:48 yeCXGbiX
アレを一発でふけるとは、やるなI。
108:創る名無しに見る名無し
10/06/26 02:44:32 BbdXUqRj
俺はDSキャラ(特にサブ)のフルネームを把握してないということがよくわかった。
109:創る名無しに見る名無し
10/06/26 09:31:01 Tey6T5rs
まなみさんwww事実上の主犯なのにちゃっかり回避しやがった
涼の時といい、彼女はとんでもないドSの才能を秘めてるんじゃないだろうかw
110:創る名無しに見る名無し
10/06/26 14:11:38 6kIQnvlf
このゴシップ雑誌っぽい書き方が素敵w
111:96p
10/06/27 20:50:36 DDg/z12z
>>31
感想をいただき、ありがとうございました。
遅まきながらお礼申し上げます。
規制で連続投下が難しそうなので、以下に上げました。
uploader imas69008.txt
いろいろアレなので、カトー…じゃなくスルー推奨です。
112:創る名無しに見る名無し
10/06/27 22:19:08 hvcJJR+t
>>111
スルー推奨なんて言葉、上島竜平の「押すなよ押すなよ、絶対押すなよ」にしか
聞こえませんがなにかw
まずはひとつお願いを。
他のスレで「○○ロダ ****.***」とあえて書く習慣があるケースも知っていますが、
アイマス関係のスレでは、アイマスに関するリンクは明示するのが一般的です。
主義でなさっているなら注文はつけませんが、もしお嫌でなければ
URLリンク(imasupd.ddo.jp)
と表示していただけるとリンクをたどりやすいので助かります。
では感想。
なかなか渋いSF仕立てで心地よく読ませていただきました。初段は王道の物語なのに
中段で突然のメタ展開かと思わせ、実はそうではなくさらには、と遷移する描写、
そして待っていましたという感触のオチ。明るいエンドにつながるお話で気持ちよく
堪能できました。
ただ少し残念だったのが、いつもの書き筋はどうも転々する場面描写にはあまり
向いていないようでしで、せっかくの伏線が文脈に埋もれてしまっている感が。
読者的に見ると「手に汗握るジェットコースター展開」と言うより「みんなが求めている
大団円に向かって進んでゆくストーリー」なので、むしろ安心して中盤以降をじっくり
描写していただいてもよかったかな、と感じました。
なんつーか、この先の話が読みたい!です。
ありがとうございました。
113:島原薫 ◆DqcSfilCKg
10/06/28 01:13:42 29Ugbye2
お久しぶりです。島原です。
久しぶりの投稿をさせて頂くのですが、若干、投稿するには心苦しいものとなっております。
タイトルは「女プロデューサー 尾崎玲子」
性描写が多く、絵理がふたなりとなっております。また、未完となっております。
苦手な方、未完作品はちょっと、という方はスルーお願いします。
URLリンク(imas.ath.cx)
元々はエロパロ板に投稿しようと考えていたのですが、サイトを勝手に貼られてしまい、投稿するには気まずい状況です。
押し付けるようで申し訳ないのですが、以前からお世話になっていたこのスレに投稿させて頂きます。
以下、前作のレス返しです。
>>268
感想、ありがとうございます。個人的に「アイマスらしくないSS」の方が好きなようです。
妙なものを作ってしまって読者の方に投げてしまうきらいがあるところは今後の課題としたいと思います。
>>270
以前に書いた伊織の話も死の話ですが、プラスとすれば、今回はマイナス面を際立たせようと思って作りました。
厳しいお言葉も頂くことは覚悟しておりましたので、臆面無く言ってくださったことを感謝しております。
>>280
自分がそういう仕事に就いていたせいか、お葬式につきまとう不条理さには妙なこだわりがございます。
ですが、今回は裏目に出てしまったのかなあ、と感じております。
言葉遣いに関してご指摘ありがとうございました。
>>282、283、284
他のアイドルが参列したかどうか、という問題は確かに悩みましたが参列しないということで進ませていただきました。
デリケートな問題である分、もうちょっと配慮した書き方をすべきだったかなと反省しております。