09/11/27 06:34:45 J5eRaFiy
たとえば女性の前で男が軽々しく生理の話題をするような、そういうフインキだということは分かってほしかったと涼は思う。
なんとなくそういうものは会話の端々で感じ取るものだし、
歳を経るにつれて追いついてきた知識も相まってそういうものを回避する術も身につけていくもの。
ある程度の感性というかセンスというか、そういうものが求められるわけだけれども誰にでも出来ることだと、
少し短く感じる膝上のスカートの端を握る涼は考えていた。
さて、そういうものって何回、言ったでしょう。
だから、おもいっきしそういうものが分からなくて、お子様な彼女の前では通用しなかったわけだ、と。
「涼さん! この筒みたいなのなんですか!? なんかオシャレですね! デザインが!」
そうだね、愛ちゃん。だからちょっと手放そうか。
女装アイドル、秋月涼の目はどこまでも冷ややかだった。
それは無事に絵理ルートも終わって、正式に876プロのお抱えプロデューサーとなった尾崎玲子が人目もはばからず
担当アイドルの水谷絵理と仲良くイチャコラ出社してきたときから始まる。
涼の目の前には綺麗に積まれた書類とかぶりもの。
差し出されたファイルには全日本鹿学会と銘打っており、この度、めでたくイメージガールに抜擢された彼女を876プロ社長、石川実は労っていた。
しかし彼女の、いや彼の表情は暗い。
「いやですから、なんで鹿なんですか?」
「何度も言っているでしょう? 一度、ホテルで行われたパーティーでそこの会長さんと懇意になったって。ほらっ、ちょうどあなたにも角があるしっ」
「……」
おそらく今までの人生の中でしたことのない目を社長に向けていると同じ876プロのアイドル、日高愛が事務所へと入ってきた。
いつものようにやかましい挨拶でもするのかと思ったけれど、肩に抱えた大きなバッグでヨロヨロと部屋に入ってきたかと思えば、ドスンッと地面に置く。
力尽きたのか、そのままその場でへたり込んでしまった。