THE IDOLM@STER アイドルマスター part4at MITEMITE
THE IDOLM@STER アイドルマスター part4 - 暇つぶし2ch72:創る名無しに見る名無し
09/11/19 19:29:07 hVQRYc5f
>>68
……。
……ぐ……GJ!

上にゲーム下敷きらしい感想があったけど知らないので、……せ、せめて俺は
70年後のエピソードだと思っておこう(ノД`゚)
自由解釈型の作品はある意味読み手も好きに読んでいいモノだと思っています。
ですから、できるならば種明かしはナシの方向でお願いしたいです(あ、もちろん
雨晴Pにおまかせしますが)。
いい余韻が残りました。切なさが今日の雨のように心を濡らしました。彼女は
きっと、それでも彼女であり続けるでしょう。



ちくしょー甘いヤツ書いてやるううう!

73:創る名無しに見る名無し
09/11/24 00:38:49 d5tr0G1Z
>>68
まず、こういう内容なのに、繰り返し読める、読んで不快にならないという
その文章の品の良さ、これは賞賛に値すると思います。

その上で、話についてですが。
やはり、関連情報を全て切り捨てていることが、いい方向なのだと思います。
どんな情報をこの文に追加しても、絶対に納得行かない部分が出てくると思うので。
そういう意味では、やはりタネ明かしは、ない方が有り難いかも。

そして、こういった話にも関わらず、読後感がいいです。
これは、内容に関わらず他の作品でも感じることと似ている気がします。
お見事でした。

74:創る名無しに見る名無し
09/11/24 23:08:14 enUCubvo
 初めまして。元未来館の住人です。
 久しぶりにss何ぞを書きましたよ。

 ローカルルールとか、句読点とか、色々とについて。
 ……すんません。ぶっちゃけ抜けがあるかも。
 文法とかは気にせずに、その点はスルーで。
 
 以下雑記。
 >>68 どうやら感想が流行ってるようなので。
 ……さわやか井戸水?

75:創る名無しに見る名無し
09/11/24 23:08:58 enUCubvo
昇華する讃美歌

「そういえば……」
 私は右手に持ったエナメルバッグを置いて、事務所に置いてきてしまった携帯電話を思い出した。
「取りに、行くのかな」私は私に聞いた。否定。
 疲れているから。
 夕陽が地平線に滑り込み、地球のほかのところに太陽がその生命を落としかけているこの時に、私は家に向かって歩いていた。
 着ているのは学校指定のブレザー、ダッフルコート。
 野暮ったいと不評らしい。私には興味がないが。
 家に帰ってから事を考えながら、今日のことを思い出す。
 
 髪留めを取ってレッスンをしていたら、彼が部屋に入ってきた。
 彼は私に向かってタオルを投げた。
「どうも……」
「うん」
 彼は壁際にあったパイプイスに座る。
 何も言わない。
「どうしました?」私は首を拭く。シャツの中は後にしよう。
「いや、なに。ただ単に精神が動揺しているだけさ」
 そう言って、彼は口にくわえたチュッパチャプスをかみ砕く。
「動揺?」
「うん」
 ちょっと待ってみるが、話すつもりはないようだ。
 私は少々困惑しながらも、当たり障りのないところを拭く。
「プロデューサー、私はシャワーを浴びに行きますが……」
 彼は手をふった。私はそれを了解の意ととった。
 スタジオを出て、扉を後ろ手で閉める。
 その目の前を影が走り過ぎた。
 その姿は十メートル先で角に隠れた。
 おそらく千早か。
「千早!」
 答えはない。
 聞こえてなかったのか。それとも無視されたか。
 私はシャワー室に行く前に、事務室を覗く。
 そこには春香がいた。
「春香、千早がさっき走って行ったけど、何かあったの?」
 春香は言いにくそうに「あー……」とだけ言う。
「そう、ですね。あったと言えば、あった、んですよねえ」
「……千早がプロデューサに告白でもしたの?」
 春香は顔をへこんだスポンジのようにゆがませる。
「……う。なんで分かりました?」
「千早からプロデューサのことが好きだって言われていたから」
「うそっ!?」
「嘘じゃないよ」
 私は春香に笑いかける。
 春香は私から目線をわざとらしく外す。
「そうそう、春香」
 春香が振り向く。「なんですか?」
「千早は春香のことは好きよ。だから言わなかったの」
 彼女の表情が変わる前に私は彼女の顔を視界から除く。
 私はシャワーを浴びて、誰にも会うことなしに社屋を出た。



76:創る名無しに見る名無し
09/11/24 23:10:43 enUCubvo
 携帯電話が震える。
 千早からのメール。
 要約すれば、彼女は私がプロデューサを好きだと思っていて、自分の行動を抜け駆けするよう感じて、こうしてメールを送ったそうだ。
 私は後ろに気配を感じる。
 そこにはプロデューサがいた。
「律子……」
「まったく……、感想を言う暇すらありゃしない……」
 プロデューサは首をかしげるが、言った。
「千早が、俺に告白してきた」
「知っています」
 彼はうつむく。
 無言。
 高架を電車が通る。鉄骨が高笑い。
 私はため息をついた。「寒いですね。喫茶店にでも入りましょう」
 彼はあごが肋骨を折ればいいとでも思っているようにうなずいたのだった。

 二人は近くに喫茶店チェーンを見つけ、入る。
 息が姿を消す。光を反射する気概を、温かい空気が削いだ。
 二人ともブラックコーヒーを頼み、窓際に空いた席に座る。
 周りにはあまり人はいない。もう九時を過ぎている。
 彼はひとくち、コーヒーを飲む。
 私も飲んだ。
「俺は……」
 彼がぽつりとつぶやく。
 私は答えない。
「俺は……、俺が何をしたいのかわからない」
 彼が言う言葉はプラスティックとカップの間隙に吸い込まれて、私の耳には届かない。
 私が何も言わなかったことの意味はコーヒーの中に撹拌し、空気に蒸発していく。
「どうして、私に話すのですか?」
 彼は顔を上げた。
「さあ……」苦笑い。ひとくち。「さあね。分からないさ」
「……それは当然のことではないでしょうか。自分が何をしたいのか、それを分かって行動すると言う人はいません。自分が行動した後、それに対して都合のいい目的を作るのが人です」
 私はかばんの口を閉めて、窓の外の空を見上げる。
 まっくらやみ。
 黒い。
 空が溶けたアスファルトの涙をこぼしそうに。
「律子……」
「ええ。私があなたに対して、言葉をかけることはできます。それを望みますか? それとも……」
 私はほほ笑む。
 努めて優しく、憂鬱な笑みを。
「ああ……」彼はうつむいて、顔を右に、上に、左に。そして前に。
「いや、いい。ありがとう」
 彼はやっとほほ笑み、再確認する。
 沈黙の価値を。
 私はコーヒーを飲み、彼に別れを告げた。
「おかね。置いておきますよ」
 彼はうなずく。
 去り際に彼が「なあ。律子……」と言う。
「なんですか?」
「いや、なんでもない……」
 彼は首を振る。
 吹き出して、顔を背けた。
 私は意味もなくほほ笑み、外に出た。
 手に持ったかばんはずっしりとする。
 人の体も心も、
 まだ私には荷が重い。
 けれど、
 冷気にさらされた世界だけは、
 私を優しく叱ってくれそうに思えた。


77:創る名無しに見る名無し
09/11/24 23:12:56 enUCubvo
はい、終了です。

自分の感想として。
ぶっちゃけ面白くはないでしょうね、ええ。
書くのはおもしろかったですが。


誰が誰を好きかなんて、分かるはずもない。

78:創る名無しに見る名無し
09/11/24 23:15:36 enUCubvo
 あ。すんません
 一レス目の本文二行目
 携帯電話→ブレスレットでもなんでもいいので脳内変換お願いします。
 
(やってもーたなー)

79:創る名無しに見る名無し
09/11/25 01:14:01 1S56z1Mp
>>77
流行ってると言うか、どうやらここには、感想書きとでも言うべき人間が巣食っていて
(俺もそうだけど)、時に容赦なく、時に熱く感想を語るのが定番になってる。
というわけで、ここに書いた以上は、好むと好まざるとに関わらず、その洗礼を受けてもらうw

で、ふと思ったけど、そう言えばこのスレ、この手のある種TypicalなSSって、
意外にほとんどなかった様な気が。
その意味では、明らかな新風。大歓迎です。
ダイレクトな「if」を使いながら、当事者以外の情景で纏めてる微妙な空気が面白い。

後は好みの問題でしょうが、比喩表現を、表現をぼやかすために使うことが多かったのが
ちょっと気になりました。キレイな言葉を選んでる感が強いだけに、特に。
それと、口調がちょっと律子っぽくない気も。これはわざとな感じもしますが。

いずれにせよ、中身はいい味出てました。面白かったです。
また次回も待ってます。

80:創る名無しに見る名無し
09/11/25 05:49:48 HvLPlF3W
>>77
いらっしゃいまっしー。今日の昼飯はパンにしよう。

いやいや、面白かったですよ。Pの逡巡なんかサ店の隣の席からコーヒー飲みつつ
ひそかに観察したいレベル。
あえて律ちゃんの心情を排した(律ちゃん視点なのに!)のは実験か計算か迷う
ところですが、SSというより文芸映画でも観てる気分になりました。何度か読み返し、
ゆっくり思い出しながら噛み砕く作品と感じました。
ありがとうございます。ぜひこれからも居ついていただければ幸い。

ところで
>家に帰ってから事を考えながら、今日のことを思い出す。
これ「帰ってから『の』事」でよろしいですか?その方が時系列に無理がないので。

81:創る名無しに見る名無し
09/11/25 21:25:57 5uZ+rDIp
どうも、感想ありがとうございます。

>>79
比喩は比喩だけで一つの作品と思っていただければ。
確かにご指摘はそうだと思います。勘案します。
律子っぽくないのはまあ確かにそうですが、考えてる時の口調としてはそこまで変ではないと思います。

>>80 
すみません! ご指摘の通り間違ってました。ありがとうございます。
文芸映画って……そこまですごいでしょうか。だったらうれしいですが。 
未来館が下火なので、たぶんこっちに居つくかと。

一日しかかけずに、勢いで上げてしまったので、粗が目立つようですね。精進精進。

82:島原薫 ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:33:38 J5eRaFiy
前作へのご感想、まことにありがとうございました。島原薫です。
シリアスで少し毛色の変わったSSの投下が続いておりますが、いつも通りに投下いたします。
タイトルは『TENGAさん万能説』。メインは涼で4レス使用。下ネタコメディとなっておりますので、苦手な方はご注意ください。
投下後終了宣言+前作レスへのお返しです。

>>レシP様、『美希曜日よりの使者』
非覚醒で、でも徐々に変わっていく年頃の女の子を爽やかな筆致で書かれており、さすがレシP様といった作品でした。
最後、Pも口ずさんでいた歌を聴きながら読んだのですが、歌にピッタリな世界観が心地よかったです。
P視点でどこか野暮ったくもあるのですが、二人の距離感のその絶妙さは上手いなあ、と口に出したほどでした。
こんな素敵な日常をアイドル達にはもっともっと送ってほしいですね。素晴らしい作品、ありがとうございました。

>>雨晴P様、『私の声が聞こえますか』
今までのざっくりとした構成からさらにそぎ落とした、ある意味で実験作ともいった作品に驚きました。
ですがそこは雨晴P。品が良いと仰った方もおりますがまさにその通りで、嫌味にならない言葉選びは羨ましくも思えます。
このような、読み手側にある程度任せてしまう、余地のあるSSはあとがきにもあるとおり、不安な部分もあるかとは思います。
けれど、ここの住民様はそこも良しとして来てくれる方が多いですから、もっとこういった作風の作品も読んでみたいです。

>>75様、『昇華する賛美歌』
あえてスッパリとした情景描写、表現が作品全体にマッチしていて心地よかったです。
短い言葉でポンポンと進めているためテンポが良く、カチャカチャと変わっていく、彼女が見る情景を思い浮かべると面白い。
私自身、ここを投下される際には比較的、忌憚のない意見を聞くことが出来て楽しいので、一緒に盛り上げて行ければ良いですね。
それだけに、>>81の「一日しか~」という下りは言いたくなる気持ちは察しますが、少しだけ残念に思います。
いきなり厳しいことを言って申し訳ありません。作品はとても良かったです。これからよろしくお願いします

83:TENGAさん万能説(1/4) ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:34:45 J5eRaFiy

たとえば女性の前で男が軽々しく生理の話題をするような、そういうフインキだということは分かってほしかったと涼は思う。
なんとなくそういうものは会話の端々で感じ取るものだし、
歳を経るにつれて追いついてきた知識も相まってそういうものを回避する術も身につけていくもの。
ある程度の感性というかセンスというか、そういうものが求められるわけだけれども誰にでも出来ることだと、
少し短く感じる膝上のスカートの端を握る涼は考えていた。
さて、そういうものって何回、言ったでしょう。
だから、おもいっきしそういうものが分からなくて、お子様な彼女の前では通用しなかったわけだ、と。

「涼さん! この筒みたいなのなんですか!? なんかオシャレですね! デザインが!」

そうだね、愛ちゃん。だからちょっと手放そうか。
女装アイドル、秋月涼の目はどこまでも冷ややかだった。


それは無事に絵理ルートも終わって、正式に876プロのお抱えプロデューサーとなった尾崎玲子が人目もはばからず
担当アイドルの水谷絵理と仲良くイチャコラ出社してきたときから始まる。
涼の目の前には綺麗に積まれた書類とかぶりもの。
差し出されたファイルには全日本鹿学会と銘打っており、この度、めでたくイメージガールに抜擢された彼女を876プロ社長、石川実は労っていた。
しかし彼女の、いや彼の表情は暗い。

「いやですから、なんで鹿なんですか?」
「何度も言っているでしょう? 一度、ホテルで行われたパーティーでそこの会長さんと懇意になったって。ほらっ、ちょうどあなたにも角があるしっ」
「……」

おそらく今までの人生の中でしたことのない目を社長に向けていると同じ876プロのアイドル、日高愛が事務所へと入ってきた。
いつものようにやかましい挨拶でもするのかと思ったけれど、肩に抱えた大きなバッグでヨロヨロと部屋に入ってきたかと思えば、ドスンッと地面に置く。
力尽きたのか、そのままその場でへたり込んでしまった。

84:TENGAさん万能説(2/4) ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:35:54 J5eRaFiy

「う~、重かった~」
「どうしたのよ愛。そんな大荷物。家出?」
「出来るもんならしたいですよ。もぅ」

ママめ~、と天井を仰ぐ愛に石川と涼は同情する。彼女の母親であり、ライバルアイドルである日高舞の奇行は今に始まったことではない。
二人は苦笑交じりに顔を見合わせると、半べその愛に近づく。
「なにがあったの?」と、石川がバッグを開くとそこには化粧品やダイエットグッズ、とにかく雑多なもので溢れていた。
もう一度、社長と涼は顔を見合わせた。
話を聞くに、企業が勝手に送ってきた試供品の数々らしい。
今なお、屈指のアイドルとして輝く日高舞に使ってもらえればその宣伝効果は計り知れない。
だから新製品が出来る度に事務所を始め、日高家に様々なものが送られてくるという。
涼自身もそういった経験はないことはないけれど、中には怪しげなダイエットサプリや用途の分からないものまであるから手に負えない。
その一部を押しつけられたのだと、愛は涙混じりに訴えた。

妙な平行線を辿る『鹿会議』は一旦棚上げし、うなだれる愛をソファまでうながして涼と石川はバッグの中を探索する。
企業の数だけ商品は存在するのだけれどいやはや、アイドルと同じで一線級にまで上ってくる商品の凄さを再認識してしまうほどの数に圧倒された。
自分もやもすれば、このバッグに詰められている商品と同じ、ただ消費されるだけのアイドルだったことを考えると少しだけ、寒気を覚えた。
しばらくゴソゴソとやっていると、涙も引っ込んだ愛が探索仲間に加わる。
さきほどあれだけ機嫌を損ねていたというのに。
向日葵を思わせる溌剌とした笑顔に、これはこれで愛の美徳なんだなあと涼は思った。
化粧品や大ヒット商品の類似品を漁っていると、隣でピタリと愛がその動きを止める。
その目は確かに何か面白そうなものを見つけた目なのだけれど、愛自身も対応に困るのか、なんとも微妙な表情を浮かべていた。

「どうしたの、愛ちゃん?」
「えーと、涼さん。これって何か分かりますか?」

ピキッと、訊ねられた涼とその様子を隣で眺めていた石川が固まる。
赤い円筒状のソレを、愛は手にとってマジマジと観察し始めた。
ああ、これだけでも色んな法律に引っかかりそうな云々。
出来うる限りのスピードでソレを愛から奪い取ると、涼は後ろ手に隠してしまう。
それはそれで逆効果なのだけれどね。
石川の心の声は届かず、愛は「え? なんで取っちゃうんですか?」と小首を傾げる。


85:TENGAさん万能説(3/4) ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:37:20 J5eRaFiy

「えーとその、これは愛ちゃんには必要ないものなんだよ、まだ」

いや、まだでもないか、いやいや。

「むっ、涼さん。あたしが子供だからって秘密にしないでくださいよっ。その……あたしだって、この前、その、きましたし」

えー? なんの話ー? 私、男の子だからわかんなーい。
もうどこか遠くへ飛んでいきたい涼の隣で、石川はプルプルと震えて笑いを堪えていた。
社長、移籍しますよ。


とにもかくにも、とりあえずとにもかくにもで押し通した涼は事務所の会議室で一人、頭を抱える。
目の前にはストライプデザインの憎い典雅なあんちくしょう。
クラスの悪友達が冗談で持ってきたこともあったけれど、そういえば僕にはなぜか恥ずかしがって触らせてくれなかったなー、とかなんとか。
なぜか地味にヘコみ始めていると、会議室の外がバタバタと騒がしくなる。
愛や絵理は仕事へ出てしまったし、石川社長は僕にコレを押しつけて部屋で仕事をしているはず。
椅子から立ち上がったところで会議室の扉が開き、顔を出した人物に涼は驚いた。

「武田さんっ」

涼の言葉に「そう、僕だ」と、冷静に聞けばトンチンカンな返しも颯爽とこなし、超敏腕プロデューサーの武田蒼一は部屋に入る。
彼とは涼の楽曲提供から何かと親交が増え、武田も涼のことを気に入っているのか、新たな楽曲提供の話も持ち上がっているほどだ。
実は今日もその予定で武田を待っていたのだけれど、先ほどのあれやこれやですっかり忘れていた。
天才の類に入る人間らしく、普段なら涼が彼のマイペースぶりに困惑するのだけれど、先に武田の方が困ったような笑みを浮かべる。
そこで涼も、机の上に置いてある禍々しい物体を思い出した。
顔も真っ赤にワタワタと慌てる様は女の子そのもので、それもまた武田を困らせた。


86:TENGAさん万能説(4/4) ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:38:39 J5eRaFiy

「まあ、君も男だ……そういうものに興味を持つことは、けして悪いことではない」

ぶっちゃけ泣きたかった。よもやこんなコメントを貰う為にアイドルをやってるわけでも、武田と懇意になったわけでもない。
しかして嗚呼、悲劇かな。
こういったものはみっともないほどに言い訳をすればするほど墓穴を掘るわけで。

「いやそのこれはですね、愛ちゃんが持ってきたものでしてけして僕がそういうものの為につかうわけではないわけでしてその」
「僕達は聖人君主ではない。相応の性欲を持つことは、人類の発展においても必要不可欠だ……むしろ、取り繕う君の言葉の是非を問う」

ああ、なんかそれっぽいこと言ってるけどつまり、『いいわけすんじゃねーよ、つまりそれでシ○るんだろ認めろよアン?』ってことだよね。
ここで大人しくハイの一言を言ってしまえばいいのだけれど、思いのほか、重大な問題へと武田氏の中で昇華されている現在、
おいそれと認めてしまうのもそれはそれでまずい気が、と基本的にヘタレな彼のロジックはどこまでも逃げ腰だ。

「君も男だろう?」という武田の言葉に意識を戻す。そう、その一言の重みを君は乗り越えてきたはず。
アイドルアルティメイトを間近に控えた現在、この程度の苦境で潰れるようでは到底。そう武田の目は物語っているような気がした。
彼の視線を受け止め、涼は力強く頷く。
そうだ、この程度でへこたれるほど、僕は弱くないはずだ。自分を信じて!
なんだかんだで、涼もちょっとアレ気な部類なのだろう。
涼は典雅なソレを手に取り、武田の心にも届くように言葉に力をこめた。

「はいっ。僕はこれを使います! 目一杯!」
「……よくぞ言った。桜井君。彼はやはり素晴らしい人物だ。そう思わないかい?」
「え?」

振り向いた先、閉じたばかりのドアの前で桜井夢子は汚物を見る目で彼ら二人に向けていた。


おわり

87:島原薫 ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:39:38 J5eRaFiy
投下終了です。以下、前作へのレス返しです。

>>33
アイマス世界の登場人物は何かしらの才能を秘めているキャラが多いのですが、たまにはこういう凡人キャラもいてよろしいかなあ、と。
ゲーム内ではちょっとめんどくさい人だなあ、とも思いましたが、がんばれオザリン。感想、ありがとうございました。

>>34
最高と言っていただいて、ありがとうございます。好き好きがありますから、気に入って頂いてなによりです。
作中でも未成熟な大人の部分を見せてくれた彼女は私も大好きです。オザリンがんばれオザリン。

>>38
確かに「千早の将来像のパラレル(大意)」 というのは、様々な語弊もあるかとは思いますがなるほど、と思いました。
アイマス公式作品で、いまいち日の当たらないながらも魅力的なキャラがオザリンと絡んだらどうなるか、そういう観点から書きました。
自分もこのオザリンの先を見たいのですが、早々に失踪しそうなのが不安なところ。がんばれオザリン。


それでは次回投下の際もよろしくお願いします。

88:島原薫 ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:47:11 J5eRaFiy
>>86
最後の一文、『桜井夢子は汚物を見るような目を彼ら二人に向けていた。』でお願いします。
最後のオチで……。

89:創る名無しに見る名無し
09/11/27 21:38:15 RiVXuQW9
『昇華する讃美歌』の作者です。

>>87
不愉快に感じられたのならば、すみません。
とはいえ、吐いた唾は飲み込めぬ。
批判されて当然とも言えますので。

なにはともあれ、すごくあけすけな事務所ですねw
TENGAって……最悪だw
これを愛が持っているシーンを想像して微妙な気持ちになった。

90:創る名無しに見る名無し
09/11/27 22:50:14 6g/aRz+K
典雅とかうまいこと言ったつもりかこのスケベw
しかし夢子はアレが何か分かってたんだな…なるほど、うん。見直したよ

>>77
律子っぽくないに半分同意
長音省略するのは技術者研究者レベルの理系ってイメージがあるんでw
ただその使い分けには感心した。
内心と千早に対しては省略してるのにPと交わす時の言葉だけはプロデューサー。
特別な存在であることが上手く表現されていた

91:創る名無しに見る名無し
09/11/28 01:15:38 g7DA16ip
>>87
タイトル段階ですでに噴いてましたw つか武田Pの出オチ+夢子追撃なんて
もう卑怯の域かとwww
島原Pのギャグ系は独特の言い回しが多くて好きです。オチすら(テニヲハは
ともかく)修正後の『見るような目を』より元の『見る目を』の方が作風に合って
るんじゃ、とすら思いまっす。
面白かったです。ところで舞さんにコヤツを送りつけたメーカーは何を考えて
いたんだーっ。

>>89
特にここは作者があとから色々言えるスレなので、俺もついつい書きすぎて
しまうんですよね。創作物が自分の子であったなら親から「いやあ、こいつ
アッタマ悪いんすよ」などと人に紹介されたくはないだろうと心に念じながら
レス返しとかする日々です。
いつか「見てくださいこの子!可っ愛いでしょう!?」と胸を張って言いたいw

92:創る名無しに見る名無し
09/11/29 04:06:47 1p+edY6J
>>87
面白い。やっぱり男の娘ってのは色々と苦労がありそうだ。

表記の揺れが意図的なものかどうか、ちょっとわかりにくいところがあったかなと。
例えば
>「なにがあったの?」と、石川がバッグを開くとそこには化粧品やダイエットグッズ、とにかく雑多なもので溢れていた。
>もう一度、社長と涼は顔を見合わせた。

あと、聖人君"子"。

93:創る名無しに見る名無し
09/12/02 18:33:11 P+TaR6dS
>>87
またまた例によって微妙なネタを・・・w
しかし、これは面白いですわ。笑ったw
長さの割には出てくるキャラが多いけど、各キャラがちゃんとそれらしく描けていて、
しかも無理矢理感もなく、登場する意味も持っている所はいいと思いました。

社長と石川の件は、以前の天海と春香の書き分けでも気になった点です。

94:創る名無しに見る名無し
09/12/06 22:19:01 YT1GPHaw
おひさしぶりです。12月になったので、24日生まれの子でひとつ書いてきました。

(PC規制中のため携帯投下になります。レス毎に手間取ってしまったら申し訳ありません)


【とあるダメダメプロデューサーのおはなし】本文2レス、終了宣言1レス拝借します。

95:とあるダメダメプロデューサーのおはなし(1/2)
09/12/06 22:22:35 YT1GPHaw
あるところに、いつまでもトップアイドルになれない雪歩がいました。

雪歩は、事務所でいちばん臆病でへなちょこで弱虫なアイドル。
ろくにランクも上がれないので、プロデューサーは数週間単位で変わってばかりです。

雪歩を目にした審査員は、雪歩を静かにさとします。

『君は多分、アイドルじゃない道のほうが、歩きやすい女の子なのかもしれないな。
 トップアイドルのステージなんて、普通の女の子なら縁が薄い場所だからね』
 
アイドルに向いていないと言われた雪歩は、やっぱりトップアイドルになれませんでした。

*****

ある日雪歩は、ピンときた社長に声をかけられました。
不在のプロデューサーに代わって、アイドル候補生を担当してくれないかと言うのです。

気がつけば、小さな事務所は、前よりずいぶんボロボロになっていました。
資金も底を尽きかけており、プロデューサーはみんな辞めてしまっていたのです。

社長は雪歩を責めませんでしたが、小鳥さんと相談しているのを見かけたことがあります。
弱小事務所の765プロは、もはや弱小を超えて、倒産寸前まで追い込まれていたのです。

ひとりのダメダメアイドルが、765プロをボロボロ事務所にしてしまったのです。
そんな悲惨な結果を前に、逃走なんて許されません。

お姫さまティアラを受け取った雪歩は、ひとりのアイドル候補生にそれを託しました。

なるべく真剣な顔で、「今日から私があなたのプロデューサーです」と告げましたが、
頼りなさそうな雪歩の本性を、女の子は一目で見抜いてしまいました。

あっさり本性を見破られた雪歩は、今すぐスコップ片手に仕事を放り出したくなりました。
けれど今の事務所にひとつ穴をあければ、たちまちビル倒壊が引き起こされてしまうでしょう。

得意な穴掘りさえ封じられた雪歩は、プロデュース活動を始めるほか無かったのです。

*****

雪歩が事務所に穴を掘れなくなって、早二ヶ月が経ちました。

自分が叱られないレッスンと、ステージに立たなくていいオーディションは、
ダメダメアイドルだった雪歩にとって、すこしだけ安心できる仕事です。

大きなステージを前に、ガチガチになって後ずさりする女の子を励ますこともありました。
なにしろ雪歩は後ずさりどころか、穴を掘って逃げたことさえあるのです。
アイドルのダメっぷりなら、そのへんの誰にも負けません。

765プロの、ダメダメへなちょこアイドルなんて、雪歩の他には存在しないのです。
饒舌になったダメダメ話から、雪歩が我にかえった時には、女の子は大笑いしていました。

雪歩のダメダメだった武勇伝が、女の子の自信と勇気に変わったのです。

女の子から感謝されて、雪歩はなんだか頬のあたりがくすぐったい気分になりました。
それは雪歩が、女の子のプロデューサーになって、初めて浮かべた笑顔でした。

ダメダメだったことで誉められた経験なんて、雪歩の思い出にはひとつもなかったのです。

*****

96:とあるダメダメプロデューサーのおはなし(2/2)
09/12/06 22:26:55 YT1GPHaw
ダメダメアイドルだった雪歩の目には、女の子がとても立派で素敵なアイドルに映りました。
プロデューサーが自信をもって絶賛する女の子が、オーディションで輝かないはずがありません。

女の子は立派なアイドルに成長していきました。名のあるステージを片っぱしから渡り歩きました。
事務所はスタッフでいっぱいになり、雪歩がいくつ穴を掘っても平気なくらい立派になっていました。
それでも、雪歩が穴を掘って埋まりたくなる機会なんて、あれからとんと来なかったのです。

雪歩は、このままずっと女の子がアイドル活動を続けてくれたらいいなと思っていました。

でも、それはあっさり否定されてしまいました。女の子は他にも夢があるというのです。
言葉をなくした雪歩を前に、女の子は素敵な笑顔で尋ねます。

「叶えたい夢はありますか?」

雪歩は少し考えてから、「あなたをトップアイドルにしたいです」と言いました。
女の子は「そうなの」と言ったきりでした。

雪歩は笑って頷きましたが、内心とてもしょんぼりしていました。
女の子がアイドル活動をやめたら、もう一緒に仕事ができなくなることが、急に寂しくなったのです。

*****

そしてとうとう、雪歩が恐れていた日がやってきました。

立派になった765プロの社長室で、これまた立派な椅子に座った社長が、
「今まで本当によく頑張ってくれた。最後にアイドルのお別れライブを開きたまえ」と告げたのです。

雪歩は気乗りしませんでしたが、女の子は活動停止をしっかり受け止めました。
しょんぼりした気分を隠しつつ、雪歩は最後のステージをプロデュースします。

その日の夜の、きらめく舞台は、普段のステージより遥かにキラキラしていました。
雪歩が立ったことのない、トップアイドルだけが歌うことを許された特別なステージ。

何十万もの歓声が、その倍の数のペンライトが、女の子とその歌声を称えています。
けれど女の子は、その素敵な場所さえも、夢のためなら惜しくはないと言うのです。

成功したアイドルを、うらやましく思う気持ちなんて、もうずっとずっと昔に忘れていたはずなのに。
雪歩は、ほんの少しだけ、あの女の子がうらやましくなっている自分に気づきました。

*****

ライブを終えた女の子に夢のことを尋ねると、女の子は雪歩をある場所に連れ出しました。
そこはかつて、雪歩が何度も穴を掘った、オンボロだったはずのビル。
リフォームされた内装に至っては、まるで現在の765プロにいるようです。

女の子は、独立してマネージャーの仕事に就きたかったことを、雪歩に明かしたあと、
ここが765プロの傘下におかれる事務所で、雪歩が望めば社長にだってなれることを伝えました。

雪歩は驚きました。社長になりたい気持ちなんて、これっぽっちもなかったのです。
女の子の夢は輝いていましたが、16歳で社長になるプロデューサーなんて聞いたこともありません。
社長になることを望んでいない雪歩に向かって、女の子は以前とまったく同じ表情をして尋ねます。

「叶えたい夢はありますか?」

雪歩は少し考えてから、「トップアイドルになりたいです」と言いました。
女の子は、「そうなの」と言って、そして。

「今日から私があなたのプロデューサーです」と、満足そうに告げました。

                         (おしまい)

97:創る名無しに見る名無し
09/12/06 22:28:52 YT1GPHaw
投下終了です。読んで頂きましてありがとうございました。
クリスマスらしいSSではありませんが、雪歩の誕生日祝いのつもりで書きました。

これからの季節、可愛い雪歩がたくさん見られたら幸せです。寓話Pでした。

98:創る名無しに見る名無し
09/12/07 09:27:56 G0pnX41e
いやはや、雪歩がPとか想像もつかないけれど
細かいディテールをさくっと切って端的にまとめると童話らしく見えてくるという意味で
すごく彼女にとって適役な気がしますw

「クリスマスは優しい気持ちになるための日だね」
そういう日に生まれた雪歩に、そしてこんないい話を思いついたあなたに、良いクリスマスが訪れますように!
なんかついついそう言いたくなっちゃう微笑ましい作品でした。ありがとう。

99:創る名無しに見る名無し
09/12/09 18:37:13 dXgpJ4P1
>>97
アイドルたちの始まりと終わりが、上手く繋がっている作品だと思いました。シークレットの女の子が最後まで伏せられてたので、千早とか貴音とか想像していたけど見事外した…OTL
章ごとに出て来る、どんでん返し的な展開が面白かったです。アイドルじゃなくプロデューサー視点から見た、雪歩の困惑が良かった。
この二人の続きのアイドル活動が見たくなりました。GJです!

100:創る名無しに見る名無し
09/12/09 22:50:46 qxey7USH
>>97
自分がダメだった事を武器に変えてトップまで引き上げる雪歩Pか、
意外な感じだったけど中々説得力があって良いと思いました。

大きな回り道をしたけど、最高の相棒を手に入れて
再び走り始めた雪歩が夢を掴めますように……という事でGJでした!

101:創る名無しに見る名無し
09/12/11 09:05:42 2wePuB7t
>>97
やっぱ自分の語り口を確立してる人は格好いいなあ、って言うのが、書き手視点の第一印象。
今回は、またその語り口が映えてるし、冴えてる。雪歩の超ダメダメっぷりが、
必要以上にコミカルにもならず、悲壮感も出さずに描かれてると感じました。
またストーリーそのものも、ちょっと現実から浮いた感じが、語り口にぴったりでした。
ストーリー自身も面白いし、暖かい気分になれました。
その点では、誕生日に贈るにふさわしいと思います。

……いい話だった。

102:創る名無しに見る名無し
09/12/12 14:44:37 4o+VDfm6
209 :枯れた名無しの水平思考:2008/10/31(金) 02:00:00 ID:LQW/FTlt0
>>193
書き込めなかった。しょうがないからここに書くね。

マコトとかいうオカマのファンの奴は生物として正常じゃないから気をつけたほうが良い。
たぶんゲイの素質あるよ。
ボーイッシュっていうジャンルは俺も好きだけどあいつはそんなレベルじゃない。
ボーイそのものだろ。
それで性別女とかだから気持ち悪い。


103:97
09/12/13 10:10:42 FhwJucLR
沢山のレスありがとうございます。少しばかり感想返しにお付き合いください。


>>98
こちらこそ感想ありがとうございます。
『Pをアイドルの誰かに任命する』というシチュエーションを考えていただいた場合、
まずは律子を筆頭に、年長組、しっかり者、面白そうだと名乗りをあげる年少組……と続いて、
おそらく雪歩は最後の子なんじゃないかな、と思います。
普段なら絶対やらなそうな事とのギャップを楽しんでいただけましたら幸いです。
そして>>98氏もどうか素敵なクリスマスを!

>>99
担当アイドルについては、読み手の方が好きなアイドルを想像してくれたらいいなと思っていました。
1周目と2周目で違う感想をもっていただけたら、書き手として非常に嬉しいです。
おそらく相手の女の子が誰であったとしても、雪歩の返答は変わらないと思います。
Pは最初のプロデュースを覚えていても、アイドル達は忘れてしまうのがアイマスだったりしますが、
プロデューサーの立場で1周目シナリオを終えた雪歩は、担当したアイドルとの記憶を持ったまま、
うまく2周目シナリオに引き継ぎできたんじゃないかなと思っています。

>>100
説得力があると言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。
二次創作の楽しいところと難しいところに、ご都合主義のバランス、というものがありまして、
捏造した部分が飛躍すればするほど、面白いぶん出来過ぎな話になって、かえって冷めたりします。
(とりわけ自分が一番むずかしいと感じているところでもあります)
読み手に対して説得力のある話を考えることが、自分の中ではテーマになっていた部分もあったので、
今回お褒めいただいてホッと胸をなでおろしています。

>>101
他の書き手さんの面白いSSを拝見していると、自分の語り口は読みづらいのではないか?と
思う事もしばしばあるのですが、お気に召していただけたようで幸いです。
雪歩の超ダメダメっぷりは、表現を弱くするか強くするかで、仰る通りの感想を抱かせてしまう、
さじ加減が難しかったところでした。なので、緩和のため、ダメダメだけど可愛い雰囲気のある、
へなちょこ、という単語をいくつか忍ばせてあります。
誕生日まで随分フライングしてしまいましたが、こちらでも楽しめることを期待しております。



感想ありがとうございました。次回もお付き合いいただけたらと思います。寓話Pでした。

104:創る名無しに見る名無し
09/12/18 22:50:41 YvT/RXE+
二ヶ月近くに及んだ規制もようやく終了・・・って、なげえよ!
しかもいつ再規制されるかわかったもんじゃないよ!
さらにはいろいろ溜まってるよ!
てなわけで、遅ればせながらいない間の分を消費消費・・・

前スレ>>416
成長期に食べ過ぎて脂肪を溜めやすい体質になると、後々面倒が多くなりますしねえ。
とはいえ、事務所に来る以前のやよいは痩せすぎの体格なので。増えたうちの何kgかは成長分とは
別に考えても許容範囲なわけですが、それでも9kgは・・・さすがにですなあ

2スレに収めるため改行抜いたのは、残り容量の関係もあるようですので
改行があった方がスッキリしそうですが、それはまあしかたがないところでしょうね
それにしてもやよいかわいすぎ、あーんど緊急会議の面々のやっちまった顔まで完璧ですなw
なんていうか、光景の浮かぶ話って感じ

>>42
社長もその顔が見たくて、報酬を振込に出来ないって訓辞で言ってましたなあw
そういえば、武田さんも食料援助には一枚噛んでいたようでもあるし・・・って、あれ?
もしかして、実はもう既に765プロ内部で済む問題じゃなくなってる?w
とすると、「夢子ちゃんからピリ辛キャンデーもらいました!」という一文が、書いたやよいが
予想もしなかった波紋を・・・なんてシリアス路線発展パターンとか。とかとか。

>>43
まあ、なんというか。ちょうどその役がここではプロデューサーなのでしょう、と。
765プロの面々がそういう「悪い意味で甘い」側面はあってもおかしくはない、とは思えるわけですし
ここでの締め役であるところのプロデューサーを悪し様に扱うでもなく、聞き入れはするのですから
困った娘たちの面倒を見るプロデューサーの図、ぐらいに眺めておけばいいのでは・・・と思ってみたり。
このプロデューサーなら次にそういう問題を起こせば、その辺りも含めてきちんとシメてくれるでしょうし

>>6
ピヨピヨ悪ノリトークの典型ですな。揚げ足を取りつつ、相手がむくれた反撃すると平謝りする辺りの
地雷を踏み抜くまでは行かないとこで楽しむ距離感が重要っていうか
「そうなるって判っててなぜ言うんですか」がこの種のピヨちゃんの味ってもんですよねー
重量感ある話も楽しいですけども、その合間合間にこういうふうにちょっと軽めのチョイネタ話も
混じるのがここにいてのバランス感覚って感じですw

>>7
なぜか、EVE burst errorのワンシーンが浮かんできたよーなきもしないでもないw

>>14
こういう公式の掘り下げ不足から題材を取ったワンシーンもこれはこれでおいしいですな。
「元気はないが、皿の上はすっかり空」な辺り、はるるん強いなあ、とか思ってみたり。
一つの終わりを前にして、次を考える2人と春香の対比といい、特に律っちゃんはかなり早い時期に
自分の将来展望を用意しているだけに、春香のこれが終わったらどうしよう?ぶりを上手く強調できてると思うです
中盤が会話文のみになっている点が気になると言えば気になりますが、地の文を凝りすぎて
テンポを損なうよりもいいかな、とも思えますし。
公式がこれをやるのには組み合わせが多すぎるだけに、観てみたい光景の一つを見せてもらえました


105:創る名無しに見る名無し
09/12/18 22:54:01 YvT/RXE+
>>19
これが一本目ならなかなかイイ感じじゃないですか!
と言いつつも、いくつか気になってみた点は挙げてみたりw

まず第一に前半の地の文が若干説明的で、なんというかこれまでのあらすじ感が強く、その後が
会話主体になるので、若干重さの差があるかな、と。
この辺りは、本来は長い話の1シーンという意図があるためか、その長い話自体のバックグラウンドを
提示しようという意識が出ている部分かもしれませんけども。

次に、再会シーンの素っ気なさは元プロデューサー側から観ると決して歓迎できる客ではない
という点からよしとしても、舞台監督としてのプロデューサーに対する千早からの思うところ、どんな様子か、
人を指導する姿は変わらない、あるいは変わってしまった・・・みたいな観察があると、少し深読みが絡むと共に
ちょっとした伏線とかに使えたりするかな、とか。
同様に、やたら甘党なコーヒーの飲み方についても、「今」の「カフェオレを頼むなり、
他のものを頼むなりすれば良いのに」という感想ではなく、昔からこんなヘンな飲み方だった、変わらないな
あるいは以前とは違う奇行ぶりに驚いてみるといった具合に、過去にあったはずの経験を千早からの観察に
からめてやると、以前にプロデュースされてた千早としてはそれっぽくなるかなあと。
後は句読点、特に読点や語尾、改行に気を使って、ブロック状になってる文章そのものをちょいとほぐしてやれば
だいぶ印象が化けると思います。

最後の2行は・・・今回については余計だったかなと。
「それはまた、別のお話。」という結びはどちらかというともう少し一件落着、けどこんな話もあったり
する、ぐらいのノリというか、ほんわかした話の方が向くと思うので、こういう冷えた雰囲気の話を
これで締めるとせっかく組み立てた緊張感がちょっともったいないかも。

「話の一部をぶった切って」については、時系列的に連続した一話、みたいな気分でなく
おそらく断章形式というか、長い話の一部分を抜き書きして一つの独立した話にした、ということだと
解釈しているので、直接の続きでなくてもまた抜き書きでどこかのシーンを独立した話で
書いてみて、それを連ねて短編連作でまとめるというのも良さそうですね。
プロデューサーが再起を志すシーンとか、IU決勝前夜とかw

実際、例えば>>10-14のみなとP「one night before」なんかも、見方によっては
春香・律子・伊織の一年間の活動を綴った長い話のラスト付近のワンシーン、という解釈だって
できるわけですし、そういうものだと思えば「一部分とかせずに全部書き上げてから」という言葉は
ちとキツいかなと。
降りてきてた話の一部というのは、「それはまた、別のお話」とも併せて一部分のまとまりに対する
逃げ口上というわけでなし、むしろ前向きな野心の表明と受け止めて楽しみにしてみますw

いろいろ言ってしまいましたが、着眼やシーン情景なんかは秀逸ですし、どんどん楽しみな人が増えてきていて
嬉しいのが正直なところですね。少しずつで良いので、次を楽しみにしています

・・・765プロに戻ることはさすがにないだろうし、個人的には石川社長に拾われて
『弱小プロダクション』の『新人破壊屋』と『熱血ダメ候補生』という三重苦な二人三脚で
挑むは大敵・如月千早・・・なんて展開とか面白そうかなー、なんて勝手に妄想してみたり。
「そんなのだいじょーぶですよ! あたしって丈夫にできてますから!!」

取りあえず、ここまでで一旦

106:創る名無しに見る名無し
09/12/19 06:33:57 Gzt1P7sC
おかえりw
長文感想の人規制だったのかwww

またなんか投下したらそのノリよろしく♪

107:創る名無しに見る名無し
09/12/19 19:53:11 JDFRJ7af
てなわけで、続き続きっと

>>32
考えてみるとリレの藪下さんの見透かしぶりは、相手のことを洞察するという点において
まるっきりダメダメなオザリンにとってはまさに恐怖の対象ですな。
あのヨユー溢れるカルいおネーさんと冷徹な仕事師が瞬時に入れ替わるキャラはまさに天敵と言えそうです。
・・・美希も絵理もカリスマ・一点突破と技巧・多才という形で質が違うとはいえ
明らかな天才タイプ、加えて藪下さんも>>33で言われてみれば、明らかに“見切りの目”は天才のそれ。
オザリンは本編でも意識して凡人に書かれてる部分もあるし、そこがいいとこでもあるけど
この状況にいるのはきっついですな。

もともとDS絵理シナリオはリレっぽくなる要素が多々あっただけに、
ここで藪下さん連れてきてぶつけた配役の妙だけでもそうきたか!と感心しきり。
・・・にしても、勝者の余裕をもって振る舞おうとするオザリンが見事なまでに空回り。
この辺りはやはり圧倒的な役者の違いですが、その役者の違いを何気ない、
さりげないふうに書いてくる辺りが、ものすごい切れ味。堪能。

個人的には「負けて欲しかったので」と「ここでは自分達が官軍。」
「勝ってしまえばこちらのもの。」この辺りの目線の違いに個人的にDS本編で感じた
オザリン最大の欠点と思ってるポイントである、負けを折り込む、あるいは負けた時の
ケアという観念がほとんどないことを思い起こしてみたりも・・・。

>>54
仕事に追われた末、泥のように眠り、食事はコンビニのおにぎりで済まし、何も為さず、
ひたすら布団と仲良くなり続けた週末を過ごして、ああなんだ、結局自分もたまたま
「やること」があっただけで、それ取りあげられると美希と大して変わりゃしないじゃないか、
でもこの夜が明ければ、また美希と過ごす平日がやってくる、必要ではあるけども怠惰な時間を終えて、
せわしなく、一挙一動に振り回されてはいるけども間違いなく充実しているあの日々が
・・・みたいな方向性でくるかなー、とかタイトル聞いた段階で思ってなんてみたりw
うん、ただそれより面白かったっていうか「それだけだとミキの出番がないのー!」

なんのかんの言って通常美希の方が地に足は付いてる感じがするんですよね。覚醒だと羽が生えて飛んでいって
しまってるというか、早く身につけたものは早く失われるというか。アレはアレで好きだけども
覚醒美希コミュで一番好きなのはランクB雑誌取材だったりするヒネクレ者としては、あわてて
背伸びはほどほどに、とか言いたくなったりすることも。

自分勝手の好き放題やるだけやっておいて、後になって急に不安に駆られて「メーワク、だった?」
ってやる辺りが実に美希でいいのです。律っちゃんとか千早辺りもわりとこうやって美希に撃沈されてるよなあ。
・・・伊織とかはそれを見て「あいつのああいうとこって、ずるいわよねー」って自宅のベッド辺りで
こっそりやや羨望混じりの溜息ついてたりして?
トイメンの話なのに、そこから「この美希」と周辺の人々の広がりを感じて楽しめるという
相変わらず非常に妄想スイッチのキック率が高い仕上がりでした

>>57
どこの法力僧だw

>>59-64
厳密に言うとSS含む同人自体もグレーゾーンを目こぼししてもらってる分野だったりするので
とびきり濃いグレーというか、一般的には完全にクロの無許可での歌詞直接書きは避けておいた方が無難・・・という認識はあります。
ワンフレーズぐらいを抜き出してまるで~の歌のような状況、的に示すのに使う場合とかはまだしも
ひたすら歌詞を連ねて「歌っている」描写にするとかはよしといた方が良さそうかと。

この辺り暗黙のルールというよりも、本来は二次創作そもそもの立ち位置が黙認、あるいは黙殺だよって感じなので。

>>106
規制だったのですよー
こんなんあくまでも気が向いた時にやりたいようにやるもんなんですが
気が向いてる時にできないってーのは気が向かない時にやろうとするのと同様
ストレスですなあw

108:96P
09/12/24 00:33:56 6UyVgIxX
クリスマスおめでとう!
クリスマスなので、1本上げさせていただきました。
uploader imas60054.txt
クリスマスということで、どうぞ適当にお読みください。
大変遅くなりましたが、前スレでご感想を下さいました
>>314 >>315 お二方、ありがとうございました。
来年もみなさんの創作意欲が変わらず旺盛でありますように。

109:創る名無しに見る名無し
09/12/24 05:59:01 0M38X0j3
>>108
ちょ、これこの後小鳥さんどうすんの! って思わず噴きだしてしまいました。
しかし冷静に考えてみるとこのドタバタこそが、「音無小鳥」という
結婚適齢期かつ本人もその気で、社会人経験もあり綺麗で可愛い女性が
何故か「クラスの友達思い出せない彼氏もできない」状態のまんまでまた1年経ってしまう、
そんな事態の根本原因なのかも、とか思ってしまったり。

このPさんも周辺状況きっちり揃わないとアプローチできなさそうなシャイな人な感じもするので
まだまだ小鳥さんの淡い想いが叶うのには時間がかかりそうなw
軽妙な筆致のラブコメディ、良い出来でしたよ! 彼女にちょっとした幸せを送るのは、読者の妄想の中で、ってことでw

110:創る名無しに見る名無し
09/12/24 23:28:30 MDvYctaM
>>108
これは……プロデューサー、トラブルのふりして逃げたか?

111:創る名無しに見る名無し
09/12/24 23:40:28 fmUL0wh5
え、クリスマス?
あっはっは、そんなの昨日の話じゃないですかw
・・・チケットなしでも行ってみるもんだな、まさか到着後5分でアテが出来ると思わなかった

残りの分もだいたい書き上がりましたが、投下直後にいきなり別の話題の塊を投げるのはアレでもありで
まずはこちらから先に行かせていただきます。

>>108
えーと。
メリークリスマス?w

好みの問題かも知れませんけども、まだ断定調語尾が地の文で連続しててブツ切り感があるなあ
というのをちょっともったいないポイントとしてあげさせてもらいます。


こういう肝心なとこがしまらないのが笑えるコメディ、いいですね。
ラストシーンの後、砂の像と化したピヨちゃんと、受話器から聞こえてくる
「あれ? 小鳥ー? 小鳥どしたー? 返事しろー??」
という友人の声まで妄想できたりなんかして

プロデューサーにしても、もしかすると
『小鳥さん、メリー・クリスマス!』
「あっ、え?」
『じゃ、じゃあそれだけです!(ピッ)』
「・・・あたしにどーしろと?」
みたいな、プロデューサーの方は伝わってると思い込んでるなんてパターンとか妄想してみたりして

なんていうか、友人間のいいからかいのネタを提供してしまうわ、占いの状況にカウントして良いのか悪いのか
ビミョーな位置取りに頭抱えてみたりとか、自業自得とはいえ今日は一日仕事なんて手に付かなそうな
ショックですなw

「・・・。あの、音無殿はなぜああも放心しているのでしょうか?」
「貴音がわからないもん、自分が知ってるわけないだろー。悪いモノでも食べたんじゃないの?」
なんて声まで聞こえてきそうです。
まあなんて言うか、いろいろ前途多難ですんなり事が運びそうもなく、ボタンの掛け違いが多発しそうな付き合いになりそうですが。
そんな二人で迷走mind(エリーコ前説版w)しつつもラストでは概ね幸せにうまくいくんだろーなーと楽しく眺めてられる感じ。

ラブコメ書きも砂糖細工師の雨晴Pに、スラップスティックのふた離Pとなかなか揃って来てる感がありますが
96Pのハートフル路線も確実に地盤を固めつつありって感じかな。
デビュー作以来のシャイでウブでちょっと迂闊で間の悪い、そこがかわいい小鳥さんおいしかったです。

112: ◆KSbwPZKdBcln
09/12/24 23:54:04 umEg06Vh
聖なる夜みなさまいかがお過ごしでしょうか



年末飛び込み案件のバ―

         いやいやメシのタネだ

               ―ありがとうございますーっ!



さっぱり間に合う予感がしませんでしたが本年のクリスマスは数日後になりそうです。
今年中にあることを祈りつつ皆様にはサンタさんがいらっしゃることをお祈りします。

96P面白かったっす。じっくり語りたいので感想はまた。
これからチビどものプレゼント梱包するです。
ではでは。メリクリおまいら。

113:武田の歌姫調査1
09/12/27 00:31:24 CS9vXHop
「もし幸っせー近くにあーてもー♪」

技術の進歩はめざましい。画面の向こうと繋がっているかのようなこの音質。

酷いな。
技量もだが、まるで歌詞を無視した明るい歌い方。
なぜこの曲をこの子に歌わせているのだろう。
まぁ、大体察しは付くのだが。確かに面白い趣向ではある。
「蒼い鳥」……いや、如月千早を知らぬ者は今や殆どいない。
いよいよ、僕の城に招待しなくてはならない頃合だろうな。
いきなり会う前に人柄も確認しておきたいのだが、
彼女はあまり他人を近付けないらしく、欲しい情報が出てこない。
何か方法はないものか。
例えば彼女が気を許していて、彼女の情報を教えてくれそうな存在。
と、そんなに都合良くはいかな……

「千早さん。私の歌、どうでしたか?」
「ええ、とても可愛…コホン、素敵だったと思うわ、高槻さん」
……都合良くいくかも知れないな。

114:武田の歌姫調査2
09/12/27 00:35:49 CS9vXHop
「プロデューサー、見ててくれましたか?」
「ああ。やよい、今日は良かったぞ」
「うっうー、ハイターッチ!いぇい!」
「俺はこれから次の打ち合わせだ、先に帰ってるか?」
「うーん、ウチに電話してから決めます」
「そうか」
「メール入れておきますね」


「"お母さんがウチに帰ってるそうです。私は建物の中にいておきます"……送信」
どこで時間を潰そうかな?適当にぶらついてみよう。
「うー、えっと」
やっぱりテレビ局の中って複雑……。道、間違るところだった。
「おや!?おやおや!?」
「はわっ」
「高槻やよいちゃんじゃないですか。おっはようございます」
最近よく見る芸人のEさんだっ!
「お、おはようございまーす!」
「おっと出ました!ガルウィング!撮った?ねぇ撮った?」
がる……?カメラさん苦笑いしてる。
「ところで今暇かな?」
「えっと、今は人を待ってるんです」
「あっらー、今からお仕事?」
「そういう訳でもないんですけど」
「じゃ、ちょっといいかな?」
「うーん……」
「時間はかからないから。ね?」
これってチャンスなのかも?けど……ううう、困りました。

「おや?君は……」
「へっ?私、ですか?」
「あっ、武田蒼一!?」
「仕事中?」
「いえ、何でしょう?」
「なーに、梅こぶ茶のストックがなくなってね。」
「お茶……ですか?なら私、いい所知ってるかも!」
「ほう……?君たち、彼女をお借りしても良いかな?」
「は、はい」
あっ、あっと言う間に行っちゃった。
「あの、私……」
「とりあえず、その辺に座ろうか」

115:武田の歌姫調査3
09/12/27 00:42:30 CS9vXHop
「聞いたことのない店名だ」
「"あなば"らしいです。同じ事務所の子がお茶が趣味で」
「その子の名前は?」
「萩原雪歩さんです」
……ハズレ、か。
「あっ、そうだ。私、765プロの高槻やよいですっ!」
「知っているよ」
「えっ、ホントですか?ありがとうございます!」
「………」
「………武田、さん?」
「ん?」
「失礼かもですけど、どういうお仕事を?さっきの人たち、驚いてましたけど」
テレビに顔を出し始めたのは最近だし、知らなくとも無理はない、か。

116:武田の歌姫4(終)
09/12/27 00:46:35 CS9vXHop
「僕は音楽プロデューサーだ。色々な音楽活動に携わっている」
「よくわからないけど、何だか凄そうですー!」
「よくわからないのに凄いのかい?」
「うちのプロデューサーも凄い人なんですけど、大物って呼ばれたりは……」
「君の事務所で凄いと言えば、まず如月くんじゃないのかい?」
「千早さんですか?」
「あの年齢であの実力、まさに歌姫だ」
「そうですね、いつも歌とか音楽のこと考えてるみたいです」
やはりそうか。
「一人でいる事が多い?」
「前はそんな感じでしたけど…最近は明るくなりました」
「というと?」
「歌ってる時も難しそうな顔が、楽しそうになったって言うか」
「ふむ。確かに近頃彼女の歌は変わった」
「理由は分かりませんけど……私、ホッとしました」
「?」
「もしかしたら歌うの楽しくないのかな、って思ってたから」
「……なるほど」
「やっぱり歌はみんな一緒に楽しまなきゃ損ですよねっ」
「!……そうだね、僕も同意見かな」
「えへへ」
「質問ばかりですまなかったね。これを。僕のメールアドレスだ」
「えっ?」
「君に少し興味が湧いた。今日のお礼もしたいしね」
「あ、でも、プロデューサーに聞いてみなくっちゃ……」
「返事を期待しているよ。じゃあ僕はこれで」
「あ、はい。さよーなら!」
「最後に聞きたい。君は如月くんをどう思う?」
「私は……」
高槻やよい、か……意外な掘り出し物かも知れないな。



「そうですか。高槻さんが、そんな事を……」
「周囲に愛されているようだね」
「……からかってます?」
「そう見抜いてもらえたのは久しぶりだ」
「もう……」
「で、この話、受けてくれるのかい?」
「こんなに光栄なお話、蹴れるはずかありません」
「では……」
「オールド・ホイッスルへの出演依頼、お受けいたします」



117:いさしげP
09/12/27 00:51:46 CS9vXHop
×道、間違る
○道、間違える

×武田の歌姫4
○武田の歌姫調査4

という訳で駄文乱文失礼いたしました。
ではドロン(死語

118:創る名無しに見る名無し
09/12/27 16:44:24 xkcG4csc
>>117
GJ

119:創る名無しに見る名無し
09/12/28 02:05:38 KM2mmatX
>>117
「……からかってます?」
「そう見抜いてもらえたのは久しぶりだ」

このやりとりにものすごくやられた感があります。ああ、確かにこれ武田さんだ、みたいな
武田さんがやよいを認めるに至ったミッシングリンクという目の付け所も面白いところで
物事をややこしく考えてしまいがちなオトナの中にあって、一言で簡単な真理をブチ抜くという
やよいの使い方も定型ながらその分わかりやすいのでこれはこれで、というところか。
ただ、台詞と内心のみという形式、やよい視点武田視点の切替がところどころにあること、などは
多少好みが分かれるところかも。

全体としては「ああ、確かにこういう出来事はありそう」と思いながら読ませていただきました。


120:創る名無しに見る名無し
09/12/30 11:32:47 tPNoIYcw
>>117
先日、MASTER SPECIAL WINTERの、やよいの歌う「チキンライス」を聞いて、
『やよいは、どんな歌でも自分の歌にしてしまう、実はとっても凄い歌い手じゃないか?
 武田さんの見立ては、見事なまでに正しかった!』
とか思ったばかりのところだったので、これはまさにティンと来ました。
武田さん凄いよ武田さん。

内容としては、地の文挟まずに会話だけで、内心まで表現できているのは見事ですね。
例としては
> 「!……そうだね、僕も同意見かな」
ここなんかがそうで、本来的に持論と同質な部分を、逆に他人から単純明快に示された、
その驚きの感じが伝わってきます。

あとは、上記でも出てますが、千早との会話のくだり。
飄々として、何考えているかわからないけど、実は遊び心たっぷりな武田さんの人柄が
余すところなく描かれている気がしました。
さらに、流れの中で自然に、また本来の意味で「……なるほど」と言わせているところとか。

ひとつ気になったのは、やはり視点の移り変わり。
全体に会話文の比率が大きいので、どうしてもとまどいます。
視点を変えるなら、もう少し会話文以外の比率を上げてわかりやすくした方がいいのでは。
もしくは、やよい視点の部分は、第三者視点の三人称の地の文でもよかった気が。

とにかく、全体にキャラも活き活きしていて、大変面白かったです。

121:創る名無しに見る名無し
09/12/30 11:52:54 tPNoIYcw
>>108
今さら読みました。
ロダまで取りに行くのが面倒くさかったので。てへ

って、ちょwこれはwwww
いやいや、解釈のしようもいろいろあるぞ。たとえば、
「本人は聞いてなくても、小鳥さん宛の『メリークリスマス』と最初に言ったという事実は有効」とか
「その人が人生を左右する、と占いに出ていたけど、別に幸せな方向とは限らない」とか
うーん。この辺はさすがに人気の占い師。解釈に幅を持たせることばかり言ってますなw

いやあ、しかしこれは面白かったです。
ストーリーがちゃんとあるのに、ハッピーでもアンハッピーでもないというか、どちらでもあるというか。
その落とし所が見事で笑えるっていうのが。


しかし、レス番がそのままP名ってのもw

122:創る名無しに見る名無し
09/12/30 17:46:37 Cjt81kYy
取りあえず、今年の分は今年のうちに・・・ってことで、>>107の続き行きますよっと

>>68
個人的に雨晴Pの文章については詩的な情景描写とそれを支える独特のフレーズが特長と思っていますが、
それ使ってこういう方向で冒険してくるとは実のところちょっと予想外な方向で、煽っておきながら意表突かれてみたり

良くも悪くも情感と情景の美しさに特化した一作のように思います。普段がグラニュー糖の粒のキラキラなら
これは儚さと共に触れれば指を裂く鋭さを持ったガラスの破片のそれといったところでしょうか。
それ以外のモノを削ぎ落とした方向については今回については多分正解。付け加えすぎると
かえって濁っちゃいそうですし。

物悲しいとか切ないとか、そういういろいろよりもまず、ただただ、きれい。
生々しさが無いことも感じ取れますが、そこの辺りは意図と好みの問題で、今回はそれを求めてない
と言われれば、それはそれでもっともって感じですな。
うん、これはけしかけてみた甲斐があったw
思った以上にいろいろなことが出来そうなのを再確認させていただきましたので、また次も期待させてもらいます

>>77
ああ、確かに携帯電話を忘れてるのに、携帯電話が作中ガジェットになってる
・・・仕事用とプライベート用を分けてるんだよ、きっと!
千早や春香からの電話やメールは今持ってるプライベート用に届くけども、プロデューサーからの
それらが、その電話を揺さぶることは決してなかった、とか。
・・・あれ、なんかこれはこれで面白げなシーン作れそうじゃ?

それはそれとして。
なんだろう、すごく淡々と落ち着いた大人っぽい雰囲気で話が進む感じ。千早、春香、プロデューサーの
三者がそれぞれいっぱいいっぱいになっているところで、たった一人それを俯瞰した位置にいるかのような律子。
・・・でも多分、ちょっと与えられた情報が多くて、それをつなぎ合わせる技術があるけど、
それでも律っちゃんは律っちゃんで、実はいっぱいいっぱいのようでも。
浮き足立っている自分の挙動を幽体離脱でもしたかのように他人事のように眺める感覚をごくたまに
覚えることがあるのですが、なんかそういう視点から眺めている律っちゃんが見える気がします。
・・・つまりは、あくまでも自分の印象ながら律っちゃんも相当「冷静ぶって」いるなあって感じw
突き放すのもきびしさと同時に自分自身の余裕の無さの裏返し、みたいな。

自分の小ささに自覚的であることから、一般的な「律子らしさ」ではない部分ながら味と落ち着きのある
「律子らしさ」がほの見えるように思えました。

狙って無彩色やセピアにした映像みたいな感じですね。文章そのものの落ち着いた雰囲気がいい。
それにしてもこのプロデューサー、若いってか青いなあw

123:創る名無しに見る名無し
09/12/30 17:52:29 Cjt81kYy

>>87
なんつーか、あいかわらずひでえw(褒め言葉)
島原Pの視点の中には、プレイヤー目線がごく自然に混じっていて時折いやアンタそれ言ったら身も蓋もないってw
・・・みたいな良くも悪くもドライなネタが含まれることも多いようですが、それでいてそこに嫌味を感じないのが技ですな。
ひどいこと言ってるなあと思いながらも、うわ、やりそう・・・と感じてしまうイイ位置の狙いすまし具合と
それを追っているうちに読み手もいつの間にかストライクゾーンが広がってるというか。
多分、4/4の武田さんの言いようなんぞ、いきなりそこから入ったら、さすがにおいちょっと待てや、とか
なりそうですが、そこに至るまでの過程をゲラゲラ笑いながら来てしまうと、ついアリだ!となってしまうw
あと、ママめ~、がなんか妙にツボにはまったw いかにも言いそうだし。その後の行動も、バカンスの時の
二つあるから一つ下さい!のおばかノリそのまんま過ぎて、「そういうもの」回りの論評もひどいんだけど
自分でもその通りと思ってしまうことがそのまんま文章になってるもんだから、笑ってしまうしかない。
テンポとネタの軽妙さと反感を買わないレベルを見切ったような適度な口の悪さ、と先ほども挙げた身も蓋も無さで
読み手の方もその毒っ気についついのせられてしまうのが持ち味だと思えます。

でもそう思ってみてみると、はじまってる段階から全日本鹿学会とかなんとも不条理ネタだったりして・・・地デジカ?
そして一方その頃、彼の親愛なる従姉妹殿はプロデューサーがわざわざゲイツはたいて買い込んできた
うまセットを前にして、イイ笑顔でハリセン構えてましたとさ、とか。

なんにしろ、こうやって野暮を言うよりは読んでゲラゲラ笑って、水に流しとけって感じですな
だが、敢えて声を大にして言おう。この武田さんは立派にヘンタイプロデューサーだw

>>97
はじまりとおしまいなんてつながってめぐるもの、と。
・・・あれ? これ全編通して「空」のイメージが相当合うような。

自分の失敗談を、きっと周りが見えなくなるほど、言ってることの自分にとっての恥ずかしさも
忘れてしまうほどの力説をしている雪歩の図が非常に容易に想像できて実にかわいらしいです。
いや、ネガティブ自慢って結構ありますよね、それ自慢にならないってとこまで妙に力入って語ってるとかいうパターンも。

雪歩-愛の例を考えると、頼りになりそうにないのに、案外頼りになるというか、和む先輩って立ち位置は
意外と似合うのかもしれませんね・・・でも、全体としては「先輩としての威厳をだな」とか教え込まれて
「威厳、威厳・・・はい、わかりましたぁ!」とか返事して精一杯しかつめらしい態度を取ろうとするも
「雪歩先輩!」って持ち上げられてなんか嬉しくなっちゃって、「あ、お茶飲まない? 荷物持とうか?」
みたいな、おい、どっちが後輩だよ?なサービス過剰状態になっちゃうなんて方がらしいかなw


・・・よし、と。とりあえずはこれで全部になるかな? 途中またちょっと規制掛かってたりしたけども。
そしてまた、まだあと一日あるので年越しネタ、大晦日ネタなどもしかするとあったりするかなあなんてのも
ちょっとだけ期待してたりするけども、取りあえず今年一年いろいろ楽しく読ませていただきました
来年も変わらず、また皆さまの新たな投下を期待しております。よい落とし・・・お年を!

124:雨晴P
10/01/03 01:46:46 nutjjJFg
あけましておめでとうございます、雨晴です。今年もよろしくお願いします。
前作の感想、有難う御座います!正直、万人受けするものではないなぁとは思ってましたが、好意的に受け入れて下さる方ばかりで泣きそうでした。

さて、今回は年始と言う事でお盆ネタです。マジです。
何をトチ狂ったか、ここに来て夏ネタです。しかも何だかんだで殆ど書いたことのないギャグです。
実は、今年のお盆にアップしようと思ってすっかり忘れていたのを先日発掘しまして。折角なので仕上げてきました。

こんな季節感ゼロ&慣れない書き方のSSで新年一発目っていうのは気が引けるんですが、ほら、新年初雪歩っていうのも悪くないじゃない?(僕が)

では、謙遜だとかでなく本当にくだらないお話ですが、お正月の暇潰しくらいになれば・・・3レス予定です。

125:季節外れの馬鹿話/OBON!(1/4)@雨晴P
10/01/03 01:54:31 nutjjJFg
事務所のエアコンが壊れた。
正確に言えば、事務所にひとつしかなく備え付きであった歴戦の老兵(推定15歳)が遂に力尽きた。
外気温は30度を余裕で上回る真夏日。室内温度なんて確認しようものなら、意識くらい簡単に吹き飛んで下さることだろう。
事態は混沌と化していた。ある者は奇声を発し、ある者は地球温暖化の恐怖に打ち震えている。
北海道出身の社員が生気の無い顔で故郷の写真を舐めまわし、うっかり温度計を見てしまった小鳥さんがゆっくりと倒れて、数秒後に「暑い!」とか叫んで現世に復帰。

それ即ち、混沌である。

元はと言えば、調子が悪いから修理に出しましょうよと1年前から言っていたにも関わらず、提案を受け入れなかった社長が悪いのだ。

「逆に考えたまえ諸君、これでいつでも南国気分だ!」

とか何とか社長がのたまい仰せられたので、社員数名で取り押さえて布団に包んで縛っておいた。サウナ効果でより健康的なことだろう。
電気会社に老兵の緊急手術を要請するものの、先方は拒否。なぜなら、世間は今お盆休みだ。
そんな訳で、事務所は休業。
・・・良いのかそれで。仮にも芸能事務所じゃないのか。お盆は稼ぎ時じゃないのか。
しかしまあ、気にしたら負けである。割り切りも込めた溜め息一つ。それに、何だ。こういう時にしか出来ないこともあろうに。
思い、まずは携帯電話を取り出した。3度のコールで繋がり、やあ、と切り出す。

『おはようございます、プロデューサー』
「おはよう、雪歩。唐突だが、今日はお休みだ」

考えるような数拍。
なぜですか?と尋ねられたので、かいつまんで伝えておく。

『えっと、良いんでしょうか?』
「まあ雪歩は今日、日程調整だけで仕事は無かったからな」

折角の盆休みだから、しっかり休め。そう言うと、困ったような声が聞こえてくる。

「どうした?」
『え、っと、それが・・・』

聞けばご両親共に不在で、本日は大変暇であるらしい。
ふむ。

「なら雪歩、事務所に来てみないか」
『え、事務所はお休みじゃないんですか?』

その切り替えしに、事務所を見渡す。社員数人は買出し、家が近い小鳥さんは必要機材の担当。席を外している。
絞め殺しの窓の外がまるでオアシスのようで、平時であれば在る筈の無い思考にある種の戦慄を覚えた。

「いや、なに」

自然に口許が歪む。

「ちょっとした昼食を、ね」

126:季節外れの馬鹿話/OBON!(2/4)@雨晴P
10/01/03 01:56:23 nutjjJFg
約束の時間はお昼で、太陽は一番てっぺんまで昇っていて、電車から降りた途端熱風に晒された。
しかし、大した障害ではない。何せ彼からのお誘いである。それも、お食事らしい。
そりゃあもう顔が綻んでいるのが自分でもわかって、事務所までの足取りは軽い。
喫茶店のガラスを使って身だしなみを気にしてみたりとかしつつ、いつもより数分ほど早く目的地へ辿りついた。
彼に着きました、とメール。入っておいで、と返信。あれ?事務所は閉まっているんじゃ?
訝しげに思いつつ、階段を昇る。ドアノブをまわし、戸に力を入れる。簡単に開いた。

「失礼し・・・」

同時に、温風。
反射的に顔を顰めてしまい、しかし視界は確保する。霧だか湯気だか、というか湯気だ。なんで?
奥に進む。え、何、サウナですか?
ようやく到達したらしい中心地では、目を疑う光景が繰り広げられている。その光景が一体何であるのか、暫く考えた。
いや、考えずとも私はそれを知っている。知っているけれど、頭が理解しようとしない。
状況把握が間に合わず、しばし呆然とする。
ああ、でも、これは、どう見ても。

鍋だ。

「おお、来たな雪歩」

そう言う彼がつまむのは、ツミレ。思えばスーツ姿ばかり見てきたから、Tシャツ一枚と言うのは新鮮です。
・・・あれ?私、現実逃避してます。

「雪歩ちゃん、雪歩ちゃん」

掛けられた声に顔を向ければ、にっこり笑う小鳥さんが居た。汗だくで。

「はい。お皿とお箸、雪歩ちゃんの分」

有無を言わさず握らされた。なぜかそこに居た春香ちゃんが、おいしいです、おいしいです、なんて言いながら咀嚼している。
あまり接点のない他のプロデューサーの方々は、頑張れ、負けるなよ、と励ましてくれた。何が?

「あ、あの」
「どうした?」

はふはふ言いながらプロデューサーが答えてくれて、あまりの自然さにむしろ私が間違ってるんじゃないかという錯覚に陥る。

「・・・何をしているんですか?」
「何って」

お皿から白菜を掴み上げる。

「・・・鍋?」
「夏ですよね?」

ん、と彼が首を傾げる。

「何だ、雪歩は冬にアイスを食べないのか?あれはあれで美味しいじゃないか」
「わ、プロデューサーさん、その例えは的を射てますね!」

そうでしょう!流石です!そんなやりとりを横目に周りを見渡せば、社員の方々はむしろ具材を取り合っている。
てめぇそりゃ俺のトリだふざけんな!とか、じゃあさっきのアンコウ返せこのカス、とか聞こえてくる。

何これ。


127:季節外れの馬鹿話/OBON!(3/4)@雨晴P
10/01/03 01:58:20 nutjjJFg
プロデューサーが諍いに割って入り、菜箸で鶏肉とアンコウの切り身を投入する。ちゃぽん、と軽い音。

「夏、エアコンが壊れた、地獄のような暑さとくれば?」
『鍋!鍋!鍋!さっぱりポン酢であったかポカポカ真夏鍋!夏はサウナで鍋パーティー!』

私を除いた、そこに居る全ての人たちの唱和。男女の区別なく壮大に響き渡る。
そこに存在するのは、紛れもなく笑顔だ。ただし、汗まみれの。
正直、ゾッとした。満足そうに頷くプロデューサーが、そのままの表情でこちらを向く。

「わかったか?」
「いえ、残念ながら」

首を振りながら答えると、む、と渋い顔をされる。

「いいか雪歩、夏に汗をかくことは必要なことなんだ」
「そうよ雪歩ちゃん。鍋は身体を内側から暖めてくれるんですよ?」
「いえ、それについては私もわかるんですけれど」

改めて見渡す。ふと見えた温度計に意識ごと持っていかれそうなのを堪え、相対。
煮えたぎる食材。先の社員さんふたりは、お互いアンコウと鶏肉を肩を組みながら頬張っている。うわぁ。
プロデューサーが、ああ、と声を上げた。

「そうか雪歩。鍋は嫌いか」
「いえそう言う訳ではなく」
「じゃあ何なんだ」

尋ねられる。小鳥さんが私のお皿に魚の白身を載せようとするのを慌てて阻止。
美味しいのに。そう言いながら、彼女が自らの口へと運ぶ。ある種の恐怖さえ覚える。

「・・・ごめんなさい、プロデューサー。私、よくわからないんです」
「何がだ?」
「時期を考えていただければ・・・」

数秒、お皿片手に箸を休めず彼が悩む。えのきを良く噛んでから、或いは飲み込んでから、ああ、成る程。そう口にする。

「まあ確かに、真昼間から鍋と言うのは少しおかしくはあるな」
「いえですからそう言う訳ではなく」

無意識に頭を抑える。何だろうこれ。

「今日の雪歩ちゃんはツッコマーですねぇ」
「ボケてないんですけどね」

えー・・・。

128:季節外れの馬鹿話/OBON!(4/4)@雨晴P
10/01/03 01:59:36 nutjjJFg
「とにかく、やめた方がいいと思います」
「何でだ、こんなに素晴らしい鍋パーティーだというのに」

切り返しに疲れたので、取り敢えず空いていたオフィスチェアに腰を降ろす。

「こんなの、絶対に身体に悪いですよぅ」

なぜか泣けてきた。嗅覚を刺激する、出汁の香り。

「どうして泣くんだ雪歩。おいしいぞ?」
「ほら雪歩ちゃん、騙されたと思って食べてみて?」

いつの間にか傍に居た小鳥さんが、左手にセットしたままだったお皿を盛り付けていく。あっという間に冬景色。

「ぅぅ・・・」

ただでさえ猛暑日で、エアコンは無くて、鍋が繰り出す熱気がこもる室内。
もういいや。もうどうにでもなれ。自棄です、もう。
アツアツの糸こんにゃくを、恐る恐る口に運ぶ。


――次の瞬間には、世界が変わって見えていた。










約束の時間はお昼で、太陽は一番上まで昇っていて、電車から降りた途端熱風に晒された。
しかし、大した障害ではない。何せ彼からのお誘いである。それも、お食事らしい。
そりゃあもう顔が綻んでいるのが自分でもわかって、事務所までの足取りは軽い。
喫茶店のガラスを使って少し身だしなみを気にしてみたりとかしつつ、いつもより数分ほど早く目的地へ辿りついた。
彼に着きました、とメール。入ってきな、と返信を受けた。
あれ?事務所は閉まっているんじゃ?
訝しげに思いつつ、階段を昇る。ドアノブをまわし、戸に力を入れる。簡単に開いた。

「失礼し・・・」

同時に、温風。
反射的に顔を顰めてしまい、しかし視界は確保する。霧だか湯気だか、というか湯気だ。なんで?
奥に進む。え、何、サウナ?ようやく到達したらしい中心地では、目を疑う光景が繰り広げられている。
何、これ。
いや、私はそれを知っている。知っているけれど、頭が理解しようとしない。
状況把握が間に合わず、しばし呆然とする。
ああ、でも、これは、どう見ても、

鍋だ。

「おお、来たな千早」

129:雨晴P
10/01/03 02:43:01 nutjjJFg
以上です。以下、アイドルの数だけループ。・・・社長が死んじゃう!w

真夏の鍋、僕も去年友人宅でやりました。ちなみに、地獄でした。
ただ、食べてみると美味しいんですよね・・・限界までならば。限界超えると気持ち悪くなりますよね。何事も程々が大事です。

さて、何がしたかったかと言えば、ただ単純に雪歩にツッコミをやらせてみたかっただけでしたw取り敢えず、それだけは満足ですw
そんなことより、ギャグ回って何が大切かってテンポだと思うんですが、そもそもこういう話を書かないので掴み辛かったです。
改めてうすた京介さんとか、本当に尊敬できました。・・・あっちは漫画ですが。
そんなこんなで、何でも書いておくべきだなぁと再認識。でも次は、次こそは俺、甘いの書いてくるんです・・・!w

では、以下前作で頂いた感想への返信をば・・・

>>69
まあ、こんなフレーズですし、正直僕もどっかで使われてるだろうと思ってましたw
ただ、どんな形であれ何らかの視点を掴んで頂けたなら嬉しいです、有難う御座います!
>>70様、71様
何度も読んで頂く事も一つの目標でした、有難う御座います・・・
飲み込んで頂いた状況が、読み手の方々に納得出来るものであれば幸いです・・・
>>71
短さについては、今回は勘弁していただけると・・・w
こういう話って、幾らでも長く出来ると思うんですが、敢えてのこの形です。・・・それにしても短すぎたかなぁ、とも思いますがw
>>72様、>>73
種明かしはしないです。勿論書いていた時に浮かべていた話の背景はありますが、それをお任せしたくてこの形ですし。
余韻や後読感にご感想頂けるというのは、本当に幸せです・・・嬉しいっす、有難う御座います・・・
>>72
彼女はどこにいるんでしょうね。あ、甘いのは最高ですよね
>>73様、82様
品が良いのでしょうか・・・wちょっと自分ではわからないんですが、このスタイルを大事にしたいと思います。有難う御座います!
>>82 島原薫様
完全に、特に僕的には実験作でした。確かに、頂く感想は好意的に受け取ってくださる方ばかりで・・・有難いです・・・

>>83-86 、TENGAさん万能説
ひどいw 目一杯!で正直吹きましたw
こうやってギャグ書くんだなぁ、とか思いつつ・・・
何よりも、僕は1人称で何人も登場人物出すってことに慣れていないので・・・勉強させて頂きます、典雅でw

>>122
規制解除おめでとうございます、お帰りなさいませ。毎回の感想、有難うございます!
それこそスタイルとしては"雨のち晴れ"の延長のような形で書きましたから、詩的に纏めることを最優先させました。
この手のモノをアッサリと読んでいただくには、やっぱり詩的スタイルかなぁ、なんて。
キレイだなんて言っていただけると、何というか、嬉しいんですが正直恥ずかしいですwですが、有難うございます。


私の声が~への沢山の感想、本当に有難う御座いました!では、本年も良い年でありますように・・・
次はきっと甘い奴をお持ちします・・・w

130:創る名無しに見る名無し
10/01/03 05:13:20 4bgj+dQp
なんですかこのクトゥルーはw
おっかしいな、正月に鍋モノは季節感あって、え、そういう問題じゃない?

夜中にくすりと笑わせていただきました。ゴチです

131:創る名無しに見る名無し
10/01/03 08:20:44 RC4MZi1Z
>>129
ごちそうさまでしたウェップw
前シーズンの夏に響の中の人が夏になると我慢大会やってるって言ってたな。
狙い通りツッコミゆきぽかわゆうございました。GJ!

132:創る名無しに見る名無し
10/01/03 22:29:13 4bgj+dQp
今週のアイマスステーション!!!がとってもタイムリーでした

133: ◆yHhcvqAd4.
10/01/04 01:04:36 jRXkwGE2
どうもです。明けまして(ry)今年(ry)
SSを書いたので落としに参りました。4レスお借りします。

134:favorite 1/4
10/01/04 01:05:19 jRXkwGE2

 冬本番、暖房の効いた車の中でさえ、窓は冷気を放っている。
 助手席から眺める東京の街は、今日も忙しい。日も落ちてシャッターを下ろす準備をする店も中にはあるが、
まだまだ道も明るく、歩道を行く人の表情に疲労感はあまり見えない。一般的な企業の終業時刻は過ぎている。
 信号待ちをしているあの人は、隣の人と楽しそうに談笑している。きっと、あの後アフター5でお酒でも飲
みに行くんだろう。見知らぬ人ながら、いい表情をしていると思った。
 一方私はといえば……体が声にならない悲鳴をあげている。前腕や太もも、ふくらはぎの辺りがミシミシ言
っているようだ。それも、今日一日を振り返ってみれば、無理も無いことだろう。
 元々予定では午前中にダンスレッスン、午後に歌詞レッスンを入れてあったのだが、トレーナーの都合で午
後のレッスンがキャンセル。ダンスのスタジオの方も予約が入っておらず、ダンスの先生も時間が空いていた
ということで、ついさっきまでぶっ続けで新曲の踊りの練習と今までの私のダンスの総点検を行っていたのだ。
普段は時間に追われて見ることができない微細な部分までチェックすることができて、得られたものは大きか
った。しかし、その代償にこの重たい疲労だ。
「ふぅ……」
 プロデューサーの車に乗せてもらってから何度目になるだろう。深い溜息が出た。
「随分お疲れのようだな、律子」
「『ようだ』じゃなくて、随分お疲れなんですよ、律子さんは。もう全身がだるくって」
「ははっ、そうだろうな」
 そう言うプロデューサーの笑いも、どこか乾いている。この人と来たら、遠目からのんびりと眺めていれば
いいのに、わざわざ着替えて私の横で一緒になって練習していたのだ。
「プロデューサーこそ、大丈夫なんですか?」
「まぁ、ヘトヘトではあるが……」
「なんであんなことを? 別にプロデューサーが新曲を踊るわけでも無いのに」
 前方の信号が赤に変わった。車が速度を落としていく。体が前に引っ張られて、シートベルトが食い込む。
「ああ、あれはな」
 たん、たん、たん。長い人差し指がハンドルをタップする。
「運動不足の解消……と思ったのが、25%ぐらいだな」
「残りの75%は?」
 顔を僅かに傾けて、プロデューサーが私に流し目を送った。
「律子のやっていることを、少しだけ体感しておきたいと思ってな。ダンスレッスンって言葉で言うのは簡単
だけど、どれぐらい大変なのか。トレーナーがいつも注意して見ているのは、どんなポイントなのか。律子は
どんなアドバイスを出されていることが多いのか。そういうの、もう少し深く知っておこうと思ったんだ」
 真面目な声だった。気持ちは嬉しいけど、プロデューサーの声に滲む疲労を思うと、喜べなかった。
 信号が青に変わる。青から赤に変わる時は黄色を通過するのに、赤から青に変わるのは、いつでも突然だ。
「けど、それにしたっていきなり過ぎると思います。プロデューサーだって体が資本なんですから、慣れない
ことしたら怪我するかもしれないじゃないですか」
「……ま、律子の言う通りだな。思ってたよりキツかった。筋肉痛が怖いよ」
 隣を走っていた車が速度を上げて、私達を追い抜いていく。その後ろを追いかけるようにして、赤いスポー
ツカーが駆けていった。
 信号を三つほど過ぎた頃、プロデューサーのお腹が鳴き声をあげた。ステレオの音量を下げていたせいで、
助手席までよく聞こえた。
 プロデューサーはわざとらしい咳払いをして、顔を赤らめた。その様子を見ていたら、思い出したように
空腹感が歩み寄ってきた。時計を見れば、もうそろそろ夕食には丁度いい時間帯だ。
「律子、腹減ってないか?」
 空腹のサインを誤魔化せていないことを悟ったのか、プロデューサーが切り出してきた。
「正直言うと、腹ペコですね。今日は運動量が多かったですから」
「よし、それならどっかで食っていこう」
 仕事が夕方や夜までかかった時は、こんな風に話が進んで夕食に連れて行ってもらっているのだけど、今日
のプロデューサーは声が弾んでいる。私も人のことは言えないけど、よっぽどお腹が減っているのだろう。ち
ょっと微笑ましい。
「どっか行きたい所、あるか?」
「プロデューサーはどうなんですか?」
「俺か? そうだな……肉だな、肉が食いたい。今夜は肉食獣になりたい」
「肉かぁ……いいですね。私もタンパク源が欲しい気分です。いい所知ってたら、連れて行って下さいよ」
 プロデューサーの言葉に私が乗ると、
「よし、それじゃあ決まりだな」
 と、にんまり笑って彼はハンドルを握り締めた。

135:favorite 2/4
10/01/04 01:06:16 jRXkwGE2

 彼に案内されながら辿り着いた場所は、通りに面したビルをエレベーターで昇った所にある店。焼肉屋とい
うより、定食屋にカテゴライズされるようだ。『ごはんお替り自由』という文字が書かれている辺り、男性の
好きそうな店といった感じがする。
 店内の客足は上々。テーブル席に空きが無いということで、カウンター席の隅を薦められて、二人並んでそ
こに腰を下ろす。私は壁側で、プロデューサーがその隣。肉を焼いている姿をカウンター越しに見せるという
スタイルでやっている店のようだが、彼らから見て右後方にあたるこの席からは、特にそれがよく見える。威
勢良く客からの注文が読み上げられ、厨房の中からも外からも復唱される。活気があった。
「どれにしようかな……」
 そんなことを言いながらも、プロデューサーが広げてくれたメニューに視線を落とすまで、私の目は厨房の
中を向いたままだった。メニューの中を見てみると、元々印刷されている物に加え、ご丁寧に栄養成分の詳細
が書かれている。脂肪分の少なめな物を探すと、牛タンのセットが丁度良さそうだった。プロデューサーの方
は既に注文が決まっていたようで、私が決め終わると同時に注文が確定した。
「こういう店、よく来るんですか?」
 周りの客層を見て、男性に混じって席に座る女性の姿があるのを確認しつつ、プロデューサーに尋ねる。
「まぁな。ガッツリ食いたくなると、大抵ここだな。焼肉屋はニオイが付き易いし、苦しくなるぐらい食っち
まう時があるから」
「なるほど……」
 厨房の中では、私達の注文を受けてなのか、数枚の肉が鉄板の上に躍り出た。鉄板の前に立つ男の人は、先
程私達が店に入った時から─きっと私達が来る前からずっと─その場をほとんど動いていなかった。肉を
焼く担当。何時からかは分からないけれど、勤務時間の終わりまで、ずっとあそこにいるのだろうか。
 注文を受けて、肉を焼いて。その繰り返しの間、あの人はどんなことを考えているんだろう。
 肉が裏返った。
「どうした律子。ぼんやりしてるけど、そんなに疲れちゃったか?」
「いえ、厨房が見えるような店って、珍しいな、って思って」
 そうか、と言って、プロデューサーがお茶を啜った。
「男の人って、肉が好きな人多いですよね」
「ああ、そうだな。律子はどうだ?」
「私ですか? まぁ、それなりかな。嫌いでは無いです。肉嫌いだから食べないっていう友達もいますけど」
「うーん、肉の何が嫌なんだろうな」
「さぁ……ニオイ、とか?」
「まぁ、好みは人それぞれだよな。性別による傾向ぐらいはありそうなもんだけど」
 別の客からの注文を読み上げる声が、店内に響いた。
「よく言われてるのが『女性の甘い物好き』とかな。律子も好きだろ?」
 いくらか言外の意味を含んだ眼差しで、プロデューサーが私を見た。
「……ええ、そこは否定しませんよ。甘い物が無いと生きていけません。脳はブドウ糖しかエネルギーにでき
ないんだから、やはり糖分は必要なんです」
「た、確かにそうだが……」
 以前、ライブイベントの打ち上げでケーキバイキングを奢ってもらった時、プロデューサーが私の皿を見て
引き攣った顔になったことを思い出した。あの時と、同じ顔になっている。
 そりゃあ、ちょっと食べ過ぎちゃったとは思うけど。

136:favorite 3/4
10/01/04 01:07:27 jRXkwGE2

 予想していたよりも早く、料理がカウンターへやってきた。ホカホカと湯気も立ち、香ばしい匂いが食欲を
掻き立てる。思わず私のお腹も鳴ってしまったけれど、鉄板で肉が焼ける音や、周囲の客の話し声に消されて
隣の席までは聞こえなかったようだ。プロデューサーは何の反応も示さず、ただ目の前の皿に目が釘付けにさ
れている。隣の席に続いて、私の目の前にもお盆が差し出された。
 お盆の上には、麦飯、とろろ、テール肉の入った透明なスープ、漬物の小皿、そして焼き目のついた牛タン。
二人のお盆の間には、プロデューサーが頼んでくれたサラダがある。
 こんなに食べきれるだろうか。それが私の抱いた第一印象だった。
「じゃ、食べるか」
 パキンと小気味良い音を立てながらプロデューサーが割り箸を割った。頂きますと一礼、箸を手に取る。
 何も考えずに箸を伸ばしてみると、牛タンに辿り着いた。くっきりと残る規則的な模様が目を引いたし、体
が求めているような気がした。
 固くて噛み切り辛いというイメージをどこかに抱いていたが、いい意味で裏切られた。噛み締める度に、顎
の内側がギュッと締め付けられるようだ。脂が乗っているが、脂っこくは無い。『美味しい』よりも、『旨い』
という表現がぴったりくる、逞しい味だ。
「んー……ウマい」
 美味しいですね、と私が言う前に、プロデューサーが味わい深い声を漏らした。私が相槌を打つ前に、もう
二口目を食べ始めている。ガツガツ、ムシャムシャ。擬音で表したらそんな所だろう。
 食べるというより、貪る。夢中になっているプロデューサーの姿は、狩りで捕らえた獲物にありつく獣を思
い起こさせた。もっとも、狩りで生計を立てる野獣は楽しんで食事をしている訳ではなく、文字通りの死活問
題なのだけど。
 隣を眺めている場合じゃない。冷めてしまわない内に、私も食べよう。箸を進める。
 粒の立った麦飯、コクのあるスープ、堂々たる存在感の肉を、舌で味わいながら飲み込んでいく。
 つるつると喉越しの良いとろろで時折口の中を冷やす。
 一口食べれば、次が欲しくなる。箸が止まる気配は全く無かった。
 横で御飯のお代わりをしつつ気持ちいいぐらいにどんどん食べていくプロデューサーの姿も、いいおかずだ。
 テレビのCMでお茶漬けをさらさらと掻きこむ姿を見ていて、お茶漬けが食べたくなることがある。あのCMのタ
レントに男性を採用している理由が、分かるような気がした。あの姿自体にも、食欲をそそられるのだ。

 私が食べるよりもずっと早く、プロデューサーは自分の分をすっかり綺麗に平らげてしまった。しかし私の方
は、少し苦しくなってきた。まだ皿の上には肉が残っているのだけど、正直言ってお腹いっぱいだ。盛り方の問
題であまり多くは見えなかったが、器のサイズの都合、麦飯も多かった。
「……プロデューサー」
 お茶を飲んでいる彼に、視線を送ってみる。
「ん? どうした?」
「まだ、お腹に空きはありますか?」
 すっ、と、お盆を右へ差し出す。
「おっ……! いいのか?」
 その瞬間、彼の両目がきらりと光ったような気がした。喜びを隠し切れない、少年のような表情に、思わず
私の口元も緩んだ。
「ええ、どうぞ」
「それなら……頂きます」
 ひょいっと箸が伸びてきた。皿の上に残っていたものが、みるみる内に捕食者にさらわれていく。
「ん、ウマい、牛タンもいいな」
 感想もそこそこに、次の一枚、二枚も、あっという間に消えてしまった。茶碗に残った麦飯も、米粒一つ残
らなかった。ただ、そこにあった獲物を夢中になって食べているだけなのに、私はその姿に、訳の分からない
頼もしさのようなものを感じていた。

137:favorite 4/4
10/01/04 01:08:35 jRXkwGE2
 店を出る時、彼はいつも私にするように、勘定を持ってくれた。
「いつもすみません、奢って貰っちゃって」
「いいって。その分、仕事の方しっかり頑張ってくれよな」
 そう言われると、何も言えない。取り出しかけた財布をしまう。
「今日の店は、律子には多過ぎたかもな」
 帰りのエレベーターの中、プロデューサーがぺこりと頭を下げた。
「私はいいですけど、プロデューサーこそ、あんなに食べて平気だったんですか?」
「ん、俺か? そうだな、俺は……」
 エレベーターが一階に到着した。ドアが開く。
「大満足だ。お腹いっぱいだよ」
 満面の笑みだった。そのまま、食品関係の商材にでも使えそうなぐらいの。
 一緒に食事に行ったことは何度かあったけど、店を出る時に彼が満ち足りた顔をしているのを見るのは、こ
れが初めてだった。
 こういうのが好きなんだな、この人は。
 そんなことが分かっただけで、何故か胸の内が温かくなる。

 そんなに食べてたら太っちゃいますよ、と釘を刺そうと思っていたけれど、今日は辞めておこう。
 私は黙って彼の後ろをついていった。


 終わり

138: ◆yHhcvqAd4.
10/01/04 01:15:37 jRXkwGE2
以上になります。批評感想など頂ければ幸いです。

一言で言うとただメシを食いに行くだけの話なんですけど、色々書いたらこうなっちゃいました。
見てて腹が減るような物を目指したかったんですが、そうなると男視点の方がマッチするなぁ、と書き終えた後に感じました。
もっと表現したいことはあるんですが、難しいですね。精進あるのみです。

139:創る名無しに見る名無し
10/01/04 07:24:10 oQQdkQ5f
>>138
肉うめえwwwつかナニここ2010は食い物特集で開始ですかw
お久しぶりです。お忙しいようですがご無事で何より。
どこのグルメ小説かというかのごとき店内の様子、食事の描写。
充分腹減りました。お節も食い飽きたので今日は肉を
食うことにします。

今年もすてきなSSをよろしくお願いします。GJでした。

140:創る名無しに見る名無し
10/01/04 15:02:27 EGPh9zIa
この店、間違いなく「ねぎし」だな!

飯の描写って難しいと思うんだが、うまそうでよかった

141:創る名無しに見る名無し
10/01/04 20:22:30 /NPCfjJ+
どう読んでもねぎしです本当にありがとうございました。



千早スレの炒飯といい年末から、はらm…はらぺこキャラが集まってますね。
今年もよろしくです。

142:創る名無しに見る名無し
10/01/05 00:53:37 OJyAE+01
>>129
言葉の使い方、口調、言い回し、リズムがいつもの雨晴Pですね。
でも充分に面白いし笑えますよ。
元々雨晴Pの書くものには、ユーモア要素が少なくないですし、
ギャグだから、と構えたりテンポを変えたりする必要はない気がします。
重い流れの中で一発ネタをかました方が、より引き立って面白いこともありますし、
結局は、その中でメインで表現したいものが何か、という違いだけじゃないかなあ、と。
特に、雨晴Pの作風を知っている人間にとっては、いつもの調子でやってくれた方が、
その中に出てくるギャグに意外性を感じて面白いと感じる気がします。
知らない人にとっては、どう感じるかわからないですが・・・。

しかし、やよいや亜美真美は喜んで鍋を食べ始めそうな気がw


>>134
律子の話す言葉に、ありがちなひねりがないのですが、
それが逆に状況の特異性(とは大げさ?)を出してる気がします。
あと、状況描写が客観的でかつ様々な連想を出すという点でも、律子視点が正解だと思います。
おいしそうだ、という主観が確実に混ざりながらも、客観的描写をするには律子が最適ですし。
何より、第三者視点だと、主観が混ぜづらいですから。
おいしそう、食べたい、これが難しくなるのではないかと。

それと、この「大したことではないが、距離が縮まった感触」っていうのが、凄くよく感じられて、
これがまた「ごちそうさま」な感触を与えてくれるという、食事話にふさわしい読後感でした。

143:創る名無しに見る名無し
10/01/05 00:55:48 OJyAE+01
うわ。
間違ってはいないけど、感想付けるなら普通は>>138にレスしますわねえ・・・。
ってことで、上の>>134宛は>>138宛でお願いします。

144:創る名無しに見る名無し
10/01/05 01:01:27 zqdtmqFr
>>129
『鍋!鍋!鍋!さっぱりポン酢であったかポカポカ真夏鍋!夏はサウナで鍋パーティー!』
Gung-ho!Gung-ho!Gung-ho!
・・・とかいう、幻聴が聞こえてきましたがな。あんたら、どこの海兵隊だw
ていうか、頭あったかすぎるだろう・・・ああ、温まってるのか、じゃあしょうがないな。
なぜかそこに居た春香ちゃんが、おいしいです、おいしいです、なんて言いながらって、
どう考えても目が既にイキイキとした死んだ魚のような加減なんですが。
てな具合にツッコミどころ満載。
バカが全力でバカやってる不条理シチュエーションとテンポで突っ走る形式で、ついて行けない人を描くことで
バカさを際立たせてるのがおいしいところですな

ちらっと触れてる人もいますが響辺りはあっさりノッちゃうんじゃないかな、中の人的に。いや、抵抗してあっさり砕けてこそ
響かもだけど。響カモだけど、と変換されて噴いた。確かにカモだ。
・・・これ、どう考えても律っちゃん呼ぶのが最後になって汗だくレ○プ目ゾンビ集団対激怒リッチャンってな
なんかぷちますっぽいシチュエーションに突入しそうですw

前回評価で「品がよい」と評価している人も多いですが、それがまたお笑いにありがちなコテコテに脂ぎった印象と
また別のなにかとして感じられる点が面白く。まさにさっぱりポン酢で鍋食うが如しw
ただ、その品のよさは作風であると同時に、場合によっては縛りになってる部分もあるかな、という感覚もないわけではないかも。
今回の場合だと全体として「くすり」「あはははは」という笑いで「ぎゃはははは」「げらげらげら」にならない、みたいな
とはいえ、もう既にそれが一つの武器であり、敢えてそれを捨てるのは迷走を招く危険の方が大きそうです
前者のような笑いの方が欲しい時というのは確実にあるものですしね。

しかし今回最大のツッコミどころは「今回は年始と言う事でお盆ネタです」だったりしなくも、ないw
なんにしろ、初笑い楽しませていただきました。雨晴Pはできる子!

>>138
麦飯!とろろ!テールスープ!牛タン!・・・ちょっと仙台行ってくる!

で、感想済まそうかという衝動に駆られましたw

ただメシを食いに行くだけ、と言いますがむしろそれだけの話で見せ方が出来ることが既に芸。
男視点の方がマッチする、という見解についてもむしろ、おいしそうに食べてるなあという視点が妙に微笑ましさを
かもしだしてたというか・・・「たんとお食べ」みたいな。タンだけに。
なんていうか、おかんと新妻を足して2で割ったような感じ? 別に自分が作ったわけじゃないけど
微笑ましくもかわいらしい律っちゃんでした。
亜美真美の豚汁うどんとかもそうですが、作る人目線とはまた違う、食べる人目線の旨そう加減が伝わる一編でした。
でも、プロデューサーは牛タン食ってるワケじゃないんだよね、これw

うう、来年は仙台行く予定ないなあ。アウェイでユアスタ行ってみっしりした厚切りの牛タンガシガシ食って
喜久福と萩の月土産に帰るのがここ数年の楽しみだったのにw

>>140>>141
そのうちみんなでねぎし行って牛タン食うかーw


・・・さて。それはそれとして。
ここまで食べ物ネタが続くと・・・やっぱり期待してしまいますよね、みなさん?w

145:創る名無しに見る名無し
10/01/05 01:05:41 zqdtmqFr
あ、牛タン食ってるワケじゃない、は自分で注文したのはどうやら違うようだ、という意味で

146:レシP ◆KSbwPZKdBcln
10/01/07 06:15:06 uYIAOlEQ
  ( ゚д゚)         『・・・やっぱり期待してしまいますよね』
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /
     ̄ ̄ ̄


  ( ゚д゚ )   
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /
     ̄ ̄ ̄

ええい言い訳なんぞしないっ!
レシPですごぶさた。つうよりこの局面で出てくるあたり俺自意識過剰過ぎワロス

小鳥さんで『七草十草』、4レスお借りします。

147:七草十草(1/4) ◆KSbwPZKdBcln
10/01/07 06:15:54 uYIAOlEQ
 2010年のお正月もそろそろおしまいです。三が日もとうに過ぎ、週の終わりには学校の
授業が始まります。
 芸能プロダクションである私たちの会社では、仕事納めや正月休みはむしろよくない
ジンクスになってしまいますが、去年から今年にかけてはありがたいことに、社長や私や
他のスタッフの皆さんはほぼ休日返上となりました。ええ、初詣も事務所の裏の神社です。
いいんです縁結びの神様だっていう話ですし。
 なにより、私たちよりずっと頑張っているアイドルのみんなのために、私たちにできる
ことがあるんですから、それを喜ばなければなりません。
「お疲れさまです……おっと、小鳥さんだけですか?」
「あら、プロデューサーさん」
 事務所のドアを開けて入ってきたのはプロデューサーさんでした。
「お疲れ様です。皆さん上がりですよ、もうこんな時間ですしね」
「えっ、まさか小鳥さん、俺のために事務所開けててくれたんですか?」
「いいええ。1月って営業日数少ないんですよね」
 申し訳なさそうな表情になるプロデューサーさんを牽制します。気を使わせたいわけでは
ありません。
 現在の765プロで、プロデューサーの肩書きを持つのは彼だけです。765プロは昔から
少数精鋭主義ですが、この人のように一人で10人ものアイドルをプロデュースできるような
人は滅多にいません。
「プロデューサーさん、やよいちゃん送ってきたんですよね。場合によっては直帰するって
電話でおっしゃってませんでした?」
「ああ、いや、早く体が空いてしまいまして。年が明けて一週間たつっていうのに事務所にも
顔出してませんでした、まあ生存証明をと」
「あ、そういえばそうですね」
 プロデューサーさんの顔を見たのは、大晦日の打ち上げ以来でした。新春の生番組が
たくさんあり、彼はその立ち会いをしながら得意先回りや打ち合わせをこなしていた
のです。それで思い出しました。
「じゃあプロデューサーさん、改めて、あけましておめでとうございます。電話では言い
ましたけど、面と向かってはまだでしたから」
「あ、こりゃどうも。こちらこそあけましておめでとうございます」
 お辞儀した私につられるように、ひょいと頭を下げてくれました。そして顔を上げる
と、なにか考えながら私の顔を見つめます。
「どうかしましたか?」
「……いや、小鳥さんの顔見るのも一週間ぶりだなって」
「な」
 他意なく言ったのだと思います。この人はそういう人ですから。アイドルのみんなや仕事
相手、誰にでもふと心の芯をくすぐるようなことを言うのです。
 でも、頭でわかっていても顔に血が上ってしまいました。
「っな、なに言ってるんですかプロデューサーさん、こっ、こんな私みたいな顔なんか
見たってなんにもなりませんよっ」
「あ、いやそんなつもりじゃ」
 だ、だいたい毎日若くてきれいなアイドルのみんなと一緒にいて、お仕事先でも美男美女
ばっかりで、こんな私なんか箸にも棒にも引っかからないなんてこと充分わかってます。
わかりきってます。
 でも、それでも……気になる人にこんな風に言われると、平静ではいられません。

148:七草十草(2/4) ◆KSbwPZKdBcln
10/01/07 06:16:48 uYIAOlEQ
 そんな私を見て怒らせたと解釈したのでしょうか、プロデューサーさんは慌てて言い訳
をしました。
「からかった訳じゃないですよ小鳥さん、なにか気に障ったならすみません」
「べ、別にそんな」
 上背のある大きな体で両手をぶんぶん振り回して、その焦り様が少し面白く、私はすぐに
機嫌を直してしまいました。我ながら簡単な精神構造です。
「気に入らないとかじゃないです、ちょっとびっくりしただけで」
「はあ」
「そんなに怖がらなくても経費伝票却下したりしませんから」
「それは助かります、ってそういうことでもないですよ、俺の方も」
「ふふ」
 どうにかいつものテンションを取り戻して、プロデューサーさんと笑い合います。
「収録の方はうまく終わりましたか?」
「やよい、頑張りましたよ。満点ですね。むしろ俺たちフロア組の腹の音がマイクに拾われ
はしないかとヒヤヒヤしましたが」
 今日のお仕事はグルメ番組でした。やよいちゃんはゲストの一人で、出演者それぞれの
アイデア料理を紹介し合う内容。当然ですがプロデューサーさんがご相伴にあずかる
ことはなく、美味しそうな匂いの立ち込めるスタジオで他のスタッフさんともども指を
くわえていたとのこと。
「やよいが、一緒に出演したアイドルの子と意気投合しちゃいましてね。種子島の出身って
言ったかな、彼女の実家も生活がちょっと大変な時期、あったらしくて」
「ああ、あの。境遇似てるかもって思ってました。明るい子ですよね」
「プロデューサーとしてはキャラクターがカブるんで少々心配なんですがね。けっこう歳も
離れてるっていうのに当人同士はもうすっかり仲良しですよ。番組的にも東西対決みたい
になって盛り上がりましたし、収録後も二人で話がしたいって言われたんで、俺は途中で
お役御免になってしまった」
「帰社時間が電話で聞いたのより早いって思ってたんです。そうだったんですか」
 話題の終わりに、訊ねたかったことを聞いてみました。
「ところでプロデューサーさん、お腹空いてます?」
「えっ?そうですね、実はいささか。収録が収録だったんで胃袋をしこたま刺激されましてね」
「よかった。お雑炊の用意があるんですよ、召し上がりませんか?」
「雑炊?なんでまた」
「今日は1月7日ですから」
「ははあ、七草粥ですか」
「今日だけじゃないですよ。765プロではお正月の収録があると、事務所にお食事を用意
しておくんです。三が日はおせちがありましたし、昨日まではお餅も残っていたので
お雑煮もお汁粉もできました」
 去年の春に来たプロデューサーさんはご存知ではなかったようです。
 芸能界というところはせっかくのお正月だというのにお仕事がたくさんある業界です。
年若いアイドルのみんなは特に、ご家族とも別行動になってしまいます。せめて楽しい
収録になるよう、言ってみれば事務所が家の代わり、私たち事務スタッフが家族の
代わりをしているのです。
「あー、やよいがそんな話してたな、そう言えば」
「千早ちゃんや伊織ちゃんなんかオフの日も来て何やかや摘んでましたよ。いかがですか?」
「わざわざ作るんでしょう?なんか悪いな」
「お気にめさらず。私も今日はもうお仕事終了ですし、ごはんがまだ少し余ってるんです。
それにその、七草の方は日持ちもしませんし、残してももったいないですからね」
「そうですか。では、遠慮なく」


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