09/11/05 20:49:39 VVcayhQ+
>千早の物語だからと言っても、ちょっと平坦な感じがしました
この一文を、千早の物語だから平坦な感じと読んでしまった…
ゴメンよ千早、わざとじゃないんです…
……横レス、お目汚し失礼しました
28:島原薫 ◆DqcSfilCKg
09/11/06 14:50:25 fp8Pl5L8
前作へのご感想、まことにありがとうございました。島原薫です。
やっとDSもクリアして、これからどのように扱っていくのか、自分でも楽しみです。
早速ですが、尾崎PのSSを投下させていただきます。
タイトルは「partiality」。使用レスは3レス。
DSのネタばれと、漫画版アイマスrerelationsのキャラが出ております。ご注意ください。
投下後終了宣言+前作レスへのお返しです。
29:島原薫 ◆DqcSfilCKg
09/11/06 14:51:52 fp8Pl5L8
本番のステージへと駆けていく絵理の後ろ姿を、いまだ震える体をおさえつけながら見送る。
あまりにも大きい賭けに勝った見返りは喜びよりも先に、二度と勘弁願いたいという安堵感だった。
スーパースター、星井美希の姿はもう無く、彼女のプロデューサーだけが絵理のステージを観察している。
その怜悧な瞳はさすが、いくつもの事務所を渡り歩いただけあって鋭い。絵理のステージングよりもそちらに目がいってしまっていた私に気づいたのか、"彼女"はゆっくりと近づいてきた。
おめでとうございます。
星井美希のプロデューサー、藪下幸恵Pは先ほどの表情とは打って変わって、柔和な笑顔で手を差し出してきた。
負けたというのに随分と余裕で。
皮肉の一つでも言ってやろうかと思ったが、ここでは自分達が官軍。安っぽい真似はしたくない。
「ありがとうございます。まさか星井美希と戦えるなんて、光栄です」
プロデューサー同士の握手などという、口約束よりも薄っぺらいそれを滞りなく済ませる。
むしろ周囲のスタッフの方が緊張したであろう場面が過ぎると、「面白い子ね」と、藪下Pの方から切り出してきた。視線の先は絵理。
本意はどうあれ、自分のアイドルが褒められるのは単純に嬉しかった。
彼女は絵理の一挙手一投足を逃すまいと集中しているのか、たまに体を傾けてはマジマジとステージを眺めている。その姿はまるで、ただの絵理のファンにも思えた。
「ネットアイドルのクイーン、ELLIEでしょ? どうやって岩屋の外に連れ出したんです?」
「無理矢理引っ張り出した具合です。よく絵理をご存知で」
「それはもう。ウチもスカウトを考えたんですが、どうにもアナログな人が多くて」
天才、如月千早に匹敵するとまで言われた佐野美心があっさりと引退して、そのプロデューサーであった藪下女史もDNAプロから765プロへと鞍替えしたのは業界では結構な話題となった。
30:「partiality」(2/3) ◆DqcSfilCKg
09/11/06 14:53:01 fp8Pl5L8
今や961プロと並ぶ大手芸能事務所に移った彼女の担当アイドルが星井美希だと報じられた瞬間、いったい幾人のプロデューサーが肩を落としたか。
その可憐な外見とは裏腹に豪腕とまで称される手腕はあっという間に美希を一流アイドルまで押し上げた。美希のずば抜けた才能あってこそなのだが、あの才能を過不足無く支える実力は健在というわけだ。
なによりアイドルが好きで好きで仕方ない、という姿勢は私も見習うところであり、尊敬すべきところだ。
あーカワイー、と臆面も無く他事務所のアイドルを褒めちぎる藪下Pに、今度は私の方から口を開く。
「いいんですか? 星井美希を放っておいて」
ああ、と絵理から視線を外さずに返す藪下さん。
ほんの一瞬、殺気にも似た何かが彼女から感じられて、半歩後ずさる。
「負けて欲しかったので」
え? と素っ頓狂な声をあげる私など意に介さず、彼女は絵理に夢中なまま続けた。
「あの子って何も考えないまま、ステージにあがるでしょう? 今のランクならともかく、IUとなると話が違ってきますから」
なるほど。
絵理と星井美希はお互いにビジュアルを武器にしながらも、その戦略はほとんど正反対と言っても良いアイドル。
考えて戦う術を彼女にも、といったところだろう。
いわば絵理はそれを気づかせるための踏み台。癪に障るが、こちらはIUにも無条件で出れるほどのアイドルを打ち負かした実績を得た。
それでもまあ、仕返しくらいはしておこう。つくづく私は大人気ない大人だ。
「ですが、星井美希が考えて、なんて出来るでしょうか? むしろ彼女の魅力を妨げてしまうのでは?」
勝ってしまえばこちらのもの。
スラスラと出てくる文言に、やっと藪下Pがこちらを向いたかと思えば「そうね」とそっけなく返された。
どうにも手玉に取られているような感覚を覚え、気持ち悪い。
絵理のステージも終盤を迎え、それでも視線の熱を緩めようとしない藪下Pは勝者へのご褒美なのか、私の質問に答えた。
「尾崎さんの言うとおり、美希にステージの最中に細かいことを考える能力はないわ。だから、どんな小細工を弄されようがビクともしない腕力を彼女に求めているの」
「腕力、ですか」
「そ。アイドルをこう言うのも変だけど、私は美希に横綱相撲をして貰いたいの。勝つべくして勝つ。伝説のアイドル、日高舞のようにね」
31:「partiality」(3/3) ◆DqcSfilCKg
09/11/06 14:54:43 fp8Pl5L8
息を飲む。
今後、いかなる才能が現れようと比肩しうるアイドルなんて出てこないであろう伝説を彼女は再現しようと言っている。
なにより私よりも小柄な体からは、その伝説すら越えんかという気概に溢れていた。
だからこその豪腕、藪下幸恵なのか。
言葉を失う私をよそに、ステージでは踊り終えた絵理がチラリと、スタッフに頭を下げながら視線をこちらに送ってくる。
慌てて自分を、プロデューサーに戻していく。
「いやぁー、可愛かったわ絵理ちゃん。今度、出来ればサインとか貰えます?」
振り返った藪下Pは、それこそもう絵理のファンになっていた。
サインも何も、こちらに近づいてくる絵理に話しかけることだって出来るのに。
いつまでたっても、ブラウン管の外の視線を持っていることもまた、私には勉強になった。
「ああそうそう。一つ、先輩から忠告ね」
勝利を労い、先に絵理を控え室へと向かわせると、最後に藪下Pが声をかけてくる。
これからまた、この人のアイドルと戦わなければならない。
その覚悟にはもう少し時間を要するが、身構える私に彼女は最後の最後、爆弾を投げつけてきた。
「アナタは早くお人形遊びをやめないとね。rioraのレイコさん」
急激に頭が、体が冷えていくのがわかった。
この人もまた、やはり私の敵だった。冷める思考の中、私は私の大事な絵理の元へと急いだ。
おわり
32:島原薫 ◆DqcSfilCKg
09/11/06 14:55:25 fp8Pl5L8
投下終了です。以下、前作へのレス返しです。
>>365
今回は意識的に文体を変えたのですが、上手く作用していたようで安心しました。ご感想、ありがとうございます。
>>366
シニカルなものは個人的にも好きなのですが、アイマスの場合は、題材が題材なだけに扱いが難しいので普段は抑えております。
なかなか受けるかどうか判断がつかず不安だったのですが、そう言っていただき、感謝しております。
>>367
コメディである以上、こういった言い回しにはいつも以上に気を遣いますね。
普段からコメディを書かれている方はスゴイな、と思います。
>>368
出来るだけ、キャラの範疇でコミカルに、となるとやはり難しいですね。
最近は百合に寄った作品を書いているせいか、ついついアイドル同士の距離を近づけ過ぎるのですが、これぐらいで済んでよかったです。
>>381
先述しましたが、コミカルなものは色んなところに気を使うので、普段はあまり使わない文体だったりします。
楽しんで頂けたようでなによりです。
タイトルに関してはもう、私のセンスの問題となっておりまして、精進いたします。
新しい書き手の方も出てこられまして、楽しくやっていきたいですね。
それでは長々と失礼しました。今後ともよろしくお願いいたします。
33:創る名無しに見る名無し
09/11/06 18:07:15 7JmsO0kx
俺がこのオザリンだったら確実にちびってる
自分以外全員天災もとい天才な中に放り込まれて戦わざるを得ない
そんな不運に涙する
がんばれこのオザリン
34:創る名無しに見る名無し
09/11/07 13:30:16 WSk3SQVk
>>32
相変わらず、人の部妙な所に踏み込むのがお好きな様でw
今回は、また鋭く踏み込むキャラと踏み込まれるキャラの選定が見事ですね。
文体や言葉の使い方も、こういう擦れた大人キャラにぴったりです。
読んでいてニヤけながら興奮する感じを受けました。
面白かったです。
こういう言い方はある意味失礼かもしれませんが、これまでの発表作中で最高です。
しかし、これが実際にあったと考えると、オザリン失踪したくなる気持ちもよくわかるなw
35:創る名無しに見る名無し
09/11/07 14:01:50 WSk3SQVk
おっと、ひとつ言い忘れた。
>>27
私、>>26ですが、もちろんあなたの解釈した通りの意味で言ってます。
ご安心くださいw
おや?こんな休日に、誰か来たかな?
36:創る名無しに見る名無し
09/11/08 02:59:44 qhVeyma0
THE IDOLM@STER アイドルマスター part3 もくじ
前スレdat
URLリンク(imasupd.ddo.jp)
~~~~~前スレ目次~~~~~
006 あなたと、ずっと、一緒に 雨晴P
スレリンク(mitemite板:6番)
015 ねんぷちのつ・ぶ・や・き
スレリンク(mitemite板:15番)
<レス>
スレリンク(mitemite板:25番)
スレリンク(mitemite板:37番)
スレリンク(mitemite板:50番)
022 cicada 島原薫P
スレリンク(mitemite板:22番)
027 【fairyt@le】ねずみの嫁入り レシP
スレリンク(mitemite板:27番)
035 【fairyt@le】北風と太陽 寓話P
スレリンク(mitemite板:35番)
042 無題 名無しP
スレリンク(mitemite板:42番)
052 LIVE FOR ... 名無しP
スレリンク(mitemite板:52番)
060 無題 名無しP
スレリンク(mitemite板:60番)
064 合戦時報 寓話P
スレリンク(mitemite板:64番)
076 ある日の風景ABC 名無しP
スレリンク(mitemite板:76番)
080 placebo レシP
スレリンク(mitemite板:80番)
086 青春ミンミキミキミキ 島原薫P
スレリンク(mitemite板:86番)
097 無題 96P
スレリンク(mitemite板:97番)
132 おひさま 島原薫P
スレリンク(mitemite板:132番)
37:創る名無しに見る名無し
09/11/08 03:00:35 qhVeyma0
144 In severe rain. 雨晴P
スレリンク(mitemite板:144番)
153 【fairyt@le】鬼退治:CERO C みなとP
スレリンク(mitemite板:153番)
161 hot line 96P
スレリンク(mitemite板:161番)
185 ボクノメガミ レシP
スレリンク(mitemite板:185番)
229 衷心 96P
スレリンク(mitemite板:229番)
248 もやしの運河 248P
スレリンク(mitemite板:248番)
255 とりあえず何か食べよう 島原薫P
スレリンク(mitemite板:255番)
266 貴音の休日(fly "with" me to the moon) 96P
スレリンク(mitemite板:266番)
274 月ノ歌 陽一P
スレリンク(mitemite板:274番)
281 外出の旅情 248P
スレリンク(mitemite板:281番)
285 勇気 夜の機動戦士P
スレリンク(mitemite板:285番)
305 おかえりただいま 島原薫P
スレリンク(mitemite板:305番)
310 無題 96P
スレリンク(mitemite板:310番)
349 subtle flavor レシP
スレリンク(mitemite板:349番)
361 赤頭巾ちゃん改めバカリボンちゃん改めヘタレ狼ちひゃーちゃん 島原薫P
スレリンク(mitemite板:361番)
369 a bad first morning みなとP
スレリンク(mitemite板:369番)
377 留守電 レシP
スレリンク(mitemite板:377番)
384 love liquid レシP
スレリンク(mitemite板:384番)
415 やよいの食事手帳 名無しP
スレリンク(mitemite板:415番)
38:創る名無しに見る名無し
09/11/08 03:01:31 qhVeyma0
流れぶった切り失礼しました。前スレ埋まったんで目次でございます。
では島原Pの感想へと流れを戻します。
>>32
GJでございます。
partialityって第一義は「部分的なさま/不完全さ」なんだけど「偏愛的」って意味も
あるんですね。勉強になりました。
尾崎Pって弱い部分がたくさん見えててもうそれこそ不完全なPなんだけど、一途で
ある様子もまた魅力的なんですよね。キャラスレに「千早の将来像のパラレル(大意)」
って書き込みがありました。はいそこゼノって言うの禁止。
絵理シナリオは実は主役が尾崎Pだ、というのをSS化した感じですね。IU予選が
クライマックス、尾崎PのADVはここからIU本戦までがメインストーリー。藪下P
ばかりでなくほかの765P、すなわちアケ/箱/PSPのプロデューサーたちもライバル
です。彼女は好敵手たちからいろいろなものを学んでゆくのでしょう。
このSSではまだそこまでわかってないご様子ですんで、これから先が楽しみです。
フツーに『第二話』とか続いてもよさげw
堪能させていただきました。
39:創る名無しに見る名無し
09/11/08 07:25:20 peSNt8Vo
>やよいの食事手帳
埋めにしておくのはもったいないGJ!
やよいスレにはやよいハンターズというのがいるけど、ここの事務所は全員餌付け魔かw
もともとの37kgはかなり細いけど2割超も急激に増えたらいくらなんでもかわいそうです
アイドルの皆さんやよいちゃんの健康管理もよろしくお願いしますm(_ _)m
やよい日記の口調がなかなかイカニモで読んでて楽しかったです。俺も困ることあるけど
オトナな言い回しがちらほらあるのはきっといっぱい勉強したのに違いない(ぐっ)。
面白かったです。ありがとさま。
40:創る名無しに見る名無し
09/11/08 10:52:59 o26BXKo3
前スレラストのやよいの食事手帳は、果たしてわかってて埋めのつもりでやったのか、
それとも知らずに素で投下したのか、その辺が気になる。
わかってればいいけど、知らずにその後何のレスもなしでスレが落ちたなんて、
かなりの悲劇になりかねん。
「たった今スリーサイズを測って貰ったが、今のバストは76cmだそうだ」
「・・・っ!!」
「ああっ?!千早ちゃん、真、しっかりして!」
41:創る名無しに見る名無し
09/11/08 12:13:55 Eh6+Usku
やよい-!俺はぽっちゃりでも気にしないぞー!
42:創る名無しに見る名無し
09/11/08 18:20:06 4hXfWrgu
まぁ、嬉しそうに食べまんぷくぅな笑顔で「ありがとうございました!」ってやよいに言わせたい欲求を抑えるのは
禁煙禁酒に近いレベルの精神力が必要かもしれんしなぁ
43:創る名無しに見る名無し
09/11/08 20:13:34 LjrldOvL
可愛がりと餌付けは全く別って考えられる人が欲しかったな。
小鳥さんに始まる、孫可愛さから菓子与える困った祖父母的な愛情らに対して、
保護者に相当するプロデューサーも『やよいは公園の鳩やゴミ箱じゃない』と言ってるのに、
結局また集団餌付けに戻っちゃうのはどうなんだろ…
太ってようが痩せてようが、やよいは可愛いのには同意するが
やよいが最後まで動物園の動物扱いっぽくて何かモヤモヤした。
44:創る名無しに見る名無し
09/11/08 21:47:28 wKqcnFqG
やよいにおすそわけするのが悪いんじゃなくて、
みんなして与えてカロリーオーバーになるのが困るって話だから
いい妥協点に着地したと思うぞ
45:創る名無しに見る名無し
09/11/09 00:28:01 hPb2kgQ+
前スレ>>415-416です、埋め目的で気楽に書いた作品に沢山の感想ありがとうございました。
本来はレス返しは次の作品のあとがきと合わせて書くのがマナーだと思いますが
自分が物を書くテンションになるのが数ヶ月に一度、下手したら数年に一度という有様なのでレス返しのみでご容赦を。
>>39
餌付けの大本の発想はそのやよいハンターズからでしたねw
後、ゲームで実際にやよいをプロデュースした時に「調子が良いからご飯を2回もお代わりした」と言う挨拶があって
貧乏設定とか関係なく普通に食いしん坊なんだな~と理解したので餌付けな話になりました。
>2割超も急激に増えたら
3kg増えて40kgに~位だと純粋な成長分を除けば殆ど増えてないと思ったので思い切ってかなり増やしてみました。
後、全盛期(体重的に)の辻ちゃんが60kg以上あったそうなので自分の趣味としてもその位増やそうとも思ったのですが、
そこまで来ると流石に餌付け組も気付くし自重するだろうと思ったのでそう言う意味では手加減してます。
>やよい日記の口調
正直やよいっぽさが出ているか不安だったのでそう言って貰えると嬉しいです。
彼女達は口語のまま文章を書くので、語尾を伸ばしたり感嘆の台詞をそのまま書くのは
違和感が強くて加減が分かり辛かったのですがこれ位で良かったのでしょうか?
>>40
500kb制限の事は知ってて完全に埋める目的で書きました。
1行レスだけで6kb埋めるのは結構手間ですし、長い間2つのスレが同時に残ってるのもアレだと思ったので。
後は、自分の作品に何の感想も無いまま2~3日スレが止まってしまうと辛いので
いっそ次のレスの存在しない埋め作品で書いてしまおうと言うチキンな考え方もありましたが。
>>41
同士発見!やよいはぽっちゃりでも可愛い!
アイマスでぽっちゃりとかお肉の話になると律子や春香が良く話題に上がりますが
個人的にはやよいも二人に負けない位その手の話が似合う気がします。(食いしん坊とか、食生活が良くなるとか)
>>42
ちょっと拙いんじゃないかと気付いていても、その笑顔の誘惑を振り切るのは難しいでしょうね。
やよいの性格からして自分から「今日はお菓子くれないんですか?」等と聞いたりする事は無いのに
こっちから勝手に用意してしまうイメージです。
>>43
正にその発想は無かったと言うべきか、完全にその考えが抜け落ちていました。
最後の文は、>>44氏の言う通りみんなして食べさせたら駄目だから量的な制限を掛けるイメージでしたが、
それだと確かに困った祖父母的な可愛がり方自体は全く変わってないんですよね。
作中では書いて無かったのですが、全員が毎日餌付けしてるのは自分だけと思っていたイメージだったので
そこに気付けば問題は無くなると思っていたのですが、その辺りも反省させる必要があったかも知れないです。
最後に改めて、沢山の感想を書いて頂いてありがとうございました。
いつになるかは分かりませんがまた物を書くテンションになった時に
お邪魔させて頂く事もあると思うので、その時はまたよろしくお願いします。
46:レシP ◆KSbwPZKdBcln
09/11/09 17:44:55 Eid468pm
まいどお世話さまです。レシPでございます。前スレで書けない書けないと言ってたブツが書き上がりました。
タイトルは『美希曜日よりの使者』、主演は言うに及ばず。本文7レスです。
ただいまから投下します。よろしくお願いします。
47:美希曜日よりの使者(1/7) ◆KSbwPZKdBcln
09/11/09 17:45:41 Eid468pm
久しぶりにオフとなった日曜日は、あっという間に過ぎてしまった。もともとこの業界に潜り込んでは
いたものの、ひょんなことからプロデューサーなどという職業について数ヶ月、まだ手の指で数え
られるほどの暦通りの休日である。
時はすでに夕刻、アパートの築年数に似合いのインターホンが死にそうな音を出した時、俺は
晩飯でも食いに出ようか、それとも自炊に挑戦しようかと思案しているところだった。
「ん、なんだ?……はい」
「書留なのっ……です」
ドアの向こうからはこんな声がする。
「……ええっと?なんですって?」
「書留ですのー」
この世に生まれて二十数年、俺の知る限りこういう言葉遣いの郵便局員は記憶にないし、そもそも
いくら民営化したとは言えローティーンギャルが書留を配達するサービスがあるとは到底思えない。
俺は足音を忍ばせてドアに近づき、そっとノブに手を伸ばした。
「郵便局員さんならもっと低い声だと思いますよー」
「……が、がぎどべでずう」
いきなりドアを開けてやると、ノドに手を当てて眉間に皺を寄せ、なんとかおっさんの声帯模写を
しようとする『未完の幼きヴィジュアルクイーン』がつっ立っていた。
「……お前なあ」
「ゔぁ゙?」
大体にしてほぼ毎日顔を突き合わせているのだ、聞き間違うはずがない。
俺の担当アイドル・星井美希である。
「アホか。なにしてるんだ、美希」
「プロデューサーさん、おはよーなの」
「スタジオとかではそういうふうに挨拶するけど、世間一般では『こんばんわ』の時間だぞ」
いきなりの珍客に戸惑いながら、何があったのかと首をかしげる。
「どうしたんだ、なにか急用でも?っつうか、用事があるなら電話くれればいいだろう」
「ううん、違うの。ミキね」
眉間の皺を解いた美希はにこりと笑い、こう言った。
「プロデューサーさんに遊んでもらおって思って」
「はあっ?」
「デートしてよ、プロデューサーさん」
「……デート?」
「あー、プロデューサーさん、いまエッチなこと考えたでしょっ!」
「なっ!?」
むしろ、そんなことを言われたことで脳内に桃色の妄想が広がってしまう。14歳と言うのにため息
の出るようなプロポーションの持ち主、美しく染め上げられたブロンドのロングヘアとアンニュイな
物腰、仕事の付き合いとはいえ、相手は子供とはいえ、邪な考えのひとつやふたつ浮かばせねば
男がすたるというものである……と、まさに相手の目的は俺にそんな妄想をさせることだったようだ。
いたずらな光を放つ瞳で満面の笑みを浮かべている。
「うっふっふう」
「……おっま……大人をからかうと」
「あはは、ごめんなさいなの」
照れ隠しに怒ってみせても効果などない。悪びれるふうもなく彼女は続けた。
「でもね、遊ぼっていうのはホントだよ。ミキね、わざわざここの住所調べて探したんだ」
「そうか、お前ここ来るの初めてだもんな。でもどうして?遊ぶんなら友達いっぱいいるだろう」
「さっきまで一緒だったんだけど、お開きになっちゃったのー」
遊んでいたというのは、2駅隣のショッピングモールだった。友人がその近所に住んでおり、みんなで
新しく出来た人気の服屋をめぐっていたのだそうだ。しかし夕飯の時間になると帰宅する子や
ナマイキにもこれからデートの子などばかりで、美希だけ取り残されてしまったと言う。
48:美希曜日よりの使者(2/7) ◆KSbwPZKdBcln
09/11/09 17:46:35 Eid468pm
「今日はパパとママ、二人でお芝居観に行ってるんだよね。お姉ちゃんもお友達と遊びに行っちゃった
し、ミキごはん食べるトコないの」
「家にメシくらい用意してないのか」
「いらないって言っちゃったんだもん」
友人の誰かしら残るだろうと思っていたのが彼女の誤算だったようだ。食事分の小遣いは貰って
いるが一人でファーストフードというのも味気なく、そういえば俺の住所がこの辺で、自分と一緒に
オフだと思い当たった、という経緯らしい。
「んー、まあそう言うことなら、俺もちょうど飯でもと思ってたところだ」
「わ、やった、ねえねえプロデューサーさん、どこ行こ?」
「まだ決めてないよ。ちょっと待ってろ、いま用意するから」
「上がってていい?」
「いいけど、余計なことするんじゃ」
「わーいお邪魔しまーすっ」
「人の話を聞けー!」
ともかく部屋に入れ、興味津々の表情で独身貴族のたたずまいを物色する彼女を牽制しながら
手早く着替える。今や彼女も街を歩けばたまには気付かれる程度には顔が売れている。連れ立って
歩く俺も誤解を生むような格好をするわけには行かない。
チノにボタンダウン、インナーにTシャツを着込んだら美希に却下された。この姿は相当ダサいらしい。
「なんでだよ、もうけっこう寒いだろ」
「もこもこヤなの。この方がすっきりしてかっこいいよ、プロデューサーさん」
まあ姫のご要望では仕方がない。強い風が吹かないよう祈りながらジャケットを羽織った。
「なにか食べたいものあるか?美希」
「プロデューサーさんは?」
「なんでもいいよ」
「じゃね、ミキあれ行きたい!居酒屋さん!」
「はあ?」
「いいじゃない、だってプロデューサーさんお酒飲むでしょ?ミキお味噌の焼きおにぎり食べたいな。
あと焼き鳥とモツ煮」
一瞬躊躇したが、考えてみれば高級フレンチとか言われるよりはよほど気が楽だ。ついでに
未成年者を居酒屋に連れていく件についても、地元なら心当たりがあった。
「んー、じゃあそうするか。ただしお前はタレントなんだからな、立ち居振る舞いに注意すること」
「ハイなの!」
すばらしくよい返事だが美希のことだ、よく見ておかねばなるまい。
****
いわゆるベッドタウンに分類されるこの駅前には仕事帰りの客を当て込んだ店が群拠しており、
俺の行きつけの店はその中の、古びた飲食店ビルの地下1階にあった。日曜の夕食時とあっては、
客は俺と顔見知りの常連ばかりのはずだ。
「おやっさん、いいかい」
「よう兄ちゃん……なんだよ、今日はカノジョ連れかあ」
「よしてくれ、話したことあるだろ?事務所で担当してる子だよ」
「ああ、美希ちゃんっていったっけ」
このような少々の誤解も一言で済むのがありがたい……と思ったのが間違いだった。
「はじめましてー。いつもミキのハニーがお世話になってまーす」
「こら美希ーっ!」
入店30秒でこのありさまだった。大して広くない店内のそれでも目立たない席を見付け、今日の
客筋を確認してようやくひと息つく。
「美希……お前なあ」
「えへ、ごめんなさあい。でもプロデューサーさんがみんなトモダチだって言ってたから、あんな
感じのツカミでいけるかもって」
「お前は漫才師か。まあ結局『俺が担当アイドルに手を出す度胸なんかない』って誰ひとり
引っかからなかったけどな、はぁ……じゃなくて言ったろ、注意しろって。もしも見ず知らずの
美希のファンが店の外を通りかかって、今の聞こえちゃったら大ショックだろ?追いかけて
冗談でしたとか言えないんだぞ」
「あ、そっか」
49:美希曜日よりの使者(3/7) ◆KSbwPZKdBcln
09/11/09 17:47:37 Eid468pm
あの若造がいっちょまえに説教なんかする身分になって、という声が聞こえてきそうな興味津々の
視線の中、芸能プロデューサーとしての責任を果たす。常連客の大部分は学生の頃の俺を憶えて
いて、この店での俺はいつになっても『ぐーたら学生の兄ちゃん』なのだ。
「もう普通に歩いてても声かけられたりするだろ?それだけ注目されてるんだし、お前が気づかない
うちに何か勘違いする人もいるかも知れない。あとでタネ明かしが要るようなジョークはダメ」
「むー、キュークツなの」
「TPOってことだよ。今のは、入口のドアが閉まってる時だったらセーフかな」
「はあい。今度は戸締り確認するね」
「なんかおかしいが、いいだろ」
品書きを見ながら適当に腹に溜まりそうなものを頼んでゆく。美希を家まで送るにしても、
ビールの一杯や二杯構わないだろう。
「美希、お前は何飲む?」
「あ、ミキはとりあえずカシスオレンジでいいや」
「おやっさん、中生とオレンジジュース」
「あープロデューサーさんノリ悪い!今のは『オッケー、中生とカシスオレンジねーってコレ酒
じゃんかっ!』ってノリツッコミするトコでしょっ!」
「できるかー!」
美希の育ちを考えるとこういう店には縁はないだろうと思っていたが、案の定店内のそこら中が
気になるようだ。腰を落ち着ける間もなく、入口の縄暖簾から神棚の熊手からカウンターの
大皿惣菜まで全部観察して回る。
「おじさんおじさん、あの飾りなに?クマデ?熊手って熊の手でできてるの?」
「うわあ、タレントさんのサインいっぱい飾ってある。ミキのは?ああ、お店に来た時にサイン
置いてくんだ。じゃあ今日はミキも書いていっていいんだね。明日も来たら明日も書いていいの?」
「あ、このお芋おいしそう!おじさんこれ食べ放題なの?え、美希ちゃんなら特別?やった、ありがと
なのっ」
「おじさんその瓶の中身なに?梅?へー、おっきい梅酒だねっ。となりは?ふうん、ニンニクも
お酒になるんだー。そのとな……ひゃああっ、へへへヘビっ!おじさんお酒のなかにヘビがーっ!」
「うるさいよお前はー!」
マムシ酒に悲鳴を上げるに及んで、さすがに首根っこを掴んで席に引き戻した。客たちの中には
テレビで彼女を見知っている者もおり、『星井美希の居酒屋ぶらり旅』を大層楽しんでいて苦情の
たぐいは心配なさそうだ。とは言え、このままでは他の誰でもなく俺の神経が持たない。
「お前なあ、普通のレストランに入ったってここまで気さくに店長とトークしないだろ?」
「はーびっくりしたぁ。プロデューサーさんあのお酒飲んでみてよ」
「話を聞け。そして俺を実験台に使うな」
もうひと説教くれようと思ったら、ふいに俺の目の前に、ビールではなく透明な液体の入った
ショットグラスが置かれた。中身の見当がついた美希が期待に目を輝かせている。……店主の
オゴリってことらしい。
「ええい、どうなっても知らねーぞ」
溜息をひとつつき、俺は美希のオレンジジュースとグラスを打ち鳴らした。
****
店内には一時間と少しくらいいたろうか。店主はご丁寧にも表に『本日貸し切り』の張り紙まで
してくれており、俺たちは少なくとも事情を知らない一般客を驚かすことだけはなく楽しく食事を
終えた。
「おいしかったあ。プロデューサーさんご馳走様でした」
「俺は食った気がしねえよ。美希、ちゃんと食べたか?」
「うん!あの焼きおにぎりね、ミキが生きてきた中でイチバンだよって言ったら、おじさん今度
差し入れ持ってきてくれるって!」
「はいはい、そいつはよかったな」
50:美希曜日よりの使者(4/7) ◆KSbwPZKdBcln
09/11/09 17:48:40 Eid468pm
「ねえねえプロデューサーさん、次どこ行くの?」
「どこって……帰るに決まってんだろ」
「うええ~?」
当然のつもりでそう答えたら、ものすごい顔で不満をぶつけられた。今の顔も写真誌に
やられたら活動できなくなるに違いない。
「まだつまんない!プロデューサーさんもっと遊ぼうよー」
「バカ言ってんじゃないの、コドモは寝る時間だぞ。お父さんたちだってもうすぐ帰ってくるんだろ?」
「ぶうぅ~」
「その顔やめろ」
しばらくにらみ合いが続いたが、いずれにせよ中学生には少々遅い時間だ。見た目こそ
ハデだがなんだかんだ言って育ちのいい美希も、自分に分がないことはわかっているだろう。
明日は月曜日で学校もあるし、その後は事務所に来てレッスンもあるのだ。
やがて彼女も気持ちの折り合いをつけたらしく、ふうと小さくため息をついて俺を見上げた。
「じゃあさ、じゃあさ、ミキのこと、家まで送ってよ」
「お安い御用だよ。つうかそのつもりだった」
「家まで手、つないでくれる?」
「バカ言え、さっきも言ったろ?誤解される行動は禁物」
「なら……50センチ以内」
「へ?」
「帰るまででいいから、ミキから50センチより離れちゃダメ!触らなかったら勘違いもないでしょ?」
「おま……」
「だめ?じゃあ45センチ!んー、40センチなら?」
「縮めんなー!」
「ね、ね、いいでしょ?」
俺は内心で白旗を揚げた。エスコート距離がゼロになる前に手を打たねば元の木阿弥である。
「わかったよ。でもさすがに歩きづらいから、1メートルまではOKにしてくれ」
「やったー」
****
駅までの100メートルは最大距離を維持したが、意外に混んでいた車内では美希が嬉しそうに
微笑むのに気づき、冷や汗が出た。電車が揺れた折をみてはさりげなく背中を持たせかけてくる
美希を支えてやりつつ、小声で訊ねてみる。
「美希、今やってること面白いか?」
「うん、面白いよ。なんで?」
「お前ってさ、はじめのうち何か違う感じだったろ」
「すぐ寝たり、チコクしたり?」
「声でけえよ」
美希が変わりつつあるのに思い当たったのは、少し前のことだ。二つ目のランクアップを
果たした後だったろうか。
その頃を境に、遅刻が減った。ドタキャンがなくなった。レッスンや収録に身が入るように
なった。業界経験の浅い俺ですら、美希がカメラの前で見せる輝きに磨きがかかったのを
感じ取ることができた。
「今のお前さ、なんつうか、幸せそうだよ。別に今まで不幸だとか思わないけどな」
「幸せかー……うん、でも、そうかも」
俺の胸に背中を預けたまま、真上を向いてそう言う。
「あのね、ミキってドリョクしないでなんでもうまくできる子でしょ?」
「もう少し謙虚にならんかなー」
「だからね、学校とかでもあんまり面白くなかったの。んーと、イゴコチいいけど、楽しくないの」
「へえ?」
51:美希曜日よりの使者(5/7) ◆KSbwPZKdBcln
09/11/09 17:49:48 Eid468pm
何度か言い換えを試みながら俺に話してくれたのは、いわゆる天才の未充足感だった。
教科書に一通り目を通せば内容が理解でき、憶えたことは忘れないのでテストでも必要充分な
点数が取れる。運動神経もセンスもあり、普通に学校生活を送るに足りないものは何もない。
顔もスタイルもよく、明るく人なつこい性格でクラスメートにも評判がいい。美希は毎日を
不自由なく過ごしているのだが、努力しないで相応の境遇にいられるから、何かに必死に
なるということがなかった。
「ミキ自分でもね、ヒッシな人ってなんか暑苦しいし、やだなって思ってたんだけど」
美希は続けて言う。
「ゲーノー界ってね、みーんなヒッシだったの」
「必死ねえ」
「んっとね、例えばディレクターさんはいっつも番組作りのこと考えてるし、メイクさんはお化粧の
ことばっかりケンキューしてる。メイクのコツとか、ミキがひとつ聞くと10も20も教えてくれて
憶えきれないの」
「ああ、なるほど」
「音響のチーフさんだったかな、もっと楽しいことあるって思うな、って聞いたら、『集音マイク
いじるより面白いことなんてないよ』って言われてびっくりしちゃった。ミキ、マイクなんか
いっこも面白くなかったんだもん」
「あはは、それは人によるよな」
「うん、それ。人によるっていうこと。でもね、それぞれみんな、自分の好きなことにはすっごい
夢中なの」
似たような業界は多いが、芸能界というものも『好きでなければやっていられない』世界だ。
仕事はキツい、給料は安い、下積み期間は長い、功績はトップが総取りでミスは底辺が
全部背負い込む。765プロの待遇は相当マシで、俺より年齢も経歴も上の人間が、俺より
安い給料で、俺より大変な仕事をこなしていることだってザラにある。この俺たちを支える
原動力は、『この仕事が好き』だということだ。
「そりゃそうさ。俺だって番組作りが好きでこの業界にいて、社長に拾ってもらったんだ。
自分の好きなことだから、いくらでも夢中になれるよ」
「それでね」
美希は俺から身を離し、こちらをくるりと振り向いた。
「そんな夢中な人たちが作った番組が、すっごく素敵だったの」
タレントを輝かせるメーキャップアーティスト。歌い手の声に最大限の効果を与える
バックバンド。視覚演出が舞台を盛り立て、ベストの音源を収録し、至高のステージを
ディレクターがメディアとして完成させる。テレビ番組とはまさに、各分野のプロフェッショナル
の技術の集大成であると言えた。
「そのチーフさんに言われたんだ。『美希ちゃんが一生懸命歌ってくれてる、その歌声を
俺のマイクが集めて、それが番組になって日本中に流れるんだよ。こんなに面白いこと、
他にないだろ?』って」
「うん、そうだよな。その人にとっては、いっちばん面白いことなんだよな」
「だからね、えへへ」
「なんだよ」
「だからね……ミキもアイドル、夢中になってみようかなって思ったの」
頬を染め、照れて笑う美希に見とれているうちに最寄り駅に到着し、会話の続きは夜道を
歩きながらとなった。
「ミキがフツーに歌ってもみんな褒めてくれるけど、前もっていっぱい練習して一生懸命
ステージやると、みんながすっっっごい喜んでくれるんだよ!目をまん丸くする人がいたり、
タレントさんじゃなくてスタッフさんなのになんだか『うわ、負けてらんねー』とか燃えちゃう
人とかいて、とっても面白いの!」
1メートルだの50センチだのの約束も忘れて、俺の視界を目一杯駆使して大きな
身振り手振りで説明する。と、そこで言葉を切り、美希は動きを止めて俺を見つめた。
「だからね」
「うん?」
52:美希曜日よりの使者(6/7) ◆KSbwPZKdBcln
09/11/09 17:50:59 Eid468pm
「だから、お仕事ない日はちょっぴりつまんなくて。それに、きっとプロデューサーさんも
つまんないかもって思って、プロデューサーさんちに遊びに来ちゃった」
俺は……。
俺はこの日曜日、なにをしていたろう。
昼前までだらだら眠り、たまっていた掃除洗濯をこなしてテレビを眺め、雑誌を読み
コンビニをハシゴして、気がつけば一日が終わっていた。
もちろんそれは、仕事の疲れをとるためだ。布団で眠ることもままならない日々を
送る身にとって『なにもしない日』は貴重であり、俺はそれを存分に楽しんだ、という
ことになる。だが。
だが、今日は何かに夢中になることがなかった。
……美希が、現れるまでは。
「えーっと、美希はさ」
迷いながら、聞いてみる。
「今日、俺と一緒にいて楽しかったか?」
「うん!あのね、プロデューサーさんち上がってお部屋の中見たのも楽しかったし、
居酒屋さん初めて入ったのも楽しかった!焼おにぎりもおいしかったし!」
誰の入れ知恵か、部屋に上がり込むなりタンスの裏や本棚の奥をまさぐる彼女から
秘蔵のコレクションをガードした。気心が知れているとはいえ他人の目のある居酒屋
では、美希のイメージが崩れないよう始終注意を払っていた。おかしな酒まで飲む
羽目になり、へんてこな高揚感の中で漫才のツッコミ役の気分だったが、この時間の
俺は……ある意味、美希に夢中だったのだ。
「そっか」
今の俺は、生活のほとんどを美希に握られている。仕事上の担当者だ、当たり前
とも言えるが……。
「ならいいや。お前が楽しかったんならさ……ん、お前ん家この辺じゃなかったか?」
見覚えのある街角で立ち止まった。斜め上方をに視線をやると、マンションの
目指す窓からは明かりが漏れている。
「あ、誰か帰ってる」
「うわ、やばいな。一緒に行って説明しよう」
「だいじょぶだよ。この時間ならきっとお姉ちゃんだから」
「しかし」
「へーきなのっ」
家族が心配しているだろうと思ったが、押し止められた。
「もー、プロデューサーさん心配しすぎだよ」
「そうかぁ?」
「このくらいまで友達と遊ぶことはあるもん。どっちかって言うと、今までプロデューサー
さんと二人きりだったって言っちゃう方がお姉ちゃん、いろいろ勘ぐるかもって思うな?」
「うっ」
確かに、俺は美希の両親とは顔合わせをしているが姉とは面識がない。美希の言う
とおりなら、ここで別れる方が彼女にとって都合がいいのかもしれない。
「そうか、わかったよ。ただし、帰ったフリして遊びに出たりすんなよ?」
「しないよ?そんなの。あとはおうち帰って寝るだけ」
「ん、それじゃここでさよならだな。明日は学校終わったら事務所でレッスン。遅れんなよ」
「はーいっ……あ、ねえねえプロデューサーさん」
マンションのエントランスで手を振ると、美希が再び近づいてきた。
「どうした、忘れ物でも?」
「おやすみのキスは?ん~っ」
「ばっかやろ」
「あはは。プロデューサーさんおやすみなさい」
53:美希曜日よりの使者(7/7) ◆KSbwPZKdBcln
09/11/09 17:52:20 Eid468pm
改めて手を振り、来た道に戻る。気配を感じて振り返ると、美希がまだこちらを見ていた。
「……なんだよ、今度は」
「あのね、プロデューサーさん……プロデューサーさんは、どうだった?」
「どうって」
「ミキといて、面白かった?つまんなかった?……メーワク、だった?」
いざ別れる段になり、多少の反省の念がこみ上げてきた、といったところか。体の前
でもじもじと手をすり合わせながら訊ねる彼女が、俺にはようやく年相応に見えた。
少し考えるふりをしてもう一度彼女の元に戻り、おもむろに右手で髪を撫でてやった。
「ばーか」
「うひゃ?」
「迷惑なもんか。俺も、すっげえ楽しかったよ」
頭というより首ごとこねくり回し、心の内で感謝を伝える。
「今日はただぼんやりして過ごしてたからな、あのまま寝てたら翌日気合入らない
まんまで、仕事始めることになってたよ。ありがとな、美希」
「じゃあじゃあ、プロデューサーさんも明日はレッスン、夢中になれる?」
「なるなる。ビッシビシしごくからな」
「やった、えへへ」
「おかしいぞその返し」
とにかく今日はちゃんと寝ろ、学校遅刻すんなよ、宿題とか大丈夫か、他にもいくつか
保護者のような注意をし、キリがなさそうなので彼女がエレベーターに消えるのを
見送った。ドアが閉まるまで満面の笑顔で手を振り続けた美希の籠が目的の階で
止まるところまで見届け、ふうとひと息ついて歩道にとって返す。
「さてと、明日は……」
のんびり過ごすはずだった日曜日は、夕方からロケットで飛び去ってしまった。
明日は定時に出社し、美希が来るまでに打ち合わせを3件と企画書の仕上げが2件、
そして一番の難物・経費申請を片づけねばならない。
そんな明日、安穏な休日が明けて仕事づくめの一週間が始まる日、全世界の学生と
全世界の勤め人の憂鬱の矛先、その曜日の名は。
美希と会える、その日の名は。
「うん。明日は、……美希曜日だな。あっはっは」
思わず口をついたネーミングのあまりのストレートっぷりに自らを笑い飛ばし、
駅へ向かって歩き出した。
美希は……俺の担当アイドルは、たぶん俺をぞっこんにするために生まれてきた
のだ。俺がテレビ屋を志したのも、高木社長と出会ったのも、美希に巡り会うため
だったのだ。
美希はそのために遣わされた『美希曜日よりの使者』だったのだ。
彼女はきっとトップアイドルになるだろう。素質があるのは明らかだし、さっきの
打ち明け話では彼女に一番必要だったものも得ていたことが知れた。
あとは、俺が彼女を道案内すればいい。俺の元に降りてきてくれた可愛らしい
使者さまを、彼女がもといた高みまで。
美希曜日の毎日まで。
「美希曜日の使者ねえ。はは、ははは」
思えばあのマムシ酒がいけなかったのだ、うむ、きっとそうに違いない。そう
ひとりごち、それこそ美希が生まれた頃の歌を小さな声で口ずさみながら歩く。
街灯とまばらな車通りの先、俺の行く手には、遠くぼんやりとした明かりがまたたいていた。
おわり
54:美希曜日よりの使者(あとがき) ◆KSbwPZKdBcln
09/11/09 17:53:10 Eid468pm
お粗末様でした。
ネタ元はキャラスレに書き込まれた『美希曜日よりの使者』という一言レス……だった
のですが、それが春の話ですw いろいろ盛り込んだとはいえネタSSに半年かかって
しまいました。
美希はいわゆる天才キャラなんですけど、性格がそうさせるのか『勉強もスポーツも
万能の超天才児』という感じがしません(コミュ等と違っていたら申し訳ない)。結局
トップアイドルになるにはいかな美希でも努力は必要で、覚醒イベントより前に彼女は
それに気づいているだろう、というお話でした。
なにかお気づきのことでもありましたらよろしくご指導願います。
本日はこれにて。ありがとうございました。
55:創る名無しに見る名無し
09/11/10 02:00:33 GdOUuwJr
>>54
非覚醒美希が実はとても大好きな自分にとっては
ひととおり彼女のことをまとめてくれた感がw
何やらせても常人以上に出来てしまう彼女は
家の中でもだだ甘のパパとママに甘やかされほうだい
でも、そんな自分の毎日に心のどこかで疑問を感じていた
そんな女の子が、本当に頑張らなきゃ輝けない世界に足を踏み入れ
根気強く彼女を支えてくれるひとと出会って少しずつ変わっていく……
そんな物語なんですよね、非覚醒美希ルート。
56:創る名無しに見る名無し
09/11/10 02:55:28 CW0BG1lW
>>54
覚醒イベントの無い美希はこういうゲーム上では見えない名無したちの本気に触れて
少しずつ頑張る事の大切さに気付いたんだろうなぁと考えると読ませて頂きました。
通常と言われる美希も覚醒と言って良い位姿勢が大きく変わってますし、
世界一大美女を目指す最初の一歩が見えた気がします。
居酒屋でのフリーダムな振る舞いも美希っぽくて楽しかったです。
57:創る名無しに見る名無し
09/11/10 05:56:57 Q7NPYdQO
>>54
ふと、なぜか、本当に、ふと。
「あぁ…なんだ…風が…やんだの…」
なんてゆーセリフがいやあぁぁ美希ーーーッ!
自爆パニックとかアホか俺。
GJ。はしゃぐ美希とかすげえ可愛かった。
58:創る名無しに見る名無し
09/11/10 08:18:21 2xa5k1pU
>>54
美希の、何考えてるか、何しでかすかわからないところ、
しかし、それでも少しずつ、あまりとんでもないことはやらかさなくなってきた、
その辺りの微妙な位置にいる感じの美希の、再現性が見事でした。
美希はランクによって、どんどん変化して行くけれども、
低ランクのトンデモぶりか、高ランクでのバリバリ状態辺りが書くには楽なのですが、
この微妙な位置は、書く方にしては再現し辛いと思うので、これは素晴らしいです。
欲を言うと、と言うかネタとして、
これで、最後、美希の呼び方が「プロデューサーさん」の「さん」が
なくなっていたりしたら、個人的には感動したでしょうねw
この日を境に、美希のP呼称が変わった日、という意味で。
59:創る名無しに見る名無し
09/11/10 12:09:45 4WoLAAg7
近い内にアイマスSS創作に手を出してみようかなと思っている通りすがりですが、
少々このスレの皆様に質問したいことがあります。
どこかのサイトかスレでSSを書く時『楽曲の歌詞はSSの中に記載しない方がいい』みたいなことを
見かけた気がしたのですが(それがアイマスSSでの話だったのかどうかもあやふやですけども)、
そういう暗黙のルールがあったりするのでしょうか?
60:創る名無しに見る名無し
09/11/10 13:30:24 9FFZFnU2
版権の問題があるから自粛を謳ってるサイトはあるね。
一般的な話ではあるけど、歌詞と引っ掛けてSSを書きたい時は「一部掲載」がマナーなんじゃないかな?
61:創る名無しに見る名無し
09/11/10 19:24:09 ESmSJx0i
>>59
JASRACさまは比較的性急。音楽著作権はファイル交換/共有ソフトとかでひどい目に
あってるから、犯罪助長防止の名目で時々同人屋とかが多額の使用料を請求されたり
している。李下に冠を正さずの観点で暗黙のルールは(アイマスに限らず)ある。
以前書いたSSでやよいにdo-daiをセリフで歌わせたことがあるけど、実際やってみると
イマイチよくない。俺の腕前のせいかも知れんけど、思ったような効果が出ない。
以上二つの意味合いで、「歌詞を使わずにすむならその方がいいんじゃないかな」と
言ってみる。
62:創る名無しに見る名無し
09/11/12 01:28:23 FRh0QRIP
>>59
原則として、他人の著作物から無断で転載/転用することは著作権の侵害だからねえ。
大げさに言うなら、自分が創作しようとする人間なら、著作権のことを忘れるべきじゃない。
そこまで言わなくても、著作権に関わるものは揉める元なのも確かだから。
63:創る名無しに見る名無し
09/11/13 09:34:47 OusxqiMQ
>>59-62
文化庁の指針(wikipediaより)
・既に公表されている著作物であること
・「公正な慣行」に合致すること
・報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること
・引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
・カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
・引用を行う「必然性」があること
・「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)
SSで問題になりそうなのは下2つかね
64:創る名無しに見る名無し
09/11/16 21:41:18 zWnOaCgK
>>63
そもそも小説なんかの一部として使うのは「引用」じゃなくて「利用」だから
65:雨晴P
09/11/18 13:27:41 1h63P37a
どうも、お久しぶりです。雨晴です。新スレオメです。
前回投稿から大変間が開いてしまいました・・・すみません・・・別作品に感けてました、なんてこと・・・
前スレの感想で、「そろそろ冒険すべき」とのご意見をいただいたので、してみました。
創発板でないと出来なさそうネタですね。冒険。
今回はものすごく短くしてみました。背景とかオチの意味とか色々考えていただけると、泣いて喜びます。
本当に久しぶりの雪歩以外のネタ、2レス程度失礼します。
一応、閲覧注意でお願いします。そんなキツイとは思わないのですが、いつもの甘ったるいのとは違うので・・・
66:私の声が聞こえますか@雨晴P
09/11/18 13:30:03 1h63P37a
私の声が聞こえますか。
聞こえていますか。
貴方の前に居るのは、本当に私ですか。
貴方は確かにそこに居るのに、私はここに居ないのかもしれません。
私の目は貴方を捉えているのに、貴方の目は私を捉えていないのかもしれません。
そもそも貴方を捉えている目は、本当に私の目でしょうか。
私は、一体何者なのでしょうか。
本当の私は、一体どこに居るのでしょうか。
私こそ、本当の私なのでしょうか。
或いは、やはりそこに居るのが、本当の私なのでしょうか。
青の髪を梳き、泣いている貴方に尋ねてみます。
私の声が聞こえますか。
聞こえていますか。
反応は無く、ただ悲しそうな彼の泣き声。呻くようなそれを、私はただ、見守ることしか出来なくて。
その声は、本当に貴方の声なのでしょうか。
貴方はいつでも、あんなにも明るく振舞っていたのに。
その声は、私に宛てているのでしょうか。
本当の私に宛てているのでしょうか。
本当の私とは、一体誰なのでしょうか。
その声を聞く私の耳は、本当に私の耳なのでしょうか。
でも、そんな事はもう、どうだって良い事なのかもしれませんね。
67:私の声が聞こえますか(end)@雨晴P
09/11/18 13:31:07 1h63P37a
きっと私は、もう私じゃないんだと思う。
けれど私は、やっぱり私なんだろうと思う。
だから私は、声を張り上げて歌う。
あの鳥のように、羽ばたくようにして歌う。
私を抱いて泣いてくれる、貴方の為に歌う。
きっと私には、もう貴方しか居ないのだから。
だから私は、貴方の為に歌う。
この気持ちは、私だけのものだから。
私の声が聞こえますか。
聞こえていますか。
ほら。
そうやって気付いてくれる、私のことを本当に大事にしてくれる、貴方の事が大好きなんです。
驚いたように周りを見渡す貴方を見る目は、私のものではないのかもしれません。
私を呼ぶ声を聞くこの耳も、私のものではないのかもしれません。
けれど、貴方を想う気持ちだけは、本当の私であると信じられますから。
だから私は、貴方の為に歌い続けます。
沢山の人に聞いてもらえなくたって、もう良いんです。
本当の私を歌にのせて、貴方に届けます。
プロデューサー。
私の声が聞こえますか。
聞こえていますか。
ずっとずっと、聞いていてくれますか。
68:雨晴P
09/11/18 14:09:58 1h63P37a
以上です。あー、甘ったるいの書きたいです☆
ただ、ただでさえ一辺倒なのに、これ以上堂々巡りもアレですから、たまにはこんなのも良いかななんて・・・
前書きにも書きましたが、色々考えていただければ、と・・・
では、以下頂いた感想への返信をば。
以下前スレ
>>148様
コミュっぽさを前面に出してみたので、そう感じていただけるのは有難いです!有難う御座いました!
ネタ神様は、最近僕のところには顔出してくれなくなってしまいました・・・w
>>149様
HAHAHA
ああいった雨の時こそ、思い切って明るい話を書いてみたいなぁって言う僕の天の邪鬼っぷりですw
ところで、虫歯→歯医者→ドリル→!!!!! ってことですね、わかります。
>>150様
ありがとうございます!
うちの近くも7月末には凄い事になってました。そういう時こそ甘雪歩!
>>151様
素敵なP名ありがとうございますw ただ、長いっすねw
王道って素晴らしいと思うんですよ、本当に。カルピス3倍増し?どう考えても成人病一歩手前ですねw
>>156様
何ですかその素敵シチュエーションw次回は是非それでw
156様に言われるがまま冒険心持って臨んでみた今回でした。本当に貴重な意見をありがとうございます。
以上です。今回のは非難轟々な気がしないでもないですが・・・でもやっぱりそれだって創発板でしか出来ないわけですから、色々ご意見など頂きたいな、なんて。
そんな事を思いつつ、多少なりともスレの活性化に繋がればとか思いつつ今回はこれで失礼します。では・・・
69:創る名無しに見る名無し
09/11/19 00:14:44 lmFtHWi7
>私の声が聞こえますか。
>聞こえていますか。
どっかで聞いたことある言い回しだなぁ、って思ったらガンオケ青のシマシマのシナリオだった。
それに気が付いてからはゲームの中から千早が呼びかけているようにしか見えなくなった。
その場合はPLはOVERSでPに寄生してる設定だよなぁ…とここまで考えてクロススレの範疇だと思い直しました。
雨晴Pにそう言うつもりは無いんだろうけど、アルファ×アイマスは面白そうだなぁ…
70:創る名無しに見る名無し
09/11/19 04:24:51 xw3aIlEV
>>66
3回読んでやっと状況が飲み込めた。
その道を往っちゃだめだ、もどってこーい!と言いたいが、
もう誰の言葉も聞こえないならその道を選ぶよな…
71:創る名無しに見る名無し
09/11/19 16:11:00 pX8hy4Yo
>>68
だ、誰だアンタ・・・wとてもあの雨晴さんとは思えんw
自分も数回読み直して状況把握した。状況飲み込んだ瞬間鳥肌立った。マジで
雨晴さん独特の言い回しがこういうお話には特に映えるなあって言うのが第一印象。
オチも綺麗で、引き込まれる感じ。物悲しい雰囲気は無いのに、ここまで切ないってどういうことなの・・・
多分、自分の考えてる背景やオチの解釈は人によって異なるんでしょうが。
一つ思うのは、やっぱり短いかなあ、と。
折角こんなに不思議な世界観(アレね、前スレで言われてた雨晴ワールドw)なのだから、もう少し堪能したかったなあ、と。
非難轟々かもって言ってるけど、自分は好きだな。あ、勿論いつもの甘々も(ry
72:創る名無しに見る名無し
09/11/19 19:29:07 hVQRYc5f
>>68
……。
……ぐ……GJ!
上にゲーム下敷きらしい感想があったけど知らないので、……せ、せめて俺は
70年後のエピソードだと思っておこう(ノД`゚)
自由解釈型の作品はある意味読み手も好きに読んでいいモノだと思っています。
ですから、できるならば種明かしはナシの方向でお願いしたいです(あ、もちろん
雨晴Pにおまかせしますが)。
いい余韻が残りました。切なさが今日の雨のように心を濡らしました。彼女は
きっと、それでも彼女であり続けるでしょう。
ちくしょー甘いヤツ書いてやるううう!
73:創る名無しに見る名無し
09/11/24 00:38:49 d5tr0G1Z
>>68
まず、こういう内容なのに、繰り返し読める、読んで不快にならないという
その文章の品の良さ、これは賞賛に値すると思います。
その上で、話についてですが。
やはり、関連情報を全て切り捨てていることが、いい方向なのだと思います。
どんな情報をこの文に追加しても、絶対に納得行かない部分が出てくると思うので。
そういう意味では、やはりタネ明かしは、ない方が有り難いかも。
そして、こういった話にも関わらず、読後感がいいです。
これは、内容に関わらず他の作品でも感じることと似ている気がします。
お見事でした。
74:創る名無しに見る名無し
09/11/24 23:08:14 enUCubvo
初めまして。元未来館の住人です。
久しぶりにss何ぞを書きましたよ。
ローカルルールとか、句読点とか、色々とについて。
……すんません。ぶっちゃけ抜けがあるかも。
文法とかは気にせずに、その点はスルーで。
以下雑記。
>>68 どうやら感想が流行ってるようなので。
……さわやか井戸水?
75:創る名無しに見る名無し
09/11/24 23:08:58 enUCubvo
昇華する讃美歌
「そういえば……」
私は右手に持ったエナメルバッグを置いて、事務所に置いてきてしまった携帯電話を思い出した。
「取りに、行くのかな」私は私に聞いた。否定。
疲れているから。
夕陽が地平線に滑り込み、地球のほかのところに太陽がその生命を落としかけているこの時に、私は家に向かって歩いていた。
着ているのは学校指定のブレザー、ダッフルコート。
野暮ったいと不評らしい。私には興味がないが。
家に帰ってから事を考えながら、今日のことを思い出す。
髪留めを取ってレッスンをしていたら、彼が部屋に入ってきた。
彼は私に向かってタオルを投げた。
「どうも……」
「うん」
彼は壁際にあったパイプイスに座る。
何も言わない。
「どうしました?」私は首を拭く。シャツの中は後にしよう。
「いや、なに。ただ単に精神が動揺しているだけさ」
そう言って、彼は口にくわえたチュッパチャプスをかみ砕く。
「動揺?」
「うん」
ちょっと待ってみるが、話すつもりはないようだ。
私は少々困惑しながらも、当たり障りのないところを拭く。
「プロデューサー、私はシャワーを浴びに行きますが……」
彼は手をふった。私はそれを了解の意ととった。
スタジオを出て、扉を後ろ手で閉める。
その目の前を影が走り過ぎた。
その姿は十メートル先で角に隠れた。
おそらく千早か。
「千早!」
答えはない。
聞こえてなかったのか。それとも無視されたか。
私はシャワー室に行く前に、事務室を覗く。
そこには春香がいた。
「春香、千早がさっき走って行ったけど、何かあったの?」
春香は言いにくそうに「あー……」とだけ言う。
「そう、ですね。あったと言えば、あった、んですよねえ」
「……千早がプロデューサに告白でもしたの?」
春香は顔をへこんだスポンジのようにゆがませる。
「……う。なんで分かりました?」
「千早からプロデューサのことが好きだって言われていたから」
「うそっ!?」
「嘘じゃないよ」
私は春香に笑いかける。
春香は私から目線をわざとらしく外す。
「そうそう、春香」
春香が振り向く。「なんですか?」
「千早は春香のことは好きよ。だから言わなかったの」
彼女の表情が変わる前に私は彼女の顔を視界から除く。
私はシャワーを浴びて、誰にも会うことなしに社屋を出た。
76:創る名無しに見る名無し
09/11/24 23:10:43 enUCubvo
携帯電話が震える。
千早からのメール。
要約すれば、彼女は私がプロデューサを好きだと思っていて、自分の行動を抜け駆けするよう感じて、こうしてメールを送ったそうだ。
私は後ろに気配を感じる。
そこにはプロデューサがいた。
「律子……」
「まったく……、感想を言う暇すらありゃしない……」
プロデューサは首をかしげるが、言った。
「千早が、俺に告白してきた」
「知っています」
彼はうつむく。
無言。
高架を電車が通る。鉄骨が高笑い。
私はため息をついた。「寒いですね。喫茶店にでも入りましょう」
彼はあごが肋骨を折ればいいとでも思っているようにうなずいたのだった。
二人は近くに喫茶店チェーンを見つけ、入る。
息が姿を消す。光を反射する気概を、温かい空気が削いだ。
二人ともブラックコーヒーを頼み、窓際に空いた席に座る。
周りにはあまり人はいない。もう九時を過ぎている。
彼はひとくち、コーヒーを飲む。
私も飲んだ。
「俺は……」
彼がぽつりとつぶやく。
私は答えない。
「俺は……、俺が何をしたいのかわからない」
彼が言う言葉はプラスティックとカップの間隙に吸い込まれて、私の耳には届かない。
私が何も言わなかったことの意味はコーヒーの中に撹拌し、空気に蒸発していく。
「どうして、私に話すのですか?」
彼は顔を上げた。
「さあ……」苦笑い。ひとくち。「さあね。分からないさ」
「……それは当然のことではないでしょうか。自分が何をしたいのか、それを分かって行動すると言う人はいません。自分が行動した後、それに対して都合のいい目的を作るのが人です」
私はかばんの口を閉めて、窓の外の空を見上げる。
まっくらやみ。
黒い。
空が溶けたアスファルトの涙をこぼしそうに。
「律子……」
「ええ。私があなたに対して、言葉をかけることはできます。それを望みますか? それとも……」
私はほほ笑む。
努めて優しく、憂鬱な笑みを。
「ああ……」彼はうつむいて、顔を右に、上に、左に。そして前に。
「いや、いい。ありがとう」
彼はやっとほほ笑み、再確認する。
沈黙の価値を。
私はコーヒーを飲み、彼に別れを告げた。
「おかね。置いておきますよ」
彼はうなずく。
去り際に彼が「なあ。律子……」と言う。
「なんですか?」
「いや、なんでもない……」
彼は首を振る。
吹き出して、顔を背けた。
私は意味もなくほほ笑み、外に出た。
手に持ったかばんはずっしりとする。
人の体も心も、
まだ私には荷が重い。
けれど、
冷気にさらされた世界だけは、
私を優しく叱ってくれそうに思えた。
77:創る名無しに見る名無し
09/11/24 23:12:56 enUCubvo
はい、終了です。
自分の感想として。
ぶっちゃけ面白くはないでしょうね、ええ。
書くのはおもしろかったですが。
誰が誰を好きかなんて、分かるはずもない。
78:創る名無しに見る名無し
09/11/24 23:15:36 enUCubvo
あ。すんません
一レス目の本文二行目
携帯電話→ブレスレットでもなんでもいいので脳内変換お願いします。
(やってもーたなー)
79:創る名無しに見る名無し
09/11/25 01:14:01 1S56z1Mp
>>77
流行ってると言うか、どうやらここには、感想書きとでも言うべき人間が巣食っていて
(俺もそうだけど)、時に容赦なく、時に熱く感想を語るのが定番になってる。
というわけで、ここに書いた以上は、好むと好まざるとに関わらず、その洗礼を受けてもらうw
で、ふと思ったけど、そう言えばこのスレ、この手のある種TypicalなSSって、
意外にほとんどなかった様な気が。
その意味では、明らかな新風。大歓迎です。
ダイレクトな「if」を使いながら、当事者以外の情景で纏めてる微妙な空気が面白い。
後は好みの問題でしょうが、比喩表現を、表現をぼやかすために使うことが多かったのが
ちょっと気になりました。キレイな言葉を選んでる感が強いだけに、特に。
それと、口調がちょっと律子っぽくない気も。これはわざとな感じもしますが。
いずれにせよ、中身はいい味出てました。面白かったです。
また次回も待ってます。
80:創る名無しに見る名無し
09/11/25 05:49:48 HvLPlF3W
>>77
いらっしゃいまっしー。今日の昼飯はパンにしよう。
いやいや、面白かったですよ。Pの逡巡なんかサ店の隣の席からコーヒー飲みつつ
ひそかに観察したいレベル。
あえて律ちゃんの心情を排した(律ちゃん視点なのに!)のは実験か計算か迷う
ところですが、SSというより文芸映画でも観てる気分になりました。何度か読み返し、
ゆっくり思い出しながら噛み砕く作品と感じました。
ありがとうございます。ぜひこれからも居ついていただければ幸い。
ところで
>家に帰ってから事を考えながら、今日のことを思い出す。
これ「帰ってから『の』事」でよろしいですか?その方が時系列に無理がないので。
81:創る名無しに見る名無し
09/11/25 21:25:57 5uZ+rDIp
どうも、感想ありがとうございます。
>>79
比喩は比喩だけで一つの作品と思っていただければ。
確かにご指摘はそうだと思います。勘案します。
律子っぽくないのはまあ確かにそうですが、考えてる時の口調としてはそこまで変ではないと思います。
>>80
すみません! ご指摘の通り間違ってました。ありがとうございます。
文芸映画って……そこまですごいでしょうか。だったらうれしいですが。
未来館が下火なので、たぶんこっちに居つくかと。
一日しかかけずに、勢いで上げてしまったので、粗が目立つようですね。精進精進。
82:島原薫 ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:33:38 J5eRaFiy
前作へのご感想、まことにありがとうございました。島原薫です。
シリアスで少し毛色の変わったSSの投下が続いておりますが、いつも通りに投下いたします。
タイトルは『TENGAさん万能説』。メインは涼で4レス使用。下ネタコメディとなっておりますので、苦手な方はご注意ください。
投下後終了宣言+前作レスへのお返しです。
>>レシP様、『美希曜日よりの使者』
非覚醒で、でも徐々に変わっていく年頃の女の子を爽やかな筆致で書かれており、さすがレシP様といった作品でした。
最後、Pも口ずさんでいた歌を聴きながら読んだのですが、歌にピッタリな世界観が心地よかったです。
P視点でどこか野暮ったくもあるのですが、二人の距離感のその絶妙さは上手いなあ、と口に出したほどでした。
こんな素敵な日常をアイドル達にはもっともっと送ってほしいですね。素晴らしい作品、ありがとうございました。
>>雨晴P様、『私の声が聞こえますか』
今までのざっくりとした構成からさらにそぎ落とした、ある意味で実験作ともいった作品に驚きました。
ですがそこは雨晴P。品が良いと仰った方もおりますがまさにその通りで、嫌味にならない言葉選びは羨ましくも思えます。
このような、読み手側にある程度任せてしまう、余地のあるSSはあとがきにもあるとおり、不安な部分もあるかとは思います。
けれど、ここの住民様はそこも良しとして来てくれる方が多いですから、もっとこういった作風の作品も読んでみたいです。
>>75様、『昇華する賛美歌』
あえてスッパリとした情景描写、表現が作品全体にマッチしていて心地よかったです。
短い言葉でポンポンと進めているためテンポが良く、カチャカチャと変わっていく、彼女が見る情景を思い浮かべると面白い。
私自身、ここを投下される際には比較的、忌憚のない意見を聞くことが出来て楽しいので、一緒に盛り上げて行ければ良いですね。
それだけに、>>81の「一日しか~」という下りは言いたくなる気持ちは察しますが、少しだけ残念に思います。
いきなり厳しいことを言って申し訳ありません。作品はとても良かったです。これからよろしくお願いします
83:TENGAさん万能説(1/4) ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:34:45 J5eRaFiy
たとえば女性の前で男が軽々しく生理の話題をするような、そういうフインキだということは分かってほしかったと涼は思う。
なんとなくそういうものは会話の端々で感じ取るものだし、
歳を経るにつれて追いついてきた知識も相まってそういうものを回避する術も身につけていくもの。
ある程度の感性というかセンスというか、そういうものが求められるわけだけれども誰にでも出来ることだと、
少し短く感じる膝上のスカートの端を握る涼は考えていた。
さて、そういうものって何回、言ったでしょう。
だから、おもいっきしそういうものが分からなくて、お子様な彼女の前では通用しなかったわけだ、と。
「涼さん! この筒みたいなのなんですか!? なんかオシャレですね! デザインが!」
そうだね、愛ちゃん。だからちょっと手放そうか。
女装アイドル、秋月涼の目はどこまでも冷ややかだった。
それは無事に絵理ルートも終わって、正式に876プロのお抱えプロデューサーとなった尾崎玲子が人目もはばからず
担当アイドルの水谷絵理と仲良くイチャコラ出社してきたときから始まる。
涼の目の前には綺麗に積まれた書類とかぶりもの。
差し出されたファイルには全日本鹿学会と銘打っており、この度、めでたくイメージガールに抜擢された彼女を876プロ社長、石川実は労っていた。
しかし彼女の、いや彼の表情は暗い。
「いやですから、なんで鹿なんですか?」
「何度も言っているでしょう? 一度、ホテルで行われたパーティーでそこの会長さんと懇意になったって。ほらっ、ちょうどあなたにも角があるしっ」
「……」
おそらく今までの人生の中でしたことのない目を社長に向けていると同じ876プロのアイドル、日高愛が事務所へと入ってきた。
いつものようにやかましい挨拶でもするのかと思ったけれど、肩に抱えた大きなバッグでヨロヨロと部屋に入ってきたかと思えば、ドスンッと地面に置く。
力尽きたのか、そのままその場でへたり込んでしまった。
84:TENGAさん万能説(2/4) ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:35:54 J5eRaFiy
「う~、重かった~」
「どうしたのよ愛。そんな大荷物。家出?」
「出来るもんならしたいですよ。もぅ」
ママめ~、と天井を仰ぐ愛に石川と涼は同情する。彼女の母親であり、ライバルアイドルである日高舞の奇行は今に始まったことではない。
二人は苦笑交じりに顔を見合わせると、半べその愛に近づく。
「なにがあったの?」と、石川がバッグを開くとそこには化粧品やダイエットグッズ、とにかく雑多なもので溢れていた。
もう一度、社長と涼は顔を見合わせた。
話を聞くに、企業が勝手に送ってきた試供品の数々らしい。
今なお、屈指のアイドルとして輝く日高舞に使ってもらえればその宣伝効果は計り知れない。
だから新製品が出来る度に事務所を始め、日高家に様々なものが送られてくるという。
涼自身もそういった経験はないことはないけれど、中には怪しげなダイエットサプリや用途の分からないものまであるから手に負えない。
その一部を押しつけられたのだと、愛は涙混じりに訴えた。
妙な平行線を辿る『鹿会議』は一旦棚上げし、うなだれる愛をソファまでうながして涼と石川はバッグの中を探索する。
企業の数だけ商品は存在するのだけれどいやはや、アイドルと同じで一線級にまで上ってくる商品の凄さを再認識してしまうほどの数に圧倒された。
自分もやもすれば、このバッグに詰められている商品と同じ、ただ消費されるだけのアイドルだったことを考えると少しだけ、寒気を覚えた。
しばらくゴソゴソとやっていると、涙も引っ込んだ愛が探索仲間に加わる。
さきほどあれだけ機嫌を損ねていたというのに。
向日葵を思わせる溌剌とした笑顔に、これはこれで愛の美徳なんだなあと涼は思った。
化粧品や大ヒット商品の類似品を漁っていると、隣でピタリと愛がその動きを止める。
その目は確かに何か面白そうなものを見つけた目なのだけれど、愛自身も対応に困るのか、なんとも微妙な表情を浮かべていた。
「どうしたの、愛ちゃん?」
「えーと、涼さん。これって何か分かりますか?」
ピキッと、訊ねられた涼とその様子を隣で眺めていた石川が固まる。
赤い円筒状のソレを、愛は手にとってマジマジと観察し始めた。
ああ、これだけでも色んな法律に引っかかりそうな云々。
出来うる限りのスピードでソレを愛から奪い取ると、涼は後ろ手に隠してしまう。
それはそれで逆効果なのだけれどね。
石川の心の声は届かず、愛は「え? なんで取っちゃうんですか?」と小首を傾げる。
85:TENGAさん万能説(3/4) ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:37:20 J5eRaFiy
「えーとその、これは愛ちゃんには必要ないものなんだよ、まだ」
いや、まだでもないか、いやいや。
「むっ、涼さん。あたしが子供だからって秘密にしないでくださいよっ。その……あたしだって、この前、その、きましたし」
えー? なんの話ー? 私、男の子だからわかんなーい。
もうどこか遠くへ飛んでいきたい涼の隣で、石川はプルプルと震えて笑いを堪えていた。
社長、移籍しますよ。
とにもかくにも、とりあえずとにもかくにもで押し通した涼は事務所の会議室で一人、頭を抱える。
目の前にはストライプデザインの憎い典雅なあんちくしょう。
クラスの悪友達が冗談で持ってきたこともあったけれど、そういえば僕にはなぜか恥ずかしがって触らせてくれなかったなー、とかなんとか。
なぜか地味にヘコみ始めていると、会議室の外がバタバタと騒がしくなる。
愛や絵理は仕事へ出てしまったし、石川社長は僕にコレを押しつけて部屋で仕事をしているはず。
椅子から立ち上がったところで会議室の扉が開き、顔を出した人物に涼は驚いた。
「武田さんっ」
涼の言葉に「そう、僕だ」と、冷静に聞けばトンチンカンな返しも颯爽とこなし、超敏腕プロデューサーの武田蒼一は部屋に入る。
彼とは涼の楽曲提供から何かと親交が増え、武田も涼のことを気に入っているのか、新たな楽曲提供の話も持ち上がっているほどだ。
実は今日もその予定で武田を待っていたのだけれど、先ほどのあれやこれやですっかり忘れていた。
天才の類に入る人間らしく、普段なら涼が彼のマイペースぶりに困惑するのだけれど、先に武田の方が困ったような笑みを浮かべる。
そこで涼も、机の上に置いてある禍々しい物体を思い出した。
顔も真っ赤にワタワタと慌てる様は女の子そのもので、それもまた武田を困らせた。
86:TENGAさん万能説(4/4) ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:38:39 J5eRaFiy
「まあ、君も男だ……そういうものに興味を持つことは、けして悪いことではない」
ぶっちゃけ泣きたかった。よもやこんなコメントを貰う為にアイドルをやってるわけでも、武田と懇意になったわけでもない。
しかして嗚呼、悲劇かな。
こういったものはみっともないほどに言い訳をすればするほど墓穴を掘るわけで。
「いやそのこれはですね、愛ちゃんが持ってきたものでしてけして僕がそういうものの為につかうわけではないわけでしてその」
「僕達は聖人君主ではない。相応の性欲を持つことは、人類の発展においても必要不可欠だ……むしろ、取り繕う君の言葉の是非を問う」
ああ、なんかそれっぽいこと言ってるけどつまり、『いいわけすんじゃねーよ、つまりそれでシ○るんだろ認めろよアン?』ってことだよね。
ここで大人しくハイの一言を言ってしまえばいいのだけれど、思いのほか、重大な問題へと武田氏の中で昇華されている現在、
おいそれと認めてしまうのもそれはそれでまずい気が、と基本的にヘタレな彼のロジックはどこまでも逃げ腰だ。
「君も男だろう?」という武田の言葉に意識を戻す。そう、その一言の重みを君は乗り越えてきたはず。
アイドルアルティメイトを間近に控えた現在、この程度の苦境で潰れるようでは到底。そう武田の目は物語っているような気がした。
彼の視線を受け止め、涼は力強く頷く。
そうだ、この程度でへこたれるほど、僕は弱くないはずだ。自分を信じて!
なんだかんだで、涼もちょっとアレ気な部類なのだろう。
涼は典雅なソレを手に取り、武田の心にも届くように言葉に力をこめた。
「はいっ。僕はこれを使います! 目一杯!」
「……よくぞ言った。桜井君。彼はやはり素晴らしい人物だ。そう思わないかい?」
「え?」
振り向いた先、閉じたばかりのドアの前で桜井夢子は汚物を見る目で彼ら二人に向けていた。
おわり
87:島原薫 ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:39:38 J5eRaFiy
投下終了です。以下、前作へのレス返しです。
>>33
アイマス世界の登場人物は何かしらの才能を秘めているキャラが多いのですが、たまにはこういう凡人キャラもいてよろしいかなあ、と。
ゲーム内ではちょっとめんどくさい人だなあ、とも思いましたが、がんばれオザリン。感想、ありがとうございました。
>>34
最高と言っていただいて、ありがとうございます。好き好きがありますから、気に入って頂いてなによりです。
作中でも未成熟な大人の部分を見せてくれた彼女は私も大好きです。オザリンがんばれオザリン。
>>38
確かに「千早の将来像のパラレル(大意)」 というのは、様々な語弊もあるかとは思いますがなるほど、と思いました。
アイマス公式作品で、いまいち日の当たらないながらも魅力的なキャラがオザリンと絡んだらどうなるか、そういう観点から書きました。
自分もこのオザリンの先を見たいのですが、早々に失踪しそうなのが不安なところ。がんばれオザリン。
それでは次回投下の際もよろしくお願いします。
88:島原薫 ◆DqcSfilCKg
09/11/27 06:47:11 J5eRaFiy
>>86
最後の一文、『桜井夢子は汚物を見るような目を彼ら二人に向けていた。』でお願いします。
最後のオチで……。
89:創る名無しに見る名無し
09/11/27 21:38:15 RiVXuQW9
『昇華する讃美歌』の作者です。
>>87
不愉快に感じられたのならば、すみません。
とはいえ、吐いた唾は飲み込めぬ。
批判されて当然とも言えますので。
なにはともあれ、すごくあけすけな事務所ですねw
TENGAって……最悪だw
これを愛が持っているシーンを想像して微妙な気持ちになった。
90:創る名無しに見る名無し
09/11/27 22:50:14 6g/aRz+K
典雅とかうまいこと言ったつもりかこのスケベw
しかし夢子はアレが何か分かってたんだな…なるほど、うん。見直したよ
>>77
律子っぽくないに半分同意
長音省略するのは技術者研究者レベルの理系ってイメージがあるんでw
ただその使い分けには感心した。
内心と千早に対しては省略してるのにPと交わす時の言葉だけはプロデューサー。
特別な存在であることが上手く表現されていた
91:創る名無しに見る名無し
09/11/28 01:15:38 g7DA16ip
>>87
タイトル段階ですでに噴いてましたw つか武田Pの出オチ+夢子追撃なんて
もう卑怯の域かとwww
島原Pのギャグ系は独特の言い回しが多くて好きです。オチすら(テニヲハは
ともかく)修正後の『見るような目を』より元の『見る目を』の方が作風に合って
るんじゃ、とすら思いまっす。
面白かったです。ところで舞さんにコヤツを送りつけたメーカーは何を考えて
いたんだーっ。
>>89
特にここは作者があとから色々言えるスレなので、俺もついつい書きすぎて
しまうんですよね。創作物が自分の子であったなら親から「いやあ、こいつ
アッタマ悪いんすよ」などと人に紹介されたくはないだろうと心に念じながら
レス返しとかする日々です。
いつか「見てくださいこの子!可っ愛いでしょう!?」と胸を張って言いたいw
92:創る名無しに見る名無し
09/11/29 04:06:47 1p+edY6J
>>87
面白い。やっぱり男の娘ってのは色々と苦労がありそうだ。
表記の揺れが意図的なものかどうか、ちょっとわかりにくいところがあったかなと。
例えば
>「なにがあったの?」と、石川がバッグを開くとそこには化粧品やダイエットグッズ、とにかく雑多なもので溢れていた。
>もう一度、社長と涼は顔を見合わせた。
あと、聖人君"子"。
93:創る名無しに見る名無し
09/12/02 18:33:11 P+TaR6dS
>>87
またまた例によって微妙なネタを・・・w
しかし、これは面白いですわ。笑ったw
長さの割には出てくるキャラが多いけど、各キャラがちゃんとそれらしく描けていて、
しかも無理矢理感もなく、登場する意味も持っている所はいいと思いました。
社長と石川の件は、以前の天海と春香の書き分けでも気になった点です。
94:創る名無しに見る名無し
09/12/06 22:19:01 YT1GPHaw
おひさしぶりです。12月になったので、24日生まれの子でひとつ書いてきました。
(PC規制中のため携帯投下になります。レス毎に手間取ってしまったら申し訳ありません)
【とあるダメダメプロデューサーのおはなし】本文2レス、終了宣言1レス拝借します。
95:とあるダメダメプロデューサーのおはなし(1/2)
09/12/06 22:22:35 YT1GPHaw
あるところに、いつまでもトップアイドルになれない雪歩がいました。
雪歩は、事務所でいちばん臆病でへなちょこで弱虫なアイドル。
ろくにランクも上がれないので、プロデューサーは数週間単位で変わってばかりです。
雪歩を目にした審査員は、雪歩を静かにさとします。
『君は多分、アイドルじゃない道のほうが、歩きやすい女の子なのかもしれないな。
トップアイドルのステージなんて、普通の女の子なら縁が薄い場所だからね』
アイドルに向いていないと言われた雪歩は、やっぱりトップアイドルになれませんでした。
*****
ある日雪歩は、ピンときた社長に声をかけられました。
不在のプロデューサーに代わって、アイドル候補生を担当してくれないかと言うのです。
気がつけば、小さな事務所は、前よりずいぶんボロボロになっていました。
資金も底を尽きかけており、プロデューサーはみんな辞めてしまっていたのです。
社長は雪歩を責めませんでしたが、小鳥さんと相談しているのを見かけたことがあります。
弱小事務所の765プロは、もはや弱小を超えて、倒産寸前まで追い込まれていたのです。
ひとりのダメダメアイドルが、765プロをボロボロ事務所にしてしまったのです。
そんな悲惨な結果を前に、逃走なんて許されません。
お姫さまティアラを受け取った雪歩は、ひとりのアイドル候補生にそれを託しました。
なるべく真剣な顔で、「今日から私があなたのプロデューサーです」と告げましたが、
頼りなさそうな雪歩の本性を、女の子は一目で見抜いてしまいました。
あっさり本性を見破られた雪歩は、今すぐスコップ片手に仕事を放り出したくなりました。
けれど今の事務所にひとつ穴をあければ、たちまちビル倒壊が引き起こされてしまうでしょう。
得意な穴掘りさえ封じられた雪歩は、プロデュース活動を始めるほか無かったのです。
*****
雪歩が事務所に穴を掘れなくなって、早二ヶ月が経ちました。
自分が叱られないレッスンと、ステージに立たなくていいオーディションは、
ダメダメアイドルだった雪歩にとって、すこしだけ安心できる仕事です。
大きなステージを前に、ガチガチになって後ずさりする女の子を励ますこともありました。
なにしろ雪歩は後ずさりどころか、穴を掘って逃げたことさえあるのです。
アイドルのダメっぷりなら、そのへんの誰にも負けません。
765プロの、ダメダメへなちょこアイドルなんて、雪歩の他には存在しないのです。
饒舌になったダメダメ話から、雪歩が我にかえった時には、女の子は大笑いしていました。
雪歩のダメダメだった武勇伝が、女の子の自信と勇気に変わったのです。
女の子から感謝されて、雪歩はなんだか頬のあたりがくすぐったい気分になりました。
それは雪歩が、女の子のプロデューサーになって、初めて浮かべた笑顔でした。
ダメダメだったことで誉められた経験なんて、雪歩の思い出にはひとつもなかったのです。
*****
96:とあるダメダメプロデューサーのおはなし(2/2)
09/12/06 22:26:55 YT1GPHaw
ダメダメアイドルだった雪歩の目には、女の子がとても立派で素敵なアイドルに映りました。
プロデューサーが自信をもって絶賛する女の子が、オーディションで輝かないはずがありません。
女の子は立派なアイドルに成長していきました。名のあるステージを片っぱしから渡り歩きました。
事務所はスタッフでいっぱいになり、雪歩がいくつ穴を掘っても平気なくらい立派になっていました。
それでも、雪歩が穴を掘って埋まりたくなる機会なんて、あれからとんと来なかったのです。
雪歩は、このままずっと女の子がアイドル活動を続けてくれたらいいなと思っていました。
でも、それはあっさり否定されてしまいました。女の子は他にも夢があるというのです。
言葉をなくした雪歩を前に、女の子は素敵な笑顔で尋ねます。
「叶えたい夢はありますか?」
雪歩は少し考えてから、「あなたをトップアイドルにしたいです」と言いました。
女の子は「そうなの」と言ったきりでした。
雪歩は笑って頷きましたが、内心とてもしょんぼりしていました。
女の子がアイドル活動をやめたら、もう一緒に仕事ができなくなることが、急に寂しくなったのです。
*****
そしてとうとう、雪歩が恐れていた日がやってきました。
立派になった765プロの社長室で、これまた立派な椅子に座った社長が、
「今まで本当によく頑張ってくれた。最後にアイドルのお別れライブを開きたまえ」と告げたのです。
雪歩は気乗りしませんでしたが、女の子は活動停止をしっかり受け止めました。
しょんぼりした気分を隠しつつ、雪歩は最後のステージをプロデュースします。
その日の夜の、きらめく舞台は、普段のステージより遥かにキラキラしていました。
雪歩が立ったことのない、トップアイドルだけが歌うことを許された特別なステージ。
何十万もの歓声が、その倍の数のペンライトが、女の子とその歌声を称えています。
けれど女の子は、その素敵な場所さえも、夢のためなら惜しくはないと言うのです。
成功したアイドルを、うらやましく思う気持ちなんて、もうずっとずっと昔に忘れていたはずなのに。
雪歩は、ほんの少しだけ、あの女の子がうらやましくなっている自分に気づきました。
*****
ライブを終えた女の子に夢のことを尋ねると、女の子は雪歩をある場所に連れ出しました。
そこはかつて、雪歩が何度も穴を掘った、オンボロだったはずのビル。
リフォームされた内装に至っては、まるで現在の765プロにいるようです。
女の子は、独立してマネージャーの仕事に就きたかったことを、雪歩に明かしたあと、
ここが765プロの傘下におかれる事務所で、雪歩が望めば社長にだってなれることを伝えました。
雪歩は驚きました。社長になりたい気持ちなんて、これっぽっちもなかったのです。
女の子の夢は輝いていましたが、16歳で社長になるプロデューサーなんて聞いたこともありません。
社長になることを望んでいない雪歩に向かって、女の子は以前とまったく同じ表情をして尋ねます。
「叶えたい夢はありますか?」
雪歩は少し考えてから、「トップアイドルになりたいです」と言いました。
女の子は、「そうなの」と言って、そして。
「今日から私があなたのプロデューサーです」と、満足そうに告げました。
(おしまい)
97:創る名無しに見る名無し
09/12/06 22:28:52 YT1GPHaw
投下終了です。読んで頂きましてありがとうございました。
クリスマスらしいSSではありませんが、雪歩の誕生日祝いのつもりで書きました。
これからの季節、可愛い雪歩がたくさん見られたら幸せです。寓話Pでした。
98:創る名無しに見る名無し
09/12/07 09:27:56 G0pnX41e
いやはや、雪歩がPとか想像もつかないけれど
細かいディテールをさくっと切って端的にまとめると童話らしく見えてくるという意味で
すごく彼女にとって適役な気がしますw
「クリスマスは優しい気持ちになるための日だね」
そういう日に生まれた雪歩に、そしてこんないい話を思いついたあなたに、良いクリスマスが訪れますように!
なんかついついそう言いたくなっちゃう微笑ましい作品でした。ありがとう。
99:創る名無しに見る名無し
09/12/09 18:37:13 dXgpJ4P1
>>97
アイドルたちの始まりと終わりが、上手く繋がっている作品だと思いました。シークレットの女の子が最後まで伏せられてたので、千早とか貴音とか想像していたけど見事外した…OTL
章ごとに出て来る、どんでん返し的な展開が面白かったです。アイドルじゃなくプロデューサー視点から見た、雪歩の困惑が良かった。
この二人の続きのアイドル活動が見たくなりました。GJです!
100:創る名無しに見る名無し
09/12/09 22:50:46 qxey7USH
>>97
自分がダメだった事を武器に変えてトップまで引き上げる雪歩Pか、
意外な感じだったけど中々説得力があって良いと思いました。
大きな回り道をしたけど、最高の相棒を手に入れて
再び走り始めた雪歩が夢を掴めますように……という事でGJでした!
101:創る名無しに見る名無し
09/12/11 09:05:42 2wePuB7t
>>97
やっぱ自分の語り口を確立してる人は格好いいなあ、って言うのが、書き手視点の第一印象。
今回は、またその語り口が映えてるし、冴えてる。雪歩の超ダメダメっぷりが、
必要以上にコミカルにもならず、悲壮感も出さずに描かれてると感じました。
またストーリーそのものも、ちょっと現実から浮いた感じが、語り口にぴったりでした。
ストーリー自身も面白いし、暖かい気分になれました。
その点では、誕生日に贈るにふさわしいと思います。
……いい話だった。
102:創る名無しに見る名無し
09/12/12 14:44:37 4o+VDfm6
209 :枯れた名無しの水平思考:2008/10/31(金) 02:00:00 ID:LQW/FTlt0
>>193
書き込めなかった。しょうがないからここに書くね。
マコトとかいうオカマのファンの奴は生物として正常じゃないから気をつけたほうが良い。
たぶんゲイの素質あるよ。
ボーイッシュっていうジャンルは俺も好きだけどあいつはそんなレベルじゃない。
ボーイそのものだろ。
それで性別女とかだから気持ち悪い。
103:97
09/12/13 10:10:42 FhwJucLR
沢山のレスありがとうございます。少しばかり感想返しにお付き合いください。
>>98
こちらこそ感想ありがとうございます。
『Pをアイドルの誰かに任命する』というシチュエーションを考えていただいた場合、
まずは律子を筆頭に、年長組、しっかり者、面白そうだと名乗りをあげる年少組……と続いて、
おそらく雪歩は最後の子なんじゃないかな、と思います。
普段なら絶対やらなそうな事とのギャップを楽しんでいただけましたら幸いです。
そして>>98氏もどうか素敵なクリスマスを!
>>99
担当アイドルについては、読み手の方が好きなアイドルを想像してくれたらいいなと思っていました。
1周目と2周目で違う感想をもっていただけたら、書き手として非常に嬉しいです。
おそらく相手の女の子が誰であったとしても、雪歩の返答は変わらないと思います。
Pは最初のプロデュースを覚えていても、アイドル達は忘れてしまうのがアイマスだったりしますが、
プロデューサーの立場で1周目シナリオを終えた雪歩は、担当したアイドルとの記憶を持ったまま、
うまく2周目シナリオに引き継ぎできたんじゃないかなと思っています。
>>100
説得力があると言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。
二次創作の楽しいところと難しいところに、ご都合主義のバランス、というものがありまして、
捏造した部分が飛躍すればするほど、面白いぶん出来過ぎな話になって、かえって冷めたりします。
(とりわけ自分が一番むずかしいと感じているところでもあります)
読み手に対して説得力のある話を考えることが、自分の中ではテーマになっていた部分もあったので、
今回お褒めいただいてホッと胸をなでおろしています。
>>101
他の書き手さんの面白いSSを拝見していると、自分の語り口は読みづらいのではないか?と
思う事もしばしばあるのですが、お気に召していただけたようで幸いです。
雪歩の超ダメダメっぷりは、表現を弱くするか強くするかで、仰る通りの感想を抱かせてしまう、
さじ加減が難しかったところでした。なので、緩和のため、ダメダメだけど可愛い雰囲気のある、
へなちょこ、という単語をいくつか忍ばせてあります。
誕生日まで随分フライングしてしまいましたが、こちらでも楽しめることを期待しております。
感想ありがとうございました。次回もお付き合いいただけたらと思います。寓話Pでした。
104:創る名無しに見る名無し
09/12/18 22:50:41 YvT/RXE+
二ヶ月近くに及んだ規制もようやく終了・・・って、なげえよ!
しかもいつ再規制されるかわかったもんじゃないよ!
さらにはいろいろ溜まってるよ!
てなわけで、遅ればせながらいない間の分を消費消費・・・
前スレ>>416
成長期に食べ過ぎて脂肪を溜めやすい体質になると、後々面倒が多くなりますしねえ。
とはいえ、事務所に来る以前のやよいは痩せすぎの体格なので。増えたうちの何kgかは成長分とは
別に考えても許容範囲なわけですが、それでも9kgは・・・さすがにですなあ
2スレに収めるため改行抜いたのは、残り容量の関係もあるようですので
改行があった方がスッキリしそうですが、それはまあしかたがないところでしょうね
それにしてもやよいかわいすぎ、あーんど緊急会議の面々のやっちまった顔まで完璧ですなw
なんていうか、光景の浮かぶ話って感じ
>>42
社長もその顔が見たくて、報酬を振込に出来ないって訓辞で言ってましたなあw
そういえば、武田さんも食料援助には一枚噛んでいたようでもあるし・・・って、あれ?
もしかして、実はもう既に765プロ内部で済む問題じゃなくなってる?w
とすると、「夢子ちゃんからピリ辛キャンデーもらいました!」という一文が、書いたやよいが
予想もしなかった波紋を・・・なんてシリアス路線発展パターンとか。とかとか。
>>43
まあ、なんというか。ちょうどその役がここではプロデューサーなのでしょう、と。
765プロの面々がそういう「悪い意味で甘い」側面はあってもおかしくはない、とは思えるわけですし
ここでの締め役であるところのプロデューサーを悪し様に扱うでもなく、聞き入れはするのですから
困った娘たちの面倒を見るプロデューサーの図、ぐらいに眺めておけばいいのでは・・・と思ってみたり。
このプロデューサーなら次にそういう問題を起こせば、その辺りも含めてきちんとシメてくれるでしょうし
>>6
ピヨピヨ悪ノリトークの典型ですな。揚げ足を取りつつ、相手がむくれた反撃すると平謝りする辺りの
地雷を踏み抜くまでは行かないとこで楽しむ距離感が重要っていうか
「そうなるって判っててなぜ言うんですか」がこの種のピヨちゃんの味ってもんですよねー
重量感ある話も楽しいですけども、その合間合間にこういうふうにちょっと軽めのチョイネタ話も
混じるのがここにいてのバランス感覚って感じですw
>>7
なぜか、EVE burst errorのワンシーンが浮かんできたよーなきもしないでもないw
>>14
こういう公式の掘り下げ不足から題材を取ったワンシーンもこれはこれでおいしいですな。
「元気はないが、皿の上はすっかり空」な辺り、はるるん強いなあ、とか思ってみたり。
一つの終わりを前にして、次を考える2人と春香の対比といい、特に律っちゃんはかなり早い時期に
自分の将来展望を用意しているだけに、春香のこれが終わったらどうしよう?ぶりを上手く強調できてると思うです
中盤が会話文のみになっている点が気になると言えば気になりますが、地の文を凝りすぎて
テンポを損なうよりもいいかな、とも思えますし。
公式がこれをやるのには組み合わせが多すぎるだけに、観てみたい光景の一つを見せてもらえました
105:創る名無しに見る名無し
09/12/18 22:54:01 YvT/RXE+
>>19
これが一本目ならなかなかイイ感じじゃないですか!
と言いつつも、いくつか気になってみた点は挙げてみたりw
まず第一に前半の地の文が若干説明的で、なんというかこれまでのあらすじ感が強く、その後が
会話主体になるので、若干重さの差があるかな、と。
この辺りは、本来は長い話の1シーンという意図があるためか、その長い話自体のバックグラウンドを
提示しようという意識が出ている部分かもしれませんけども。
次に、再会シーンの素っ気なさは元プロデューサー側から観ると決して歓迎できる客ではない
という点からよしとしても、舞台監督としてのプロデューサーに対する千早からの思うところ、どんな様子か、
人を指導する姿は変わらない、あるいは変わってしまった・・・みたいな観察があると、少し深読みが絡むと共に
ちょっとした伏線とかに使えたりするかな、とか。
同様に、やたら甘党なコーヒーの飲み方についても、「今」の「カフェオレを頼むなり、
他のものを頼むなりすれば良いのに」という感想ではなく、昔からこんなヘンな飲み方だった、変わらないな
あるいは以前とは違う奇行ぶりに驚いてみるといった具合に、過去にあったはずの経験を千早からの観察に
からめてやると、以前にプロデュースされてた千早としてはそれっぽくなるかなあと。
後は句読点、特に読点や語尾、改行に気を使って、ブロック状になってる文章そのものをちょいとほぐしてやれば
だいぶ印象が化けると思います。
最後の2行は・・・今回については余計だったかなと。
「それはまた、別のお話。」という結びはどちらかというともう少し一件落着、けどこんな話もあったり
する、ぐらいのノリというか、ほんわかした話の方が向くと思うので、こういう冷えた雰囲気の話を
これで締めるとせっかく組み立てた緊張感がちょっともったいないかも。
「話の一部をぶった切って」については、時系列的に連続した一話、みたいな気分でなく
おそらく断章形式というか、長い話の一部分を抜き書きして一つの独立した話にした、ということだと
解釈しているので、直接の続きでなくてもまた抜き書きでどこかのシーンを独立した話で
書いてみて、それを連ねて短編連作でまとめるというのも良さそうですね。
プロデューサーが再起を志すシーンとか、IU決勝前夜とかw
実際、例えば>>10-14のみなとP「one night before」なんかも、見方によっては
春香・律子・伊織の一年間の活動を綴った長い話のラスト付近のワンシーン、という解釈だって
できるわけですし、そういうものだと思えば「一部分とかせずに全部書き上げてから」という言葉は
ちとキツいかなと。
降りてきてた話の一部というのは、「それはまた、別のお話」とも併せて一部分のまとまりに対する
逃げ口上というわけでなし、むしろ前向きな野心の表明と受け止めて楽しみにしてみますw
いろいろ言ってしまいましたが、着眼やシーン情景なんかは秀逸ですし、どんどん楽しみな人が増えてきていて
嬉しいのが正直なところですね。少しずつで良いので、次を楽しみにしています
・・・765プロに戻ることはさすがにないだろうし、個人的には石川社長に拾われて
『弱小プロダクション』の『新人破壊屋』と『熱血ダメ候補生』という三重苦な二人三脚で
挑むは大敵・如月千早・・・なんて展開とか面白そうかなー、なんて勝手に妄想してみたり。
「そんなのだいじょーぶですよ! あたしって丈夫にできてますから!!」
取りあえず、ここまでで一旦
106:創る名無しに見る名無し
09/12/19 06:33:57 Gzt1P7sC
おかえりw
長文感想の人規制だったのかwww
またなんか投下したらそのノリよろしく♪
107:創る名無しに見る名無し
09/12/19 19:53:11 JDFRJ7af
てなわけで、続き続きっと
>>32
考えてみるとリレの藪下さんの見透かしぶりは、相手のことを洞察するという点において
まるっきりダメダメなオザリンにとってはまさに恐怖の対象ですな。
あのヨユー溢れるカルいおネーさんと冷徹な仕事師が瞬時に入れ替わるキャラはまさに天敵と言えそうです。
・・・美希も絵理もカリスマ・一点突破と技巧・多才という形で質が違うとはいえ
明らかな天才タイプ、加えて藪下さんも>>33で言われてみれば、明らかに“見切りの目”は天才のそれ。
オザリンは本編でも意識して凡人に書かれてる部分もあるし、そこがいいとこでもあるけど
この状況にいるのはきっついですな。
もともとDS絵理シナリオはリレっぽくなる要素が多々あっただけに、
ここで藪下さん連れてきてぶつけた配役の妙だけでもそうきたか!と感心しきり。
・・・にしても、勝者の余裕をもって振る舞おうとするオザリンが見事なまでに空回り。
この辺りはやはり圧倒的な役者の違いですが、その役者の違いを何気ない、
さりげないふうに書いてくる辺りが、ものすごい切れ味。堪能。
個人的には「負けて欲しかったので」と「ここでは自分達が官軍。」
「勝ってしまえばこちらのもの。」この辺りの目線の違いに個人的にDS本編で感じた
オザリン最大の欠点と思ってるポイントである、負けを折り込む、あるいは負けた時の
ケアという観念がほとんどないことを思い起こしてみたりも・・・。
>>54
仕事に追われた末、泥のように眠り、食事はコンビニのおにぎりで済まし、何も為さず、
ひたすら布団と仲良くなり続けた週末を過ごして、ああなんだ、結局自分もたまたま
「やること」があっただけで、それ取りあげられると美希と大して変わりゃしないじゃないか、
でもこの夜が明ければ、また美希と過ごす平日がやってくる、必要ではあるけども怠惰な時間を終えて、
せわしなく、一挙一動に振り回されてはいるけども間違いなく充実しているあの日々が
・・・みたいな方向性でくるかなー、とかタイトル聞いた段階で思ってなんてみたりw
うん、ただそれより面白かったっていうか「それだけだとミキの出番がないのー!」
なんのかんの言って通常美希の方が地に足は付いてる感じがするんですよね。覚醒だと羽が生えて飛んでいって
しまってるというか、早く身につけたものは早く失われるというか。アレはアレで好きだけども
覚醒美希コミュで一番好きなのはランクB雑誌取材だったりするヒネクレ者としては、あわてて
背伸びはほどほどに、とか言いたくなったりすることも。
自分勝手の好き放題やるだけやっておいて、後になって急に不安に駆られて「メーワク、だった?」
ってやる辺りが実に美希でいいのです。律っちゃんとか千早辺りもわりとこうやって美希に撃沈されてるよなあ。
・・・伊織とかはそれを見て「あいつのああいうとこって、ずるいわよねー」って自宅のベッド辺りで
こっそりやや羨望混じりの溜息ついてたりして?
トイメンの話なのに、そこから「この美希」と周辺の人々の広がりを感じて楽しめるという
相変わらず非常に妄想スイッチのキック率が高い仕上がりでした
>>57
どこの法力僧だw
>>59-64
厳密に言うとSS含む同人自体もグレーゾーンを目こぼししてもらってる分野だったりするので
とびきり濃いグレーというか、一般的には完全にクロの無許可での歌詞直接書きは避けておいた方が無難・・・という認識はあります。
ワンフレーズぐらいを抜き出してまるで~の歌のような状況、的に示すのに使う場合とかはまだしも
ひたすら歌詞を連ねて「歌っている」描写にするとかはよしといた方が良さそうかと。
この辺り暗黙のルールというよりも、本来は二次創作そもそもの立ち位置が黙認、あるいは黙殺だよって感じなので。
>>106
規制だったのですよー
こんなんあくまでも気が向いた時にやりたいようにやるもんなんですが
気が向いてる時にできないってーのは気が向かない時にやろうとするのと同様
ストレスですなあw
108:96P
09/12/24 00:33:56 6UyVgIxX
クリスマスおめでとう!
クリスマスなので、1本上げさせていただきました。
uploader imas60054.txt
クリスマスということで、どうぞ適当にお読みください。
大変遅くなりましたが、前スレでご感想を下さいました
>>314 >>315 お二方、ありがとうございました。
来年もみなさんの創作意欲が変わらず旺盛でありますように。
109:創る名無しに見る名無し
09/12/24 05:59:01 0M38X0j3
>>108
ちょ、これこの後小鳥さんどうすんの! って思わず噴きだしてしまいました。
しかし冷静に考えてみるとこのドタバタこそが、「音無小鳥」という
結婚適齢期かつ本人もその気で、社会人経験もあり綺麗で可愛い女性が
何故か「クラスの友達思い出せない彼氏もできない」状態のまんまでまた1年経ってしまう、
そんな事態の根本原因なのかも、とか思ってしまったり。
このPさんも周辺状況きっちり揃わないとアプローチできなさそうなシャイな人な感じもするので
まだまだ小鳥さんの淡い想いが叶うのには時間がかかりそうなw
軽妙な筆致のラブコメディ、良い出来でしたよ! 彼女にちょっとした幸せを送るのは、読者の妄想の中で、ってことでw
110:創る名無しに見る名無し
09/12/24 23:28:30 MDvYctaM
>>108
これは……プロデューサー、トラブルのふりして逃げたか?
111:創る名無しに見る名無し
09/12/24 23:40:28 fmUL0wh5
え、クリスマス?
あっはっは、そんなの昨日の話じゃないですかw
・・・チケットなしでも行ってみるもんだな、まさか到着後5分でアテが出来ると思わなかった
残りの分もだいたい書き上がりましたが、投下直後にいきなり別の話題の塊を投げるのはアレでもありで
まずはこちらから先に行かせていただきます。
>>108
えーと。
メリークリスマス?w
好みの問題かも知れませんけども、まだ断定調語尾が地の文で連続しててブツ切り感があるなあ
というのをちょっともったいないポイントとしてあげさせてもらいます。
こういう肝心なとこがしまらないのが笑えるコメディ、いいですね。
ラストシーンの後、砂の像と化したピヨちゃんと、受話器から聞こえてくる
「あれ? 小鳥ー? 小鳥どしたー? 返事しろー??」
という友人の声まで妄想できたりなんかして
プロデューサーにしても、もしかすると
『小鳥さん、メリー・クリスマス!』
「あっ、え?」
『じゃ、じゃあそれだけです!(ピッ)』
「・・・あたしにどーしろと?」
みたいな、プロデューサーの方は伝わってると思い込んでるなんてパターンとか妄想してみたりして
なんていうか、友人間のいいからかいのネタを提供してしまうわ、占いの状況にカウントして良いのか悪いのか
ビミョーな位置取りに頭抱えてみたりとか、自業自得とはいえ今日は一日仕事なんて手に付かなそうな
ショックですなw
「・・・。あの、音無殿はなぜああも放心しているのでしょうか?」
「貴音がわからないもん、自分が知ってるわけないだろー。悪いモノでも食べたんじゃないの?」
なんて声まで聞こえてきそうです。
まあなんて言うか、いろいろ前途多難ですんなり事が運びそうもなく、ボタンの掛け違いが多発しそうな付き合いになりそうですが。
そんな二人で迷走mind(エリーコ前説版w)しつつもラストでは概ね幸せにうまくいくんだろーなーと楽しく眺めてられる感じ。
ラブコメ書きも砂糖細工師の雨晴Pに、スラップスティックのふた離Pとなかなか揃って来てる感がありますが
96Pのハートフル路線も確実に地盤を固めつつありって感じかな。
デビュー作以来のシャイでウブでちょっと迂闊で間の悪い、そこがかわいい小鳥さんおいしかったです。