10/02/04 18:01:34 +M+XUyrf
「
ははっ、なんだよ、そんなことで落ち込むなんて。きみらしくないよ、元気出して。
ぼくがきみの役に立つって言うんなら、いつだって飛んで行くし、いつまでだってそばにいてあげる。
うまく言葉が見つからないけど、もしもぼくの声がきみの心を癒せると言うのなら、ぼくにも相槌を
打つくらいならできるから。
思えばきみとぼくは、まるで合わせ鏡みたいだね。きみが笑えばぼくも釣られて笑って、きみが
怒ればぼくも負けずに意地張って……でも、でもね。
ぼくが寂しい時に、わざわざぼくに付き合って上手く話を聞いてくれたきみ。それこそ相槌ひとつで
心を軽くしてもらったこと、今ではすごく感謝してる。
だから今は。今きみが泣いていても、ぼくは一緒に泣いたりしない。
だってそれじゃ何も変わらないし、それでいつかきみがいなくなりでもしたら、ぼくは本当に困るから。
うん、その、つまり、そういう事。
きみはぼくの、大切な。
とても大切な……ともだち、だから。
」
****
「あ、おはようございます、真さん」
「おっはよー涼っ!今日はいい天気だねえあっははははー」
「真さん、なんだかすごく楽しそうですね。なにかいいこと、ありましたか?」
「んー、わかる?わかる?昨日はなんていうか、ボクと雪歩との深く熱い友情を再確認できた日
っていうか、そんなとこ?」
「昨日?真さん、テレビ局で雪歩さんの収録上がり待ってるところで会ったんでしたっけ」
「歌、あんまり上手くいかなかったってヘコんでたから一生懸命励ましてあげてさ。最後はやっと
笑ってくれたよ。嬉しかったな」
「……ああ、それで。なんにせよ、よかったですね」
「ん?それに引き替え涼はテンション低め?……ってちょっと!そのほっぺたどうしたの!?」
「えっ、な、何が?」
「ぱっと見わかんなかったよ。手形、よく見ると隠せてない」
「ええっ?いけない、ファンデ薄かったかな」
「涼は……夢子ちゃんと会うって言ってたね、ケンカでもしたの?」
「いえ、オーディション失敗して落ち込んでたから、元気づけてあげられないかなって……」
「慰めてあげたんだ?じゃあ、なんでソレ?」
「よくわかんないけど地雷踏んじゃったみたいです」
おわり
216:きみはともだち(あとがき) ◆KSbwPZKdBcln
10/02/04 18:03:09 +M+XUyrf
以上です。短くて申し訳ない。
ご存知平井堅『キミはともだち』の歌詞がお気に入りでして、一人称が『ぼく』のキャラに
当てはめてみました。
ご感想などいただければ幸いです。
年初の『七草十草』のご感想もありがとうございます。
まず>>157に一言。
アナタは絶妙なトコ突っ込みすぎだw いやありがとうございます。掛け値なしに嬉しいw
それから「お気にめさらず」はおっしゃるとおりですね。「お気に召す」の否定形っていう使い方は
一般的に言ってヘンテコでした。
>>153
>>154
>>156
>>157
普段キャラスレで扱いがひどい分、きれいな小鳥さんは書いててとても楽しいのです。この
パターンの時のプロデューサーはアイドル山ほどプロデュース中できっと何ヶ月かあとには
とんでもない人間関係が構築されているに違いなくw
「小鳥さん、千早がオフに付き合えって言うんですよ。どこ連れてこうっていうんだろう」
「なにか話したいことでもあるんじゃないでしょうか?そうですね、落ち着いた色味の服を着て
行ったらいいですよ、そんな気がするんです」
「美希はイメチェンかなんか考えてるんでしょうか?髪のこと聞かれたんですが」
「いえ、プロデューサーさんの好みが聞きたかったんですよ、きっと。なんて答えたんです?
短い方がいい?へえ、ショートカットっていいですよね、ね?」
「まいりましたよ小鳥さん、あずささんが『友人の結婚式に一緒に出席してくれ』って」
「あずささんの気持ち、なんとなく判りますよ。しっかりエスコートしてあげてくださいね」
てなことアドバイスしながらそのたんびに夜
「ううっ、わたしのバカわたしのバカ」
ってやけ酒あおるんですきっと。
そんで、きっと最後の最後まで『プロデューサーさんはどうしてわたしを頼るんだろう』という
疑問には思い至らないんです。かわいいなあ小鳥さん。
>>158
不憫と思うならその『www』はナニかとw(←あっ)
>>199
乙女心から"乙"が取れるってのはなにやらいい表現ですな。しかし13人とか無茶言いなw
レシPでした。ではまた。
217:創る名無しに見る名無し
10/02/05 22:28:37 bFstIOcs
>>206
このスレ、感想書きの方も自分が思ったことをどうにか漠然としたモノで片付けず言葉にしようとする傾向がありますからな
その分、ちょっと重すぎる発言が飛び交うことも少なくはありませんが、その辺はまあバランスよく行きましょうということで
>>203
概ねについては>>206で言われてしまった気分だったりしますが
個人的な気分で言うと、全体的にもう一段階練り込みがほしいな、というところ
例えば、この一連の千早の言動で考えると・・・
「あ、千早でいいです!」 というのは唐突な印象を覚えるとこなので、もうワンクッションおくか
あるいはもうちょっと距離を置いたかたちにするとかで当たりをそれっぽくした方がらしいかもです。
お約束のネタとしては
「あの、音無さん。如月さんではなく千早、でよろしいかと」
「え、あ、うんじゃあ千早ちゃん、でいいかな?」
「ええ、そのやはり 年 上 の方にさん付けで呼ばれるのは落ち着かないですし」
で、ピヨちゃんにオチを回してしまうとか。
ユニット名についても最初のうちは「歌う機会が与えられるならなんでも構いません」ぐらいでいたのが
プロデューサーから『だらっ娘2010』、さらに春香にも何かビミョーな発言させて
だめだこいつら、早くなんとかしないと状態を強めてから「あの!」 に行くなりで「らしさ」をより追求しつつ
お約束を積む余地があったかもしれないです。
らしくない行動やキャラ崩壊が悪いわけでありませんが、お約束攻めなら流れに沿わせた方が書くも読むもより楽かなと。
4~8話についても、速攻数撃ちに転じたせいか、さらに練り込み不足の印象を感じるところがもったいないです。
軽く読めるもの、という視点は良いと思いますが、思いついたネタをただ素で出すのではなく
一旦脳内で転がして膨らませる工程をもう少し重視していただけると幸いかと。
()で括られている部分のコメントについては敢えて触れずにおきます、と言ってしまった段階で触れたのと同じですが・・・w
>>215
ああ、なるほど、つまり
「きみはぼくの、大切な。 」
「大切な・・・なに?」
「とても大切な……ともだち、だから。」
の後が
「真ちゃん・・・!」「雪歩!」(ひしっ)だったか
「涼の・・・」「え?」「涼の、ぶぅわかぁ~っ!!」(ばっちーん)だったかの違い、とw
壮大な前振りから入って、ちょっと考えオチの要素がある落語の小話のような仕上がりですな
ああ、となったとこの納得度の高さがイイ感じです。
まあ、真もわりと相手に悪気なく地雷踏まれてヘコむ側になることが多いキャラしてますけども。
まこみきだと「男の子からファンレター来たよ!」「え、ファンレターて普通男のコから来るモノだよね?」「あ、うん・・・そうだね」
とか、まこゆきだと女の子らしくとか悩んでるタイミングでカッコイイ方向で持ち上げられて傷深めたりとかw
でも、この状況だとあんまり涼の味方にはなってくれそうにないおとめちっくまこぴーでしたとさ。
・・・ついでに、いおちはピヨのお正月~オフ編~は結構本気でみたかったりなんかしてw
218:創る名無しに見る名無し
10/02/05 23:57:46 Ncmi70wf
>>216
>一人称が『ぼく』のキャラに当てはめてみました。
ほう、では僕は呼んでもらえないという事かな……いや、聞いてみただけ
とまあ冗談はともかく「真が雪歩に言った台詞」であり、
「涼が夢子に言った台詞」であり、「真と涼の関係」でもあると考えると
上手い台詞を持ってきたなぁと素直に関心しました。
219:96p
10/02/07 23:39:48 a1/8tXBc
>>109,110,111,121,155
皆様、レスありがとうございました。
>>109
感想を読ませていただいて、ちゃんとしたストーリーもエンディングもないぶん、自由に話を
作ることのできる小鳥さんは、かえって幸せなのかなあ、と思いました。
>>111
SSの後の話まで想像していただいてありがとうございました。かえって自分の方が楽しめて
しまいました。「シャイでウブでちょっと迂闊で間の悪い」という書かれ方がとても好きに
なりました。
>>121
スレが新しくなって、投稿時の名前どうしようとか思っていたら、リストに96Pって書いて
あったので、そのまま便乗ということに。
>>155
七草のSS、拝見いたしました。人様の書く小鳥さんはどうしてこうすてきなんでしょうか。
(というより、短時間で書けるスキルが凄まじいです)
それでは、また一本投下させていただきます。三分割です。
220:ファイナル・ステージ1/3
10/02/07 23:41:22 a1/8tXBc
ファイナル・ステージ
その日春香は、いつもより早く目が覚めた。恐らく緊張からだろう。無理もない、今日は
彼女にとって、今までの総決算となるべき大事な日なのだ。ずっとずっと追いかけてきた
自分の夢が、今日、ようやく一大イベントとして実を結ぼうとしている。
春香は、ベッドの上で起きあがったまま、ぼんやりと今までのことを考えた。アイドルとして
デビューしたあの日が、もう遠い遠い昔のことのように思えた。それから、今日これから
大勢の人の前でなすべきこと、終わった後のこと、そして明日からのことを考えた。
昼過ぎになると、プロデューサーが彼女を車で迎えに来た。本当は、春香も自宅から
両親たちと一緒にタクシーで向かい、プロデューサーと現場で合流するという予定のはずだった。
「いくら私の家が遠いからって、わざわざ迎えに来るだなんて…」春香は笑った。
確かにこんなのは破格の始まり方だ。だが、プロデューサーは、どうしても春香を
連れて行っておきたい場所があると言う。
予定外のできごとでびっくり顔の春香の両親に、くれぐれもよろしくお願いしますと
頭を下げられ、プロデューサーは恐縮してしまった。
「それはこちらのセリフです。オレ…いや、ぼくの方こそ、ずっと彼女に助けられて
きたんですから」プロデューサーはそう言って、両親以上に深々と頭を下げた。
車に乗った春香は、緊張が続いていたのか、言葉少なだった。プロデューサーも、無理に
話をしようとせず、ただ黙って運転していた。やがて車は都心に入り、野外音楽堂のある
大きな公園のそばで停まった。
「春香、おぼえてるか、ここ」
「はい、もちろんですよ」
そこは、二人が新米プロデューサーと新米アイドルとして出会った最初の場所だ。
この場所で二人が会ったから、今があると言ってもいい。プロデューサーは春香に、
「ちょっと歌ってみないか」と言った。春香はにっこり笑って、あのときと同じように、
発声練習をした。力強く、澄んだ声がホールに反射し、空気の中へ融けていった。
プロデューサーは一人、拍手をした。
「春香はあのころから比べると、ずいぶん変わったなあ」
「そ、そうですか?私、今でもあのときのままだと思ってるんですけど…」
「いや、こんなに成長したんだ、変わったよ」プロデューサーは、春香の肩に手を載せた。
「…いい意味、ですよね?」
「もちろんだ。ドジでおっちょこちょいはそのままだけどな」
「ひ、ひどいです…」
「ははは」
「えへへ」
221:ファイナル・ステージ2/3
10/02/07 23:42:11 a1/8tXBc
二人はたがいに笑い合った。思い返せば、楽しいことだけでは決してなかった。悲しい時期も
あった。さみしい時も、つらいこともあった。だが、春香はそれに耐え、がんばった。春香は、
プロデューサーの顔を見て言った。
「私、絶対忘れません、今日のこと。ずっとずっと、いくつになっても忘れません。
この風景も、この空気も、この気持ちも」
「そうだな。おれも忘れないよ」
二人はまた車に乗り、目的地へ向かった。すでに陽は傾き始め、薄いオレンジ色に染まった
大きな建物が次第に近づいてくると、車の中からずっとそれを見上げていた春香の呼吸が、
だんだん荒くなってきた。
「春香、緊張してるのか?」駐車場に停めた車の中でプロデューサーが話しかけた。
「そ、そりゃしてますよ。自分がこんなところに立てる日が来るだなんて…でも、本当は、
ずっと今日を待っていたのかもしれません。ひょっとしたら、子供のころから…生まれた
ときから…。私の…私たちの、最後の…そして、始まりの日…」
春香は決意を秘めた目で、プロデューサーを見据えた。
「よし、いつものおまじないをしてやろう」
「は、はい」
プロデューサーは、春香の頭に手をのせて、自分の方へ引き寄せた。春香は彼の胸に顔を
押しつけた格好のまま、黙っている。二人の鼓動はまるで同期しているかのようだ。
「落ち着いたか?」
「す、すみません、全然落ち着きません!」春香は真っ赤になってプロデューサーから離れた。
「まあ、少し緊張してるくらいでいいのかもな」プロデューサーは笑った。
「あの、緊張してるのって、私だけですか?」
プロデューサーは、わざと青ざめたような顔をした。
「実を言うと、オレもめちゃめちゃ緊張してる」
「なあんだ」春香は自分の口に手を当てて、くすくす笑った。どうやら、彼女の緊張も少しは
ほぐれたらしい。
「よし、じゃあ行こうか。みんなが待ってる」
「はい!」
大事な一日はこうして幕を開け、そして大喝采のうちに閉じた。
222:ファイナル・ステージ3/3
10/02/07 23:43:26 a1/8tXBc
それぞれの役目を終えた二人は、大勢いた客がみんな帰ってしまった後も、どこへも行かず、
冷たい月の光を浴びながら、人目を避けるようにして建物の裏手で話をしていた。
「それにしても、本当に大丈夫なのか?このまま仕事を続けても」彼はいままでもさんざん
訊いてきた質問をくりかえした。
「はい、今日のことで多少はハンデがついちゃうかもですけど、やっぱり歌をやめたくありません」
「それにしても、少しぐらいは休みを入れた方がよかったんじゃないのか?」
「…やっぱり、そう思います?」
「まあ、普通はそうするだろう、ってだけで、おれは春香の意志を尊重するよ」
「はい、なるべくならブランクを作りたくないんです。休むのは、きっとこれだっ、っていう
機会が絶対あるはずですし、その時にまとめて休んじゃいましょう!」
「そうか。じゃあ、その時を楽しみに、またがんばろうか!」プロデューサーは、手に持っていた
赤い小さな手帳を二、三度振ると、ポケットにしまい込んだ。
「はい、楽しみはとっとくもんですよ!」
「よし、じゃあ帰るぞ」
「は、はいっ!」
「大丈夫か?なんだか昼間より緊張してるみたいだぞ」
「え、そ、そうですか?」
「改めてこれからもよろしくな、春香」プロデューサーは右手を差し出した。
「はい、私たちには新しい明日が待ってるんですよね!」春香は彼の手を両手で握り、いつか
どこかで聞いたような言葉を返した。
その日の夜、春香は一度目を覚ました。灯りをつけずに起き上がり、暗い部屋の中で静かに
深呼吸をしてから、自分の幸せを改めてかみしめた。本当に、なんて素敵な一日だったのだろう。
カーテンの隙間から月がぼんやりと見え、春香はしばらくそれをじっとながめていた。
彼女は、これからも歌を歌い続けるという道を選んだ。だから、明日からも、彼女の仕事は続く。
プロデューサーと、それこそ今まで以上に二人三脚で。
翌日、プロデューサーは春香を765プロの駐車場まで送り届け、自分は別の仕事先へそのまま
直行した。春香が事務所のドアを開けると、早出をしていた社長がびっくりしたように声をかけた。
「もう今日から仕事なのかね、天海くん…おっと、まだ慣れてなくてね。いやあ、それにしても、
きのうの結婚式は見事だったね」
end.
223:創る名無しに見る名無し
10/02/08 00:44:26 E1wN0HgG
>>220
ナイスオチです。
しかし、あのフラクラPをどうやって攻略したんだ春香は。
224:創る名無しに見る名無し
10/02/08 15:49:42 HDKVc+DV
>>220
222-L16でオチに気づけなかった、くやしい
225:創る名無しに見る名無し
10/02/08 17:21:33 KbofAJmF
>>220
やられた。
本気でやられた。
タイトルもいいし、情報の出し方も充分。
なのに思いが全く至らなかった。
キャラが春香なのも、想像を正解の方向に行かせないストッパーになってる。
それを含めて見事。
しかもハッピーエンドだから、やられたけど後味がいい。
気持ちいいやられかたをした。
226:創る名無しに見る名無し
10/02/08 19:25:55 3ncpgXPQ
>>220-222
上手い、と心から賞賛します。>>225氏も言ってますがどこからどう読んでも「あの」EDにつながる話じゃないのに、
最後の社長の一言を聞かされるまで読者をうまく目くらましさせちゃうのが見事。
しかしそれって、言い換えると俺らが春香を語ると「あの」EDをどーにも切り離せないってことでもあるんですよねぇ。
メタ的なレベルでもうーんと唸らされてしまいました。お見事です。
227:創る名無しに見る名無し
10/02/09 00:17:33 vbkmuA97
上手い下手よりも、春香が幸せで凄く嬉しいSSだった。
ただの幸せというわけでなく、ちゃんと「春香」な春香が幸せなのがいい。
この後も、いろいろありそうだけど、けどいいなあ、こういうハッピーエンド。
ゴチでしたー!
228:創る名無しに見る名無し
10/02/09 00:58:35 WzYtUtTa
>>220
えーと、取りあえず難の方から。
改行の位置をもうちょっと考えて文字をほぐしてやるとぐんと読みやすくなるかなと。
それと、文をもう少し物語的というか情感的というか、そういう方向を習得するともっと効果的な気がします
今の状態だと、まだまだちょっとつっけんどんな感じがしてしまうので。
内容的には、ラストシーンまで持っていくところをむしろ出発点に、きちんと計算して組み上げた印象。
ラストまで読み切って、ようやくあちこちに仕掛けられた「それじゃない」示唆に気付かせる辺りは一体どこの匠の業かとw
気付けるはずの情報は出してあるのに、アイマスを知っていればいるほどまず気付かない。見事な狙いぶりです。
けども、思い返してみるに96Pの以前までの各編は必ずと言っていいぐらい、文章を積み重ねて示唆し続け、
作ってきた状況を最後のワンフレーズで一気にすぱっと結論に持ち込む流れを意識しているようで、
ある意味もはや定番と言っていい手法になっているのかも。
初作のピヨちゃんにしても神様、きっかけを下さい的な流れ→どうやら神様は二人の味方らしい。
hot lineでは様々な案内表示や道標の線を提示しながら、最後の最後にそれを「赤い糸」に収束。
クリスマスは言うに及ばず、そして今回。
こうやって並べてみると、手法的な好みとして見える感じで、そこがまた面白いところ。
舞台装置を扱う演出技法は今回並外れて光って見えました。課題も明らかではありますが
その辺りは経験的に身に付く部分でもある、と思うのでまだまだ向上していくと思います
なにより、今回はそのセンスに脱帽でした。
229:160
10/02/11 01:20:37 n+aUX0Cj
卒論や研修が立て込んでいたため、遅レスですが、
文士の皆様に、暖かいご指導頂き感謝しております。
確かに舞さんのキャラが普通の母さんになってしまったのは、
キャラクターの魅力を削いでしまったと思います。
後、オチが落ちていないのは、まったく弁解できないことでして、
今後反省していきたいと思います。
どうもありがとうございました。
230:創る名無しに見る名無し
10/02/12 00:35:34 /dikVi4M
>>220
規制解除された!感想が書き込める!
途中で違和感を感じたけど、結局最後まで気付けなかった。
完全にしてやられました。お見事です。
231:創る名無しに見る名無し
10/02/14 01:23:10 XSCFAPor
涼が全アイドルに弄ばれるようなのがみたい
232:みなとP ◆bwwrQCbtp.
10/02/15 00:12:38 BHTMz03i
こんばんは。
実は前作「one night before」の後日談、誰かさんに負けない甘々春香を
書こうとしていたのですが、なんか全然甘々にならない上に、
>>220に非常にいい感じの春香それからが出てしまったので、
とりあえずお蔵入りすることにしました。
で、その代わりに、長年温めていた話が、ようやく完成したので、
久しぶりにちょっと長めなのを投稿してみようかな、と。
あ、長年かかってるくらいですから、バレンタインとかそういう時事ネタは
全てスルーする感じで。
ということで、12レスほどお借りします。
「春香エンジェル」
行きます。
233:春香エンジェル 第1話
10/02/15 00:14:17 BHTMz03i
ええと・・・志望動機、志望動機は、と。
俺はもう一度、手元のメモに目を落とす。
『世界的な大恐慌と言われるこの経済危機の状況において、業種を問わず各企業が業績を落とし、喘いでいる
中、業容を拡大しようという御社の意欲、並びにその伸びゆく業績に対して、大きな将来性を感じ、私自身の
経験を御社のために役立てると共に未来に以下略
ヤバい。
覚えきれない。
っていうか、昨夜一度は完全に覚えたはずなのに、メモリクリア。
どうしよう?
もう、そろそろ本番だぞ。
てか、落ち着け俺。こんなの初めてじゃないだろ。
「では、次の方、どうぞ」
え?
次って、俺じゃん?
まずい、とにかく返事しないと・・・
「はぃいいぃ」
ど、どうした、俺の声?裏返るんじゃねえ!
「それでは、まずは当社を志望した理由を聞かせてください」
「あ、は、はい!動機は・・・ですね・・・」
なんだっけ?
・・・・
ダメだ。思い出せる気がしない。
でも、何か、何か言わないと!
「あ、あの・・・あ・・・」
「あ?」
いやいやいやいや、『あ』に大した意味なんてないですから、聞き返さないで下さいよ、そこのお姉さん。
「あの・・・あ・・・」
「落ち着いて下さいね。あ?なんですか?」
いやだから、『あ』じゃなくて、いや、『あ』と言えば、そうそう。いや違う。
「あ・・・あ・・・あああああああ!」
「お、落ち着いて下さい!」
これが落ち着いてなどいられるか!『あ』と言えば、決まってるだろ!
「天海春香さんのいる事務所で、働きたかったんです!」
234:春香エンジェル 第2話
10/02/15 00:15:12 BHTMz03i
・・・・・
あれ・・・?
やっちまった?俺?
俺的にはNGワード指定してたつもりの台詞を、叫んだ気がする。
ヤバい。
緑の服のお姉さん、固まっちゃったよ。
そりゃそうだよな。明らかに所属のアイドル目当ての応募なんて。
普通なら、真っ先に落とされる。
うん。そうだよな。
・・・終わったな。
俺の人生最大の賭けが、終わった・・・。
やっぱり、受かるまで前の会社辞めるべきじゃなかった・・・。
いくら春香さんの事務所がスタッフ募集してるからって、受かるとは限らないじゃん。
いやでも、会社も辞めて絶対765プロのスタッフになるという、背水の陣で臨む作戦だったし。
「なんといい答えだ!ピーンと来た!君のような人材を求めていたんだ!」
あれ?
なんか声が聞こえる。
「しゃ、社長?!」
あ、真っ暗だと思ってたところに、人がいたのか。
社長・・・とか言ってるな。
「音無君、そうは思わないかね。彼は我が社のアイドルを、心から愛してくれている。彼の様な人間こそ、
新規スタッフにふさわしいのではないかね。」
「あ、あの・・・社長、普通は芸能プロダクションでは、所属タレント目当ての応募は、敬遠するんです
が・・・」
「うむ。しかし、彼は、おそらくそれを知っての上で、あえて春香君と同じ事務所で働きたい、と堂々と
宣言したのだよ。なかなか出来る事ではない。私は、その心意気を買いたいと思うのだよ!」
「心意気・・・ですか。」
「そうだ。そこのキミ、明日から早速、よろしく頼むよ。」
「えっと、ということで、採用決定です。詳しくは後で説明しますので、先ほどの待合室の方でお待ち
下さいね。」
なんだかよくわからないことになった。
「は、はい。では、失礼します。」
こうして俺は、社長の直感により765プロの社員となった。
235:春香エンジェル 第3話
10/02/15 00:15:53 BHTMz03i
俺が765プロのスタッフ募集を知ったのは偶然だった。
たまたまチェックしていた、某巨大掲示板のアイドル板「765プロダクション総合スレッド」で、募集がある
との書き込みを見かけたのだ。
「おまいら、これでも応募してみたらどうだw」との書き込みの下に、募集ページへのリンクがあった。
内容は「事務所移転による規模拡大のためスタッフ募集」
募集は、プロデューサー若干名、その他スタッフ若干名(ともに経験不問)だった。
プロデューサーは以前も募集しているのを見たが、我が憧れの天海春香さんには、もう専任プロデューサーが
付いているのを知っていたので、これまで応募はしなかった。
しかし、今回は事務員その他スタッフも募集しているではないか!
俺は、すぐさま履歴書を買いに行って、応募した。
そして、あまりにも見事に採用となったのである。
その出勤初日。
時を同じくして採用された数名と共に、出勤を要請されたのは午後だった。
強いwktkを胸に事務所に行ってみると、そこは引っ越しの準備でごった返していた。
「あ、おはようございます。早速ですみませんけど、とりあえず棚に残ってる書類を全部段ボール箱に詰めて
もらえますか?」
昨日も会った、事務の音無さんの指示で、とにかくわけもわからずに力仕事になった。
ざっと見渡すと、作業をしている人数はそんなに多くない。
昨日も見かけた新規採用者数人、他にはやはり若い男性が数人程度。あと音無さんの他に、なんか学生の
年代の女の子が数人。中には男の子か女の子か微妙な子も混じっているが、デビュー前のアイドルという
感じの可愛い子もいる。
とりあえず、春香さんはいないということは確かだ。
・・・
「お・・・終わった・・・。」
まさか、椅子や机の類いのトラックへの積み込みまで、全てスタッフでやるとは思わなかった。
時刻は夜の10時半。
初日なので、できればいろいろ情報を得たり他のスタッフや可愛い女の子たちと互いに自己紹介したりした
かったところなのだが、それどころじゃない状態のうちに、みな疲れ果てて言葉すら発しなくなっていた。
ただ、謎の「うっうー」という声だけは最後まで途切れる事なく響いていた気がする。
「みなさん、申し訳ありませんけど、明日は準備のために新しい事務所に朝6時集合でお願いしますね。」
音無さん、あんた、可愛い顔して鬼や。
236:春香エンジェル 第4話
10/02/15 00:16:58 BHTMz03i
「おはようございます!わあ、新しい事務所って、やっぱりいいですね!一段と広いし、奇麗だし、窓からの
景色も最高ですね!レベルアーップ!って感じです!」
あれ?
なんか天使の声がする。
そうか、昨日に続いて今度は早朝からの搬入と整理作業で疲れ果てた俺に、天使が舞い降りてきてくれたんだな。
わずかにこの世に残った意識の中で、俺はそんなことを考えていた。
ガバッ!
飛びかかった音じゃない。机に突っ伏していた状態から跳ね起きた音だ。
「春香さん、おはようございます!」
夢にまで見たマイエンジェル春香さんが、今すぐそこにいるじゃないか。死にかけてる場合じゃないだろ俺。
「はい、おはようございます。あの・・・新しいスタッフの方ですよね?」
「春香ちゃん、こちらの方々が、新しいスタッフのみなさんですよ。」
音無さんが解説を入れる。
「じゃあ、はじめまして、ですね。なんかみなさん、すっごくお疲れみたいですけど・・・」
「ふふっ。今日は朝から、事務所の引っ越しをみなさんにやってもらいましたから。」
そう。引っ越しをやった。手伝った、ではない。トラックでの輸送以外は全て我々がやった。
「そうだったんですか・・・。おつかれさまです。」
ぺこりと頭を下げる春香さん。
ああ・・・我々のような新参のスタッフにまで気を使ってくれるなんて、本当に天使のようだ。
「あの、春香さん。俺
「あ、プロデューサーさん!おはようございます!今日から新しい事務所ですよ!」
行ってしまった・・・。
「おっと、春香ちゃんここで新スタッフをスルー!」
「なんの実況ですか・・・」
春香さんが去って行った方向を見る。
プロデューサーさん、と言っていたな。
あの男がそうか。
「やあ、おはよう春香」
「あれ、プロデューサーさん、今日は優しい感じですね?」
先ほどより推定300Hzほど高くなった声のトーン
表情、仕草その他もろもろ
証拠は揃った。
そうか。
認めたくないが、春香さん、どうやらあの男に惚れてるな。
「なるほど。あいつが敵か。俺はそう心に刻んだ。春香への愛を貫き通すには、ヤツを倒さなければならない。」
「音無さん。」
「はい?」
「勝手に人の心の中を脚色してナレーションしないでください。」
237:春香エンジェル 第5話
10/02/15 00:17:55 BHTMz03i
ようやく本格的に本来の仕事になった。
まずは各種業務についての説明を受けた。そして聞いた限りだと、どうやらこの765プロダクションには、
はっきりとした業務分掌そのものが存在しない。
各アイドルについては、プロデューサーという名のなんでも屋が付いて、それ以外の事は、事務と言う名の
なんでも屋がやっている、という状況だ。
いかにも零細の事務所の業務形態のまま、ただ事務所だけが大きくなって、今やこの高層ビルの上層階に
来てしまった、ということ。で、忙しくなったので新規スタッフを募集したのはいいが、業務については
とりあえずそのまま、の形になっている。つまり、新規スタッフはとりあえずなんでも屋である。
そう言えば、職種が営業なのか企画なのか経理なのか総務なのか庶務なのか人事なのかイベントスタッフ
なのかマネージャーなのかそれとも他の何かなのか、募集要項の全然どこにも記載はなかったし、面接や
その後の説明でもそんな話は出てこなかった。
「こりゃ、まずは体制を整えないと仕事にならないかもな。」
これまでのスタッフはもちろん、新規採用組も大きめの会社での事務経験者はほとんどいない感じだ。
ある意味、俺の存在価値の見せ所かもしれない。
その日、俺は頼まれた雑務をこなした後、残業して各種社内書類のテンプレートを作成した。
ついでに、音無さんが簡単に作ってあった事務所の出入りや冷暖房、照明などの各種注意事項を清書する。
初日に出来るのはそんなもんだ。
作業を終えて、もう誰もいなくなった事務所を出ようとした時、春香さんのプロデューサーが戻ってきた。
「あ、おつかれさまです。」
とりあえず声をかけてみる。同僚なわけだし、他意はない。
「おつかれさま。初日から遅くまでご苦労さまです。」
「いや、大した事はしてませんから。ところで、今から、また仕事ですか?」
「ええ。春香のテレビ出演依頼があるんで、その番組内容の企画書とスケジュールの確認をしておきたくて。」
「大変ですね。でも、この事務所では春香さんが一番の売れっ子ですからね、頑張って下さい。」
「冗談抜きに大変なんですけど・・・まあ、春香が売れてるおかげですから、頑張りますよ。でも、せっかく
新しく人が増えたんだから、少しはこっちも手伝ってもらいたいところですけどね。」
確かに、まだあまり売れてないアイドルやその担当プロデューサーは、もうとっくに帰宅している。
担当アイドルによって、仕事量に差がありすぎるのは、問題だよな。
「だったら、俺が手伝えないか、明日にでも俺から社長に言ってみます。」
会社としても、俺としても、春香さん担当の仕事を分業できればその方がいい。
「あ、それはありがたい。お願いしますよ。」
どうやらこのP、ノリは軽いが素直ないいヤツっぽい、というのが俺の第一印象。
翌朝
さっそく、社長に昨夜の件を直訴してみた。
「うむ。それはいいな!早速だが、キミには春香君の担当専任スタッフとなってもらう。これからもよろしく
頼むよ!」
あっさり。
面接の時も思ったけど、これでこの会社大丈夫なのだろうか。
いや、俺が、俺たちが頑張れば大丈夫。きっと、多分。
238:春香エンジェル 第6話
10/02/15 00:18:44 BHTMz03i
「ということで、よろしくお願いします。」
何はともあれ、春香Pに挨拶した。
「こちらこそ、よろしく。いや、助かります。」
「しかし、今日の今日でいきなりとは思いませんでした。」
「社長、決断が妙に速いところがありますからね。考えているのか、考えてないのか・・・」
さっそく、仕事の話に入る。
まずは、次回のライブについて。
春香Pと俺、同性の同年輩同士、熱く話していると、互いに自然に敬語ではなくなった。
「じゃあ、とりあえず衣装、大道具、セッティングとステージ関連の発注だな。見積書はあるか?」
「いや、特にもらってない。忙しかったんで。」
「わかった。じゃあ会場と設営の方は条件がそんなに変わらないから、今の条件で俺が見積依頼しておく。
予算の管理も俺がやった方がいいか?」
「そうだな、頼む。俺はステージのコンセプトを作って、デザイン依頼の方をやる。」
「うん、これまでの春香さんの評判のステージを作ってきたセンスで、今回も頼むぜ。」
まったく、こいつは大したヤツだ。これまでほとんど一人で、あのステージを企画し実現してきた。
春香さんが売れたのには、間違いなくこいつの手腕が大きい。
こいつには、そう言った企画方面に専念してもらった方がいい。必要な事務作業は俺が引き受ける。
「評判のステージか・・・。嬉しいね、そう言われると。」
「衣装もステージのセットも、大評判だぜ。この前のチャイルドスモックは特に素晴らしかった。アンコール
のパジャマに至っては、もう天使かと見間違えるほどで・・・」
「・・・もしかして、お前一人の評判か?」
「いや違う違う。俺個人の意見も含めて言ったけど、少なくとも多くのファンに好評なのは間違いない。あの
衣装は、みんなお前が選んだんだろ?」
「ああ。」
「大したセンスだ。見事にファンのニーズを掴んでるよ。リサーチとかしてるのか?」
「別にリサーチなんかはしてない。と言うか、衣装についてはファンのニーズとかあまり気にしてないんだ。」
「気にしてない?」
さすがに、それは驚きだ。
「ああ。俺はただ、自分が着せたい、着たところを見たい、と思う衣装を、春香に着せてるだけだ。」
噂は本当だった。
765プロは変態事務所だ。
しかし、俺はその変態の言葉に、強い感銘を受けた。
目頭が熱くなってくるのを感じる。
この事務所に入って、本当によかった・・・。
239:春香エンジェル 第7話
10/02/15 00:22:39 BHTMz03i
さて、こうして無事にというかあまりにも予定通りに、春香さん専属スタッフAの地位を射止めた俺である。
しかし、ちょっとばかり計算が違った部分がある。
春香さんとの直接の接触が、下手すると他のスタッフよりも少ないということだ。
実際、春香Pは事務所の外での仕事が多い。その多くは春香さんと一緒だ。その分、専属スタッフとしては、
どうしてもそのフォローをするべく事務所内での仕事が多くなる。と言うよりも、春香Pを安心して外の仕事に
専念させるために、俺が事務所内での仕事を引き受けていると言う方が正しい。
しかし、仕事の進め方としては、これが絶対に正しいと思える。
春香さんとあまり接触ができない、ということを差し引いても、仕事そのもののやりがい、そして充実感は、
俺がこれまでの人生で味わったことがないほどに満ちあふれていた。
「はい、次アンコール行きます!春香さんは衣装替え、控え室1番、バックダンサーのみなさんは2番の部屋
に準備出来てますんで、お願いします!」
「時間、3分でお願いします!すでに20分押してます!」
「小道具、次の曲はアイマスのぼり、スタンバイは?」
「スタンバイOKです!」
「次は特効ありです!特効2と3、準備いいですか?」
ライブの舞台裏は、まさに戦場だ。
その戦場に身を置く立場になった以上、ゆっくりとライブを楽しむことなど出来はしない。
それは覚悟していたし、確かに残念だ。が、もっと充実した気分を俺は味わっていた。
自分が、春香さんのライブを作り上げている、その中の一人だという実感。
しかし、それ以上に勝利者感覚に酔えることがある。
例えば
そこに、出演者がステージ裏に戻ってきた時に使ったタオルがある。
春香さんが使ったのは、一番右端。チェックしていたから間違いない。
つまり、この春香さん使用済タオルを、手に取る事が可能だ。
手に取れるなら、当然、スーハークンカクンカとか何だって出来る。これひとつくらい、くすねてお持ち帰り
だって不可能じゃない。持ち帰ったらもうこっちのもんだ。
なんなら遠心分離機にかけて中の水分を抜き出す事だって・・・
いや、やらないけどね。
ただ、今の俺は、それをやろうと思えば出来る立場にいる。
それが満足なのだ。
実際にやっちゃったらただの変態だし。
「あ、スタッフさん。出演者の使用済タオルは、これで全部ですよね?」
音無さんがやってきた。
「はい、そうだと思います。」
「まさか、抜き取って隠したりはしてませんよね?」
「な、なに言ってるんですか?!そ、そんなことするわけないじゃないですか!」
「ごめんなさいね。ウチの事務所、スタッフやプロデューサーが、出演者の使用済タオルや着用済の衣装を
勝手に持ち帰ったりすることが、たまにありますから、気をつけてないといけないんですよ。」
「ぐはっ・・・」
あきれたわけじゃない。
負けた。そう思った。
勝ちたくないけど。
「あ、ほら。春香ちゃんがスタッフ全員ステージに出てくるように、って、呼んでますよ!」
「え?」
すでにアンコールラストの曲も終了していた。
ステージ裏のスタッフが、呼ばれるままに舞台へとぞろぞろ出て行く。俺もそれに続いた。
『今日は、この素晴らしいスタッフのみなさんとステージをお届けしました!スタッフのみなさん、そして
会場のみんな!本当にありがとう!!』
春香さんのこの一声で、ステージは幕を下ろした。
240:春香エンジェル 第8話
10/02/15 00:23:30 BHTMz03i
「よぉし!もう一軒行くか!」
「行こう行こう!」
「じゃあ私たちは、ここで失礼しまーす」
「はあい、おつかれさまー!」
ライブの打ち上げは大いに盛り上がった。
盛り上がり過ぎた俺たちは、何軒もはしごしてしまった。その内にいつの間にか、メンバーは俺と春香Pの二人
だけとなっていた。
「じゃあ、次はここでいいか?」
「もうどこでもいいぞ」
「この店、前はよく来たんだよ。このビルの上に事務所があった頃にさあ。」
そう言いながら、俺たちは『たるき屋』と書かれた暖簾をくぐった。
「じゃあ、あらためて、ライブ成功おめでとう!そしておつかれさま!乾杯!」
「おつかれ!」
その夜4度目の乾杯。
「いやあ、しかし、今日のライブは良かったな。凄い盛り上がりだった。」
「お前が手伝ってくれた事も大きいよ。おかげでこっちは、本来の演出の指示に専念出来たし。」
「お、嬉しいこと言ってくれるねえ。まあ飲め飲め。」
「当然だ。今日くらいは徹底的に飲むぞ!つきあえよ。」
「望むところ」
「こうやって苦楽を共にした同僚と飲めるってのも、ありがたいものだしな。」
「あ、そうか。もしかしてこれまでは、打ち上げと言っても事務所の人間はほとんど参加しなかったのか?」
「音無さんくらいだな。いつも最後は二人で愚痴っぽくなって・・・」
「そ、そうだったのか・・・ってあれ?そう言えば、音無さん、打ち上げに来てたか?」
「ああ、確かに見てないな。いつもは最後まで参加するはずなのに。」
「彼女、酒、好きなのか?」
「酒が好きと言うより、酒を飲むこと、飲む雰囲気が好き、って感じかな。」
「なるほど。」
「ただ、飲み出すと止まらない。」
「そうか・・・」
そんな話をしながら、また一杯。
と、春香Pが、なにやら神妙な顔でつぶやくように言い出した。
「なあ。」
「ん?」
「もしかして、の話なんだが。」
「なんだ?」
そして、視線を宙に漂わせながら、こう続けた。
「もしかして、春香って俺の事が好きだったりするのかな・・・」
241:春香エンジェル 第9話
10/02/15 00:24:14 BHTMz03i
俺は、Pに軽い殺意を覚えた。
こいつには、悪気は欠片もない。それはわかっている。
逆にそれが癪にさわる。無神経だ。
何より、春香さんがプロデューサーの事を好きだなんて事は、もう周知の事実以上の確定事項で、気付いて
いないのは事務所の内外を問わず当の本人だけと言って良い。その時点で既に無神経の唐変木なのだが。
俺は自分の言葉に毒を含ませた。
「おい、それって・・・ヤバい意味じゃないだろうな?」
「え?」
Pが驚いてこちらを見る。
「考えてもみろ。もし本当にそうだったとしたら、お前はどうするつもりなんだ?16歳のアイドルを相手に、
世間には自由恋愛の結果だとでも言う気か?」
「あ、い、いやそういうつもりじゃ・・・」
こいつは変態だが基本的に真面目なヤツだ。俺はあえて真面目な男にとって耳の痛い言葉を選んだ。
「かたや日本でも有名になったアイドル、しかし世間もよく知らない16歳の高校生。かたやこの業界でもまだ
駆け出しの若いプロデューサー。一般の人の目にどう映るか、言うまでもないだろ。」
先ほどのうろたえぶりからしても、こいつはそこまで深く考えて言い出したとは思えない。
ならば、こちらの思う結論に誘導するだけだ。
案の定、Pの顔はみるみる深刻に曇り出す。
「そんな事実が発覚したら、事務所そのものも問題視される。特に大事な娘さんを預けている親御さんはどう
思うか。他のアイドルや候補生の子だって、親御さんに元々反対されている子もいるみたいだし・・・」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
堪らずにPが言葉を遮る。
しばらく会話が途絶えた。その間、Pはじっと考えていた。
「・・・お前の言う通りだ。こんなこと、軽々しく口にするべきことじゃない。」
言うなり、グラスに残っていた冷酒を一気にあおった。
「俺が間違っていた。あいつが、春香が、何となく思わせぶりなこと言うのを、まんざらでもない気分で聞き
流して、いい気になっていた。これからは、もっとしっかりと、意図を持ってスルーすることにする。」
そういうPの顔には、悲壮感すら漂っていた。
「そうか・・・」
望んでいた結論に至った。
が、逆にどうにも罪悪感が芽生えたのも事実だった。
「それが、俺に出来る唯一の正しい選択だ。さもないと、みんなに申し訳が立たない。春香にも、春香のご両親
にも、スタッフのみんな、お前にも、社長にも、音無さんにも・・・」
「わたひがどうかしましたか?」
「ぶはっっっ!!音無さん?!」
「ど、どうしてここに?!だいぶ飲んでるみたいですけど・・・?」
「どうひてもこうひてもないですよ。プロデューサーさん、わたひは後片付けが終わったら打ち上げに合流する
から、後で会場の場所をメールで教えて下さい、ってお願いひたじゃないですか?」
「あ・・・すみません、すっかり忘れてました。」
「それはあんまりじゃないですか?・・・だから、仕方なくこの通い慣れたお店で、一人寂しく杯を傾けること
数時間、その間も、プロデューサーさんにもスタッフさんにも何度もメールを送ったのに、誰からも何の返事も
なく・・・ううっ・・・わたひも、今日は結構頑張ったんですよ・・・」
「本当だ・・・俺の携帯にも音無さんからのメールが来てました・・・気付きませんでした・・・」
「すみません!ごめんなさい!誠に申し訳ありません!」
「ううっ・・・罰として、今日のここのお勘定はプロデューサーさんにお願いしますからね。」
音無さんがそう言って差し出した伝票は、すでに20品目に到達していた。
242:春香エンジェル 第10話
10/02/15 00:24:58 BHTMz03i
それは、唐突にやって来た。
『天海春香、活動停止』
衝撃的なニュースが芸能界を駆け抜ける。ファンは騒然となり、お別れコンサートのチケットは、ドームという
考えうる最大限のキャパシティを持つ会場をもってしても、なお入手困難なプラチナチケットと化した。
俺も最初に聞いた時は耳を疑った。
どうやら聞くところによると、最初から活動期限が決められていたらしい。これは765プロの恒例だと言う。
おそらくは、これほどのメジャーアイドルになることを想定してなかったのだろう。
アイドルがそこそこに売れて、プロデューサーがそれなりの経験を積んだ時点で、その組み合わせを解消する。
人材育成という意味では、間違っているとも言えない方針だ。
過去にも例はあったのだろうが、それが話題になるレベルにまで達していなかった、それだけの話。
ただ、今回はトップアイドル天海春香ということで、話が大きくならざるを得ない。
そんな風に世間が騒ぎ立てる中、765プロでは、粛々とお別れコンサートに向けての準備が進んでいた。
いつものライブと同じ様に。
そして、ライブ当日―――
―と言っても、俺はいつもの様に、裏方なのだが。
さて、そのライブ。
リハーサルでは不安な感じがあった春香さんだが、本番は、いつもの様に、いや、いつも以上に見事な
ステージングを披露していた。
お別れコンサートは、最高の形で幕を下ろした。
大成功だった、と言っていいだろう。
その後、いつもとは違い、スタッフ有志での打ち上げがあった。
主役である、春香さんとプロデューサーの姿は、そこにはなかった。
ライブ終演後、二人でどこかへ消えてしまったのである。
とは言え、今後の話もあるだろうし、それも自然な流れに思えた。
二人が、どこでどんな会話を交わしたかは、我々には知る由もない――
―かに思われた。
その夜、帰宅した後で、携帯に一通のメールが届いた。
春香Pからだった。
『今から出てこれるか?』
俺は、不審に思いながらも返信した。
『大丈夫だけど、どうした?どこに行けばいい?』
『たるき屋にいる』
時計を見た。
間もなく深夜0時。
俺はとりあえず外に出て、タクシーを拾った。
243:春香エンジェル 第11話
10/02/15 00:26:12 BHTMz03i
「よく来たな。まあ飲め。」
たるき屋の暖簾をくぐると、春香Pから声がかかった。
「おう。とりあえずレモンサワーね。」
「俺は日本酒、ひやでもう一杯!コップで!」
すでにだいぶ飲んでいる様だ。
「大丈夫か?」
言いながら、カウンター席のPの隣に座る。
「ああ。飲んでるんだが、酔わないんだよ。なぜか。」
口調は軽いが、表情は暗い。
「酔いたいのに、な・・・」
そう言ったきり、空になったグラスを見つめて黙り込む。
そこに注文した酒が届いた。
ライブの成功を祝って乾杯、とも言える空気ではない。
俺は黙って一口飲んで、意味もなくグラスを振ってみた。
グラスを見つめたまま、春香Pが口を開く。
「春香に、告白された。」
「そうか。」
多少の動揺はあったが、予想の範囲内だ。俺は平然と応えたつもりだ。
「どうしたか、訊かないのか?」
「これから話すつもりなんだろ?」
「ああ・・・」
酒を手に取り、グッと一口飲み込む。はあ、とため息。
「振った。春香のことを。思いっきり、な。」
言い終えると、残った酒を一気に飲み干した。
俺は黙って、自分の酒をもう一口。
「それも、まるでデリカシーのない言葉で、だ。お前が前に、ここで言ったことが、ふと頭に浮かんでな。」
「俺の?」
「そうだ。『ヤバい意味じゃないだろうな?』って言ったんだよ。それをそのまま春香に返したんだ。」
思い返してみる。そんなことを言った様な気もする。
「はっきりと、そういう事はまずい、そんなつもりはない、って意味だったんだが、それにしても、ひどい
言い草だったと、自分でもそう思う。でもな・・・」
またしばらくの沈黙。
「でも、そうでもしないと、俺自身が、春香の事を拒絶しきれなくなりそうだったんだよ。」
言うなりグラスを持ち上げて、カウンター越しに、身振りで酒をもう一杯頼む。
「俺、はっきりわかった。俺は春香が、世界中の誰よりも、何よりも、大事だったんだ、って。」
やってきた酒をまたあおる。
「でも、やっぱり、春香を、親御さんを、周りのみんなを、裏切っちゃいけないんだよな。」
「ああ。お前はえらいよ。大したヤツだよ。」
心の底からそう思った。
「そうか!そう言ってくれるか!ありがとう・・・ありがとう・・・」
Pは安堵したのか、一気に酔いが来たらしく、いきなり泣き出した。
「春香ぁ・・・ゴメンよ、悲しませてゴメンよ、春香ぁ、春香ぁあああ・・・ううっ・・・」
互いに思い合う二人が、別れを迎えた夜だった。
244:春香エンジェル 第12話
10/02/15 00:26:58 BHTMz03i
それからしばらく・・・
春香さんが休養していることもあって、専属スタッフとしての仕事を失った俺は、どこかの神殿やギルドよろしく
社長室に出向き、ジョブチェンジを願い出た。
希望のジョブは、プロデューサー。
「うむ。いいねえ、どんどんやってくれたまえ!」
例によって、あっけなく受け入れられた。
「では、プロデュースする女の子を選んでくれたまえ。」
「社長、実はその件でちょっと。」
「なにかね?」
「春香さんが、そろそろ新たにまたアイドル活動を再開するそうですが、彼女をプロデュースさせて頂くことは
できないでしょうか?」
「ううむ・・・天海君か・・・。」
社長が珍しく即断を避ける。
「もしかして、すでに次のプロデューサーが決まっているんですか?」
「いや、こちらとしては、問題はないのだが・・・実は彼女は、今度の活動ではプロデューサーは必要ない、
とこう言ってきているのだよ。」
「え?そうだったんですか?!」
「うむ。天海君も、今や押しも押されぬトップアイドルだ。こちらとしては、プロデューサーがいた方が、
なにかと都合がいいのだが、彼女の意向を無視するわけにもいかない。そこで、だ。」
「はい?」
「君が彼女をプロデュースしたいと言うのなら、彼女自身に、君から了解を取ってもらえないだろうか?」
「僕自身から、ですか?」
「そうだ。事務所としては、彼女の意向を聞いている以上、強制するわけにもいかない。あくまでも、彼女が
納得した上でプロデューサーを付けたいと思う。」
「そういうことですか。・・・わかりました。」
「そうか!天海君は、明日久しぶりに事務所に来るそうだから、くれぐれもよろしく頼むよ!」
翌日。
俺は、多少緊張しながら、春香さんが来るのを待った。
やがて・・・
「おはようございます!」
聞き覚えのある、天使の様な声が事務所に響いた。まごうことなき春香さんの声だ。
「春香さん、おはようございます。」
「あ、スタッフさん。おはようございます。」
ぺこり、と頭を下げる。
「ところで、春香さん、ちょっと話があるんですけど、あちらの会議室の方に来てもらえませんか?」
「え?はい。」
「・・・ということなんだが。」
「じゃあ、あなたが私の新しいプロデューサーさんですか?」
「春香さんさえよければ、だけどね。一応、春香さんが今後プロデューサー抜きで活動したいとは聞いて
いるんで、春香さんが了解してくれることが条件になってるんだ。」
「私が、了解すれば・・・ですか・・・」
春香さんは、ちょっと悩んだ風を見せた。
しかし、それも一瞬で、すぐにニコッと春の花の様な笑顔を咲かせる。
世界を光で満たす、天使の笑顔だ。
そして、世界に彩りを与える天使の声で答えた。
「絶対イヤです♪」
/Fin.
245: ◆bwwrQCbtp.
10/02/15 00:33:11 BHTMz03i
以上です。
人がこの世で最後に見る物は、自分を迎えに来た天使の笑顔であるそうです。
とかなんとか言って、ラストが書きたかっただけだろ、と言われたら、きっとその通りです。
感想とか頂けたら幸甚です。
それでは、次回作、春香が三人家にやってきた、でお会いしましょう(ウソ)
「プロデューサーさんがプロデュースするのは、このHD画質、60fpsの滑らかな動きで
ビジュアルバッチリの、この箱春香ですよね!」
「違いますよね。この、どこでも一緒にいられる、携帯性バツグンの、SP春香ですよね?」
「うーん、でもそれって、ゲーム機本体の特徴で、別に本人には関係ない気が・・・」
「アケ春香は黙ってて!!」
246:創る名無しに見る名無し
10/02/15 00:51:14 XAvR/Sw1
長文投下乙です
主役の彼に結構感情移入してたので、春香ともくっつかないラストは衝撃的というかやっぱ少しショックだった
春香シナリオでどうにも回避できない部分に正論から突き進んで、第二の春香Pになれるのか
もしくは彼がPに名乗り出ておいて、春香の元に最初のPを呼びよせてやるのかと思ってた……
247:創る名無しに見る名無し
10/02/15 01:09:10 g3wa0bik
>>245
ある意味相変わらずなほどのみなと節の炸裂っぷりに、リアルタイムで書き込まれていくのを追いながらニヤニヤしっぱなしでしたw
長さの割にちょっと文が淡泊なのが正直気に掛かるところではありますが、その分サクサク読めるのも事実。
ただこの辺り、これだけの長さになるなら文章辺りの「読み込む」重さはもう少しあってもいいんじゃないかな、と。
あるいは、一話一話の軽さにこだわるなら一話辺りの完結性というか、それ一つだけで読んでもワンエピソードとして
成立させてみるとか。
あるいは、骨組みを残して全体の話を整理して、ちょっとほろ苦系のシリアス話にも・・・
って、ラストシーンがあれじゃ、さすがに無理かw
まあどんな方向性にしろこの話を素体にグレードアップは図れるのでは、と思います。
なんてーか「春香が家にやってきた」の、ある意味逆ですね。もちろん設定的にスタッフ氏は外側から来た人じゃないのですが
視点的にはそういうメタなのを充分持ち合わせているというか。あるいは、L4Uのファン代表がそのまま入社したようなというか
そういう路線からで「名も知れぬ765プロの裏方」を書いてみた、というのは結構面白い試みかも。
そして「ヤバい意味じゃないだろうな?」の合理的解釈として、まあこういうのもこれはこれでありかなーと。
裏でそんなことがあったのについては春香自身は気が付いてなかったのだろうとは思う・・・のですが、
見事の自分の仇を討った格好のラストシーンは、正直春香らしいとは言えないけども、吹き出しました。
ま・・・まあ、「プロデューサーさん、と呼びたいのはあの人だけ」と決めちゃったんだよ、きっと。ツヨクイキロw
・・・ところで、さっきは冗談めかしましたがほろ苦シリアス路線、結構マジメにイケると思うんですよね。
メタとギャグを整理して、心理描写と文章を煮詰めれば、基本構造を残してでも割と。
まあ、そうでなくてもちゃんといい話としてまとめてあげてもよかったかな、とも思いますが
その辺りは長さに関係なくあくまでもショートギャグ路線にこだわるか、それともハートフルコメディ路線に
ここまでやったんだからと未練を持ってしまったか違いと言われてしまえば、その通りかもしれず。
ただ、「プロデューサーに惚れてしまっている春香への横恋慕」っていうのは結構掘り下げ甲斐のある素材とも思えますし
また機会があったら向き合ってみて欲しいかな、と。
え、次回作は三倍春香さん?w
・・・それだったら、出てくるんじゃなくて、ディスプレイの中から話しかけるんでもありかなw
「うう、ひどい~」
「さあプロデューサーさん、デートですよデート! PSPごと私をお外に連れ出しちゃって下さい!」
「L4Uでならライブとかできますよ、髪の毛だってさらふわなんですよ!」
「ライブトイエバHomeデスヨ! PLAYSTATION Homeニハ本体購入ダケデ参加デキマス。今ナラ薄型出テマスヨ!」
「ほめ春香さんは黙ってて!」
・・・お粗末様でした
248:創る名無しに見る名無し
10/02/15 01:19:58 vQzV86Qb
>>245
春香の「絶対イヤです♪」に込められた思いは
「私が待つのはただ一人」なのか「もう恋なんてしない」なのか……
「親から一人娘を預かる大人」にして「一人の少女に好かれる男性」である
Pに前者を選ばせた彼を下心も含めて責める事は出来ないけれど、
あわよくば後者に納まろうってのは少々都合が良すぎたんじゃ無いかなぁ。
結局、全員にとって苦い結末になったけど
春香とP、そして主人公の彼が皆幸せになれる続きがある事を願いつつ感想とさせていただきます。
あと、自分はアケ春香さんの筐体(いえ)に通わせて頂きますw
249:創る名無しに見る名無し
10/02/15 01:39:53 g3wa0bik
>>248
てか、なんかみんなやたらはえーやw
冷静に考えると、こんな感じでなんつーかかなりドロドロとしたナニカになってしまって
それはそれで面白いのですけどもギャグ路線を選んだためによく言えばあっさり
悪く言えば心情面での掘り下げ不足の感があるのは確かですな
ちょっと書き損ねた部分ですが、なんのかんの言ってこういう話を書いても自分で創作した存在である
「主人公の彼」にあまりいい目というか、都合の良い目を見させすぎないのはみなと節の特長といって
いい部分だろうと思います。
春香が家に~でもそうでしたが、そういう部分であんまり彼に都合が良すぎると、しらけてしまう部分もありますし。
仮に巧いこと後釜におさまったとしても、最後の最後には取り持つ方を選んでしまうだろう、
そういう雰囲気が書き口からも感じ取れるのが、ある種読んでいての安心感にはつながっていそう。
・・・ただまあ、これはある意味では難点なのかもしれないですけどね
250:創る名無しに見る名無し
10/02/15 04:50:14 Ct7Pk1gL
>>245
筆致の軽やかさで重いテーマもするする最後まで読ませてもらえました。
春香さんの胸中を察するに、そしてたぶんたまたま出来上がってしまった因果応報の構図を思うに
重苦しい方向に書き進めようとすればいくらでも可能な題材かもしれないのですが
この筆致で叙述されることでむしろ「心の中の苦味」がしっかり残るな、と、そんな風に思います。
いや、単にあなたの作風のファンだってだけなのかもしれませんがw
251:創る名無しに見る名無し
10/02/15 08:39:57 AV3Gz1oF
きっきみたち>>245がなに投下するか知ってて感想書いて待ってたんじゃあるまいな?w
楽しく読ませていただきました。
みなと節って感想がありましたが超同意。「春香とP」ってセットはどうやっても変わらないん
ですよね、結局。
主人公の彼はPに耳打ちをした段階でもう(いや、たぶん初呑みの時ですらもう)自分の想いが
成就することはないと判っていて、それでも春香のために行動することを選んだんですね。
なんて言うんだろう、『ゲームキャラクターのPとプレイヤーである自分が別人だと解釈して
いるプレイヤーが、ゲームキャラクターである春香に惚れた状態』?
たぶん彼は今後も765プロで裏方とかやりつつ、春香とPの行く末を見届けた後、ようやく
誰かのPになるんではないでしょうか。その時に彼のトゥルーエンドが来ればいいですね。
またの投下をお待ちしております。三人春香でも全く問題ないですがw
252:創る名無しに見る名無し
10/02/15 10:30:38 RAMOtI4e
お話のための人物配置とその演出で、これはシリアスじゃないから重く考えずに読んでね、
でないとストレスがマッハで危ないって伝わってきて、最後まで読めた。
「読み手が危なげなく危険な橋を渡るSS」と表現したい。
難を言うと、そうだとしても語り手の彼のセリフの口調がちょっと荒い印象。
Pとのやりとりのセリフには、対等な立場の口調にいたるまでの変化にグラデーションをつけると…と、思ったけどどうなんかな。
キャラがPに多少被っていることと彼が語り手でもあるので、彼だけ作りこんで喉越しをよく、
というのは逆に言えば他のキャラの違和感を浮き立たせてしまうのかな。
とすれば、このスタッフ君はこれでいいのかもしれない。
あと、オチが素敵でした。
253: ◆bwwrQCbtp.
10/02/15 17:24:07 qiPoduQF
早い、早いよ!
スレ開いて、てっきり続いて誰かが短編投稿したのかと思ったよ!
しかも長いよ!
ありがとうございますありがとうございます。
個別にレスしたいところですが、そうするとかぶるので、ちょっと全体的に。
最終話の主人公の心情は、あえて省きました。
決意に至るまでに、葛藤もあったかもしれないし、最初から決めてたのかもしれない。
また、そう決めた理由も、なんとなくなのか、譲れないものがあったのか、
Pを支援する気だったのか、略奪する気だったのか、
春香がある程度の年齢になるまでの時間稼ぎを引き受ける気だったのか、
はたまた、チーム春香の一員としての自負がそうさせたのか、
あわよくば、くらいの下心はあったのか、またそれはどの程度だったのか、
何にせよ、春香とPの裏事情を知っていたのは彼だけなので、
とにかく第三者が新たなPとなることだけは許せなかったのか…
全てひっくるめて、読む方におまかせしました。
やはりここの解釈は、人によって幅があるようで、むしろ良かったと思います。
で、ここの解釈次第で、最後の春香の行動も、当然とも取れるし、
または、Pとの繋がりを保つフラグを根元からポッキリへし折ったとも取れる。
しかし、そこで>>248の「もう恋なんてしない」は想定外でした。
そう考えると、旧チーム春香との縁を意図的に切ろうとしてるとも取れますね。
新鮮でした。
あと、この主人公、結構仕事は真面目にこなす人間なので、
今後は自分のPという社内の立場に向き合って、意外と普通にPになりそう。
そして、自分では人にヤバい意味とか説教しておきながら、美希のPになって、
中学生相手にノンストップでフルスロットル、ジェットがあるフライト、
無人島バカンス簡単にできちゃうの、とかなったら面白いなあ、とか…
…って、まるで他人事ですがw
ともあれ、とにかく感想ありがとうございます。
まだの方もぜひお願いしますw
254:創る名無しに見る名無し
10/02/15 17:59:21 UALwE98c
>>245
本文12レスを要しながらすごく短時間の間にこれだけ言いたいこという人が
あらわれる、というのが今回の一番の特徴か
おそらく文章そのものがとても消化がよかったのであろうが、よく言えば
わかりやすい文と言えるが悪く言えば薄かったとも評することができそう。
消化が良かったことをよしとする評価についても内容的な軽さと文章的な軽さを
混同してしまいそうな点が少し気になる。
少々贅沢かもしれないがシリアスに傾きすぎずコメディとしての軽妙さは保ちつつ
もう少し出来事の羅列にならない噛みごたえのある文章を期待したい
255:創る名無しに見る名無し
10/02/15 21:36:35 fmujO6yE
>>254
確かにこの自然発生的な感想斉射モードは何事かとw
ひとつ気になるのは「他人の感想」にケチつけてるようにとれる書き方は慎んだほうがいいかなーって。
「お前の見方は間違っている、俺の見方が正しいんだ」っていう姿勢だと誤解されたら
どっちかが土下座するまで決着つかなくなる一番ヘタクソな喧嘩になりかねないもの……
256:創る名無しに見る名無し
10/02/15 22:25:13 g3wa0bik
>>248
さっきのでは、一番大事なことを言い忘れてました
・・・つまり、おさわりですね、お・さ・わ・り!w
>>253
じゃあ元スタッフくん現美希P(覚醒済)と元春香Pによるある夜の居酒屋とか
ちょっと見てみたい気配かも
>>255
みんな飢えてたのかなあ?
あと個人的に春香とプロデューサーの関係についてはそれぞれ一通りの考察は済んでて
土台があるとこから考えられた、というのも早さの一因だったり・・・ってのは考えすぎ?w
257:創る名無しに見る名無し
10/02/15 22:44:19 XAvR/Sw1
読んで即レスしたけど、やっぱりまだ微妙な気分が残ったので冷静に考えてみた
春香の「絶対イヤです♪」の台詞から感じた、どうにも後味の悪いショックは
「は?それってヤバい意味じゃないよな?」を初めて聞いた時の感覚に似ている気がした
深く意味を考えれば本人の意思も含んでいるけれど、考えなければ無神経な台詞とも取れるだけに、
主人公の心情を省いて受け手次第にした→春香の心情も受け手次第になった という流れ(>>253)は、
少し勿体なかったように思う
春香本人の心情が少しでもいいから見られる部分があれば、台詞の印象も少しは違ったのになと
「は?それって(ry」の台詞に対する同じようなもどかしさが残った
258:創る名無しに見る名無し
10/02/16 08:41:36 aEitbPDH
>「絶対イヤです♪」
俺はショックと正反対の印象もったな
お互いの感情以前にアイドルと担当Pの立場が
恋愛成就を不可能にすると身をもって知ったからこそ新たなPを断った、と読んだから。
アイドルでありたい。好きな人と結ばれたい。ふたつを叶えるためには
男性Pという同じ轍は踏んでなるものか!みたいな。
そう考えたら文末の「♪」を
「面接で宣言するほど想ってくれてるならまっすぐアタックしてくださいね、
その道(プロデューサー)は行き止まりですから♪」という、
もしかしてPルートの代わりに恋人ルート始まったんじゃね?的な
ポジティブ解釈してしまってえらくハートフルな読後感だったw
259:創る名無しに見る名無し
10/02/16 21:28:52 7X42fuxv
>>245
今度の春香はゲームの中の存在ということに自覚的なのか
260:創る名無しに見る名無し
10/02/17 20:27:51 dKbRl0k3
みんなに「歌がうまい」と誉め殺されるDS春香さんと
不思議な踊りでMPをガリガリ削るのに定評のあるほめ春香さんもお忘れなく
261: ◆bwwrQCbtp.
10/02/19 00:16:41 fk3bllIY
一段落したと思われますので、あらためてお礼にあがりました。
たくさんの感想、ありがとうございます。
頭を冷やして考えてみれば、感想がたくさん、しかも早く寄せられると言うことは、
不満や要望も多いと言うことも意味していると言えるでしょう。
その点は真摯に受け止めたいと思います。って紳士に受け止めるとかどういう変換(ry
いつも、だいたいそうなのですが、今回特に淡々と軽い文を心がけました。
最大の理由は、オリジナルキャラを配した導入を受け入れられ易くするために、
軽くコミカルにするのが最もやりやすく確実と思えたからで、
そう入った以上は、全体を同様のタッチにしました。
ラストは最初から決まってたこともありますし。
一応、イメージとしては「アイドラの脚本」という感じがありました。
主人公一人称語り現在進行形の形式も、そこに根ざしています。
しかし、俺の文章からメタとギャグを抜いてしまったら、
春香からリボンを外すようなものじゃないかとw
それに、たとえどれだけ主人公の心情を描写したとしても、ラストが決まっている以上、
間違っても春香の心情を描写することは、少なくともこの作中においてはあり得ません。
ただ、そういう心理描写を細かくするのも、挑戦してみたいところではあります。
まずは、甘々春香を目指したいと思いますw
ところで、前々スレで、オリジナルキャラに関する議論がありましたが、
その中で「オリキャラメインの話を絶不調執筆中」と言ったのは俺ですw
(もう一人オリキャラメイン執筆中と発言したのは、
次のスレで快作「ボクノメガミ」を発表したレシPかと思いますが。)
今、あらためて見てみると去年の6月、って8ヶ月前・・・
当然、書いていたのはこの話ですから、絶不調にもほどがありますって。ねえ・・・
262:島原薫 ◆DqcSfilCKg
10/02/19 03:07:26 ulZl7gQu
前作へのご感想、まことにありがとうございました。島原薫です。
今回も投下いたします。
タイトルは『花は降り降り』。メインは真で4レス使用。若干、オリキャラが登場します。
投下後終了宣言+前作レスへのお返しです。
263:花は降り降り(1/4) ◆DqcSfilCKg
10/02/19 03:08:12 ulZl7gQu
鼻をすする音に過剰に反応してしまうのを、真は自覚していた。
黒と白のコントラストはけして気持ちが華やぐものではないし、静々と会場を後にする人々に頭を下げるのもとうに飽きてしまっていた。
両親の目を盗むように後ろを振り返ると、ぼんやりと空を眺めている祖母が一人、椅子に座っている。
親に何度も促されたけれど、結局、彼女にかける言葉はまだ見つかっていない。
大往生でした。
親族、弔問客に向かって挨拶をする父の目は潤んでいたと真は記憶している。彼の涙を見たのはこれで二度目だった。
真が引退を決め、両親にその旨を伝えた日、最後の最後までアイドル活動に釈然としない態度を取っていた父は「よく頑張った」と涙ながらに褒めてくれたのだ。
つられて家族全員で大泣きしたのは恥ずかしくもあり、真にとって忘れられない思い出となっている。
弔問客も一段落し、葬儀屋と話し合っている両親から一人離れ、真は会場の外へ出た。
秋口にめっきり冷え込んだのが悪かったらしい。
父よりも遅く帰宅した真は、おしゃべり好きの母が聞き慣れない言葉を口にしながら電話口で体を小さくしていたのを強く覚えている。
父は寝室に引っ込んでいるのか姿が見えず、何度も頭を下げて受話器を下ろした母の顔は今まで、見たことのないものだった。
通夜の時には気づかなかったけれど、鮮やかな紅葉を垂らした木々が会場を周りを囲んでいた。
昨日の早朝から日野の山中まで車を飛ばしたのだけれど、出来ればピクニックとかでここに来たかったと真は思う。
火葬場もセットになっている会場施設の他に建物と呼べるようなものは何もなくて、立ち並ぶ煙突から煙が上がるたびに真は体を震わせる。
あの煙が何を燃やしているのかなんて、くだらない想像を首を振って隅に追いやった。
会場入り口から顔を覗かせた母が手招きしているのを見て、真は久しぶりに履いたスカートに違和感を覚えながら会場へと戻った。
受付左手に伸びる廊下を進むとすぐ、告別式の会場が見える。
外の紅葉にも負けないくらい色鮮やかな花の祭壇は、真の知り合いのデザイナーがデザインしてくれたもの。
白木の祭壇が見えないくらいに花に囲まれたそれは弔問客からの受けもよく、
「綺麗で良かったねえ」と涙ながらに祖父に話しかけるご友人が印象的だった。
264:花は降り降り(2/4) ◆DqcSfilCKg
10/02/19 03:09:15 ulZl7gQu
間もなく、最期のお別れが始まるという。
昨日も死装束を着た祖父に末期の水を取ったりと、"お別れ"なら何度も済ませた。
葬儀スタッフが抱えたお盆いっぱいに摘まれた花を手に取り、親戚に促されて祖父のお棺の前へと歩み出る。
口内に綿でも含ませているのだろう、思ったよりもふっくらとした表情の祖父の上に花を降らせる。
菊に百合、蘭、カトレア、かすみ草。花に埋まっていく彼を、真は涙も流さずに見つめていた。
故人の手前、「しっかりしたお子さんね」と、前向きに受け取ってくれるのはありがたいけれど、正直、真はこの老人のことをあまり知らないのだ。
父の職業以外はごくごく一般的な家庭に生まれたはずだと自覚する真はただ一点、父方の祖父母とあまり面識がないのを事あるごとに不思議がっていた。
父に聞いても、上手くはぐらかされるばかり。母方の祖父母とは毎年、嫌というほど顔を合わせていた分、気になっていた。
最近になって真は知ったのだけれど、父親と祖父は仲が良くなかったらしい。
プロのドライバーなんて危険と隣合わせの仕事はおいそれと許してくれる筈もなく、強情な父のこと、勘当同然に母と一緒になったという。
当時の苦労をさも世間話のように聞かせる母を見ては、真は口に出さないながらも彼ら二人の強さと愛情を感じた。
では、親子の愛情はどうだったのか。祖父は父のことをどう思っていたのか。
喧嘩別れしたと言っても、もう十分すぎるくらい年月が経っているのも事実。
まだ年端も行かない小さな男の子が年若い父親に抱えられながら、祖父の顔の横に蘭の花を置いたのが最後で、
その間も父は神妙な顔で祖父の顔を見つめていた。
告別式を終え、焼き場へと移動するために叔父の車へ乗り込む。
父親はしきりに自分が運転すると言っていたが、すぐ歩いても行ける距離で事故に巻き込まれたくないと、
母が苦笑交じりに諌めることで場は収まった。
結局、父はスタッフが運転する車に祖母と一緒に車に乗り、真は母と一緒に叔父の車に乗った。
「お婆様とはもう話した?」
「ううん」
位牌を手にしたまま、真は頭を振る。
ただでさえ面識もあまりないのに、この場で明るく振る舞うこと自体、真には非常識に思えた。
気丈に振舞っている、という見方も出来るけれど、今、父や母のように悲しんでいるかというとそうでもなくて。
嘘をついているようで嫌だった。
「元人気アイドルにも難しいのね」
「それとこれとは話が違うよ」
「そうね」
265:花は降り降り(3/4) ◆DqcSfilCKg
10/02/19 03:10:35 ulZl7gQu
以前、母が話してくれた中で、父と一緒になる時に両親から頭を下げられたという話を真を思い出した。
馬鹿げた夢を見ている息子を許してほしい、と。
結婚にやんわりと反対していた母の両親まで巻き込んだという騒動の顛末は母の一声だったと言う。
愛しているから。
その一言に父の両親は頭を上げ、反対していた母の両親も遂には折れた。
真の家系は女が強いと言われていたがなるほど、この母こそがその強さの証なのだと真は合点する。
『でも、真はお父さん似よね。押しに弱いし』
『うるさいなあ』
そんなやり取りまで思い出して、幾分か軽くなった気持ちを外に吐き出す。
もう車は火葬場に着き、前を走っていた車から祖母と父が出てくる。
先に出ていた霊柩車からお棺が運び出され、やけに無骨に造られた銀色のドアの先へと祖父だけが行ってしまう。
もうこれで、戻ってくるのは祖父だったもの。
扉が閉まるまで、祖母はしっかりと前を見据えて祖父を送り出していた。
火葬は大体、一時間強で終わる、と父から説明された。
その間、手持ち無沙汰とはまさにこのことで、真っ黒い集団はうろうろと待合用のロビーで時間を過ごす。
「知ってるか、真。戻ってくる時な、骨は大体、バラバラになってんだけど。あれって焼いてる最中、釜の中でかき混ぜるんだとさ」
なんでいきなりこんなことを言い出したのか分からないが、苦い顔の真に父は楽しそうだった。
先ほどまでベソをかいていたくせに、とは言わなかったけれど、いつもの父に戻っていて真は内心、安心した。
告別式から立ちっぱなしが多かったのでいい加減、座りたかったので壁に沿って置かれているソファへと移動する。
母は親戚と話に夢中で、徐々にではあるけれど日常が戻りつつあることを真は感じていた。
明日、学校に行ったらどうしよっかな。
266:花は降り降り(4/4) ◆DqcSfilCKg
10/02/19 03:11:26 ulZl7gQu
葬儀だからとタンスから引っ張り出した黒のワンピースはこの季節には少し肌寒く、脚を擦り合わせる。
寒いか、と上着を脱ごうとする父を止め、また訪れた無言の時間。
壁の一面がガラス張りになっているホールの外は先ほど見た、山々の紅葉で染められている。
やや濁りのあるガラスなのか、少しぼやけることで鮮やかな美しさとはまた違う、交じり合った色味が何かを思い起こさせる。
まるでそう、涙でぼやけた景色のよう。
少しもどかしそうに、父から話し始めた。
「お父さん。お爺ちゃんと仲悪いの知ってるよな」
「うん」
「結局な、お互い強がっちゃって。お爺ちゃんと仲直り出来なかった」
「うん」
言葉が続かないのか、俯き、しきりに首を振る父。こんな父の姿はついぞ、見たことがない。
けれど、真の心中は驚くほど、静かだった。
お父さん、やっぱりお爺ちゃんのこと、好きだったんだ。
それだけで真の中でストンと、何かが終わった音がしてくれた。おそらくは始まるために、もう終わらせなきゃいけないこと。
真はソファから立ち上がると、父の前へと立つ。
こちらを見上げてくる父の顔はしょぼくれてて情けない、おじいちゃんの子供の顔だった。
そっと父親を抱きしめ、「父さん、大好き」と囁く。
しばらくして、胸の中で震える父の嗚咽が聞こえてくる。
いつから眺めていたのか、遠くで母も泣いていた。
「いくつんなっても泣き虫だねえ、しんちゃんは」
先ほどまで部屋の隅にいた祖母が真の前までやって来ていた。
「真ちゃんかい?」と、微笑む顔はとても若々しくてチャーミングだ。
きっと、お爺ちゃんもこの笑顔が好きだったんだろうなと、真は嬉しくなる。
はいっ、とホールには元気な声が響いた。
267:島原薫 ◆DqcSfilCKg
10/02/19 03:12:29 ulZl7gQu
投下終了です。お読み頂き、ありがとうございます
以下、前作へのレス返しです。
>>175
春香の突拍子の無さというか、春香の中の計算式やルールを殊更、大げさに出した作品でした。
ですので、自分でもその振り幅がなかなか難しいところだったのですが、好意的に受け取って頂いたようでありがとうございます。
あと、二行の部分は完全に視点固定を忘れてました。
>>177、182、184、185、186
確かにこの手の文章は書いてる本人が一番気持ちよくて、手落ちに近いものが出来てしまうのは私もまだ勉強不足かと思います。
何度もレス、ありがとうございます。
>>179
ストライクゾーン云々は「このキャラならこのラインまでなら大丈夫かな?」という意識で持って書いていることが多いので、
その意味で拡張的に捉えていただけるのはありがたいかぎりです。ただ、今回はあまりにいろんなものをすっ飛ばしてしまったなあ、
というのは正直なところです。ちーちゃんは常にシンジくんですよね
>>180
今回は>>181様が申していたように、インパクト勝負なところもあったので、エピソード等のステップを全部すっ飛ばしてしまいました。
>>179様のように肯定的に捉えて頂けてるようでなによりですが、実際に僕の今までの作品を知らないで読んだ方にはつらいなあ、というのも
僕自身、考えております。次作以降、課題にしていこうと思います。
>>181
キャッチーな百合というとまさにそういうイチャイチャしたもので、そっちにしとけば良かったなあ、とちょっとだけ思っている次第です。
まだまだ勉強不足でございます。
>>187
今までの僕の作品、というレベルまで考えていただけるのはとてもありがたいのですが、
今回はそのあたりのフォローをすっ飛ばした手落ちの方が、すんなりすると思いますです。
貴重なご意見、ありがとうございました。
それでは次回投下の際もよろしくお願いします。
268:創る名無しに見る名無し
10/02/20 02:40:29 FeucrbP6
>>267
なんともまたむずかしいところを・・・w
祖父が亡くなることをきっかけにしたいろいろという意味では以前の「愛の人」と同様の状況ですが
あちらが、祖父と伊織の関わりとその真意でもって祖父から伊織への想いについて語った話という印象なのに対し、
今回はもう一段緩衝を置いて「祖父と真一」を真の目から解釈させることによって「真一と真」を書こうとした
・・・というところでしょうか。
ただ気になったのが、「真が既に活動を終え、真一が一定レベルの理解を示した後」の段階での話であること
これが活動中の「夢を追う娘とそれに異を唱える親」の類型が通用する段階であれば、真一自身について
同じ立場を思い起こさせるという経緯で真の意志を考えさせる契機となったのであろう、的な
よく言えばすっきり収まった悪く言えばいかにもステレオタイプな、しかし「アイマスSSらしいアイマスSS」
となったのだろうと思います。
ところが、真一から真への意識云々については、アイドル活動という視点からのそれはもう既に一旦済んだ話と
なってしまっている。
さらに祖父が真自身にとっては心理的に縁遠い人物であると再三強調することで、作中の真の立ち位置を
おそらくは狙って当事者というよりも比較的醒めた目を持った観察者というものにしている。
つまりはこれ、メインは真でと言いつつもある意味では脇に置き、実質のメインは真一。
その上で彼を軸にした家族像的な方向を掘り下げてみたもののように思えます。
アイドルとそれを取り巻く人々というアイドルマスターの舞台装置とフォーマットは使いつつ
味付けて作り出そうという方向性はあまりアイマス的ではない・・・と言ってしまうと批判めいて聞こえますし
その辺りは自分の考え過ぎかもしれませんが、なんというかむずかしい方へむずかしい方へと攻めていくなあ、とw
物語としての読み応えと技法と情緒は堪能しつつ、そしてまた自分的にはありな方向性でもあるのですが
いろいろあり方を考えさせてみようというようにも感じられ、禅問答の如く、うーん・・・と頭を捻らされる
仕上がりになっている印象ですな。
まあ、もちろんそれはそれで面白いんですけども。
269:創る名無しに見る名無し
10/02/20 15:54:39 vgXmdaEX
>春香からリボンを外すようなものじゃないかとw
そんなの髪をヘアピンで留めてパジャマを着ればいいじゃないw
270:創る名無しに見る名無し
10/02/21 10:42:07 T7qHIzV2
>>267
とてもよく書けてると思うし、何が描きたかったかも伝わってきます。
ただ、何というか、寂寞感が…
父とは完全に分かり合えた真だけど、すでにアイドルは辞めちゃってて、
葬式の方にも事務所からは誰も顔を出した様子もなく、真が今は何をしてるか
という描写も全くないんですよね。まあ学校には行ってるようですが。
だから、彼…じゃなくて、彼女が、父と分かり合えてこの先、どんな人生を
歩むのかが、まるで展望できないことが、読む側に無力感を与える気が。
真が、我々の知らないところで知らない人生を送っていて、
そのまま我々の知らないままで人生を続けていくのだろう、という感じ。
ストーリーと相まって、この寂寞感が半端ないです。
狙ってるとすれば見事なんですが、個人的には、これはちょっとマイナスの
印象でした。もう一度読みたいと思う気が湧いてこない感じです。
271:霞のかかった夢の中で(1/9)
10/02/22 08:28:29 mLhz9CO6
前作、「やよいの食事手帳」に沢山の反応をいただき、ありがとうございました。
今回、3ヶ月振りに書きあがったので投下させて頂きます。
タイトルは「霞のかかった夢の中で」このレスとあとがきを含めて9レス程つかわせていただきます。
内容自体は鬱モノでは無いですが、秋月涼シナリオEエンド、
いわゆるりゅんりゅんENDの内容を含むので一応ご注意下さい。
272:霞のかかった夢の中で(2/9)
10/02/22 08:29:35 mLhz9CO6
「…なるほど、そんな事があったんだね」
「うん、とっても良い子だったから仲良くなれるといいな♪」
「それじゃあ、そろそろ時間だからここまでだね」
「来週もいっぱいお話しようね先生♪」
「うん、来週まで元気にしててね」
「はーい!」
今日は週に一度の先生とお話の日、私のアイドル活動であった出来事とか、
嬉しかった事や悲しかった事を全部先生に話す日なんだ。
二ヶ月位前に私がオーディションに連敗して倒れちゃった事があって、
アイドル活動でストレスが溜まったのが原因だから誰かに話してスッキリするようにって社長が紹介してくれたんだよ。
私の話を聞いてくれる先生はとっても美人で、私の話を何でも聞いて的確に答えを返してくれる凄い人、
いつか、私も先生みたいにキレイな女の人になれるかなぁ……?
あ、自己紹介がまだだったね、私の名前は秋月涼、今は普通の女の子だけど
いつかトップアイドルになって日本一可愛い女の子になる予定だよ、りゅんりゅん♪
「ねぇ涼、アイドル活動で何か問題は無かった?」
「ううん、とっても楽しいから何にも問題は無いよ、りゅんりゅん♪」
「そう、なら良いんだけど……」
先生と話すところから帰る車の中で私に質問してきたのは、私のいとこでトップアイドルの律子姉ちゃん。
やっぱりトップアイドルともなるとストレスが溜まるらしくて私と同じ位の時期にここに通い始めたんだって。
そして車を運転してるのは律子姉ちゃんのプロデューサーさん、
姉ちゃんに言うと真っ赤になって違うって言うけど、姉ちゃんが好きになった男の人だよ。
ちょっとだらしないところもあるけどカッコイイ男の人だし、姉ちゃんとはお似合いだと思うんだけどなぁ。
「なぁ律子、心配なのは分かるがあまり過保護にするのも良くないぞ?」
「いえ、確かにそうなんですけど、そのせいで涼が……」
「なぁに、私のお話?」
「ううん、大した事じゃ無いの、涼は気にしないで良いのよ」
「律子は涼ちゃんがまたストレスを溜めてないか心配なんだよ、大事な従妹だしね」
律子姉ちゃんは元々世話焼きさんだったけど、私が倒れてからは特に私に世話を焼いてくれるようになったんだ。
昔みたいにいっぱいお話出来るのはいいんだけど、なんだか私に悪い事をしてそれを隠そうとしてる時の態度に似てる気がする。
確かに倒れる直前の事は全然思い出せないし、それより前の事もなんだかぼんやりとしか思い出せないけど
それで生活に困った事は無いし、私はいつでも元気なんだけどなぁ……
「大丈夫だよ姉ちゃん、今回のオーディションでは友達も出来そうなんだよ」
「へぇ、どんな友達が出来たの?」
「桜井夢子ちゃんって言うの、とっても礼儀正しくて可愛い子なんだ♪」
「桜井夢子、どこかで聞いたような気がするわね……ま、友達が出来たのは良い事よね」
姉ちゃんを心配させないように明るい話を振ってみると、さっきまで曇っていた表情を元に戻して
私の話に乗ってくれる。うん、やっぱり姉ちゃんはいつもの表情の方が可愛い♪
そうして今日は姉ちゃんやプロデューサーさんとお話しながら家まで送って貰ったよ。
273:霞のかかった夢の中で(3/9)
10/02/22 08:30:18 mLhz9CO6
「すいませんっ!秋月さん!私……何かカン違いしてたみたいで……」
「もう、夢子ちゃんはおっちょこちょいさんなんだから♪」
私はそういって夢子ちゃんの額を軽く突く、夢子ちゃんがメールで送ってくれた会場変更が勘違いだったらしくて、
危うく遅刻で不合格になるところだったんだ。でも、誰にでもミスはあるし、これでチャラだよね?
「お?…いやいや、許してくれるんですか?」
「うん、何とか合格できたしね、次は私も夢子ちゃんみたいなキュンキュンなステージやりたいな♪」
「今時キュンキュンって……」
「夢子ちゃん、どうしたの?」
「……いえ、次もお互いがんばりましょうね」
「えへへへ♪頑張ろうね」
夢子ちゃんの歌、すごい上手だったし次は完全な状態で一緒に歌いたいな♪
「……それで、遅刻しちゃったけどなんとかオーディションには合格できたんですよ♪」
「うん、不合格だったらどうしようかと思ったけど良かったね」
「でも夢子ちゃんもおっちょこちょいですよね、オーディションの場所変更を勘違いするなんて」
「あれ、桜井さんは場所を間違えた訳じゃ無いんだよね?」
「うん、勘違いに気付いたけど連絡するのを忘れちゃったんだそうです」
「それは……ううん、なんでも無い、また来週ね」
「はぁい♪」
今日の先生、最後に何か言いたそうだったけど何だったんだろう?
誰にだってミスぐらいあるし、夢子ちゃんを責めるって訳じゃ無いと思うんだけど……
「ねぇ涼、アイドル活動で何か問題は無かった?」
「ううん、全然問題ないよ、ただ……」
「ただ?」
先日のオーディションの事はなんとなく言わない方が良い気がするし、違うことを相談しようかな?
「私の胸、まだ大きくならないのかなぁ。姉ちゃん、どう思う?」
「それは……」
律子姉ちゃんが言葉に詰まるのは、やっぱり私の胸が小さすぎるからなのかな?
私自身は余り気にした事は無かったけど、アイドルデビューするときに
社長から「真っ平らはまずい」って言われてパッドをつけるように言われちゃうくらいに私って胸が無いの。
「律子姉ちゃんくらいとは言わなくても、パッドが要らなくなる位は欲しいなあ、ファンの人を騙してるみたいで悪いもん。
それに、バレない様に他の女の子とは別に着替えるように言われちゃってるから、着替えるのも大変だし……」
一人で着替えるのは結構寂しいんだけど、愛ちゃんや絵理ちゃんにも秘密にしてるから一緒に着替えられないんだよね。
「涼ちゃん、成長には個人差がある物だし、そのうち大きくなるさ」
「プロデューサー!そんな無責任な事を言わないで下さい!」
言葉に詰まる律子姉ちゃんに代わってプロデューサーさんが答えてくれたら、姉ちゃんが急に怒鳴りだしちゃった。
昔から怒鳴る事は良くあったけど、最近は昔の怒鳴り方と何かが違う気がする、なんでだろう?
「まあ落ち着け律子。……涼ちゃん、そう言う訳で焦っても仕方ないから、間違っても豊胸エステとかサプリとかに手を出したら駄目だぞ?」
「ああ、そう言うこと……涼、あなたみたいに成長期の時期に変に大きくしようとすると悪影響の方が大きくなるから絶対に手を出しちゃだめよ?」
「そう言うものなの?」
「そう言うものよ。ま、大きくしたかったら規則正しい生活を送ることね」
「ふーん……」
雑誌でみた女性ホルモンとかを試してみようと思ったけど、姉ちゃんとプロデューサーさんに止められちゃったからやめとこっと。
274:霞のかかった夢の中で(4/9)
10/02/22 08:31:02 mLhz9CO6
「夢子ちゃん、私、なんとか合格できたよ、りゅんりゅん♪」
「そうね……」
「それにしても、あのステージ本当にすべりやすかったね、貰ったすべり止めもほとんど効果がなかったし」
「…………」
「夢子ちゃん?」
「あなた、まだ気付かないの?」
夢子ちゃん、私が合格した後からずっと険しい表情してたけど、今度は呆れたような顔に変わっちゃった。
「なに?何の事?」
「あきれた、本当にぜんぜん気がついてないのね……」
「私、何か見落としてる事とかあった?」
「そうよ、私がニセのすべり止め渡して転ばそうとしたこととか、あなたを遅刻させる目的で違う場所を教えたこととかを見落としてるわね」
「えっ……?」
「ここまできて気付きもしないのは流石に驚いたけど、このまま良い人のフリを続けるのも面倒だし教えてあげるわ」
夢子ちゃんの言葉は聞こえて来るけど、真っ白になった頭がそれを受け付けてくれない、私、どうしちゃったんだろ?
「私があなたに近づいたのはあなたをワナにはめるため、隙だらけで面白いくらい引っかかってくれたわね」
「…………」
「私がトモダチごっこをするために近づいたとでも思ってたの?この世界はいつでも真剣勝負、油断したあなたが悪いのよ、秋月涼」
「そんな……そんな……!」
「怒った?アタマきたなら仕返しでもなんでも、してごらんなさいよ」
「ひどいよ……う、うわぁぁぁぁぁん!」
ひどいよ、信じてたのに、友達になったと思ったのに全部ウソだったなんて……
そう思うと、自然に涙が溢れてきて止まらない、私はその場で泣き崩れちゃった。
「あ、あれ?怒らないの……?」
「うわぁぁぁぁぁん!ひどいよ、ひどいよぉぉぉ!」
「どうしよう、この反応は予想外ね……」
涙で滲んで良く見えないけど、夢子ちゃんは困ったような顔をしてるように見える。
「これじゃ完全に私が悪者に見えるじゃない、実際そうなんだけど……」
「うわぁぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁん!」
「桜井さん、秋月さんが泣いてるようだけど何かあったんですか?」
どうやら私の泣き声を聞いてスタッフさんの一人が駆けつけてくれたみたい。
「え、ええ、得意のダンスで実力を出せなかった事が悔しかったそうです、秋月さんには私がついてますからお気になさらずに」
「そうですか、それではお任せしてよろしいですか?」
「ええ、任せて下さい……秋月さん、ここじゃ迷惑になるから控え室に行きましょ?」
「うわぁぁぁぁぁん!」
夢子ちゃんはそう言って私に手を差し伸べてくれる、私は泣きながらその手をつかんで控え室につれていって貰った。
275:霞のかかった夢の中で(5/9)
10/02/22 08:31:36 mLhz9CO6
「うっ……ひっく……」
「そろそろ落ち着いた?」
「うん、なんとか……」
私達以外全員帰った控え室、一通り泣いてようやく落ち着いた私は夢子ちゃんと二人っきりになっていた。
「今までも何人かハメて来たけど、大泣きされたのは初めてだわ」
「夢子ちゃん、今までもって、他の子にも嫌がらせをして来たの?」
「そうね、何人かにしてきたわ」
「そんな、夢子ちゃんがそんな子だったなんて……」
「ま、犬に噛まれたと思って忘れなさい。探せば友達になってくれるお人よしも見つかるんじゃないかしら?」
「でも、夢子ちゃんもお人よしだよね?泣いちゃった私の事、ちゃんとなぐさめてくれたし」
「まあ、放っておいて私の事を話されても面倒だしね」
夢子ちゃんは口ではそっけないけど顔を少し赤らめて目をそらしてる。もしかして根っからの悪い子ではないのかな?
「ねぇ夢子ちゃん、そういうの、もうやめにしない?」
「本当、おめでたい頭をしてるのね、こんな目にあっても私を説得するつもり?」
今まで戸惑ったような顔だった夢子ちゃんの顔に、いじわるな笑みが戻って来たけど……
「ほら、アイドルがそんな顔しちゃダメだよ?」
「……へ?」
「そんないじわるな顔じゃなくてもっと嬉しそうに笑わないと!こんな感じでさ、りゅんりゅん♪」
「あなた、私を説得するんじゃなかったの?」
「そうだよ、アイドルは人を楽しくする仕事なんだから自分も楽しまないとだーめ、嫌がらせで勝っても楽しくないでしょ?」
そう、アイドルはとっても楽しいお仕事、自分で思いっきり楽しんで、それでファンの人たちにも楽しんでもらって
その声援を聞いて自分ももっと楽しくなれるお仕事。なのにそんないじわるな顔をしてたら楽しくなくなっちゃうよ?
「楽しい楽しくないは関係無いわ、私はどんなことをしても勝ちたいの。遠い先の目標を目指してね」
「目標?」
「そうよ、目標……せっかくだし特別に教えてあげるわ。『オールド・ホイッスル』よ」
「オールド・ホイッスル……」
「知ってるでしょう?天才プロデューサー『武田蒼一』が仕切ってる、日本最高の音楽番組よ」
「うん、私は最近見るようになったけど、武田さん、カッコイイよねぇ」
武田さんはどんなときも冷静で表情を崩さないけど、近寄りがたい感じは全然しなくて
私みたいな普通の女の子にもわかりやすい言葉で大事な事を話してくれる、とってもカッコイイ人なんだ。
「何かミーハーっぽいわね……ともかく、その『オールド・ホイッスル』に出演する事が私の目標よ」
「あれ?今までアイドルが出たのって一人だけじゃなかった?」
「ええ、アイドルが出演するのは厳しいわ……でも私はそれに出たいの!その夢をかなえるためならなんだってする!」
「アイドル活動が楽しくなくても?」
「ええ、アイドル活動は夢をかなえるための手段、楽しいも楽しくないもないわ!」
「そっか、夢子ちゃんはそんな夢をもってたんだね……」
夢子ちゃんは、夢に向かって本当に一生懸命なんだね、
嫌がらせを認める気にはなれないけど、やっぱり根っからの悪い子じゃないみたい。
276:霞のかかった夢の中で(6/9)
10/02/22 08:32:45 mLhz9CO6
「さて、私の夢は話したし、あなたの夢も聞かせてもらおうかしら。あなたの目標は……なに?」
「私の目標?」
自分の夢を語った夢子ちゃんは翻って私の夢を聞いてくる。
でも私の目標はハッキリしてる、夢子ちゃんの夢にも負けないくらい大きな夢がある!
「まさか、なにもないわけじゃないでしょ?」
「もちろん!私の目標は……トップアイドルになって、日本一可愛い女の子になること!」
「……は?」
夢子ちゃんが力なく聞き返してくる、良く聞こえなかったのかな?
「だから、トップアイドルになって日本一可愛い女の子になることだよ?」
「ええっと……日本一可愛い女の子になることが目標なの?」
「うん!アイドルって可愛い子が集まった世界だから、その中で一番になったら日本一可愛い女の子って事になるでしょ?」
夢子ちゃんは不思議そうな顔で聞き返してくる。トップアイドルが日本一可愛い女の子って常識だと思うんだけど、私、そんなに変な事を言ってるのかな?
「まあ、その理屈はわからなくはないけど……」
「えへへへへ♪そうでしょ?」
「いまどき小学生でももっと具体的な目標をもってるんじゃないかしら……でも、出任せや冗談でいってるわけではなさそうね」
「もちろんだよ、私はみんなを楽しくさせる日本一の女の子を目指してるんだよ♪」
「で、私を説得しようとしたのも、日本一可愛い女の子になるのに必要な事なのかしら?」
「うん、周りにいるみんなを楽しく出来るくらいじゃないと、日本一可愛い女の子なんで言えないからね。りゅんりゅん♪」
そう、ステージの前だけで可愛くてもそれは本当の美少女じゃ無い、
いつでも周りのみんなを幸せにできる魅力を持ってこそ本当の日本一の美少女だって私は思う。
「……秋月涼、あなたなかなか面白い夢を持ってるのね。ロクな目標も持ってない甘ちゃんだとおもってたけど見直したわ」
「そんな、えへへへ♪」
「でも、私の夢の邪魔をするなら容赦しない、次の審査ではあなたを真正面から潰してあげる」
「えっ……」
「それが嫌ならレッスンを欠かさないことね。私は一日も怠けないわよ?」
「……うん!私も夢子ちゃんに負けないように頑張るね!」
その後、夢子ちゃんはさっさと帰っちゃって話は終わっちゃった。
夢子ちゃんは真正面から潰すって言ったけど、裏を返せば嫌がらせは使わないって事。
完全に改心したとは思えないけど、私の言葉、少しは届いたみたいで良かった♪
277:霞のかかった夢の中で(7/8)
10/02/22 08:33:22 mLhz9CO6
「……そんな事があって、明日は夢子ちゃんと勝負する日なんですよ♪」
「そっか、そんな事があったんだね」
「私、夢子ちゃんとはいい友達になれる気がするんですよ。えへへへ♪」
「話を聞いてる限りだと、根っからの悪い子ではなさそうだし、友達になれるかもしれないね」
「はい♪ところで、夢の話をしてて思ったんですけど……」
「なにかな、話してみて?」
私は夢子ちゃんの話している内にどうしても気になった事を聞く事にした。
「私、どうして自分が今の夢を見るようになったか全然思い出せないんですよ」
「ふむ……」
「思い出そうとすると昔は全然違う夢を見ていたような気がしてきて……」
「それは無理に思い出そうとしたらダメ!」
「えっ?」
先生が強い口調で窘めてくるなんて珍しいなぁ、なんでだろ?
「思い出せない事を無理に思い出そうとすると秋月さんには刺激が強すぎるの、絶対無理はしないで」
「そうなんですか?」
「うん、思い出す時がくれば自然に思い出せるから、今は気にしないようにしてね?」
「…………」
「そうだ、別の話をしましょう、私、学校の事も聞きたいな」
「そうですね、学校では……」
気にしないようにと言われても気になるものは気になるけど、先生と色々お話する内にあまり気にならなくなっちゃった。
はぐらかされた気もするけど、先生も時が来れば思い出すって言ってたし、大丈夫だよね?
「ねぇ涼、アイドル活動で何か問題は無かった?」
いつものように律子姉ちゃんが聞いてくる。
今週は問題があるか無いかと言われたら問題はあったと思う。
夢子ちゃんの事もそうだし、自分の夢のルーツが思い出せない事もそう。
だけど、夢子ちゃんとはきっと友達になれると思うし、ルーツが思い出せなくても夢への思いは強くなった。
夢に向かって友達と競い合いながら進める、こんなに良い環境はそうそう得られないんじゃないかな?
このまま進めば本当に日本一可愛い女の子になれるかも♪だから私はこう答えるの、
「ううん、とっても楽しいから何にも問題は無いよ、りゅんりゅん♪」
278:霞のかかった夢の中で(8/8)
10/02/22 08:34:05 mLhz9CO6
以上です、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
発想としては例のりゅんりゅんENDでは涼がアイドルをやめた様子は無いのでEエンドの涼(以下涼りゅん)が
そのまま涼シナリオを進めていったらどんな感じになるのか、と言う発想です。
本編中での涼りゅんの精神状態はは見方によって色々変わって行くと思いますが、今作での解釈としては
「自分を完全に女だと思い込み、日本一可愛い女の子になる事が夢になってる以外は基本的に涼のまま」としています。
作中で言っている「アイドルは人を楽しませる仕事だから自分も楽しまないといけない」と言うのも実際に涼の言う台詞にあったりします。
また、意外にも涼と涼りゅんは書き言葉ベースではほとんど同じ口調だったので、違いが出せているかどうかが少々不安です。
話しがゴチャゴチャし過ぎると思ったので愛や絵理、石川社長やまなみさんは一切登場させず
「ドキドキ?キュートなライバル登場」をなぞる形で書いたのですが話として薄味になりすぎてないかと言うのも気になります。
上記の点も含め、拙い点は多々あると思いますので気付いた点が有れば遠慮なく指摘して頂ければ幸いです。
でも、はじめてだから優しくしてね……
補足説明:涼が週一で通ってる先生は要するにカウンセリングの先生です。
比較的精神は安定していてもストレスが溜まればどうなるかわからないので定期的に見てもらってる感じです。
律子も同伴してるのは自責の念から精神的に不安定になってるのでカウンセリングを受けていると言う事です(直接関わった訳では無いですが……)
279:創る名無しに見る名無し
10/02/22 12:57:05 g2TlDkcc
>>278
整合性もよく取れてるし、キャラがよく描かれてると思います。
特に夢子の初期キャラがいい再現性で味を出してるなあ、と。
丁寧な中身の整合性にも唸らされました。
ただ、公式が、今後への不安などを全て放り出してネタとして終えた部分、
これをあえて続けるなら、なんらかの結論が欲しかったと思います。
元に戻るでもよし、日本一可愛い男の娘を目指すでもよし、それこそモロッコ(ry
現実味のある話に書けているだけに、余計に今後の不安を掻き立てられました。
もし、このままで活動を続けるエンディングにするなら、カウンセリングの先生を
「何も心配いりませんよ~実はよくある話ですから~」
みたいな陽気な人にしちゃうとか、読む側の不安を取り払って欲しかったですね。
※しかし、オチでその先生が「そろそろ転換手術の頃合いね」と
ボソッとつぶやいたりするのが好みなんですがw
280:創る名無しに見る名無し
10/02/22 13:46:12 EnMIdw/i
ええいくそw 鬱祭りかw
>>267
天寿でも天命でもあんまり死なさないでくださいorz なまじ読み込ませる分
悲しみ幾倍でございます。
クライマックス(4/4)中央段の切なさは胸が締め付けられますね。『父と和解
できたわが子』から『父と和解できなかった自分』へ、大好きなどと囁かれては
そら真一パパ泣くっきゃないわな、という感じです。真一本人はこの言葉に
感謝すると思いますが、ハタで見ていて少し意地悪な感じもしましたが。
本当ならこの手の『赦し』はもっと近い人物、この場合ならおばあちゃんから
為される方がしっくりすると思いますが、そうすると真の出番はなくなりますなw
あと、言葉遣いのこと。
真の誕生日CDを聴き返さねば正確には言えませんが、真一の話し言葉なら
「お父さん」「お爺ちゃん」にはならないように感じました。たぶん「俺」「オヤジ」、
ひょっとしたら「父さん」「お爺ちゃん」かも、かな。
読み返すのは少々つらいのですが、いいお話でした。ありがとうございます。
>>278
当人が明るいだけで鬱やないかw ともあれGJでした。
補足説明はここの住人レベルなら本文から読み取れるので不要かもですよ。
279で書かれている通り作品の内容自体は良質だと思います。
食事手帳の時にも文体が少し引っかかる(するすると読み進めない)感じを
受けたのですがどうやら個性のご様子、多少の工夫は要りそうですが
本作みたいなテイストのSSには向いてるかもですね。
書き手氏が目指した方向感が必ずしも明るくない、つまり主題は『涼りゅん
プラス初期夢子のシミュレーション』であって、涼や律子の変革とか救済とか、
あるいはオチを用意して笑わせようというのではないみたいなので、そういう
面では良作かと。
ただ、観察日記に終始してしまって創作的にはカタルシスが欲しいところだなあ、
というのが明るい話好きの独りよがりでした。
また読ませてくださいまし。
281:創る名無しに見る名無し
10/02/22 14:28:25 rjlkJnRi
りゅんりゅんEDって明るく〆てるけど
要は人格崩壊EDだもんなあ
282:創る名無しに見る名無し
10/02/23 13:03:14 i9TpUoDW
>>268の言う「むずかしいところ」「方向性はあまりアイマス的ではない」と
>>270の言う「寂寞感」「知らないままで人生を続けていくのだろう」
これらの見解はおそらくは同じ方向性を示しているのだろう
とはいえ口当たりは確かに苦いものの、丁寧に書かれた良作と思える
>>270
両親が居てなおかつ祖父母の葬儀だと事務所関係者が居なくてもそれほどはおかしくなさそう
これが両親が既に亡く祖父母に育てられた、あるいは亡くなったのが両親ならまた別と思うが
283:創る名無しに見る名無し
10/02/23 19:01:31 mdKpFySj
>>282
事務所から誰も顔を出してないこと自体がおかしい、っていうんじゃなくて
「既に765プロと関わりのない子になってしまった真」を強く印象付けられるのが寂しい、ってことじゃないかな
「話を聞いて765プロ時代の仲間が様子見+焼香に」とかの展開を入れておけば「読者としての」寂寥感は大分薄まったんだろうけど
それをあえてやらなかったことで、この寂寥感は狙ったものなんだろうなぁ、上手いけど読者としては辛いなぁ、という。
このスレの住人の多くは「ただの読者」ってだけではなく、「765プロの同僚」として真と1年を過ごした経験がある者が大半でしょうから。
284:創る名無しに見る名無し
10/02/23 20:54:54 i9TpUoDW
>>283
あくまでも個人の感じ方の違いだろうとは思うが
亡くなった当人自身と面識や付き合いもないのに「孫の友人や同僚」が参列する状況そのものが考えづらいので
真の活動当時でも事務所からの参列者はなくても普通。よって「既に765プロと関わりのなくなった」印象は
自分の場合はそこから感じとることではないということなのだが
これが水瀬祖父の場合だと、喪主である水瀬父の友人として高木社長が参列するのに説得力がある
あまり考えたくないが真一の場合なら娘を預かった立場として社長やPが参列するのも自然だろう
祖父ぐらいだと活動当時でも参列するので真は仕事休み、出勤してきたら「どうだった?」ぐらいが
事務所の反応として普通と感じる
285:創る名無しに見る名無し
10/02/24 00:24:38 fpRFrbRc
>>278
文そのものは重さがなくて、「ああなった」状態を前提にした本編再構成の一部・・・という趣なのはわかるのですが
>>280の言う、シミュレーションという言い方がある意味非常にしっくり来ました。決着とか解決とか行く末は
また全然違う話だと割り切った、ということで。
ただ、やはりなんというか。状況そのものが大きく動かない先ほども言ったような文だけ読むと「重さがない」ものだけに
かえっていつか訪れる決定的な破綻の日に向かってひずみを溜め続けている、その過程を見せられているようなような
空恐ろしさを感じてしまうのは・・・まあ、仕方がないところかなと。
この状態だと、読む側の不安はむしろ作品全体の持ち味にまで転化する方向を模索した方が出来そのものは面白そうではあります
凄くきついものに仕上がってしまいそうではありますがw
とはいえ、涼くんランクA辺りには、必死に自分は男だと訴えても誰も信じてくれない状態なので性別バレで破綻は案外ないか?
・・・いや、この状態では本来発揮し得た内面からの輝きが同じようにあるとは限らないし。
うーむ。
286:創る名無しに見る名無し
10/02/26 21:54:01 r4SbUByK
ある夜の帰り道
真「・・・まっくらですね」
俺「ああ、まっくらだな・・・」
真「・・・手・・・つないでいいですか・・・?」
俺「真、夜が怖いのか・・・まるで女の子だね」
真「あー!また男の子扱いしてますね!ボクはちゃんとした女の子ですよ!!」
俺「ははは、そうだった。・・・・・・ほら、手繋ごうか・・・」
真「・・・はい・・・・プロデューサーの手・・・とってもあったかくて優しい手です・・・・」
俺「真の手も柔らかくて、可愛くて・・・・とても愛しいよ・・・」
真「・・・・・・・・・ボク達・・・ずっとこうしていられますよね・・・・ずっと一緒にいられますよね・・・!」
俺「・・・うん!ずっと・・・・ずっと一緒だよ!どんな時でも俺、真の事離さないから!」
真「・・・ヘヘッ!ありがとうございます!・・・今日寝るときいつもより強く抱きしめてくださいね!」
俺「うん!わかった!いつもよりずっと強く抱きしめるよ!」
真「ヘヘッ!やーりぃ!そうと決まったら早く家に帰りましょう!」
俺「うわっ!真!手を繋いだままいきなり走らないでくれ!こけそうだ!!!!」
投下終了。本スレで書いたのをそのまんま投稿。SSとか生まれて初めて書きました。なかなか楽しい物ですね。