09/12/25 19:59:51 WvllwVVK
それからも簡素で奇妙なクリスマスパーティは料理を喰らい尽くし、買い込んだ酒を飲み干すまで続いた。
「そろそろ時間がやばいな。明日仕事だし、れいむお開きにするぞ。」
身につけている帽子やリボン、髪飾りと同じ赤色に染まったれいむが、へいへい、と適当な返事をすると
同時に、空になった料理の皿が次々と宙に浮いては勝手に台所の流しに移動し始めた。
「毎日俺の分の食器もやってくれりゃ楽なのに。」「甘えんな。今日は特別だ。」
はいはい、とれいむの予想通りの言葉を流しながら、俺は生えた腕と協力してゴミ片付けを進めて行く。
一通り片付き、生えていた腕も消え去っていつもの風景に戻った部屋で時計を見ると、もう、時間も相当遅い。
このままでは睡眠不足も良いところなので残った食器洗いは明日にまわして寝ようと思い、
テーブルを壁際に寄せながら、その側で先程から動きを止めていたれいむに声をかけると、
「れいむ、布団をひくからどいてくれ・・・って。」「zzz・・・。」
れいむは目を閉じて、満足そうな表情を浮かべながら、その絶妙なUの字を描く輪郭は崩れること無く
そのありのままで、静かに寝息を立てながら眠っていた。本当にマイペースなものだ。
と寝顔を見ながら思いつつ、このままでは布団を敷くには邪魔なので、寝ているれいむをゆっくりと持ち上げる。
触れると同時にぷにっとした柔らかな感触が指から伝わり、酒の所為か、いつもよりも温かい、熱いぐらいの
温度が俺の手のひらから全身に伝わる。その感触と温度は心地良いが、時間が時間なので、
速やかに邪魔にならない部屋の隅にそっと静かにれいむを置く。
移動させても終えても相変わらず眠っているれいむを背に、布団を敷こうと押し入れに向かったその時、
「ねえ、・・・こっちを見て・・・。」
背後から怪しく、艶やかな声がしてそれに反応してそっと振り返ると、起きていたのか起きたのか、
先程までの顔だけの姿では無く、何故かセーラー服を着た女性のボディでれいむが立っていた。
その体を見れば、出る所は出て引っ込む所は引っ込む。そんなナイスバディではあるのだが、
当然顔はれいむのままというアンバランス極まりない状態は、あまりにも不自然で奇妙な姿である。
で、なぜいきなりそんな風貌でつっ立っているのか。そう問おうとすると、
「これ、今日のお返し、・・・その、私からのプレゼントなんだけど。」
しおらしく、もじもじと恥らいを見せつつ箱をこちらに差し出すれいむの態度は、非 常 に 怪 し い 。
れいむがこういう態度を見せるときは、大概何かしらの仕掛けをしている時だ。
警戒の為、外側に何か仕掛けられていないプレゼントの箱をまじまじと眺める。
「だいじょ~ぶよぉ、変なものは入っていないから。」
その言葉が一番怪しいが、どうにも開けなければ寝させてもくれなさそうなので恐る恐る開いてみた。
「・・・栗?」
なぜか栗が一つだけ、宝石のように御大層な赤いクッションの上でつややかに輝いている。
なんの意図か全く解らず、ただ首を傾けながらそれをじっと眺めた。
「栗でスマン。」
そんな俺に、何時の間にやら頭だけの姿に戻っていたれいむが、
しおらしく俯き加減に何度も同じ言葉を繰り返し口にしながら謝る。
そんな態度に不信を覚え、考えを巡らしている内に俺は思わず「あっ!!!」と大声を上げてしまった。
気が付いてしまったのだ。れいむの繰り返される言葉から導き出される衝撃の真実に・・・。
栗でスマン、栗スマン、クリスマス・・・。
「ダジャレかよ!!!しかも苦しいし!!!」
「イエス!!!クリスマン!!」
下らないダジャレで幕を閉じた、なんとも締まらないクリスマスの夜だったとさ。 即興の人