09/10/15 02:56:45 0qlkqrak
★参加者名簿(決定)★
6/6【スパイラル ~推理の絆~】
○鳴海歩/○結崎ひよの/○竹内理緒/○浅月香介/○高町亮子/○カノン・ヒルベルト
6/6【トライガン・マキシマム】
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/●ニコラス・D・ウルフウッド/○ミリオンズ・ナイブズ/
○レガート・ブルーサマーズ/○ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク/○リヴィオ・ザ・ダブルファング
5/6【ハヤテのごとく!】
●綾崎ハヤテ/○三千院ナギ/●愛沢咲夜/●鷺ノ宮伊澄/○西沢歩/○桂雪路
6/6【鋼の錬金術師】
○エドワード・エルリック/●アルフォンス・エルリック/●ロイ・マスタング/○ゾルフ・J・キンブリー/○グリード(リン・ヤオ)/○ウィンリィ・ロックベル
5/5【うしおととら】
○蒼月潮/○とら(長飛丸)/○ひょう/○秋葉流/●紅煉
5/5【未来日記】
○天野雪輝/○我妻由乃/○雨流みねね/○秋瀬或/●平坂黄泉
5/5【銀魂】
○坂田銀時/●志村新八/○柳生九兵衛/○沖田総悟/○志村妙
5/5【封神演義】
●太公望/○聞仲/○妲己/○胡喜媚/○趙公明
3/4【ひだまりスケッチ】
○ゆの/○宮子/○沙英/●ヒロ
4/4【魔王 JUVENILE REMIX】
○安藤(兄)/○安藤潤也/●蝉/○スズメバチ
4/4【ベルセルク】
○ガッツ/○グリフィス/○パック/○ゾッド
4/4【ONE PIECE】
●モンキー・D・ルフィ/○Mr.2 ボン・クレー/●サンジ/○ニコ・ロビン
4/4【金剛番長】
○金剛晄(金剛番長)/○秋山優(卑怯番長)/○白雪宮拳(剛力番長)/●マシン番長
3/3【うえきの法則】
○植木耕助/○森あい/○鈴子・ジェラード
2/1【ブラック・ジャック】
○ブラック・ジャック/●ドクター・キリコ
1/1【ゴルゴ13】
○ゴルゴ13
54/70
3:創る名無しに見る名無し
09/10/15 02:57:49 0qlkqrak
★ロワのルール★
OPなどで特に指定がされない限りは、ロワの基本ルールは下記になります。
OPや本編SSで別ルールが描写された場合はそちらが優先されます。
【基本ルール】
最後の一人になるまで殺し合いをする。最後まで生き残った一人が勝者となり、元の世界に帰ることができる。
参加者間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、参加者は会場内にランダムで配置される。
【首輪について】
参加者には首輪が嵌められる。首輪は以下の条件で爆発し、首輪が爆発したプレイヤーは例外なく死亡する。
首輪をむりやり外そうとした場合
ロワ会場の外に出た場合
侵入禁止エリアに入った場合
24時間死者が出ない状態が続いた場合は、全員の首輪が爆発
【放送について】
6時間おき(0:00、6:00、12:00、18:00)に放送が行われる。
放送の内容は、死亡者の報告と侵入禁止エリアの発表など。
【所持品について】
参加者が所持していた武器や装備などはすべて没収される(義手など体と一体化しているものは没収されない)
かわりに、支給品の入ったデイパックが支給される。
デイパックは何故か、どんなに大きな物でも入るし、どんなに重い物を入れても大丈夫だったりする。
デイパックに入っている支給品の内容は「会場の地図」「コンパス」「参加者名簿」「筆記用具」
「水と食料」「ランタン」「時計」「ランダム支給品1~2個」
※「参加者名簿」は、途中で文字が浮き出る方式
※「水と食料」は最低1食分は支給されている。具体的な量は書き手の裁量に任せます
4:創る名無しに見る名無し
09/10/15 02:58:54 0qlkqrak
★書き手のルール★
【予約について】
予約はしたらばにある予約専用スレにて受け付けます。
トリップをつけて、予約したいキャラクター名を書き込んでください。
予約期限は3日(72時間)です。期限内に申請があった場合のみ、3日間延長することができます。
これ以上の延長は理由に関わらず一切認めません。
また、書き手枠に関しては、延長はできず予約期限は3日のみとなります(詳細は下記の書き手枠ルール参照)
予約に関するルールは、書き手からの要望があった場合、議論のうえで変更することを可能とします。
【キャラクターの死亡について】
SS内でキャラが死亡した場合、【(キャラ名)@(作品名) 死亡】と表記してください。
また、どんな理由があろうとも、死亡したキャラの復活は禁止します。
【キャラクターの能力制限について】
ロワ内では、バランスブレイカーとなるキャラの能力は制限されます。
※詳細は現在議論中です
【支給品制限について】
ロワ内では、バランスブレイカーとなる支給品は制限されます。
※詳細は現在議論中です
5:創る名無しに見る名無し
09/10/15 02:59:44 0qlkqrak
【状態表のテンプレ】
SSの最後につける状態表は下記の形式とします。
【(エリア)/(場所や施設の名前)/(日数と時間帯)】
【(キャラ名)@(作品名)】
[状態]:
[服装]:(身に着けている防具や服類、特に書く必要がない場合はなくても可)
[装備]:(手に持っている武器など)
[道具]:(デイパックの中身)
[思考]
1:
2:
3:
[備考]
※(状態や思考以外の事項)
【時間帯の表記について】
状態表に書く時間帯は、下記の表から当てはめてください。
深夜:0~2時 / 黎明:2~4時 / 早朝:4~6時 / 朝:6~8時 / 午前:8~10時 / 昼:10~12時
日中:12~14時 / 午後:14~16時 / 夕方:16~18時 / 夜:18~20時 / 夜中:20~22時 / 真夜中:22~24時
6:創る名無しに見る名無し
09/10/15 16:28:28 FiXxadts
>>1新スレ乙!
7:創る名無しに見る名無し
09/10/15 19:20:29 HoNDzkXH
>>1新スレ乙
8: ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 21:51:49 PxRYBiz9
>>1スレ立て乙です。
さて、遅くなりましたが浅月、宮子、雪輝、由乃を投下します。
9:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 21:52:53 PxRYBiz9
「メンドくせぇな…全部持っていけりゃいいんだが」
ぶつくさと、真っ暗な学校の理科室で愚痴る少年が一人。
鮮やかなサツマイモ色の髪の毛をツンツンに逆立てた浅月香介は、役立つアイテムを探していた。
さながらRPGの主人公のように、勝手に物をあさる。
彼はRPGの主人公ではなく、現実に生きる少年だ。勝手に物品を持ち去るのは窃盗にあたる。
だが、今さらそれを気にするような甘っちょろい人生は歩んでいなかった。
支給された鞄に手に入れた薬品などを入れて持ち去ろうという魂胆だったが、問題が1つ。
RPGの主人公同様、浅月が持てる物の量は限られているのだ。
「こんな鞄じゃすぐに一杯になっちまうな。先にリュックか何かを探しとくべきだったか…」
ひとまず入れられるだけ入れておこうと、浅月は鞄にめぼしい物を放り込む。
めぼしい物といっても彼には薬品にまつわる知識がそれほど無い。
ほとんど全てがめぼしい物に見えた。
「フラスコとかは…いらねぇか。アルコールランプとか持ち歩くわけにいかねぇし…ん?」
窃盗行為にいそしんでいた浅月が、とある事に気がつく。
物をどれだけ入れても、鞄が一杯になる気配が無いのだ。
試しにに手を突っ込んでみる。確かに入れたものは存在していた。
だが、底のようなものを感じない。さらに様々な道具を入れてみる。
やはり鞄は一向に埋まる気配を見せなかった。
「ド○えもんじゃあるまいし…四次元デイバックだってのか?」
にわかには信じがたい。しかし、ワープやら電撃攻撃を目の前で見せられた実績もある。
なによりも、だ。彼はここに来た時からずっと抱えていた違和感をあらためて分析する。
自分はカノンとの戦いの怪我でまだ入院中だったはずだ。その怪我がすっかり治っている。
これも連中の細工なのだろうか。だとしたら、とんでもない相手だ。
大体、こんな殺し合いに今更常識を求める事の方が間違っているのだろうか。
そんな事を考えながら、1つのことを思いつく。
顎に手をあて、少し考え込むと、浅月は理科室の隅にある人体模型に近づき、箱から取り出した。
あまり気味のいいものではなかったが、気にせずそれを鞄に入れてみる。
すんなりと入っていった。
10:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 21:53:46 PxRYBiz9
「…なるほどね。これならもしかすると…」
そう言うと鞄を開いたまま床に置く。そして深呼吸すると、自分の足を鞄に突っ込んだ。
「…ちっ、さすがにこれはダメか」
足はするすると入ってくれたが、すぐに床のような固い底に行き着き、そこで止まってしまった。
どうやら人間が入ることは出来ないらしい。
別に彼はこの鞄に隠れて殺し合いをやり過ごそうとしたわけではない。
ただ、何を入れてもほとんど重さの変わらないこの鞄に騒がしい同行者を入れて運べば、
少しは楽かな、と考えただけだった。
(それじゃ弱い奴らは皆これに隠れてればよくなっちまうしな)
妙な事に納得すると、彼は再び窃盗行為にとりかかる。
理科室のチェックを終え、次に保健室へ。
包帯や薬の類を集め、ついでにベッドのシーツやカーテンも剥がして頂戴する。
鞄の容量の多さを考えれば、無駄かもしれない物や大きい物も持っていって大丈夫だろう。
武器は手に入らなかったが、いろいろと収穫はあった。気を良くしたのかもう少し、と欲が出る。
どうやらこの学校は中学と高校が1つの敷地に別々に配置してあるらしい。
分けてあるのには何か意味があるのかもしれないと、浅月は中学のほうにも足を伸ばした。
昇降口にたどり着いた所で、どこからか音楽が流れ始める。
聞き覚えのあるこの曲は…
「……『孤独の中の神の祝福』、だったか?気にいらねぇな……」
11:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 21:54:43 PxRYBiz9
◇ ◇ ◇
静まりかえった教室内に、ユッキーの寝息だけが聞こえていた。
それが由乃にはなによりも幸せで、とてもとても心地よかった。
ここに来てからいろいろあった。嫌な奴らにも会ったし、面倒事にも巻き込まれた。
それも全部、このユッキーの寝顔で癒される。彼女は今、本当に幸せだった。
そんな静寂に、無粋にも割り込んでくる音楽。
一瞬顔をしかめる。こんな音楽なんか流して、ユッキーが起きちゃったらどうしてくれる。
しかし、彼女の手にある『雪輝日記』は、彼が起きることを示していない。
気を静めて、由乃は放送の内容を聞き取る事に集中する。
それもこれも、今はスヤスヤと眠る愛しい人の為に。
結論から言うと、放送からは特に必要な情報は得られなかった。
まず参加者。自分が知った名前は二つ。
雨流みねね。未来日記を用いたゲームの9th。
何度か顔を合わせたことがあるし、アイツと戦った時のユッキーもかっこよかった。
別に雨流みねね自体に興味は無いが、もし未来日記を持っているなら厄介ではある。
しかし、自分やユッキーの例から考えてアイツに自分の未来日記が支給されている可能性は低い。
むしろ気にかかったのはもう1つの名前。
平坂黄泉。同じく未来日記のゲームの12th。
だが、コイツは死んだはずだ。他でもない、この手で倒したのだから。
そんな奴がどうしているのだろう。おまけに、ご丁寧に死亡者として読み上げられた。
この殺し合いが例のゲームの延長で、以前の死亡者もここで読み上げたのか。
だがそれなら、4thや6th等も呼ばれていなければならない。どうにも奇妙な事だった。
だが、それだけだ。
平坂黄泉は死んだ。それだけだ。ユッキーと自分には何の関係も無い。
それが彼女の結論だった。
他に気になる事と言えば、ミズシロの事だ。
ヤツの名前は見当たらなかった。だが、奴自身が偽名であることは宣言している。
その際にあげた偽名の1つが名簿に載っていた。これが奴だろうか。
まだ信用はしていないが、名前に関しては嘘をついていないと見ていい。
しかし、それも奴に限って言えば、だ。
同行者の『安西』と名乗った男。ソイツの名前が無かった。
安藤という性の人間が二人おリ、一人が奴にメッセージを託された『潤也』という名前だ。
偽名を用いたのがもう一方の『安藤』で、『潤也』の方はその肉親、という可能性もある。
もちろん推測に過ぎないが、あの男が嘘をいっていたのは事実。
それをミズシロこと、カノン・ヒルベルトは知っていたのかいないのか…
奴自身も騙されていたのか…それとも…?
奴らとは後でもう一度接触する必要がある。ユッキーの命でもある未来日記を取り戻す為だ。
その時の為にも、警戒しておくにこしたことはない。
後は特に気にとめるような内容ではなかった。
ユッキーに擦り寄ってきていたあの女がどうなったか気になったが、名前を聞いていない。
死んでいるといいなぁ…そんな事を考えている時だった。
12:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 21:57:37 PxRYBiz9
人の気配。
匂いでわかる。この中学校舎の方に、誰かが侵入してきている。
高校校舎にいた人間なのか、それ以外か。
殺し合いにのっているか、いないか。
そんな事はどうでもいい。
ただ、放っておけばユッキーの安眠の妨げに、あるいは命の危険になるかもしれない。
『雪輝日記』を確認する。相変わらず彼はしばらく目を覚まさないらしく、寝顔日記のままだ。
だが、その理由はわからない。
自分がこれから相手を迎撃することで始めて、この未来が成り立つとすれば。
何もしないでいれば未来が変わってしまうかもしれない。
「ちょっとだけ待っててね、ユッキー」
バッグを枕に彼を寝かせる。名残惜しいが仕方が無い。
彼の安全は『雪輝日記』で逐一確認できる。今は侵入者の確認が優先だ。
武器を両手に構え、やる気マンマンで由乃は教室を飛び出した。
13:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 21:58:21 PxRYBiz9
◇ ◇ ◇
「やっぱり…な」
放送後、上階から順に探索中だった校舎内で名簿を眺めながら浅月が呟いたのはその言葉だった。
それは、あまりにも予想通りの面々が呼ばれていたことを指している。
声からほぼ確実と踏んでいた亮子と鳴海弟。ブレードチルドレンの仲間である竹内理緒。
少し予想外だったのがおさげの新聞部員、結崎ひよのくらいか。
いやもう一人、予想外がいる。カノン・ヒルベルトだ。
「カノンの野郎は確か軟禁状態だったハズ……なんでここに?」
同姓同名の別人、ということはさすがに無いだろう。
これだけ自分の関係者が固まって集められているのだ。
なによりも、と浅月は思う。放送から掴んだ情報が、最大の理由だった。
『孤独の中の神の祝福』『土屋キリエ』この二つを使った放送。
参加者に多数のブレードチルドレンと、鳴海歩の存在。
これで鳴海清隆の関与を想像しないほうがどうかしている。
予想はしていたが、これはきっと奴の企みだ。
それならばカノンが解放され、参加しているのも納得がいく。
「フザけやがって…好き勝手するのも大概にしろよ」
湧き上がる苛立ち。これもまた奴の手の中なのだろうか。
とにかく、自分の関係者はまだ誰も死んじゃいない。
いや…放送を聞くに、土屋キリエはもしかすると……
だがこれ以上考えていてもしょうがないかと、浅月は一端思考を停止した。
頭が冷え、名簿を見渡したところで、一人の名前が目に留まる。
この名前、聞き覚えがある。確か放送で…
いや、確かにそれはそうだ。しかしそれ以前に聞いた記憶もある。
少しだけ考え込み、気がついた。
「……クソッタレ」
それは宮子から聞かされていた友人の名前。
彼女が語ったとても仲の良いという先輩の名前だった。
放送は宮子も聞いているはず。浅月は、考えるより速く動き出していた。
(あのバカ、変な事考えてなきゃいいが…)
身近な人間が死んだ。
それは人をおかしくするには充分な理由だ。
彼女を一人にしておいた事を少し後悔する。
(チクショウ、何で俺がこんな一生懸命走んなきゃなんねーんだ!
あいつがどうなろうが放っておきゃいいのによ…)
そう考えつつも、少しも走る足が鈍らないのは『仲間』の大切さを知る彼故なのだろうか。
14:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 21:59:07 PxRYBiz9
◇ ◇ ◇
中学校舎一階の廊下。
由乃はその真ん中に武器を構えて立ち、待っていた。
ココは一階。人の気配は上の階から降りてきているようだった。
何か焦っているのか、少し足音が聞こえたのである。
音の聞こえる階段の出口は1つしかない。
そこから外に出るためには必ずこの廊下を通る必要があり、ここで待ち構えていれば必ず侵入者に対処できる。
接触するだけなら武器を構える必要は無い。彼女は奇襲をかける気マンマンなのである。
それは彼女の中で
ユッキーの安全>ユッキーの安眠>>>超えられない壁>>>他人の命
という価値観が出来上がっているからであった。
武器を構えていると『雪輝日記』を確認できない。
そんな状態を一分一秒でも長くかけたくないのである。
相手は参加者であるわけだから、死んでありがたいことはあれど、困ることは無い。
じっと階段の出口を見つめ、銃の引き金に指をかける。
人影が現れた一瞬、ほんの一瞬で全ては決した。
彼女の両手の『牙』は一切の躊躇い無く銃弾を放つ。狙いもなにもない。
圧倒的な量の弾丸が人体の周辺一体を埋め尽くし、粉々にしていく。
彼女が引き金から手を離した時には、もうそこに人影と呼べるものは存在していなかった。
15:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:00:17 PxRYBiz9
◇ ◇ ◇
(あっぶねーーー!!!あの女、なんの躊躇もしやがらねぇ!)
階段の陰で、浅月は胸をなでおろす。
危機察知能力はブレードチルドレンの中でも高いほうだ。
そんな彼がむき出しの由乃の殺気に気づかぬはずもない。
彼は身の危険を感じとり、様子見として身代わりを差し出した。
理科室で入手した人体模型である。
それが粉々に砕かれていく様を見るというのは、なんとも奇妙な感じだった。
(一切手加減なしだな。おまけになんて得物持ってやがんだ!あれじゃ姿も見せられねぇ)
相手は女だった。なぜか宮子と同じ制服を着ている。高校生だろうか。
手にはその格好に似合わぬゴツイ機関銃らしきものを構えていた。
身代わりをたてたのは正解だったが、状況は悪いままだ。
相手はもちろんこっちを倒したなんて勘違いはしないだろう。
こちらにも武器はあるが、いかんせん火力に差がありすぎる。
逆に接近戦に持ち込めば何とかなるかもしれないが…相手の得体のしれなさがそれを思い留まらせる。
階段を上って一度逃げるか?廊下の反対側にも階段はあったはずだ。
だが、モタモタしていたら相手が近づいてくるかもしれない。
急いで高校の方の校舎に戻らねばならない今、相手と命がけの鬼ごっこなんてゴメンだ。
身体能力如何では、あっさり追いつかれる可能性もある。
「(クソ…)よぉ!!まさかお前は殺し合いにのってんのか!?」
ダメもとでまずは説得を試みる。
だが、返ってきた言葉は冷たいものだった。
「邪魔するなら、とりあえずお前は殺しておく」
冗談には聞こえなかった。本気の声。
だが、浅月は逆に交渉の余地を見出した。
16:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:01:09 Z6E6FUnX
しえん
17:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:01:11 PxRYBiz9
「待て!何のつもりか知らないが、俺はお前の邪魔はしない!今もここを出ようと思ってるトコだ」
利害の一致。
それがあれば何とかなるかもしれない。
相手はこちらに近づいてくる様子が無い。何かを気にしながら戦っている風だ。
何かを守っているのかもしれない。
「通してくれりゃもう金輪際ここには近づかない。アンタがここにいる事も誰にも言わない。
どうだ、見逃してもらえないか!?」
我ながら情けない状態だ。しかし、背に腹は変えられない。
今更かっこいい悪いを言ってられるかと、開き直った必死の懇願。
しかし、相手の声には一切の変化が見られなかった。
「関係ないわ。お前は後々厄介になりそうな気がする」
冗談じゃねー!「気がする」なんて理由で殺されてたまるか!
そう叫びたい衝動を抑え、半ば諦め気味に浅月は鞄をあさる。
支給品の1つが、この状況を乗り切るのに役立つものだったハズだ。
それを取り出し、握り締める。後は少しでも隙が出来れば……
「由乃!!何してるんだ!!」
どこかから聞こえた声。
それを耳にしたとたん、今まで獲物を見つめるハンターのようだった少女があっさりと視線をはずす。
背後に現れた少年に、完全に意識を取られている。
(今だっ!!)
浅月は手にしていた手榴弾を少女に向けて放り投げ、走り出した。
18:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:01:52 PxRYBiz9
◇ ◇ ◇
悔しそうな顔で立ち尽くす由乃と、心配そうな顔を浮かべる雪輝。
二人の周囲にほとんど被害は無かった。先ほどの手榴弾はダミーだったのである。
由乃が雪輝に気を取られた一瞬の隙を突いて相手は脱出をはかった。
とは言え相手の位置から次に身を隠せそうな場所、教室の入り口までは距離があった。
由乃ならすぐに対応できる。しかし、それは相手も織り込み済みだったようだ。
その時間稼ぎとしてダミーの手榴弾を放ってきたのである。
由乃一人の状態ならともかく、雪輝の安全を守るためには手榴弾の処理が最優先。
ブラフの可能性を感じながらも、彼女は処理せざるを得なかった。
窓の外に爆弾を蹴り飛ばし、雪輝を伏せさせ安全を確保。
危険が無いことを確認した時には相手の姿は無く、すかさず教室内を確認したがもぬけの空だった。
「……ごめんね、ユッキー。うるさかった?」
「あ、いや……こっちこそごめん。邪魔になっちゃったみたいだね」
『雪輝日記』によれば、彼はまだ寝ているはずだった。
懐から携帯を取り出し、『日記』を確認する。
そこには
『ユッキーが起きて、私を心配して見に来てくれたよ。嬉しい、ユッキー!』
と記されていた。
由乃にとって本当に嬉しい内容ではあったが、これは先ほどまでの記述とは違っている。
彼女が動いたことで、未来が変わったということだろう。
自分の放った銃撃音が彼を起こしてしまったに違いない。
あの時侵入者を気にせずやり過ごしていれば、彼の安眠は守られたかもしれない。
そう思うと、由乃の中で先ほどの男への怒りが激しく高まる。しかし
「むしろ寝すぎたくらいだ。放送も終わってる、よね…?
何があったか、詳しく聞かせてくれないか、由乃」
ユッキーが、私を頼ってくれた。
それだけで彼女の感情メーターは一気にプラスへと振り切れる。
今はあんな男の事は無視だ。ユッキーに事情を説明し、彼の未来日記の確保を優先する。
彼女の行動の中心はあくまで天野雪輝、ただ一人なのだから。
19:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:02:05 F7e4OL1G
支援。
20:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:02:54 PxRYBiz9
【H-3/中・高等学校中学校舎1F廊下/1日目/朝】
【天野雪輝@未来日記】
[状態]:健康、軽い眠気
[装備]:違法改造エアガン@スパイラル~推理の絆~、鉛弾19発、ハリセン
[道具]:支給品一式×2、不明支給品×2
[思考]
基本:ムルムルに事の真相を聞きだす。
0:由乃の話を聞く。
1:由乃の制御。
2:拡声器を使った高町亮子が気になる。
3:咲夜の生死が気になる
4:由乃の代わりにミズシロ達に連絡を入れたい。
[備考]
※咲夜から彼女の人間関係について情報を得ました。
※グリードから彼の人間関係や、錬金術に関する情報を得ました。
※原作7巻32話「少年少女革命」で由乃の手を掴んだ直後、7thとの対決前より参戦。
※異世界の存在を認めました。
※未来日記の内容は行動によって変えることが可能です。
唯一絶対の未来を示すものではありません。
※放送を聞き逃しました。
【我妻由乃@未来日記】
[状態]:健康 疲労(小)
[服装]:やまぶき高校女子制服@ひだまりスケッチ
[装備]:ダブルファング(残弾25%・25%、100%・100%)@トライガン・マキシマム、雪輝日記@未来日記
[道具]:支給品一式×2、ダブルファングのマガジン×8(全て残弾100%)、不明支給品×1(グリードは確認済み)
[思考]
基本方針:天野雪輝をこの殺し合いの勝者にする。
0:ユッキーに今起きた事と、放送の内容を伝える。
1:話を終えたら無差別日記に連絡し、現在の持ち主と接触。なんとしても取り返す。
2:ユッキーの生存だけを考える。役に立たない人間と馴れ合うつもりはない。
3:邪魔な人間は機会を見て排除。『ユッキーを守れるのは自分だけ』という意識が根底にある。
4:『まだ』積極的に他人と殺し合うつもりはないが、当然殺人に抵抗はない。
5:ミズシロと安西の伝言相手に会ったら、状況によっては伝えてやってもよい。
[備考]
※原作6巻26話「増殖倶楽部」終了後より参戦。
※電話の相手として鳴海歩の声を「カノン・ヒルベルト」と認識、
安藤兄の名前が偽名であると気がつきました。潤也との血縁関係も疑っています。
※未来日記の記述が本当に変わったかどうかはわかりません。
※中学校舎のどこかに、ダミーの手榴弾×1(ピンなし)が落ちています。
21:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:03:45 F7e4OL1G
22:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:04:49 PxRYBiz9
◇ ◇ ◇
「ハァ…ハァ…冗談じゃねぇ、あんな奴の相手なんかしていれられるか」
辛うじて由乃から逃れた浅月は必死で走り、高校の校舎へと戻っていた。
あんな危険人物がいるとわかったらもうこんな場所にいる理由はない。
情報を引き出せなかったのは痛いが、ゲームにのった人間に接触して生きていただけマシだろう。
亮子も宮子の知り合いもここにはいないようだし、さっさとズラかるのが賢明というものだ。
そういえばさっきの女、宮子と同じ制服だった。確か『ユノ』とか呼ばれてたが…
まさか、宮子の知り合いの『ユノ』って子じゃねーだろうな。
あんな危険人物と合流なんざごめんだぜ、と浅月は毒づく。
まぁ特徴が違うのでおそらく別人であろうが…
そこでなぜ、自分が急いでいたかを思い出した。
「そうだ、宮子…」
友人の死を知って取り乱しているだろう宮子と早く合流しなければ。
疲れた体に鞭打ち、浅月は更に加速する。
23:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:05:12 F7e4OL1G
24:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:06:31 F7e4OL1G
25:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:06:39 PxRYBiz9
◇ ◇ ◇
浅月少年が高校校舎へ舞い戻る数十分前。
さらに言えば放送の数分前。
宮子は高校校舎の三階、美術室の中でご機嫌だった。
「う~ん、カワイイ♪これ、ゆのっちに着せたいなぁ…」
浅月の鞄の中になぜか入っていた女物の服に袖を通し、浮かれていたのである。
変わってはいるが彼女も女の子。さらには美術を愛する芸術少女だ。
かわいい服など見れば、それなりにテンションがあがるというもの。
「ヒロさんの方が似合うかな?でも、冴英さんあたりが実は一番似合ったりして」
悪戯っぽい笑顔を浮かべる。そこには嫌味が無く、朗らかなものだった。
普段は着ることが無いような衣装に身を包み楽しくなった所で、いい具合にBGMが流れ出す。
「お、なんだろう。もしかしてファッションショースタート?粋な演出しますなぁ~」
とてもそんなイメージを持つような曲ではなかったが、浮かれ気分の宮子にはそう聞こえたのか。
ならばこの後に待ち受ける出来事は、彼女にどんなイメージを与えたのだろう。
26:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:08:02 F7e4OL1G
27:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:08:57 PxRYBiz9
◇ ◇ ◇
「おい、宮子!」
ドアを勢いよく開き、浅月が姿を現した。息を切らし、疲れが容易に見て取れる。
薄暗い美術室の中には窓際に佇む少女が一人きり。
非日常な衣装を着たその姿は、1つの絵画のようにも見えた。
「あ、あさっちおかえり~」
振り向いた少女の後ろに、カーテンの隙間から漏れ出る朝の陽射しが重なって思わず目を伏せる。
眩しさで、宮子の表情は見えなかった。ただ、嫌な予感が背筋を走る。
「おま、大丈夫……か?」
こんな時に気のきいたことが言える様なら、いつも亮子に殴られることもないだろう。
そんな事を考えていた。
「大丈夫って?」
「そりゃ…」
言いかけて、口をつぐむ。放送を聞いていなかったのか。
それはないだろう。なぜなら自分と別れる前と今とでは、彼女はあまりにも雰囲気が違う。
かといって取り乱しているようにも見えない。だが、冷静であるとも思えなかった。
そういう時はきっと…
「よく聞け、宮子」
真剣な面持ちのまま、浅月が言葉を選ぶように投げかける。
対する宮子の雰囲気は変わらない。
「なになに?何か見つけたのー?」
「……放送は、嘘じゃない。あれは事実だ。そんでもってこれは、現実…だ」
はっきりと、だが最大限に気を配り、告げる。
彼女が取り乱さぬ理由は一つ。森の中で目を覚ました時と同じだ。
今この一瞬を、夢だと思っている。否、思いたいと思っているのだろう。
それを肯定してあげる方法もある。だがそれはより残酷な結末を呼び込むのではないか。
浅月はそれを良しとしなかった。
28:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:09:26 F7e4OL1G
29:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:09:39 PxRYBiz9
「え、どういうこと?」
「…死んだんだよ」
「誰が?」
「死んだんだ!お前の先輩の、ヒロって人は…!」
思わず声を荒げる。こういうところが、自分はまだまだ出来てないと思っていた。
真実を告げる。これは時として非情に辛いことだ。
嘘つきなだけだった過去の自分はどんなに楽だっただろう。
「……やめてよ、あさっちってばー。そういうのはさ……」
「お前…」
あるいは浅月が思っている以上に、この娘は賢いのかもしれない。
もうとっくに気がついていて、でも、だからこそ。
心が冷静でいられる唯一の方法をとっているのかもしれない。
それでも、と浅月は譲らない。
「逃げるな、宮子!今は逃げ出していられる状況じゃない」
「やめてよ、あさっち!」
教室内へと踏み込み、宮子の肩を掴む。
少女は何かから逃れるように必死で抵抗する。意外にしっかりした力に、少し驚く。
「ねぇ、なんでそんな事言うの!?楽しくないでしょ、あさっちだって!」
「楽しかねぇよ!けど、黙ってたって楽しくなんかなりゃしないんだよ!」
眠った少女を起こすかのように体をゆすり、必死で訴えかける。
だが、宮子も頑なにそれを拒もうと、逃れようと抵抗する。
「いい加減に目を覚ませ!宮子!!」
「やめて…ったら……やめてーーーー!!!」
はずみ、だった。
思い切り突き飛ばされた拍子に、浅月がよろめく。
「なっ…」
「あっ」
足元は宮子が物探しで荒らしていろいろな紙が散乱している。
あるいは彼も動揺していたのだろうか。滑らせた足が制御を失う。
行き着く先は窓。開け放たれ、朝の風が流れ込む窓。
少年の体は、そのまま宙を舞った。
「あ、あさっち!」
咄嗟に少女が手を伸ばすも届かず、少年は落下していく。最後に見えたのは、少女の顔。
先ほどまでとは少し違う。出会った時に近い、なんだがほっとする表情だった。
(チッ、なんだよ……俺の命も……安くなったな)
30:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:10:48 PxRYBiz9
◇ ◇ ◇
薄暗い、いや、朝日が差し込み多少明るくなった教室内。
宮子は膝をつき、顔を覆って泣いていた。
こんな風に泣いたのはいつ以来だろう。懐いてきた猫がいなくなった時も、こんな風にはならなかった。
猫と一緒にしたら、あさっち怒るかな。ごめんね。
そんな事を考える度、さらに罪悪感が心を埋め尽くす。
この手で人を殺してしまった。
そんなつもりはなかった。ただ、怖かったのだ。認めたくない現実を突きつけてくる彼が。
彼女だってなんとなくわかっていた。ヒロさんは……もうこの世にいないのだろう。
彼女は物分りの良い娘だ。前述の猫の時も、「自由が一番いいからいいんだよー」と笑ってみせた。
ただ、それとは比べ物にならない悲しみが、あまりに大きすぎる悲しみが、彼女を苦しめた。
その結果、さらに1つの命を奪ってしまったのである。
「どうしよう…」
知らず呟いていた。
どうしようもこうしようもない。
逃げ出してしまおう。そう思った。
こんな馬鹿げた殺し合いなんか夢だと思って、逃げてしまおう。
行くあてなんかないが、これは夢だ。それならどこでもいい。
どこかでのんびり絵でも描いて、笑って過ごしていればいつか目が覚める。
だから、どこかに行ってしまおう。
しかし、そんな考えはもう通用しなかった。
最後の最後、落ち行く少年が見せたのは、笑顔。
咄嗟の事態に現実を直視し、少年を助けようとした彼女の顔を見て彼は、笑ったのだ。
自分が再び夢へと逃げ込めば、彼の笑顔を裏切ることとなる。それは、イヤだ。
だが、だからといって何が出来るわけでもない。
自分はもう人殺しだ。ゆのっちや冴英さん達と、楽しくおしゃべりしたり、絵を描いたりする資格は無い。
戻る場所がない。ただふらふらと生きるしか道がない。
そう思うと、涙が止まらなかった。いっそここでこのままぼーっと過ごして、殺されるのを待とうかな。
そんな事を考える。
“それでいいの?”
それは幻聴だった。
間違いなく、その場にはいない人の声。誰だかはわからない。
ただ、宮子の心を取り戻させる力を持った幻聴だった。
そうだ、これでいいのか?
自分はもう、ゆのっち達と楽しく過ごすことなんて出来ない。
けど、ここで何もしないのはズルだ。だって、できることがあるから。
宮子はゆっくりと立ち上がると、震える足で校舎を出た。
31:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:11:08 F7e4OL1G
32:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:11:39 PxRYBiz9
彼が落ちたとすれば、この辺りか。
その場所が近づくにつれて、宮子の震えは大きくなる。
顔は青ざめ、吐き気を催す。でも、逃げない。
できることをするんだ。その一念で、歩を進める。
足が、見えた。
植え込みの中でピクリとも動かぬ少年の姿。
校舎を見上げるように横たわるその姿を見て、宮子の涙がとめどなく溢れる。
「あ、あさっち……ご……め、ん、ねぇ……うぐっ」
涙を拭うことさえせず、ただただ謝りながら、彼女は少年の遺体に近づき、そっと手を触れた。
まだ、暖かかった。当然といえば当然か。
宮子はその現実と向き合うために、ここに来たのだ。
このまま逃げたり、何もしなかったら、ゆのっち達にあわせる顔がない。
そのまま死んでも、ヒロさんにあわせる顔がない。
自分が地獄に落ちるとしても、閻魔様の所で会っちゃうかもしれないし。
あわせる顔がなければ、謝ることができないではないか。
許してもらえるなんて思ってない。
でも悪い事をして謝るというのは、絶対に欠かしてはいけないことだと思った。
今まで一緒に楽しく過ごしてきた、大切な人たちだからこそ……
一緒に居られなくたって、謝る事だけはしたいと思った。
なによりも……まず謝っておかねばならない人がいる。
出会ったばかりの自分を見捨てず、運んでくれた。
理解出来ずに騒ぐばかりの自分に、言葉をかけてくれた。
放送の後自分を心配して、走って帰ってきてくれた!!
そんな、ゆのっちにも負けないお人好しな少年。
……この手にかけてしまった、少年。
彼に謝りたい。そう思った。
だから、その為に。
今の自分に出来ることをする。
辛くても、恐ろしくても……あさっちの埋葬くらいは、できる。
33:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:12:20 PxRYBiz9
「あ、あた、し…もう、逃げ、逃げな、いから…ぐす…だがら、ご、めん、って…」
彼を抱き起こすように引き上げる。
まるでまだ生きているようなその体が、さらに少女の心を痛めつける。
それでも、彼女は放り出さない。
「い、言い、たぐで……ぐず……ホ、ホントに…ホント、に、ごめ「良し、そこまでだ」
「ぶぇ?」
宮子が奇妙な声をあげる。
今の声は、誰だろう?自分の正面から聞こえたような気がしたが……
「頑丈な体でわりぃな……まぁ、しぶとさが数少ない自慢なんだ。勘弁しろ」
間違いない。それは正面からの、目の前の少年からの言葉だった。
まん丸に見開いた瞳で、彼の顔を確かめる。
そこには先ほどまでと同じ、笑顔があった。
「あ、あさ、あさ、あさあささ……」
「…………誰だよ」
「あさっぢぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
抱き起こしていた体に、今度は正真正銘、抱きつく。
涙と鼻水で塗れた顔を拭くように、少年の胸にすがり付いた。
34:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:12:28 F7e4OL1G
35:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:13:48 c+v97v5p
支援
36:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:13:49 PxRYBiz9
「ぐが…い、いてーっての…やめろ!ついでに汚いぞ!仮にも女だろ」
「だって…うぐ、だって…なんで…」
「笑えることにな、こういうの、初めてじゃないんだよ」
この浅月少年、以前にも学校の校舎の、それも三階から投げ落とされたことがある。
その時も、左腕や左足を怪我した程度で助かったほどのしぶとさの持ち主なのだ。
この学校の美術室も3階。おまけに落ちた先は植え込み。助かる見込みのある高さではある。
冷静に考えればわかることだ。
だが、こんな状況で人を突き落とし、誰がそこまで考えられるだろう。
宮子にとっては奇跡としか思えぬ状況だった。
「良かった……よ、よかっ、た……ごめん、ごめんよ、あさっち……」
やっと、少しだけ落ち着きを取り戻してきた声で、宮子が呟く。
ふぅ、とため息を1つ吐くと、浅月は言葉を放つ。
「忘れんなよ、宮子」
「え?」
「さっきの気持ち、忘れんな。人を殺しちまうってことは、そういうことなんだ。
とんでもない後悔に襲われて、二度と元には戻れなくなっちまう。それを忘れんな」
それは彼の実体験から来た言葉なのだろう。
一度手を汚した人間がどの様な人生を辿るか。それは誰より知っている。
彼自身に後悔はないとはいえ、人に歩ませたい道でもなかった。
そんな彼の心情を汲み取ったのか、宮子もまた、真剣な表情で答える。
「……うん、忘れない。忘れられないよ」
「なら、それでいい」
また1つ、ため息を吐く。
複雑そうな笑顔を浮かべ、少年は眼鏡の位置を直した。
「じゃあ…1つ聞かせろ。お前、なんなんだ?その格好」」
37:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:13:55 F7e4OL1G
38:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:14:36 c+v97v5p
支援
39:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:15:00 PxRYBiz9
◇ ◇ ◇
浅月を保健室に運びこむと、宮子が応急処置を始めた。
浅月の指示があるとはいえ、意外としっかり出来ているのには驚く。
治療を終えると浅月はすぐにここを出ようと言い出した。
「ダメダメ!そんな体で動いたらよくないよー!」
「ダメだ。九兵衛との約束もあるし、何よりここはやばいんだ」
浅月は簡単に中学校舎にいた危険人物の情報を伝える。
宮子もそれを聞いて顔を曇らせたが、それでも譲らなかった。
「せめて、病院いったほうがいいよー。その体で山道なんて危ないし」
「九兵衛との約束がある」
「じゃあ、あたしが一人で」
「ダメだ」
「なんでさー」
ぶーたれる宮子に、やれやれと頭をかきながら返事をする。
「ぶっちゃけ、俺一人でどっか行く方があぶねぇ。戦えないわけじゃないが…
何があるかわかんねーからな。誰かと一緒のほうがいいんだよ」
自分の体のことはわかっている。これはかなりのハンデになる怪我だ。
これでは亮子どころか、鳴海弟ですら守れるか怪しい。どちらかというと、守られる側だ。
情けない話だが、彼らを確実に守るには他者の協力が欠かせないだろう。
仲間を集うなら既に約束のある九兵衛を頼るのが今の所一番現実的だ。
最悪宮子を預けて、仲間の事を託したら自分一人で行動するくらいの気持ちでいる必要がある。
心の奥に、彼女を一人にするわけにはいかないという気持ちもあった。
「うーん、けどなぁ」
「安心しろ、こう見えてそれなりに頑丈なんだよ。とにかく今はここを離れることだ」
そういうと、有無を言わさず立ち上がる。
足は痛むが、歩けないほどではないのが救いだった。
「あ、あ、ちょっと待って」
「なんだよ、まだ文句あんのか?」
40:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:15:36 F7e4OL1G
41:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:15:51 c+v97v5p
支援
42:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:16:10 PxRYBiz9
少し強く言い返すが、宮子も立ち上がり準備を始めていた。
しかしその準備が問題。その場で服を脱ごうとしている。
「わーーー、バカ!何してんだ!!てっ…!!」
大声を出したので傷に響く。
宮子は何してんの?といった顔をしている。
「え、着替るんだよ?この服かわいいけど、動きづらいし」
「そういうことを言ってんじゃねー!」
「あ、あさっちってば、えっちー。外で待っててよー」
お前なぁ!と浅月から文句が飛ぶ。
ひと悶着の後、結局浅月は外で待ち、宮子は着替えを終えた。
「おまたせー」
再びやまぶき高校の制服に戻った宮子を連れて、浅月は歩き出す。
しっかりと警戒しながら学校を出ると、外はすっかり朝だった。
悪夢は未だ覚めないが、それでも朝はやってくるらしい。
浅月が前を行き、すぐ後ろに宮子がついていく。
校門に差し掛かったところで、宮子が口を開いた。
「あのさ、ヒロさんのこと、なんだけど…」
「……何だ?」
振り向かず、答える。
声は元気こそなかったが、彼女らしい明るいものだった。
「もう、ちゃんとわかったから。だから、だからさ、あさっち……」
「……」
黙り込むしかない。
少しうつむいて語る宮子に、浅月はかける言葉が見当たらなかった。
ただ、これだけは言える。今のコイツは、さっきまでとはちょっと違う。
ちゃんと向き合えるはずだ、このクソッタレな現実と。
後は向き合った現実と戦うだけ……ただ1つ、勝利を信じて。
「全部終わったらさ、一緒にお墓作るの、手伝ってよ。すんごく立派なヤツ」
「……生きてたらな」
どうしてこう気のきいたことが言えないのか。
頭をかく浅月の後ろで宮子は確かに、笑っていた。
43:浅月香介は二度死ぬ ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:16:51 PxRYBiz9
【G-2/中・高等学校裏門/1日目 朝】
【浅月香介@スパイラル~推理の絆~】
【状態】左腕骨折、肋骨にヒビ、左足首捻挫 打撲(全て応急手当て済み) 眼鏡にヒビ
【装備】 レガートの拳銃@トライガン・マキシマム
【所持品】支給品一式、手榴弾(ダミー)×2@スパイラル ~推理の絆~
薬品多数、フラスコ等実験器具数種類、薬や包帯多数、シーツ数枚、カーテン
【思考】
基本:亮子を守る。理緒や鳴海、ひよのとも合流して協力したい。
1:神社にて九兵衛と合流。使えそうな仲間を探す。
2:最悪、宮子や仲間の事を信頼できる誰かに託す。
3:ひとまず殺し合いには乗らないが、殺人に容赦はない
4:亮子が死んだら――
5:殺し合いには清隆が関与している……と思う
6:男女の二人組(由乃と雪輝)を要警戒
※参戦時期はカノン死亡後。ただし、彼の死をまだ知りません。
※宮子から「ひだまりスケッチ」関係の情報を得ました。
参加者ではゆの、沙英、ヒロについて詳しく聞いています。
※中・高等学校、高校校舎の大体の見取り図を把握しました 。
※デイバックの性質と、中に人が入れないことに気がつきました。
※殺し合いの主催者が清隆であると睨んでいます。
【宮子@ひだまりスケッチ】
【状態】健康、精神的疲労(中)
【装備】
【所持品】支給品一式、メイドリーナのフィギュア@魔王JUVENILE REMIX、ハヤテの女装服@ハヤテのごとく!
筆と絵の具一式多数、クレパス一式多数、スケッチブック多数デッサン用の鉛筆や木炭多数
缶スプレー塗料数種類多数、彫刻刀一式多数、粘土多数 キャンバス多数
【思考】
基本: 絶対に殺し合いはしない。逃げ出さない。
1:あさっちを助ける
2:ゆのっち達とはやく合流する
3:全部終わったら、ヒロさんに立派なお墓を作ってあげる
※殺し合いについてしっかりと理解しました。
※浅月から亮子について詳しく聞いています。
鳴滝歩や他の知り合いまで知ってるかどうかは次の書き手に任せます。
※デイパックの性質にはまだ気がついてません。
【手榴弾(ダミー)@スパイラル ~推理の絆~】
その名の通り、手榴弾のダミー。ぱっと見では区別がつかないくらいに精巧。
もちろん爆発はしないので、武器としてはほとんど使えない。
44:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:16:57 F7e4OL1G
45: ◆lDtTkFh3nc
09/10/15 22:19:02 PxRYBiz9
以上で投下終了です。長々とすみません。
支援ありがとうございました、助かりました!
46:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:20:50 F7e4OL1G
投下お疲れ様です!
躊躇も容赦も慈悲もない由乃に吹いたw いきなりそんなもんぶっ放すなw
そしてこーすけ、天然ジゴロだなお前! 代償は大きかったが、しかしキメるところはキメててカッコよくもあり。
人を手にかける重みをしっかり伝えられていてお見事。
スパイラル勢は何だかんだでしぶといなあ、やっぱり何か補正でも受けてるんだろうかw
47:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:21:28 c+v97v5p
投下乙
あさっち……なんというラブコメ野郎……
宮ちゃんはなんとか立ち直ったか。
ひだまり勢の中でも精神的にタフな彼女でもこのありさま。
お母さん役の死を知った他の面々の反応や如何に。
48:創る名無しに見る名無し
09/10/15 22:36:20 HoNDzkXH
投下乙です
浅月がヤンデレに襲われるのは予想してたけど生き残ったか
ユッキーのおかげで生き残れたがお互い損のあるコンタクトだったな
そして浅月が落ちた時はまさかと思ったが生きてた。よかった~
宮子、どうなるかと思ったが立ち直ってよかったぞ
俺としてはあの服のまま行動して欲しかったがw
49:創る名無しに見る名無し
09/10/16 00:50:12 DloTT8kM
今回は誰も死ななかったが前回からのを含めて放送直後でもう三人死亡か
順調順調w
しかしブラック・ジャックの方がキリコより先に死亡してたのか
50: ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:04:35 coCAXvr4
ミッドバレイ投下します。
51:魔人、憐れなるかな ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:05:35 coCAXvr4
奏でるのはコンチェルト。
絶望の音。
恐怖の音。
苦しみの音。
それぞれが混ざり合い、紡がれる音のハーモニー。
奏者はGUNG-HO-GUNSの「音界の支配者」、ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク。
第一楽章は第一放送をもってカーテンフォール。
すばらしい演奏でした。
なんてったって二人も死の音に取り込んでしまったんですから。
続く第二楽章。
どんな演奏をしてくれるのでしょう。
では、第二幕の始まり、始まり。
決して抜け出すことのできない闇の底でのコンサートが――
♪ ♪ ♪
ミリオンズ・ナイブズ。
あれは人という存在から逸脱している。
52:魔人、憐れなるかな ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:07:19 coCAXvr4
常識的な所が全く無い。
あの方の目。
目がものすごく怖かった。
俺の仲間を何の感慨も無く殺していったあの目。
俺は恐怖に屈しGUNG-HO-GUNSとして邪魔になる者全てを葬った。
性別。年齢。職業。何でも問わずだ。
ただひたすらに殺した。
機械の如く淡々と。
それでも恐怖は募る一方だった。
あの目は変わらない。
結局俺はあの方の都合のいい道具に過ぎない。
いや、道具ですらないか。
ただの捨て駒。
あの方の掌で踊るこっけいなマリオネットだろう。
いや、俺だけじゃない。
GUNG-HO-GUNSが。
レガート・ブルーサマーズが。
あの方にとってこの世界全てをそのように見ている気がする。
しかし、俺は……
ここでもまた俺は怯えなきゃいけないのか―
ガタガタみっともなく震えて。
立ち向かう?
無理だ。震えが止まらない。
ああそうさ。
今もまだショックから立ち直れない俺は傍から見れば確かにみっともなく見えるだろう。
でも仕方ないじゃないか!!
怖いものは怖いんだよ!!!!
っ……!落ち着け…………落ち着くんだ!ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク!!
53:魔人、憐れなるかな ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:09:15 coCAXvr4
はぁ、はぁ…………。
素数……素数でも数えて落ち着こう。
2……3……5……7……11……13……17……19……
ふう。少しは落ち着いた。
クールに考えよう。
少なくとも自分が知ってる中ではあの方以外に二人『化け物』がいる。
一人目。
レガート・ブルーサマーズ。
あの方直属にして腹心の部下であり、GUNG-HO-GUNSのナンバーズとは一線を画す存在。
ただあの方への忠誠を示すことのみを唯一の存在意義としている心の『化け物』。
二人目。
ヴァッシュ・ザ・スタンピード
あの方と同じ次元の異なる存在で肉体的な『化け物』。
自分が知ってるだけでも三人。
それにそれ以外にもまだ『化け物』はたくさんいる。
ここは異常だ―
俺にここまで言わしめる狂気。
ふん、俺だって普通の人間から見れば充分に『化け物』なのにな。
戯言だな……
54:魔人、憐れなるかな ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:11:07 coCAXvr4
♪ ♪ ♪
ひたひたと。
朝日で照らされた道路を歩く。
しかし朝日が眩しいな。
燦燦と照っている朝日が恨めしい。
俺の心の中は闇で染まっているというのに。
あの方に対しては会わないことを祈るしかない。他の二人についても同様だ。
あれから俺は次の獲物を探そうと歩き始めた。
おっと、獲物から殺す前に先程動揺したせいであまり聞き取れなかった放送の内容を聞かなければ。
さぁ、どこへ向かうかな?
【B-5西部/路上/1日目 朝】
【ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク@トライガン・マキシマム】
[状態]:右足打撲
[服装]:
[装備]:イガラッパ@ONE PIECE(残弾60%)、エンフィールドNO.2(2/6)@現実
[道具]:支給品一式 真紅のベヘリット@ベルセルク、鳴海歩のピアノ曲の楽譜@スパイラル~推理の絆~、銀時の木刀@銀魂
[思考]
基本:ゲームには乗るし、無駄な抵抗はしない。しかし、人の身で運命を覆すようなヤツと出会ったら…?
0:ナイブズ、ヴァッシュ、レガートに対する強烈な恐怖。
1:積極的に参加者を襲って情報と武器(特に銃器)を得る。
2:強者と思しき相手には出来るだけ関わらない。特に人外の存在に強い恐怖と嫌悪。
3:愛用のサックスが欲しい。
[備考]
※ 死亡前後からの参戦。
※ ハヤテと情報交換し、ハヤテの世界や人間関係についての知識を得ています。
※ ひよのと太公望の情報交換を盗み聞きました。
ひよのと歩について以外のスパイラル世界の知識を多少得ています。
殷王朝滅亡時点で太公望の知る封神計画や、それに関わる人々の情報を大まかに知っています。
※呼吸音や心音などから、綾崎ハヤテ、太公望、名称不明の少女(結崎ひよの)の死亡を確認しています。
※ 放送の後半部分を聞いていません。
55: ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:12:11 coCAXvr4
短い話ですが投下終了。
56:創る名無しに見る名無し
09/10/16 22:24:56 LLm5pD16
投下乙です
とりあえずは落ち着いたが問題の先送りというかなんというか
何の解決にもなってないのがロワらしいかなw
57:創る名無しに見る名無し
09/10/16 22:30:23 Rm4rdGP3
投下乙
やっぱり動揺しているなw
リアリストがどうにもならない現実と対峙した時どうなるのか
これからが楽しみだ
58:創る名無しに見る名無し
09/10/17 02:30:47 c9pWa2sZ
>>20
H-3とありますが、G-2では?
とりあえずwikiにはH-3のまま収録しておきますので、間違っていたら報告お願いします。
59:創る名無しに見る名無し
09/10/17 14:36:19 c9pWa2sZ
しかし、もしかするとあの霊能者が死んでもその辺徘徊しているのかな……
金票さんあたりなら目撃出来そうだが
60: ◆lDtTkFh3nc
09/10/17 21:34:04 NAizBoWh
>>58
対応が遅れて申しわけないです。
ご指摘の通りですね、ありがとうございます。
wikiは自力で何とかしておきます。
61:創る名無しに見る名無し
09/10/18 02:41:19 sn9aoY9k
今気付いたけど、>>1の前スレが4巻だなw別にいいけど。
あとTOUGH BOY検索して吹いたwたっぽいたっぽいって歌詞かよw
んで、とらの状態表が本文中の描写と異なるのでは?
雪路に変身中はもういらなくね?
作品投票はもうこれで終了かな?
事前の話し合いにはもうちょっと人いたような気がしたけど、まぁ予想通りか。
したらばとか借りなくて良かったな
銀の意志Ⅰ~Ⅳ 8P
殺伐フレンズ 5P
夜明けだョ!全員集合(前後編) 3P
Men&Girl~ピカレスク~
Men&Woman&Boy&Girl~英雄譚~ 1P
指し手二人 1P
かな
62: ◆JvezCBil8U
09/10/18 22:56:36 VjFkrcDX
>>61氏
……とと、その通りですね。
ご指摘ありがとうございます。直しておかないと……。
63: ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:41:39 H5SmpRnj
いきなりですが、胡喜媚、高町亮子、竹内理緒、ミッドバレイ・ザ・ホーンフリークを投下します。
64:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:42:44 H5SmpRnj
彼は明確な理由があって病院を目指した訳ではない。
強いて言うなら、ケガ人などの弱者が集まる公算が大きいことと、現在地から比較的近いこと。
その程度の理由だった。
もし病院に辿り着くまでに別の獲物を見つけていたら、あっさりとそちらに狙いを切り替えたことだろう。
しかし、誰とも遭わなかった。
彼らの運命はそんなことで定まってしまった。
運命とは一体何なのだろうか?
そのリアリストに訊けば、きっと陰鬱な眼を向けてつまらなさそうにこう答えるのだろう。
『どうにもならない偶然のことだ』
***************
静かな病室に二つの寝息だけが響いている。
一つは高町亮子のもの。
故あって中学生かそれ以下のような姿になっているが、彼女はれっきとした高校生である。
彼女は川に落ちたためか肺炎にかかり、今ベッドで眠ることを余儀なくされている。
もう一つは胡喜媚のもの。
ナース服を着ているが、別に彼女に看護師としての能力があるわけではなく、単なる趣味である。
彼女は初めは真面目に亮子の汗を拭いたりタオルを換えたりしていたのだが、容態が安定したため、気が緩んで彼女の横で居眠りをしている。
病院独特の匂いが辺りに満ちていた。
ベッドが並んだ一般的な病室。
閉め切られた窓の外からは朝の柔らかな陽が射し込み、その向こうには青空が広がる。
やはり窓から見える背の高い常緑樹の枝には小鳥が留まり、歌っていた。
至極平和な光景。ここだけを見ればとても殺し合いの場とは思えない。
突然、病室のドアが無造作に開かれた。
だが、ドアノブを回す音も、蝶番が軋む音も聞こえない。
それもそのはず、ドアの発する音は全てキャンセルされていたのだから。
やはり音も無く正面から病室に侵入した長身の男、ミッドバレイ・ザ・ホーンフリークによって。
無音の演奏を続けながら、闖入者は歩く。
特に妨害も無く、彼は病室の中央のベッドに辿り着いた。
一旦演奏を止め、見下ろす。
ベッドの二人は気付かない。
もったいぶるように、無言で鈍く光る銃を取り出す。
まだ気付かない。
再び演奏を開始して、銃口を眠る喜媚の額にポイントした。
それでも、彼女は気持ち良さそうに寝ている。
引金に指を掛ける。
目を細めて、指先に殺意を込め――、
65:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:43:41 H5SmpRnj
いきなり、喜媚がバネ仕掛けの玩具のように跳ね起きた。
「何!?」
慌てて跳び退くミッドバレイ。
喜媚の頭に狙いを定めたまま、退がる。
様子がおかしい。彼女は薄目を開けているもののその焦点は定まらず、身体はゆらゆらと揺れている。
だがその隙だらけの見た目とは対照的に、発せられるプレッシャーは『魔人』ですら戦慄するほどのものだ。
ミッドバレイはさらに一歩後ずさる。
「Buu~ Buu~☆ 亮子ちゃんをいじめちゃダメなのっ☆
ロリロリリン☆」
どろどろどろんっ☆
緊張感の無い掛け声と共に喜媚の姿が変化する。
ミッドバレイは思わず我が目を疑った。
少女の姿は掻き消え、代わりに立っていたのは漆黒の隻眼剣士。
鉄塊と見紛う程の巨大で分厚い剣を構え、黒い外套を翻す。
それは直前で喜媚達が別れた戦士、ガッツの姿そのものだった。
「チィ!」
直感的に、危機を察知した。
即座に身を翻し、開いたドアから逃げ出そうとするミッドバレイ。
そこに弾丸のような勢いで黒い剣士が突っ込む。横薙ぎに振るわれる大剣。
室内に風が奔る。
間一髪ドアから転がり出るミッドバレイ。
「く……このっ……」
背中の肉を僅かに抉られた。白いスーツに血が滲む。
ほんの少し反応が遅れていたら、今頃彼の身体は真っ二つになっていたことだろう。
「LlLOOoOOOooo!! LliIiiieEee!!!!」
野太い咆哮を上げながら、黒い剣士は廊下を突進する。
ミッドバレイは走りながら背後に向けて発砲。
だが弾は剣士の持つ巨大な剣に弾かれる。牽制にもならない。
クソッ。油断した。
不用意に近付いた俺が馬鹿だった。
あわよくばもう片方のガキから情報を引き出そう、などと欲を出すべきではなかった。
姿形など実力を判断する基準になどなりはしないというのに。
そんなことは嫌というほど知悉していたはずだったのに。
化け物め―。
逃げる。ただ逃げる。
リノリウムの廊下を無様に逃げる。
この距離では銃のアドバンテージは無きに等しい。
一旦引き離さねば殺される。
巨体に似合わぬ速さで追い縋る黒い剣士。距離は開かない。
苦し紛れに三叉路を左へ。
黒い剣士は―、
66:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:44:50 H5SmpRnj
「……何、だ?」
黒い剣士はミッドバレイが曲がった三叉路をそのまま直進し、その先にある扉を破壊し始めた。
分厚い金属がひしゃげる派手な音が聴こえる。
ミッドバレイは足を止めて困惑していた。
何が起こった? 目の前で曲がったんだぞ? まさか俺が見えていなかったとでもいうのか?
訳が分からない。分からないが―しかし逃げるチャンスであることは確かだ。
いつまた奴が戻ってくるか分からない。ここで考え事をするのは愚策というものだろう。
ならばここは状況が『聴こえる』ギリギリの距離まで遠ざかるべきだ。
時間にして数十秒。破壊の音が続き、生命の音が二つ失われた。
元来た道を戻る剣士の足音。それが途中から変質し、少女のそれと取って代わる。
そして破壊された部屋から唯一の命が、外へ。剣士の後を追って行く。
数分後、レントゲン室に一人佇むミッドバレイがいた。
竜巻が通ったかのような光景。精密機械の群れは今やスクラップの山と化していた。
スクラップの中の、頭を失った女と無残に切り裂かれた男の死体に目を遣る。
そしてむせ返る血の匂いを気にも留めずに、その二人が確実に死んでいることを確かめる。
―やはり死んでいる。ミッドバレイを誘き出すための見せ掛けの仲間割れ、というわけではない。
レントゲン室の中心で、彼は憮然とした様子で虚空に問い掛ける。
「結局、何だったというんだ……?」
彼の疑問に答える者はいない。
彼には『何が起こったか』は判っても『何故起きたか』は解らない。
だから喜媚は単に寝惚けていただけであり、彼が襲われたのは喜媚が殺意に反応した結果であり、
レントゲン室の惨状は彼女が理緒を助けようと思って暴れた結果であり、
目的を果たしたと思い込んだ喜媚はそれで満足して病室に帰ったのだ、などと思い至ることはない。
故に彼は考えるのを止めて必要な行動を開始した。
外に注意しながら部屋の中を物色する。程なくして二人分のデイパックが見つかった。
「悪く思うなよ。俺も余裕など無いんでな」
祈りの代わりにかそう呟くと、ミッドバレイは彼らの荷物を回収してその場を後にする。
空になった部屋で、バラバラになった機材からパチリと弱々しい放電が起こった。
***************
理緒が祈るように扉を開けると、そこには平穏があった。
ベッドの上で健やかな寝息を立てる亮子と、その布団にもたれかかるように眠る喜媚。
知らず零れ落ちる涙と共に、埒もない希望が頭をめぐる。
やっぱりさっきの光景はあたしの白昼夢だったんじゃない?
だってガッツさんとはちょっと前に別れたはずで。
彼はブラック・ジャック先生と妙さんの仲間だったはずで。
67:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:45:42 H5SmpRnj
ああ、いや、駄目だ。そんな甘い考えじゃいけない。
さっきのは、紛れもない現実だ。受け入れないと。
ガッツさんの事情なんて分からないけど……彼はもうあたし達の『敵』なんだ。
涙を制服の袖で拭って立ち上がる。
そう、呆けている場合ではない。
ガッツはこの病室の場所を知っている。とにかくまずはこの場から離れることだ。
だが彼の動きが見えない以上、鉢合わせする可能性の高い病院の出口へ向かうのは危険だろう。
とはいえ、その点は問題にならない。喜媚の能力があれば窓から空へ逃げられるのだから。
理緒は急いで生乾きの亮子の服をデイパックに詰め、肺炎の薬とついでに医学書も放り込む。
そして喜媚を揺り起こそうと彼女の肩に手を掛け―気付いた。
そうだ。先程の惨劇はガッツの仕業とは限らない。
もう一つ、可能性があった。もう一人、出来る者がいた。
理緒は別れる直前の、理性を持ったガッツの言葉を思い出す。
『おい、あの化け物女とは早いとこ別れといたほうがいいぜ。
人間と、化け物じゃ所詮生きる世界が違うんだからな』
彼が化け物と呼んだ者。胡喜媚。
彼女の変身能力を使えば、ガッツの振りをすることも容易だろう。
つまり。
喜媚は、彼女は、実のところ全て計算尽くで行動していたのではないか?
亮子を見つけたのだって本当は偶然などではなかったのでは?
わざとガッツ達に発見されるような道を選んだ可能性は?
理緒を殺さなかったのもガッツに罪を擦り付けるためだったのでは?
首を振る。
いや、いやいや。そもそも喜媚ちゃんがそんな手の込んだことをする理由は?
ああ、でもそれはガッツさんだって同じことか。
喜媚の肩からゆっくりと手を離す。
そして―気持ち良さそうに上下する彼女の胸に銃口を向けた。
確証なんて無い。
確証は無いけど……連れ歩くにはこの子はやっぱり危険過ぎる―と思う。
それに、亮子ちゃんを護るため、という大義名分もある。
いっそ不確定要素はここで排除した方が……。
引金に指を掛ける。
目を細めて、指先に殺意を込め――、
なかった。
銃口を下げ、深い息を吐く。
68:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:46:28 H5SmpRnj
「らしくないなぁ……」
どうもさっきから判断が拙速過ぎる。事態に翻弄されていると感じる。
冷静に考えれば、やはり喜媚がそんな凶行に及ぶメリットは無いのだ。
それに殺すなら皆殺しの方が、後に禍根を残さない確実な選択だといえる。
こんな中途半端な殺し方はガッツへの嫌がらせ程度の意味しかない。
考えてみれば、実は喜媚と同じような変身能力を持つ第三者の仕業、という可能性だってある。
この場合は強敵である喜媚に対する間接的な攻撃となる。病室を襲わなかった理由にもなる。
まだこちらの方がマシな仮説かもしれない。
何にせよ喜媚の仕業だと決め付けるのは論理的ではない。
それに何より―、
「……ん~~~~ロリンロリン☆」
妙な寝言を呟きながら至福の表情で眠る、この態度が演技だとは思えない。
一度深呼吸をして、辺りを見回してみる。
院内は、先程の騒ぎが嘘のように静かだ。
今はもう、あのガッツのような人物が暴れまわっている様子はない。
念のため部屋は移動すべきではあるが、慌てて逃げ出すよりも、むしろ院内に留まった方が安全かもしれない。
それに気が動転して忘れるところだったが、ブラック・ジャック達の荷物も取って来なければ。
本当に、らしくない。
病室のドアを慎重に開いて一歩外に踏み出す。
顔が爆ぜた。
肉と頭蓋骨と脳のブレンドが壁や床に飛び散り抽象画を描く。目玉が一つ、遠くへと転がっていった。
何が起きたか理解出来ない、とでもいうように、背が低くなった理緒が立ち尽くす。
僅かな間。
彼女の身体は支えを失ったように廊下に崩れ落ちた。比較的大きな脳の欠片がその下敷きになって潰れた。
廊下の奥からミッドバレイが滲むように現れ、ゆっくりと理緒の傍まで歩いて来る。
一連の出来事に病室の中の二人は気付けない。良く出来たサイレント映画だった。
彼は、頭部を失った理緒には一瞥もくれずに、デイパックとベレッタを拾い上げる。
そして開いたままのドアから病室を覗いた。相も変わらず、まるで時が止まったように平穏な光景。
彼は珍獣を見つけたかのような面持ちでしばらく病室の中央で眠る二人を眺めて―やがて音も無く立ち去った。
【竹内理緒@スパイラル ~推理の絆~ 死亡】
69:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:47:31 H5SmpRnj
【D-2/病院/一日目 午前】
【胡喜媚@封神演義】
[状態]:疲労(中)、いねむり
[服装]:ナース服
[装備]:如意羽衣@封神演義
[道具]:支給品一式
[思考]
基本方針:???
1:妲己姉様やスープーちゃん達、ついでにたいこーぼーを探しに行きっ☆
2:理緒ちゃんと亮子ちゃんは喜媚が守りっ☆
[備考]
※原作21巻、完全版17巻、184話「歴史の道標 十三-マジカル変身美少女胡喜媚七変化☆-」より参戦。
※首輪の特異性については気づいてません。
※或のFAXの内容を見ました。
※如意羽衣の素粒子や風など物や人物以外(首輪として拘束出来ないもの)への変化の制限に関しては不明です。
※『弟さん』を理緒自身の弟だと思っています。
※第一回放送をまったく聞いていませんでした。
※原型の力が制限されているようです
【高町亮子@スパイラル ~推理の絆~】
[状態]:疲労(特大)、打撲&背中に打ち身(処置済み)、肺炎(処置済み)、睡眠中、若返り
[服装]:裸
[装備]:毛布
[道具]:なし
[思考]
基本:この殺し合いを止め、主催者達をぶっ飛ばす。
0:…………。
1:なんで子供に……
2:理緒や喜媚と協力してこの殺し合いを止める
3:ヒズミ(=火澄)って誰だ? 鳴海の弟とカノンは、あたし達に何を隠しているんだ?
4:できれば香介は巻き込まれていないといいんだけど……
5:あのおさげの娘(結崎ひよの)なら、パソコンから情報を引き出せるかも。
6:そういや、傷が治ってる……?
7:エドの力に興味。
8:エドや流、うしお、知らない女の子(咲夜)は助かったのだろうか。
9:流の行動に疑問。
[備考]
※第57話から第64話の間のどこかからの参戦です。身体の傷は完治しています。
※火澄のことは、ブレード・チルドレンの1人だと思っています。
また、火澄が死んだ時の状況から、歩とカノンが参加していることに気付いています。
※秋瀬 或の残したメモを見つけました。4thとは秋瀬とその関係者にしか分からない暗号と推測しています。
※聞仲とエドの世界や人間関係の情報を得ました。半信半疑ですが、どちらかと言えば信じる方向性です。
※中1前後の年齢に若返っています。元に戻るかどうかは後続の書き手さんに任せます。
70:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:48:18 H5SmpRnj
【ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク@トライガン・マキシマム】
[状態]:右足打撲、背中に裂傷
[服装]:白いスーツ
[装備]:イガラッパ@ONE PIECE(残弾50%)、ベレッタM92F(15/15)@ゴルゴ13
[道具]:支給品一式×4、真紅のベヘリット@ベルセルク、鳴海歩のピアノ曲の楽譜@スパイラル~推理の絆~、
銀時の木刀@銀魂、月臣学園女子制服(生乾き)、肺炎の薬、医学書、ベレッタM92Fのマガジン(9mmパラベラム弾)x3、
エンフィールドNO.2(1/6)@現実、クリマ・タクト@ONE PIECE、ヒューズの投げナイフ(7/10)@鋼の錬金術師、ビニールプール@ひだまりスケッチ
[思考]
基本:ゲームには乗るし、無駄な抵抗はしない。しかし、人の身で運命を覆すようなヤツと出会ったら…?
0:ナイブズ、ヴァッシュ、レガートに対する強烈な恐怖。
1:積極的に参加者を襲って情報と武器(特に銃器)を得る。
2:強者と思しき相手には出来るだけ関わらない。特に人外の存在に強い恐怖と嫌悪。
3:愛用のサックスが欲しい。
[備考]
※死亡前後からの参戦。
※ハヤテと情報交換し、ハヤテの世界や人間関係についての知識を得ています。
※ひよのと太公望の情報交換を盗み聞きました。
ひよのと歩について以外のスパイラル世界の知識を多少得ています。
殷王朝滅亡時点で太公望の知る封神計画や、それに関わる人々の情報を大まかに知っています。
※呼吸音や心音などから、綾崎ハヤテ、太公望、名称不明の少女(結崎ひよの)の死亡を確認しています。
※放送の後半部分を聞いていません。
※病室の前に携帯電話を所持した理緒の死体が放置されています。
71: ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:49:20 H5SmpRnj
以上で投下終了です。
72:創る名無しに見る名無し
09/10/19 11:35:00 OItIWNmd
投下乙です
うわ、確かに喜媚犯人説は考えていたがこういうことだったのね
ミッドバレイは余計なことをしていきました。でも本人も何がどうなったのかわかりませんw
理緒は不運が続いて退場となったが喜媚殺害を思いとどまったか。ブレチルの運命に負けなかったと言うべきかな
ここで殺すのは惜しいかもしれないけどこれはこれで美味しいかも
眠り姫の二人が目を覚ましたらどうなるか? 次の放送が流れたらどうなるか?
先が気になる展開でした
73:創る名無しに見る名無し
09/10/19 15:01:08 xQhbewyU
やっとスパイラルキャラが死んだ。乙
74:創る名無しに見る名無し
09/10/19 16:26:18 x04X5Voq
投下乙
でもなんで、二人は始末しなかったんだろ?
化けものヤバいってんならそもそも手を出さないはず
75:創る名無しに見る名無し
09/10/19 19:26:13 5Gstdn6l
神視点の俺らだからそういえるけどあの状況だと迂闊に相手したくないぞ
76:創る名無しに見る名無し
09/10/19 19:31:23 WckOvRY1
投下乙です。
ミッドバレイは運があるんだかないんだか…
しかし、トラブルメイカーとは彼女のようなのを指すんでしょうね、喜媚w
理緒がつくづく残念ですが…マーダーにならなかったのがせめてもの救いですね。
77:創る名無しに見る名無し
09/10/19 21:12:11 YH/tMzoR
投下乙です
ガッツの忠告が最悪の形で実現したか・・・しかも当の本人は悪気なしときたもんだw
78:創る名無しに見る名無し
09/10/19 22:31:11 rTSkql8K
投下乙です
喜媚、お前ってやつは……
>>74
ミッドバレイは慎重かつ大胆だよ
まともにやったら負けるヴァッシュ&ウルフウッドにもブレながら挑んだ
確実に殺しにかかって、ちょっと相手の様子見て、また確実に殺しにかかって、相手の様子見て……という感じ
喜媚たちを絶対殺さないといけない状況じゃないから様子見たかと
戦闘狂じゃなくて殺し屋だし
79:創る名無しに見る名無し
09/10/19 22:37:57 L4iALr55
ああ、なるほど。
まだ病院内にいるもんな。
ってことは、今後の反応によっては皆殺しもありうるのか
80:創る名無しに見る名無し
09/10/19 22:44:24 g/vZrvOU
喜媚を倒せる算段次第だろうな
ラストの状況で正面からもう一度挑む程無謀じゃないだろうし
81:創る名無しに見る名無し
09/10/19 22:50:56 aO+Zi6x8
ミッドバレイは地味だけど堅実に強いからな。
今回で実はトップマーダーになってるしw
下手な勝負手打たず奇襲に徹すれば確実に対主催削っていける能力の持ち主だしなあ。
82:創る名無しに見る名無し
09/10/19 23:37:05 n51Wdh1R
無差別マーダーは命知らずが多いからな
ああいう暗殺者的なキャラは貴重だ
83:創る名無しに見る名無し
09/10/20 16:10:26 xr8uyulq
ギャグ漫画がバトル漫画になった件
84:創る名無しに見る名無し
09/10/20 16:15:28 KcmfEYCr
心当たりが多すぎて分からん
でもこのロワの関係だとハヤテか?
つーかハヤテも最近の展開見てると主催候補の一つだな
85:創る名無しに見る名無し
09/10/20 19:35:21 ECcI5JwO
主催やりそうな財団多すぎw
86: ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:43:41 1ktFSruH
安藤潤也、金剛晄(金剛番長)、白雪宮拳(剛力番長)、妲己投下します。
えーと、今回のお話は微グロなので、嫌悪感や不快感を示される方は注意してもらえればと。
87:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:45:17 1ktFSruH
死神の足音が聞こえる。
もう、すぐ傍だ。
たぶんこのまま自分は助かることもない。
さながらクラレッタのスカートを直すかのように、理不尽に立ち向かった結果がこの有様だ。
ああ……、なんという惨めな末路なのだろう。
文字通り臓物をブチ撒けて、脳天ど真ん中に開いた孔から命が流れ出していく。
これじゃあ、考えて、考えて、考えることすらできはしない。
知ったことか、と、本当にその一言だけで解決できたのならどれだけこの世は芳醇だったろうか。
つい先刻までの同道者の顔を思い出そうとして―、止めた。
振り返るべきは、ここに連れ去られる前にどうして辿り着けなかったのかという後悔だけでいい。
「……兄貴、どうして」
どうしてあんな行動に出たのかと、今わの際のここに至ってすら繰り返し、問う。
結局彼の真意にすら辿り付く事は出来なかった。
今まで出合ってきた様々な人間の顔が、走馬灯として流れていく。
バカジャナイノー、とすぐ近くで誰かが呟いた気がした。
消灯ですよ。
**********
時はしばし、遡る。
**********
「太公望ちゃんがやられたみたいねぇん。
あはん、あの子はこの場にいる仙道の中でも最弱……。
人間ごときに負けるとは道士の面汚しよん」
最悪、極悪、凶悪、劣悪。
蝿の王の如き暴言をあまりにもあっさりと告げた後。
悠然と泰然と、妲己は己が仇敵の存在とその死を一瞬だけ心に留め、それきり放り捨てて奥底に沈める事にした。
はや思い出すことはなく、浮上する事もなし。
無論彼にはそれなりに思い入れがあったが―、それも生きている太公望に対してであって死体と話す趣味はない。
結局それを意識するのが面倒くさいと、そう思うことすら面倒くさいと切り捨てた。
これが妲己なのだから、まあ、それについてとやかく言うのは止めておこう。
“そんな事”より今は別のことを考えるほうがずっとお得でポイントセール。
放送を噛み噛み口の中で転がし、一人ごちる。
88:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:46:48 1ktFSruH
「どうやら神の陣営も一枚岩じゃないのは確かみたいだけどぉん、あまりにも見せ方があからさますぎるわぁん。
“わらわを拉致できるくらい”の存在が、こんな簡単に手下に出し抜かれるはずはない。絶対に、ね。
……と、なると」
くすくすと、哀れで惨めな道化女を嘲笑いながら鼻歌を。
「いい趣味してるわねぇん、“神”はわらわと気が合いそうだわん。
わざわざ『付け入る隙を演出して』、大多数の参加者に幻の希望を見せ付けるなんて、わらわゾクゾクしちゃうん。
必死になって、命を賭けて、ようやく何かを伝えようとした放送の女も、全部計算通りの動きしかしてないってことよねぇん」
どこか放送の趣向に相通じるものでも感じ取ったのか、妲己は朝霧の中を闊歩しながら素直に賞賛の言葉を送る。
それが自分を踊らせんとする存在であっても構わない。
むしろ、その手口が実に好ましいからこそ受け入れる。拍手する。
それこそが己の度量の広さと言わんばかりに。
ぱちぱちぱちぱち。
「最後の最後に奪い取る為だけに希望を与えるなんて、わらわでも作るのに一苦労する状況だわん。
気づいていようと気付いていなかろうと、人間らしい感情の持ち主ならまず心が受け入れられないでしょうねぇん」
何の為にそんな事をするのか、それを推し量るのは無粋というもの。
答えなど一つしかない。
徹底的に自分達を屈服させて、“神”とやらの指図を受け入れざるを得ない心持ちにする為だ。
楽しみだ、とペンライトのように指を振り振り。
当然分かっていてそれに乗るつもりもないが、どこかワクワクする気分も確かにある。
この自分をそんな状況に追い込む事が出来るなら、是非ともやってみせて欲しいものだ。
そしてその自信があるからこそここに妲己を招き、アピールしてみせているのだろう。
申公豹をも従わせた“神”の不敵さが非常に心地よい。
鼻っ柱をヘシ折って、ぐじゅぐじゅに踏み潰してあげたいくらいに。
「さしあたっては喜媚との合流が当面の目的かしらぁん。
あの子の事だから遊びが高じて味方を一人か二人殺しちゃってるかもだけど、まあそのくらいは多めに見ちゃうわん。
どうせわらわの邪魔になる連中には死んでもらうことになるんだしぃん」
現状何だかんだ言ってまだまだ戦力が足りないのは確かだが、自分の妹は確かに頼りになるはずだ。
味方と書いて手駒と読む関係こそが妲己の望むもの。
必要なのは甘い夢に誑かされる純粋(おろか)さや、利用されるのを分かっていて敢えて操り糸を託してくるような狡猾さを持つ人材である。
無論、多少の跳ねっ返りも許容しないわけではない。
これから手駒を集めていく際、当然中にはあからさまに自分を嫌悪するものも出てくるだろう。
自分のやり方が好まれるものではないのは最初から織り込み済みだ。
上手く使えば、むしろ自分に敵意を持つものの方がいい働きをしてくれる場合すらある。使い捨てる場合なら特に。
自分を誘蛾灯にして“神”に対抗しようとする人材も危険人物も誘き寄せ、優秀な人材を選別する。
そこまでの過程で参加者同士が勝手に殺し合うのは目論見通りだ。
だがその後―、せっかく掌の上に集めた戦力を下らない小競り合いで零してしまっては元も子もない。
後々を見越した場合、頭角を現して、尚且つ迎合や協調を望めない芽は潰しておいた方が明らかに効率的である。
そう、例えば激昂した聞仲の様な。
―聞仲。
死んだはずの男が、今ここにいるという。
89:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:48:48 1ktFSruH
「……そうそう、あの二人の事も考慮に入れないといけないわねぇん。
まあ、蘇生そのものはわらわ達の時代じゃありえない事じゃないから、そんなに気にする事でもないでしょうけどぉん。
王天ちゃんはいい例だし、復活の玉なんてモノもあるわよねぇん。
魂魄さえ残っていれば肉体を与えてやれば済む事でしかないわん」
とは言えあの男はそれなりに賢いから、刺激しすぎなければそれなりの共闘は可能かもしれない。
聞仲はひたすらに殷に執着していた。妄執といっても過言ではなかろう。
逆を言えば、結果的に殷の利になるならば、仇敵と手を組む事すら辞さない男なのである。
厄介なのはそういう損得計算にすら頭が回らず、人の言葉を理解できないお猿さんの類だ。
そして残る一人―趙公明は色々と使えるかもしれない。
なにせ女カの存在を知っていながら、それでもなお自分の趣味の命ずるままに動く人間なのだから。
あの男なら、舞台の上で踊らされるままのこんな殺し合いを否定するか?
否。
むしろ自分から連中に協力すると言いかねない。
踊らされるのではなく、自らの意志で舞台に飛び込み踊るのが趙公明だ。
この殺し合いを優雅にする為に、という理由だけで、あの男は好き放題やることだろう。
そ・れ・に・し・て・も。と、節操ない速度で思考が切り替わる。
死者といえば。
「……解せないわねぇん。どうしてわざわざ、『名簿に死者が自動で記される』のかしらん。
これじゃあ、死んだ人間を生きていると偽って弄ぶ事ができないわぁん」
たとえば、
『自分が人を殺したと思い込んだ人間に放送を聞かせず、その勘違いのままに殺し合いに乗せる』
ような遊び方も出来ないではないか。
そもそもの放送の意味すら薄れてしまう。
“神”がそんな手落ちをするとは思えない。
「―首輪と合わせて、色々と確かめてみたいわねぇん」
多分この名簿は、単純に放送と同時に死者の名が赤く染まるわけではないはずだ。
どういう条件で名簿の名が赤く染まるかそれは大体想像がつくが、その検証の為には実験動物が必要となる。
首輪の研究と合わせてちょうどいい木人形が欲しい。
その意味では、さっきの死に掛けの男の首輪を回収しなかったのは完全にミスだった。
もう顔も思い出せないが。
「まあ、ヒロインにはドジっ娘属性があるのもお約束よねん♪」
てへ、と舌をだして失敗失敗と嘯く妲己。
どこまで本気なのか、あるいは狂言なのか。
多分正解は、後者。
あの時は近くにまだ例の男へ襲撃を敢行した輩がいたはずだ。
後れを取る事などないだろうが、あの男はそれなりの使い手だったろうし、言葉で説得する頭もあったはず。
なのにボロボロにされたという事は、襲撃者は話を聞く余地を持ち合わせないということ。
だとしたら、そんなのを相手取っても仕方ない。
それよりも気にするべきは首輪なのだ。
90:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:50:51 1ktFSruH
「多分、制限というのもこの首輪の機能だわぁん。
体に密着した状態ならばチカラを奪い取る事が出来る。
あはぁん、まさしく王天ちゃんの寄生宝貝と全く同じシステムの代物よねぇん。
……申公豹だけでなく、王天ちゃんも“神”とやらに手を貸してるのかしらん」
もしそうなら念入りにお仕置きしなくちゃねぇんと口ずさみ、首輪について思考を巡らす。
確定というわけではないが、力を制限している要因は首輪の可能性が高い。
「まあ、とにかくこの首輪は十中八九宝貝合金で出来てるわねん。
仙道がこの舞台……ゲーム盤の作成を手がけたのは間違いないわん。
他にも、これなんかも宝貝技術を使って作ってるわねぇん」
今度は大量にモノが詰め込まれているはずなのに、全く膨らみを見せないデイパックに視線を投げかける。
「――空間宝貝。
このカバンの中にいくらでもモノが入るのはその恩恵。
ひょっとしたら、この会場そのものも空間宝貝のチカラで作られたのかもぉん」
地図で見る限り、この位の閉鎖空間なら十分に作り出す事が出来そうだ。
とはいえ、普通の空間宝貝と考えると解せない点もいくつかあるのも確か。
たとえば空間宝貝の弱点である、相手が中に入り込むまでは完全に待ちに徹するしかないという前提。
それはあの見知らぬ聖堂からここに『入り込んだ』のではなく『いつの間にか飛ばされていた』事実と相反する。
故にここは普通の空間宝貝内ではない可能性が高い。
そして、弱点を克服した空間宝貝は非常に限られている。
通常空間そのものを自分の領域にする王天君の紅水陣や、蛇の形を取り自ら相手を呑み込む女カの山河社稷図。
そういった特殊な空間宝貝により、ここは作られているのかもしれない。
しかしそれでも―、自分の知る技術である事は、変わりない。
だが、首輪だけは違うのだ。
「この首輪だけはわらわ達の知る技術だけじゃあ出来ていない。
そうよねぇん、“神”。じゃないと、さっさとわらわがこれを解除しちゃうものぉん。
わらわ達が紂王さまを改造できる技術力を持つ事を、当然知っているはずでしょう?
でも、あのみねねが口にしていた通り、わらわ達より未来の技術も使われている。
つまりわらわだけじゃ迂闊に手を出せない。
……未来の技術とのハイブリッド技術。つまり、どっちにしろ必要なのは味方や知識、って事よねぇん」
最悪、必要な知識を持つ技術者はもうとっくに死んでいる可能性がある。
だとしたら色々自分で積極的に試していく必要があるだろう。
あらためて首輪の威力や禁止エリア進入時の性質を調べてみたい。
特に、爆発力については人体実験を行ってみたいところだ。
―例えば、聞仲などは核爆発にも耐える耐久力を持つ。
アレほど頑丈な仙人が、たかだかこの首輪一つの爆薬で生首を転がらせるとは思い難い。
しかしおそらく『今の聞仲』なら容易く首を落とせるのだろう。
課せられた制限とやらが、それを可能とする。
91:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:53:16 1ktFSruH
仮に、本当に制限が首輪の宝貝としての機能だったなら。
その場合、是非とも欲しいのはスーパー宝貝の一つ、太公望の太極図である。
あれがあれば、首輪の機能のうち少なくとも能力制限は無効化できる事だろう。
そうすればある程度の耐久力を持つものは爆発を気にせず首輪を破壊できるはずだ。
つまり、その『ある程度』を見極めさえできればいい。
もし大した事がないのであれば、人によっては『太極図を使わずともそのまま爆破して』解除してしまえるかもしれない。
流石に希望的観測が過ぎるとはいえ、頭の隅っこには置いておこう。
そんな事を考えながら、足を止める。
ようやくその建物に辿り着けば、妲己は誰に見止められることもなく、口元を三日月に歪めた。
妖艶に、淫靡に。
**********
どういう事だ?
どういう事だ!?
混乱の極みに陥りながら、それでも少年は為すべきことを過たない。
駆ける。駆ける。駆ける。駆ける。
逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。
ずきんと折れた手首が体全てを軋ませる。
じくじくと鑢をかけるような痛みが、冷静な判断力を奪っていく。
近づくは突き当たり、延びる行き先は階下か階上。
進むべきは二択。
間違えれば、それはすぐ死に繋がる。
何故なら―、と考えるまでもなく、その答えは少年のすぐ傍に。
1、2、3、4、5、6、7。
7歩を数えたその瞬間、少年はいきなり横っ飛ぶ。
ぼひゅうと水蒸気の帯を靡かせて、脇腹のすぐ傍を砲弾が通過していった。
ホンのコンマ1秒でも遅れていれば糞の詰まったソーセージをぶち撒けていた事だろう。
1/10=1。
走り始めてからの歩数を10で割ったその余りは、必ず10以下となる。
次の投擲時までの総歩数÷10の余りは何歩になるのかを指定する。
あとはその余った歩数が来るたびに、回避行動を取ればいい。
92:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:55:04 1ktFSruH
だが、それが出来るのは回避するに十分なスペースがある場合だけだ。
このまま階段に突っ込んだ場合、上と下と、どちらに向かおうと必ず一瞬だけ動きを止めて方向転換しなければならない。
その隙をあの少女が見逃すはずはない。
どちらに進むのかを先読まれれば、確実に潰される。
―二択の勝負。
だから、少年こと安藤潤也の逃走は確定した。
少年が向かった階下とは見当違いの、昇り階段に鉄クズが突き刺さる。
これでしばらくは一安心。
金剛と戦いながらもこちらの動きを完全に把握し、機を見て投擲を仕掛けてくるあの動体視力は、まさしく人間のものじゃあない。
……あの金剛なら少なくともしばらくは持ちこたえるだろう。
剛力番長とやらに自分を追わせないよう、階段の前で時間を稼いでくれるはずだ。
その間に自分はどうすべきか。
具体的な行動案として浮かぶのは、2つ。
金剛があの剛力番長とやらを完全に無力化するのを待つか、ここから金剛を見捨てて逃げるか。
どちらを選んでもそれなりのリスクが付き纏う。
前者はもちろん、金剛が殺されてしまっては元も子もない。
さすれば座して待つは断頭台に首を預けるのと同じ事となる。
……おそらく勝負は金剛がやや有利か、互角といったところだろう。
金剛と剛力番長、どちらが勝つか、二択。
これについて1/2を1にしようと思考の海に沈んでも、どちらもしっくりこない。
なれば出される答えは、新たな選択肢である『決着がつかない』だ。
こうなると今後の展開が全く読めない。
だから、見えない未来よりも確実にこの場から脱出する後者の選択肢を選びたくなる。
されど後者もまた確かにリスクを孕んでいるのだ。
つまり、金剛番長を敵に回す―そこまでいかずとも悪印象を持たれるというリスク。
金剛は相当な実力者だ。だから、出来る事なら敵には回さず味方につけておきたい。
スジを通す、なんてつまらない理由で自由な行動を束縛される代償を支払ってもだ。
ついさっき、仲間を集めて脱出する事を心に決めたばかりでもあることだし。
……ああ、そうだ。
ついさっきまでは、それが全くの最善だった。最善だと思っていた。
だからもし今が放送前だとしたら、多分前者を選んでいたことだろう。
だけど、放送で全てがひっくり返された。
「……どうして、兄貴の名前があるんだよ……」
93:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:56:44 1ktFSruH
何分かぶりに、ぽつりと、ようやく言葉が漏れてくる。
気がつけばもう下りる階段はほとんどなくなっていて、一階まで辿り着いていた。
名前と言えば、土方という名前が名簿に見当たることもなかった。
だが、あんな男の事など今はどうでもいい。
見覚えのある名前として蝉の死亡も告げられたが、それすら今は気にならない。
「死んだ人間が生き返るとか、あの女の言葉は本当だって言うのかよ……!」
がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし
がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし
がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし
がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし
何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も。
まだ動く左の手でひたすらに頭を掻き毟り続ける。
血が出てきた。
でも止めない。
爪に肉が挟まる。
それがなんだ?
考えろ、考えろ、考えろ。
偽者、という可能性が一番高い。
だとしたら許しがたい。あるいは同姓同名か。
だがこの名簿を作ったのは“神”とやらだ。
あの連中が、わざわざそんなつまらないオチを持ってくるだろうか。
だが、本当にほんものの兄だとしたら?
自分はどうすべきなのだろう?
自分が脱出を志したのは、帰還して兄の仇を討つ為だ。
だが、兄が生きてここにいるというならば全ての前提は覆される。
兄には、生きていて欲しい。
その為ならば何でもしよう。
泥を啜り、草を食み、糞尿に塗れても兄を生かそう。
……もし兄を騙る何者かなら、殺す。
それは兄への最大の侮辱だからだ。
で、どうするんだ?
兄とともに脱出する為に、これまで通りの方針を貫徹する?
一刻も早く兄と合流する為に、さっさとあの男を見捨てるべきか。
あるいは、何が何でも兄を生かすために、敵を排除して排除して排除して、ひたすら攻勢に徹すべきか。
「俺は―」
**********
94:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:58:15 1ktFSruH
目を開けると同時に、ごふ、と血を吐いた。
仰向けに寝転がったまま口元に吹き零れた血を拭い、静かに肩の辺りに手を持っていく。
そこにはぱっくりと口を開いた傷口から黄色い体液と赤い血とピンクの肉と白い骨が見えていて、あるべきものがごっそりと抉り取られていた。
けれど、突き刺さっていたはずの馬鹿でかい剣はとっくに抜き取られている。
地べたの自分のものだった血に触れてみれば、まだ微妙に暖かい。
……倒れていたのは数十秒ではないにしても、そう長い時間ではないはずだ。
「……強くなったじゃねえか、剛力番長」
そのまま怪我人とは思えない動きで足をカチ上げ、振り子の要領で一気に立ち上がった。
どすん、とフロア全体に金剛の再起が知らしめられる。
「だったら……余計に放ってはおけねえな」
剛力番長は、おそらく潤也を追って下に向かったはずだ。
その潤也自身も、長い時間目を離しておくわけにもいかない。
危険な匂いを感じるのはむしろ剛力番長よりあの男の方であるとすら言えるのだから。
エレベーターは使えない。
剛力番長がデパートに入ってきてからすぐ、逃げ場を塞ぐ為に叩き潰してしまったからだ。
疾駆。疾走。大跳躍。
このデパートは吹き抜けの構造になっており、上の階の喫茶店に設けられたバルコニーから
一階のテラスを見下ろせる形になっている。
そこを、一息で飛び降りる。
下手に階段などを使うよりもそっちの方がよっぽど早い。
フロアの織り成す縞模様が、高速でスライドしていく。
着弾。
びりびりと建物全体が震え、砕けた床からもうもうと白煙が立ち込める。
すっくと背を伸ばして睥睨すれば、金剛の到着を待ちわびていたかのように近寄る影二つ。
「……!」
ふしだらな格好をした女と、体操服という出で立ちの少女の追いかけっこがこちらに向かって展開中。
「そこの人、助けて頂戴ん? わらわ怖ぁい女の子に追われているのぉん」
その台詞が終わるより早く金剛は己が大腿の筋肉を爆発させる。
轟、という音と共に暴風が吹き荒れ、二つの影を断ち割った。
「……! やはりまだ生きてらっしゃいましたか。
今度こそ、引導を渡して差し上げます」
その言葉を無視。
金剛はじっと目線を剛力番長に合わせ、睨みを効かす。
放送を経ても、神に反逆を試みたあの勇気ある女性の意志を聞いても未だ、彼女は相も変わらずただ頑なに敵意を見せるだけ。
盲目である事を自ら望み、手段を目的に成り代わらせたままだ。
95:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:59:41 1ktFSruH
……ならば、その眼をこじ開ける。
昔の彼女自身を突きつける。
「女一人にテメエで培った暴力を叩き込むのが番長の仕事か? 剛力番長。
……違うだろうが。
以前のお前の行動だって、結果的に迷惑をかける事になったとは言え全部住人の為にやったことだったろう!
初心を忘れるんじゃねえ! それでも本当に、お前はあの剛力番長なのかッ!」
ぷつ、と、何かがキレた音がした。
「わ……、わた、私は……ッ!」
灼熱の憤怒を滾らせて大山が鳴動。
「私はッ! 剛力番長です! 白雪宮拳です!
あなたなどの言う事を聞き入れなくても、誰に認められ―、」
噴火を目前としたその間際。
ぞく……。
金剛の芯に悪寒が走った。
背中に氷を入れられた―、などと、生易しいものではない。
鋭利に研ぎ澄まされたつららで心臓を一突きにされたような、この世のものとも思えない怖気。
何だ? 何なんだ?
振り向きたくとも振り向けない。
今、自分の後ろで何が起きているのか確認しようとしても、それをすれば剛力番長の暴走を許してしまう。
……いや、分かっている。
背後の女は特に何もしていない。ただじっとこちらを見ているだけに違いない。
なのにその目線がいやに自分の癇に障るのだ。
そして当の剛力番長は自分の後ろにいる女に目線を動かし、ハッと息を呑んだような―そんな気がした。
「…………、そうでしたわね。ええ。私は私です。
“あなたのお言葉通り”その淑女さんには手を出すべきではありませんわね。
ここは退いておきましょう」
そして余りにも唐突に、じりじりと後退。
何かを告げよう暇もなく、実に不自然な気持ち悪さと共に屋外へと、舞台袖へと剛力番長は引っ込んでいった。
それはまるで、大好きなプリンの中から生きた毒虫が這い出てきたかのような。
あるいは、自分以外誰一人いないはずの廃墟の食卓に、たった今焼きあがったばかりのほかほかのパンを見つけたような。
そんな得体の知れない不快さが拭えない。
茶番劇としか思えない一連の出来事に、金剛は剛力番長を追う事もなくその場に立ち尽くすだけだった。
その背中に対して届けられる、おぞましい猫撫で声。
96:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:01:45 1ktFSruH
「助かったわぁん。あの子を追い返すなんて、貴方、相当お強いみたいねぇん。
くす、わらわの力になってもらえないかしら?」
ようやく振り返っての開口一番は、相手の要求を一切考慮しない訊問を。
「……俺と出会う前に剛力番長に何を吹き込んだ?」
されど目をすがめて覇気を発してみても、柳に風。暖簾に腕押し。
目の前の女は掴みどころなく、ただただ薄笑みを浮かべているだけだ。
「あん、わらわの過去が気になるのぉん?
出会ったばかりで口説くなんてとっても大胆。
でも御免なさいん、わらわの体は紂王さまだけのものなのん。もう死んじゃったけどねぇん」
戯言に混じって平然と言葉に出される、死という単語を耳にして思い出す。
そうだ、今はこの女よりも優先せねばならない事がある。
「お前、安藤潤也という男を見なかったか?
俺より先にこっちに向かったはずだ」
―放送の時。
名簿に目を通してすぐ血相を変えたあの男は、どうしているのか。
どう考えてもまともな精神状態じゃあない。
何故なら、死んだはずの彼の兄がここにいると言うのだから。
「知らないわぁん? 貴方のお仲間なのぉん?」
手応えはない。
いつ崩れるかも分からない泥の橋を渡るような心持ちで、潤也について口を動かす。
「……奴は今危うくてな。放っておける状態じゃねえ。
さっきの放送と同時に浮かび上がった名簿に、あいつの死んだはずの兄貴とやらの名前があったらしい。
胡散臭え戯言に乗せられて変な考えに取り付かれてなきゃいいんだが」
……自分の兄を思い浮かべる。
安藤の気持ちも良く分かる、というのは言い過ぎかもしれないが、それに近い感情は確かに自分にもある。
今こそ自分と兄は敵対しているが、それも兄が家族だからこそ止めたいと思うが故の行動の結果だ。
大切だからこそ敵対することすら厭わないし……、その逆も、また然り。
「あらん、胡散臭いってどういうことかしらぁん?」
「言うまでもねえ事だろう。死んだ人間が生き返るはずが―」
「ある、わよん?」
―聞き捨てならない言葉が、差し込まれた。
「!? どういう事だ……?」
目を見開き詰め寄れば、女は嘲笑うようにチッチッチと指を振り振り。
97:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:04:01 1ktFSruH
「単純だわん、わらわ達の時代じゃあ、死人を蘇らせる方法もあるって事よん♪
情報を集めた限り、他にも蘇生の技術を持つ人たちがいるみたいねぇん」
例えば、空想の中に住む全能の神の力とか。
例えば、真理の扉の向こうにある理とか。
例えば、友人たる鯨との再開を夢見た男の食した悪魔の実とか。
女の住む世界の様々な道具以外にも、存外生と死を弄ぶチカラは転がっている。
金剛はその真贋を見極めようとして女に手を伸ばすも、ひらりとかわされ行き場を失う。
……ただ、なんとなく理解する。
この女は掴み所がないが、こうも強気に断言する以上はそれなりの根拠があるのだろう、と。
「……剛力番長の言ってた事も、あながち嘘じゃねえって事か。
だが、それでも蘇りなんぞを認める訳にはいかねえな」
「死んだ人間を生き返らせる。悔いを残して死んだ人も、彼らに未練を残す生者も救われるのにぃん?
素晴らしいことだと思うけどねぇん?」
大きく、大きく息を吐く。
先刻から一々、この女の態度に吐き気を催してしょうがない。
まるで命をなんとも思っていないかのようだ。
きっと本能のレベルからしてこの女と自分は相容れない存在なのだろう。
生理的嫌悪というべきか、それくらいに何かが致命的なまでにズレてしまっているのを感じる。
怒りに身を任せてしまえば楽だが、向こうは確かに何もしていない。
己からスジを違えるのは流石に自分を許せない。
心を落ち着け、ただ愚直に毅然と相対する。
「そいつはスジが通らねぇな。命ってモンを弄んでるのと同じ事だぜ。
死んだ人間に対しての最低限の義理すら果たしてねえ。
仮にそんなふざけた事をエサにして人を釣る連中がいるってんなら、そいつらをぶっ潰すまでだ」
「……生きているものだけに許される傲慢ねぇん。
死んだ人間が皆が皆満足して死んだとでも思ってるのかしらん?」
だが、一向構わず女は楽しげなまま。
それどころか遥か高みから値踏みするようにこちらに刺激を与えて反応を楽しんでいる風すら感じる。
一挙手一投足の品定めに、金剛は激情を滲ませないよう務めるので忙しい。
「何が言いてえんだ?」
「さて、それくらいは自分で考えて頂戴? わらわが教えられることなんてこのくらいしかないわぁん。
……生きとし生けるものは全て、永遠に生きることを望むものなのよん?」
いい加減、ふざけた態度が目に余りすぎた。
ぶゥん、と、渾身の、痛恨の、会心の一撃を以ってして、いきなり殴りかかる。
拳より出でる風は荒く猛り、しかしその速度をすら超えて風は生みの親にブチ破られた。
98:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:06:33 1ktFSruH
しかし、女はそれでも微動だにすることはない。
ぴたり。
まさしく文字通りに目の前で止まった拳を、さも当然の帰結であるかと言うように優しく優しく撫でてみせる。
こうして寸止めされることすら、きっと彼女の読んだ未来のシナリオ通り。
「……こんな事は言いたくねえが、どうにもお前は信用できねえ。
悪ぃが、何か用があるってんならしばらく俺に同行してもらおうか。
お前がスジの通った奴だって分かったんなら話を聞く。
ちゃんとそれまでは身の安全も確保してやる。これで構わねぇだろ」
「酷い扱いねぇん、野蛮だわん。
……わらわ、束縛されるのって嫌いなのん。
その潤也って子を探してあげるから、二手に分かれないかしらん?
見つけて連れきたんなら、その時にわらわのお願いを聞いてほしいのぉん」
「…………」
何も答えることなく、さっさと歩きだす。
やましいところがないなら一緒に行動したって問題はないはずだ。
目のつかないところで得体の知れないことをされるより、同行して監視している方が好ましい。
それが嫌なら最初からお願いなどしなければいい。
分かっているのかいないのか、女はへらへらと表情を崩さず静かに後ろについてくる。
……どうしてか。
この女が特に何かをしているところを見たわけでもないというのに、結局。
スジが通らないと分かっていながらも、心の奥底から涌き出る汚泥を隠しきることは出来なかった――。
**********
意外とそれには時間がかからなかった。
僅か数分。
下る階段を乗り換えて、エスカレーターにて階下へ辿りつけばそれで仕舞い。
安藤潤也は、地下にいた。
「見つけたぜ、潤也。
……どうやら逃げ出しちゃあいなかったみてーだな。
少し見直したぜ」
―生鮮食品などが本来は並べられていたであろう地階。
いわゆるデパ地下と呼ばれるエリアの、エスカレーターの真正面。
そこで潤也はあたかもその空間の主であるかのように、ぼうっと座して待っていた。
「―無事だったのか、金ご、う……?」
此方に振り向きの第一声は、当然の事ながら背後の女に対してのもの。
道すがらに妲己と名乗ったふざけた格好の女は、いつの間にやらその手にいくつもの服を抱えてどれを着ようかなどと暢気なことをほざいていた。
「……その女は誰だ?」
不信感をあからさま過ぎるほど見せ付けて、潤也はニヤニヤ笑いの狐を睨みつける。
99:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:09:25 1ktFSruH
「わらわはジャンプ史上究極にして至高のヒロイン、妲己ちゃんよん。
よろしくねぇん、潤也ちゃん」
それに何を思ったのか。
挨拶に答えることなく、潤也はただただ最初から用意していたであろう台詞を繰り出した。
「まあいい。それより金剛、あの女がどうにかなったんなら、すぐにでも向かいたいところがあるんだ」
なに、と金剛は小さく息を呑む。
潤也の態度は、どう見てもこれまでの彼とは全く異質な雰囲気を纏っていて、金剛すら僅かに怯ませる意思が漲っていた。
―潤也曰く。
以前と同じく兄の名前を持つ人物の所在について地図上の各施設を調べたところ、旅館にその名前が該当したらしい。
死人であるはずの潤也の兄の存在は眉唾物であるが、名簿にはマシン番長の名も記されている。
もしそれが金剛の思うとおりの人物であるなら、妲己や剛力番長の言葉の信憑性を完全に零と断定することは出来ない。
潤也は告げる。
あの連中なら、死人を生き返らせる事が出来てもおかしくないだろう、と。
そうでないとしても兄を騙る人間を野放しにし、一秒たりとも生かしておきたくない。
制裁せねば、と、そう断言した。
……やはり、この男は危うい。
その確信を深めながらも、金剛はいつの間にか、彼のどこかに共感するものを感じていた。
口では物騒なことを言っていながらも、本心ではむしろ兄に生きていて欲しいと願っているようにさえ見える。
その感情が兄と敵対する自分にいつしか重なって見えていたのだろう。
たとえ、その決意がどれ程強固であろうとも。
やっぱり人殺しなんてしたくないという気持ちは、きっと潤也だって持っているはずなのだ。
「―本物か偽者かは置いといても、一刻も早く兄貴を見つけなきゃ。
その為にも、俺は旅館に向かわなきゃならない」
とはいえそれでも、彼のギラギラとした目つきは金剛を不安にさせて止むことはない。
妲己と、潤也。
こんなのを二人も同道させることになるとは、自分はよほど運がないのだろう。
……いい加減自分も少し疲れてきた。
潤也の急く気持ちは確かに伝わってくるが、いつも全力疾走ではすぐにガタが来る。
「……考えは分からねえでもねえが、その前にそろそろメシを済ませといた方がいい。
剛力番長は退いたが次にいつ敵が襲ってくるとも限らねえ。
体力補給はこまめにやっておかないと体がもたねえぜ」
結局は、その当の剛力番長の説得も出来なかった。
どこに向かったか見当もつかない以上、見知らぬ誰かが被害を蒙っていなければいいのだが。
とりあえずの休息の提案に、しかし潤也はそれも予期していたといわんばかりにデイパックを逆さにする。
全部が全部、シナリオ通り。
「ああ、それは俺も考えてた。
けど、このカバンの中の食料はいざという時にとっておくべきだと思う。
だからとりあえずこのデパ地下で適当にカロリーの高そうな食いもんを集めといたんだ。
おかげで菓子系ばっかりだけど、そこは我慢してくれ」
どさどさどさ、と、いくつかの洋菓子が零れ落ちてくる。
種類はどれも違っていて、確かに糖分補給には十分そうだ。
100:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:11:30 1ktFSruH
「ふぅん、スイーツがいっぱいねぇん。これは少しだけ楽しめそうだわん」
「……あんたの分は想定してなかった。
まあいいや、さっさと自分の分を取ってくれよ。
兄貴を名乗る奴はすぐにでも旅館から離れちまうかもしれない。
ちんたら時間をかけて食ってる暇はないんだ」
不機嫌そうに潤也は妲己を一瞥したのち、顎で不動のままの金剛に意思表示。
「……金剛? 甘いものは嫌いか?」
「そんな事はねえさ。そのプリンをもらっとくぜ」
本当に時間が惜しいのだろう。
やれる事は全てやっておいたから、あとはここを発つだけとでも言いたげだ。
金剛がプリンを手に取った直後、潤也は床に並べた菓子の一つをまるで飲み物であるかのように掻き込み、咀嚼。
ウーロン茶で流し込むというパティシエに一番失礼な食べ方をして、息つく暇なくさっさと立ち上がった。
「さあ、早く行こうぜ」
「……いい加減余裕がなさすぎだぜ、潤也。なんか汗まみれじゃねえか。
ちょっと待ってろ」
金剛の巨体には、こんな小さなプリンはそれこそひと呑みだ。
だからこそ時間はさほどかからないだろうが、それでも折角の好物くらいは味わいたい。
見れば、妲己はとうに自分の分を確保してトロけるような顔でそれを堪能している。
仕方ない、と諦める。
こんな事で不和を招いても無意味だ、ここは潤也の望み通りにしておこう。
それにもし妲己の言うとおり死者が蘇っているのだとしたら、潤也の兄はこの男のストッパーになってくれるかもしれない。
ぱくりと口腔に放り込む。
甘ぁいカラメルと卵の芳醇なハーモニーを舌の上で楽しみながら、内心潤也に感謝する。
まさかこんな殺伐とした場所でプリンを楽しめるとは思わなかった。
どうにも不信感ばかりが募る一方ではあるものの、これだけは素直に礼を言っておくことにしよう。
ありがとう、と呟こうとしたその瞬間、転がしていたプリンが気管に入り込んだ。
「……かはっ!?」
ごほごほごほ、と一気に咳き込む。
らしくない。全く以ってらしくない。
……いきなり訳の分からない状況に置かれて、殺し合いを強制されて。
存外、結構緊張していたのかもしれない。自分でも意外に思ってしまう。
「ぐっ……!」
こちらを今か今かと待ちながらさっきから掌に握ったままのウーロン茶を弄ぶ潤也。
そちらを向いて、慌てて手を伸ばし要求する。
「み、水……。それをよこせ。
それも一台や二台ではない……、全部だ!」
何をやってるんだ金剛、と苦笑する潤也が差し出すペットボトルを掴もうとして、気付く。