新漫画バトルロワイアル 第6巻at MITEMITE
新漫画バトルロワイアル 第6巻 - 暇つぶし2ch143:天は人の上に人をつくらず俺をつくりました ◆L62I.UGyuw
09/10/25 00:13:40 SdB7C0l2
放送が終わって数分。
沖田総悟は名前が浮き出した名簿を眺めながら、島の南西部の道を北へと歩いていた。
周囲の木々はまばらになってきており、道の先には畑が見える。
辺りはすっかり明るい。そのためか、同じ道であるにも関わらず、先程通ったときとは随分違った印象を受ける。

「オイオイ、万屋のメガネはもう死んじまったのかィ。
 ……まァ長生きしそうなタイプじゃなかったけどよ」

そう言って、赤く染まった『志村新八』の文字を指で弾く。
真選組の隊士にとって、死は常にその身の隣に在るものだ。知り合いの死には慣れている。
それでも僅かに表情が曇ったのは、この場にいるらしい彼の姉、志村妙の心境を慮ったからだろうか。

「……ま、それはそれとして、だ。どうやらここにいる真選組は俺だけみてーだな。
 ったく。こういうのに巻き込まれるのァ土方のヤローの方が適任だろってんだ。
 ……さて、これからどうすっかなァ」

警察署で仲間と合流出来る可能性はこれでかなり低まった訳だ。
名簿を信じる限り、デパートにいるらしい銀時の他に、元から沖田が知っている者は三人のみ。
そのうちの二人は志村姉弟。
そしてもう一人は柳生九兵衛だ。
九兵衛の性格を考えると、彼女がこんなゲームに乗る可能性は低い。それに彼女は沖田に匹敵する剣の腕も持っている。
可能ならば優先して合流したいところだが……。

「だから、んな簡単に見つかりゃ苦労しねーんだって」

結局、そこに行き着く。妙についても同様だ。

「かったりィなァ……」

元来、彼は勤勉な性質ではない。
地道な人探しなど彼の性には合わない。考えるだけで気が滅入るのだ。
それに訳の分からないことに巻き込まれ、夜通し歩き、変な連中に絡まれ―そろそろ嫌気が差してきていたらしく、

「まァいいか。警察署まで行きゃ誰かいるかもしれねーし。
 あとやっぱ武器も要るよなァ。バズーカ的なモノとかよ」

作戦の立案を放棄して引き続き警察署に向かうことを決定。
そして名簿をデイパックに仕舞い込もうとして―あることに気付いた。
潤也から没収した支給品。その中の名簿。それに浮き出た文字が、全て黒で表示されている。

「ん? こいつァ……」

どういうことだ、と呟きながら、潤也の物だった名簿を手に取る。
しかし名簿を摘み上げた瞬間、死者の名前が一斉に赤く変色した。驚いて目を見開く沖田。

「目の錯覚―なわけねーな。どうなってんだこりゃ?」

首を傾げる。名簿を太陽に透かしてみたり、指で擦ってみたりするが、特に変化は無い。
両側を畑に挟まれた道路の路肩に立って、沖田は名簿を凝視する。
放送中は死者の名前が読み上げられる度にその名が赤く染まっていった。
そして今度は触れた瞬間に死亡者全ての名が赤く変化。
素直に考えるとこれはつまり、

「こんな紙っきれが、触った奴の頭ン中を読んでる、ってことかィ? 気色悪ィぜ」

文字色の変化が可逆か不可逆か、までは判らないが、そうとしか考えられない。
どこぞの天人が開発したものなのだろうか。いかにもありそうな話だ。
そうだとすると、この下衆なゲームは腐った特権階級の連中を楽しませるための催しといったところか。
例えば―本物の殺し合いを見世物としていた地下闘技場『煉獄関』のような。
……どうもしっくり来ないと感じるが、他に心当たりも無い。

144:天は人の上に人をつくらず俺をつくりました ◆L62I.UGyuw
09/10/25 00:16:05 SdB7C0l2
何にせよ、これだけの技術を持つ組織を一人で叩き潰すのは骨だろう。首輪を外せるかすら怪しい。
放送のアクシデントを考慮すると、運営組織の仲間割れも多少期待出来そうではあるが―それでも一人でどうにかなるものではない。
やはり―非常に面倒だが―仲間が必要だ。

「ホント、厄介なコトに巻き込まれちまったぜィ……」

青みを増す空を見上げて、沖田は心の底から嘆息した。


***************


再び沖田は畑の間の一本道をひたすら歩いていた。地図が無くても迷う心配など無い単純な道だ。
それにしても静かなものだ、と沖田は思う。
二ヶ所の市街地を繋ぐ一本道でなら誰かに出遭えるのではないかと彼は期待していたのだが、そう上手くはいかないようだ。
そうこうしているうちに、開始地点である学校が見えてきた。

「こんだけ時間掛けて、結局元の場所に戻って来ただけかィ」

ぼやく。何故自分がこんな苦労をしているのかと。
地図を見る限り、警察署まではそれなりの距離がある。やっていられない。
勿論、彼にとってはその程度の道のりは大した障害ではないのだが―怠け癖はどうしたって治らない。治す気も無い。
ふと、何の気なしに学校の敷地内へと目を遣る。
正門のすぐ向こうに見える中学校の校舎。門の脇にある申し訳程度の植え込み。駐車場に停められた数台の車。
適当に視線を泳がせていた沖田だったが、何かを思い付いた顔で一点に目を留めた。

「あァ、そーだ。端っからこうすりゃ良かったんじゃねーか」

そして思い付きを実行に移すべく、門を通り抜けて駐車場へと歩いていった。


***************


数十分後。

学校の正門から走り出す自動車が一台。

「ふう。案外時間食っちまったぜィ。でもまーこれで足の心配はいらねーな。
 そんじゃ、とっとと出発するぜィ」

運転者は沖田だ。
彼は正門を右へ曲がると、次々とギアを切り替え一気に加速する。

彼はどうやって自動車を手に入れたのか? 言うまでも無く窃盗である。
ミニバンの窓ガラスは木刀によって破壊され、ハンドル近くにあるイグニッションスイッチは剥き出しになっている。
ちなみにキー無しで車を動かすために必要な工具は車の中にあった。本来は修理用なのだろうが。

なお詳しい手口については色々とマズいので省略する。

一つ確実に言えることは、彼の発想は一般的な警察官のそれとは大きくかけ離れている、ということだ。
金剛がこの場にいればきっと烈火の如く怒ったことだろう。
とにかく彼は今、駐車場から勝手に拝借した白のミニバンを運転している。

端から見れば襲撃者のいい的なのだが、そもそも襲撃にいちいち怯えているような神経では真選組の隊長は務まらない。
木刀を手元に置いて、来るなら来やがれなどと考えながらハンドルを操る。


145:天は人の上に人をつくらず俺をつくりました ◆L62I.UGyuw
09/10/25 00:17:05 SdB7C0l2
「土方のヤローにでも運転させりゃもっと楽出来るんだけどなァ」

誰に言うともなく呟く。
景色がどんどん後ろに流れていく。程なく畑が少なくなり、まばらに家が見えてきた。
この調子ならすぐに警察署まで辿り着けるだろう。

それにしても割れた窓から吹き付ける風が少々寒い。朝方の冷える時間帯だから当然といえば当然だが。
どうせなら学校で適当に上着でもかっぱらってくりゃ良かったか、とそこまで考えたところで―沖田は前方に人影を認めた。

道の先に大男が立っている。奇妙な格好だ。
沖田はアクセルを緩めて男を注意深く観察する。
黒い短髪に隻眼。漆黒の外套。手にはノコギリのような形状の巨大な剣。
遠目では判り難いが、身体は相当鍛え抜かれているようだ。

男は道の中央で手を高く上げ、左右に振っている。
見たところ、止まれ、というジェスチャーであると思われる。
少なくとも問答無用で斬り掛かって来るつもりではなさそうだ。

その様子を見た沖田は安堵の笑みを浮かべて、









――アクセルをベタ踏みした。


***************


「いえね、向こうにバカでけぇ剣を振り回すキングコングみてーなガキがいましてね。
 俺ァちょうどそいつから必死に逃げてきたとこだったんでさァ。
 そこにまたでっけぇノコギリ持った男が立ってると来たもんで。
 素直に車停めてまた襲われるのも馬鹿馬鹿しいじゃないですかィ。
 それでまァちょいと考えた結果……とりあえず轢いてから話を聞こうって結論に」

「遺言はそれで終いか?」

「オイオイ、俺だって車ぶった斬られて迷惑してるんだぜィ。あれじゃもう使いもんにならねーや。
 昔から喧嘩両成敗って言うでしょーよ。ここはお互い悪かったっつーことで一つ。
 ……だからそろそろこのノコギリ首からのけてくれやせんかね」

「あァ!? 何が喧嘩両成敗だ! てめえが突っ込んでこなけりゃ何事も無く済んだんだろうが!」

「いやいやまァまァ。ちょっ、待った待った、ノコギリで首突付くのもやめて下せェって。
 そんな青筋立てて怒ることねーでしょーが。
 あんなもん江戸じゃ時候の挨拶みてーなもんですぜィ。
 大体、FF1○で事あるごとに主人公を導いてそうな中二的格好のメンドくさそうなオッサンが突っ立ってたらそりゃ思わずアクセル踏む足に力も入るってもんでさァ。
 誰だってそーする、俺もそーする」


146:天は人の上に人をつくらず俺をつくりました ◆L62I.UGyuw
09/10/25 00:18:31 SdB7C0l2
「……三枚おろしと微塵切り、どっちがいいんだ?
 あとな、オレはオッサンなんて呼ばれるような歳でもねェ」

「細かいことにグチグチ拘る男はモテませんぜィ?」

「てめえが言うな!
 ……ったく、ベラベラとよく口の回る野郎だ。
 今すぐその舌引っこ抜いてやろうか?」

「俺の舌なんざ抜いたって煮ても焼いても食えねーぜ。
 舌が好きってんなら後で牛タン奢りやすからいーかげん解放してくれやせんかね?
 そろそろウンザリでさァ」

「……ああ、奇遇だな。オレもそろそろウンザリしてきたところだ。
 だからてめェの知ってることを洗いざらいブチ撒けたらもう放してやるよ。
 いい条件だろ? それも嫌なら、ここで死んどけ。
 ……で、どうすんだ?」



【F-2/道路/1日目 朝】


【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:健康
[服装]:黒い外套
[装備]:キリバチ@ONE PIECE
[道具]:支給品一式、不明支給品1個(未確認)
[思考]
基本:グリフィスに鉄塊をぶち込む
0:目の前の馬鹿野郎に情報を吐かせる。
1:グリフィスを殺す
2:グリフィスの部下の使徒どもも殺す
[備考]
※原作32巻、ゾッドと共にガニシュカを撃退した後からの参戦です。
※左手の義手に仕込まれた火砲と矢、身に着けていた狂戦士の甲冑は没収されています。
※紅煉を使徒ではないかと思っています。
※妙と、簡単な情報交換をしました。

【沖田総悟@銀魂】
[状態]:疲労(中)、わずかな悲しみと苛立ち
[服装]:
[装備]:木刀正宗@ハヤテのごとく! 
[道具]:支給品一式×2、イングラムM10(10/19)@現実、工具数種、不明支給品0~1(確認済み、武器はない)
[思考]
基本:さっさと江戸に帰る。無駄な殺しはしないが、殺し合いに乗る者は――
0:メンドくせェ。つーか車返せ。
1:警察署に向かい、武器と仲間を探す。銀時達知り合いと合流したい。
2:金剛と潤也が気がかり
3:……姉上、俺は―
[備考]
※沖田ミツバ死亡直後から参戦
※今の所まだ金剛達との世界観の相違には気がついていないようです
※キンブリーを危険人物として認識

147:創る名無しに見る名無し
09/10/25 00:18:56 oWysYK3Q
支援します。

148:創る名無しに見る名無し
09/10/25 00:19:06 ggQkHpqM
アーロンの事かああ!!

149:創る名無しに見る名無し
09/10/25 00:22:41 m65PuYno
乙!

150: ◆L62I.UGyuw
09/10/25 00:25:25 SdB7C0l2
以上、投下終了です。
名簿の仕様は上の意見と衝突しますが矛盾は無いかと思います。

◆9L.gxDzakI氏へ
特にポータルサイト関連の情報戦の構想がある訳ではないのでしたら、修正でもそのまま次に丸投げでも構いませんよ。
「情報戦組が有効利用させようとするとメタ視点で厄介」というだけですので、有効利用させなくていいのでしたら実は問題無かったりします。

151:創る名無しに見る名無し
09/10/25 00:25:33 ggQkHpqM
おお、車きたか…と思ったらあっという間に破壊されたw
投下乙

152:創る名無しに見る名無し
09/10/25 00:40:05 oWysYK3Q
投下乙です!
うぅむ、潤也と別れてこっちに来たら、いきなり轢き逃げアタックとはw
そして地味にガッツが凄いことしてるw

>>150
情報戦組に踊らされる側が知ってしまうとマズくないですか?
とりあえず、明確に死者名簿機能が存在するって箇所だけ削除して残りの機能の詳細は不明、程度でいいと思いますが。

153:創る名無しに見る名無し
09/10/25 00:45:34 ggQkHpqM
まぁ車両断は他ならぬ沖田自身がやってるしなw
使徒切りに比べればまぁどうってこともあるまい

154:創る名無しに見る名無し
09/10/25 08:31:13 r0zRXYEf
投下乙
相変わらず悪い性格しとるなあ沖田w

155:創る名無しに見る名無し
09/10/25 11:35:58 5RHLNeuy
投下乙
沖田、おまw



156:創る名無しに見る名無し
09/10/26 02:05:21 Onr/rVdt
>>聞仲などは核爆発にも耐える耐久力
耐えたのは黒麒麟な

157:創る名無しに見る名無し
09/10/26 05:37:43 bV4kVIL3
あれ普賢が推測してただけではっきりとは描写されてない
確実に黒麒麟が防いだのは十二仙の一斉攻撃
まぁどっちにしろ普賢の零距離自爆食らって軽傷で済むんだから、核爆発程度軽く耐え切れるんだろうけど

158:創る名無しに見る名無し
09/10/26 09:00:14 elyjzoOO
あんとき手を出すなって言ってなかったか



159:創る名無しに見る名無し
09/10/26 19:16:14 uVAbjt76
ところで卑怯番長が金剛惨殺を見てたらヤバいよな……
時間的にはぎりぎりで間に合いそうだし

160:創る名無しに見る名無し
09/10/26 22:21:55 yPFwtCtt
投下乙
このロワの沖田はらしくていいなw
ってかよく口が回る回るw

161: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 01:47:47 3KjWgBxH
高町亮子、胡喜媚、浅月、宮子投下します

162: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 01:48:30 3KjWgBxH
亮子ちゃんが、頭を無くしちゃった理緒ちゃんの前で泣いてるの。
喜媚たちがお昼寝してた、ほんの少しの間に理緒ちゃんは死んじゃった。

姉サマっ☆ どうしてヒトはすぐ死んじゃうの?☆ 喜媚、つまんないっ☆

―あはん、ダメな子ねん、喜媚。そのギリギリを見極めながら遊ぶのが楽しいヒトとの遊び方なのよぉん。

心の中で、姉サマに御相談。
でも姉サマの言う事はいつも難しくて喜媚、わかんない☆

理緒ちゃん。
あんなに可愛かったのに時折、喜媚に向けてくる視線がとっても剣呑で、そこが堪らなく好きだった。
姉サマがいてくれたら、もっとあの子と仲良くなれる方法を色々教えて貰えたのに☆
でも今、姉サマはいない。
喜媚が自分で考えなきゃいけないんだ。

理緒ちゃんに取り縋る亮子ちゃん。
彼女を元気にする事が、理緒ちゃんの最後の願いだった。

じゃあ、喜媚がその願いを叶えてやりっ☆
理緒ちゃんもきっと喜びっ☆

でも、どうやって?
変な格好のヒトに変身しても、理緒ちゃんも亮子ちゃんも笑ってくれなかった。
喜媚、どうすればいいの? 理緒ちゃん……

「そだっ☆」
  
閃いた。
このやり方ならきっとうまく行きっ☆

「亮子ちゃん、元気出してっ☆」

言葉と同時に再びスープーちゃんの姿を借りっ☆
どろろんっとマジカル大変身っ☆
最初に理緒ちゃんに見せた時みたいに、亮子ちゃんもビックリっ☆

「な、あ、あんた!? それは……」
「喜媚、亮子ちゃんをいいところに連れて行きっ☆」

理緒ちゃんの死体をデイパックの空間の中に放り込むと、スープーちゃんの短い腕で亮子ちゃんをキャッチ☆
そのまま窓から飛び出して、マジカル胡喜媚の亮子ちゃん慰め大作戦、はっじまっるよっ☆


     ☆     ☆     ☆

163: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 01:49:17 3KjWgBxH
日が昇る前に歩いた道を、俺と宮子は戻る。
学校から森に入る、1km程度の開けた土地。
完全に日が昇り切った今、障害物も何もないここは格好の襲撃ポイントとなるだろう。
速く森に入らなければならない。
周囲を警戒しながら、移動。
だが、一歩進むたびに足首に蓄積される痛みが俺から集中力と体力を奪う。

「あさっち……大丈夫? やっぱり病院に行こ?」
「いや、大丈夫だ。急ぐぞ」

保健室に鎮痛剤はなかった。
最初からなかったのか、目端の利く人間が持って行ったのか。
それはわからない。
だが、今の状態でこれからの戦いを勝ち抜けると考えるほど俺は楽天家じゃあない。
これでも場数はこなしてるんだ。
捨て身で戦って、後一回の戦闘行為に耐えられるかどうか……といったところだろう。
そんな状況で、何が待ち受けいているかわからない所へ行くわけにはいかない。
例え鎮痛剤が手に入ったとしても、その後が続かなければ意味がないのだ。
どうせならその一回限りのカードは、自分ではなく仲間の為に切りたかった。

「……あさっち~、左腕を上げてみて~」
「ん? こうか?」

骨折した左腕を持ち上げる。
しっかり固定してあるから、ゆっくり動かすくらいなら平気だ。
すると、宮子が脇の間に頭を滑り込ませ、俺に肩を貸してくれる。
鼻腔をくすぐる甘い香りに、思わず息を飲む。

「お、おい」
「へへへ、あたしがあさっちの足になってあげるよ♪
 ……それで、これからどうするの?」
「ああ、さっきもちらっと言ったけど、神社に行って九兵衛ってやつと合流する
 あいつは……信頼出来る」

先ほどの放送で呼ばれた志村新八という名前。
九兵衛が探していた奴は、どうやら死んだらしい。
そして名簿にあった志村妙、坂田銀時という名前。
これが恐らく彼の探し人だろう。
自分は放送でスタンスを変える事を匂わせておいたが、それは誰にでも当てはまる事だ。
知り合いの死を知った奴が、果たして以前と同じでいられるのか。

だが、それでも香介は九兵衛を信じられると思った。
あの誤解を受けてもしょうがない初対面の場でも、彼は冷静に状況を判断し香介を信じてくれた。
それにどちらかというと奴は生真面目で秩序を重んじる委員長タイプに見えた。
きっと殺し合いなどという選択は取らないはず。

あいつが弟や、亮子を見つけてくれていたら……
亮子、理緒、お前ら、無事でいろよな。

(あれ~? あたしのことは心配してくれないんですか? 一緒に戦った仲なのに、薄情な人ですね~
 女の子にモテませんよ?)

謎の女の幻聴が聞こえた気がしたが、無視。お前のような奴は殺しても死なん。
頭を振るうと、宮子が自分をじっと見ている事に気付く。

「なんだよ」
「へへ、今あさっち亮子さんの事考えてたでしょ。隅に置けませんなぁ♪」
「ば、バカ。そんなんじゃねーよ」

164: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 01:50:00 3KjWgBxH
女ってのはどんな状況下でもこういう話が好きだな。
やたらテンションをあげてくる。
だがその様子からは親しい人をなくしたショックを、乗り越えようとする強さを見て取れた。

(でもお前、女ならもうちょっと意識しろよ……さっきから当たってんだよ……)

脇腹に感じる、柔らかすぎる感触。
亮子や理緒からでは到底得られないその触感に、年頃の健全な男の子の五感はどうしようもなく掻き乱されていた……


     ☆     ☆     ☆


変なカバみたいなのに変身した喜媚ちゃんに抱えられて、あたしは空を飛んでいた。
初めのうちは暴れたりもしたが、もし落とされでもしたら死んでしまう。
態勢的に話し合う事も無理だったので、あたしは大人しくされるがままに運ばれていた。
喜媚ちゃんは何かを探しているのか、あっちに行ったりこっちに行ったりとその行動には一貫性が感じられない。
いったい何がどうなっているっての?
この子、いったい何なの?
もしかして、この子が理緒を……
いやいや、あの疑い深い理緒が仲間だってあたしに紹介したんだ。
そんなはずがない。
それに、もしこの子が理緒を殺したんだったら、寝ていたあたしを生かしておく理由がない。
この島に来てから目にしてきた数々の異能。
たぶんこの子の力もそんな能力の一つなんだろう。
じゃあ、エドや聞仲を信じたようにこの子の事も信じられるはず。
でも、だとすると理緒を殺したのは一体誰?
なんで寝ていたあたしと喜媚ちゃんだけ生かしておいたの?
もう事態はあたしの処理能力を超えていた。
頭がパンクしそうってこういう時の事なんだ。
流されるがままに、TVでも見るようにあたしは状況を俯瞰する。
悪夢……という一言で片づけられたらどんなに良かったか。
でも、この身を切り裂くような風の勢いも、手にこびりついた血の感触も夢と言うにはあまりにもリアルすぎた。

「あっ」

ばさりと、身体に巻きつけていただけの毛布が風に流されてどこかへ飛んでいく。
あまりにもシュールな状況に、羞恥心も感じない。
思うのは、寒いな……ということだけ。
理緒の血で濡れた手で二の腕を抱く。
歯の根が合わずにガチガチと顎が痙攣を起こす。

この子、一体これから何をどうするつもりなんだろう。
敵から逃げてるのかな
あたしは一体、どうなるんだろう。
こんな小さくなっちゃって、ちゃんと元に戻るのかな。
香介はちゃんと、あたしの事わかってくれるのかな。
理緒……あんた、いったいどうして死んじゃったんだ。

熱のせいか、思考はまったく纏まらない。
為すべき事も、為さなければならない事も今のあたしにはわからない。
教えてくれ、弟……この悪夢は、いったいどうすれば終わるんだい?

「あ☆ みーっけ☆」

背面のカバは楽しそうに呟くと、眼下の森に向けて急降下。
地面へとしばらくぶりに降ろされたあたしは、足がもつれペタリと座り込む。
目前には元の姿に戻った喜媚ちゃんと。
木陰に座り込んでおにぎりを食べていた二人の男女……
香介と、知らない女の子が、こちらを唖然とした顔で見ていた。

165: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 01:50:51 3KjWgBxH


     ☆     ☆     ☆


香……介……よかった、無事だったんだね。
あたしと違ってカノン戦での怪我は治っていないようだったけど、それでも生きていてくれた。
それだけで良かった。
目の前が歪む。
あたしの頬を、大粒の涙がポロポロと零れ落ちていた。

「う……うう、香……介……」
「ロリッ☆ ロリッ☆ マジカル変身美少女喜媚ちゃん参上りっ☆」

「お前……亮子か? なんで……お前小さくなってんだ!?
 それにそっちの子、今カバから変身してなかったか? 空飛んでたし……」
「うわぁ、凄い凄い。ねぇ、見た見たあさっちっ!? 凄い手品だったねぇ!?」

驚いている。それはそうだろう。あたしだってわけわかんないんだから。
でも、あたしの事わかってくれたんだ。
すぐ亮子だって、気付いてくれた。
その事が嬉しい。

「おお、あさっち、その人が噂の亮子さん!? うわぁ、感動の再会だぁ♪」
「宮子、俺のバックに毛布入ってるからこいつにかけてやってくれ!」
「ほーい、宮子、了解♪」

毛布?
言われて気付く。
自分が今、素っ裸な事に。
慌てて胸を両手で隠し、涙目のまま香介の奴を睨みつける。

「ば、バカ、香介のバカ! 何見てんのよっ!」
「お、お前がそんな格好してくるからだろーがっ、だいたい、そんなぺたんこな胸見たってなんとも思わねーよっ!」
「なによ、ロリコンのくせにっ、あんた、こういう身体のほうが好きなんでしょっ!?」
「誰がロリコンだ!俺はいつものお前のほうが……っ
 ……まぁとにかく、お前が無事で良かった」

ぽすっ

右手で、頭を抱き寄せられる。
涙が香介の服に吸い取られる。
温かい……
そっか……喜媚ちゃんは、香介を探してくれてたのか。
きっと理緒から話を聞いて……
香介に言わないと……理緒が……死んじゃった事……

「おにい……ちゃん……」
「その姿でお兄ちゃんはマジやめろって……」


     ☆     ☆     ☆

166: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 01:52:19 3KjWgBxH
あさっちのデイパックから毛布を探す。
なんだか、色々入ってて判りにくいな……
これかな。
後ろから聞こえる痴話喧嘩。

へへへ、良かったねぇ、あさっち♪
喧嘩出来るのも仲がいい証拠だよ。
あたしは嬉しい気持ちの反面、少し物悲しくなる。
だって、沙英さんはもう、ヒロさんと喧嘩することも出来ないんだから……
沙英さん、落ち込んでるだろうな。
ゆのも、大丈夫かな……
あたしも早くみんなに逢いたいよ……

ドンッ

突然の衝撃。
交通事故にでも遭ったかのような、凄い音がした。

ベキベキ、ボキ

決して聞こえてはならない破砕音。
その正体も知覚出来ないまま、あたしの身体は宙を舞う。
喉を逆流する流動物。
吐いた。
というか、勝手に口から出てきたのは見た事もないようなドス黒い赤い絵の具。
あたしはそれを周囲の草むらに撒き散らかしちゃった。
大家さんに怒られちゃうと思った。
ここはひだまり荘じゃないのにね。

目の前に迫る大木。
あたしはその枝に掴まって衝撃を和らげようとする。

スカ

伸ばした腕は目測を誤ったのか空を切る。
……ううん、伸ばしたと思った腕の先には、何もついていなかった。

ドシャ

木にぶつかる。
そのまま落ちるかと思ったあたしの身体は、枝にひっかかる。
そこで初めて、あたしは自分の身体が半分なくなっている事に気付いた。

あ、もうあたし、絵が書けないんだ。
ねぇ、神様。あたし、何か悪い事したのかなぁ。
もっとみんなと落書きしたり、遊んだりしたかった……

最後に目に映ったのは、目前に迫る鉄塊と、悲鳴を上げる亮子さんとあさっちの顔。

ねえ、あさっち。
あたし、あさっちと出会えて良かったよ、ありがとね。

「りょ…こさんと……しあわせに……」

あたし、上手く笑えたかなぁ

グシャ


     ☆     ☆     ☆

167: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 01:53:04 3KjWgBxH


「宮子ーーーー!!」

香介の怒号。
いったい何が起こったの?
見たこともない黒い大男が、香介の連れの女の子を……剣で叩きつぶした。
あれは……まさか……

「てめぇええええええ!!」
「香介っ! 逃げてええええーーー!!」

香介が銃を放つも、黒い男はその身の丈をも超える大剣でそれを弾き飛ばし、こっちに向けて突っ込んでくる!

「ロリイイイイイイイ!!」

っ!?
その口癖……やっぱりあんたは!

「亮子っ! にげ……」

突き飛ばされる。
思わず、眼をつぶってしまったあたしが次に見たのは鉄塊を胴体に生やしたまま立っている香介の姿。

「こ……すけ……?」

ゆっくりと、剣が引き抜かれる。

ビュッ ブシャー

びちゃっびちゃっと、脈動に合わせて勢いよく香介の■■があたしの身体にかかる。

■■から噴き出したばかりの新鮮な■■は湯気が出そうなくらいで。

あったかい……

崩れ落ちる。
息も絶え絶えの香介を抱きかかえて、あたしは目前の男に問いかける。

「ど……して……どうしてこんな事をしたーーーー!! 胡喜媚ーーーーーー!!!」
「喜媚、亮子ちゃんを元気にしっ☆」

男は、黒い男に変身した胡喜媚は、にっこりと笑いながら、そんなトンデモナイ事を口にする。

理解出来ない。

あたしを……元気づけるためだって?

「さぁさぁ、亮子ちゃんもお楽しみっ☆ お酒もあるよっ遠慮せずにやりっ☆」

胡喜媚が、デイパックの中から一斗缶を出すと放り投げる。
空中で剣で破壊。

ばしゃぁっ

大量の医療用アルコールが、あたしたちに降り注ぐ。
噎せかえるような、酒精の臭い。
傷口にアルコールがかかったのか、痙攣する香介。

168: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 01:53:54 3KjWgBxH
「コースケ! コースケ! いやああああああっ!!」

必死に抱きしめるあたしの腕から、悪魔が香介を奪い取る。

「ほらほら、そんな顔してないで、笑ってっ☆ 亮子ちゃんっ☆」

まるでボールをトスするように胡喜媚は香介の身体を放り投げる。
そしてフルスイング。

「ローーーーリッ!!」
「いやああああああああああああ!! お兄ちゃああああああああん!!」

空中で血の華が咲き、■や■■がその辺の木の枝に引っかかる。

「あ、ああ……」
「まだまだお酒もたっぷり有りっ☆」

どんっ

デイパックから取り出される新しい一斗缶。
その封を切ると、胡喜媚はあたしの口にそれを押し当てて流し込む。
立て続けの嚥下で、喉が焼ける。
血に濡れていない部分の肌も、真っ赤に染まっていくのが判る。

「へべれけ、へべれけ、うたいます☆ はまぐり、はまぐり、のみまくり☆
 あ、そーれ、イッキッ☆イッキッ☆イッキッ☆」

野太い声が調子よく歌うのを聞きながら、あたしは目前の光景を目に焼き付ける。

大地には血と酒で出来た泥水。
木々には、人だったモノがぶら下がっている。
この世のものとは思えない、赤黒い世界。
香介の■と■■で出来た世界。



■■■■■


「朝歌だったら、姉サマに頼んでもっと凄いパーティーが出来るんだケド、喜媚にはこれが精いっぱいっ☆
 亮子ちゃん、元気になったっ!?☆ ロリッ☆」

■■■■る


「ひひ、ひっひひひひひひひひひ」


■し■■る


「あ、亮子ちゃん笑ってる、やったーーーーっ☆
 ほんとは姉サマのために持ってきたお酒だけど、もっと飲んでいいよっ☆」


■し■やる


「そうだ、理緒ちゃんにも手伝ってもらおっ☆ 魂魄がなくなっちゃったんだから……
 別に使っちゃってもいいよね☆」

169: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 01:54:40 3KjWgBxH


■してやる



「ロリっ☆……わぁっ☆ 理緒ちゃんの■■■■かわいー☆
 見て見て、亮子ちゃんっ☆」




殺してやる





殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる

殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる

殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる

ミズシロ・ヤイバアアアァァァァァ

あんたの力をあたしにくれええぇぇ!!

こいつを殺せる力を……

悪魔の力をあたしに寄越せえええええええ!!

成人にならずとも、「きっかけ」さえあれば目覚めると言うブレード・チルドレンの呪われし血。
あれほど忌避していたその力を、あたしは今こそ欲する。


殺す!

殺す!

殺す!


こいつだけは、あたしが絶対殺してやるっっっ!!!





     ☆     ☆     ☆


「あれ、亮子ちゃん?」

胡喜媚も血と酒の宴に少し夢中になりすぎたのか。
気がついてみると亮子の反応がない。

「寝ちゃったのかなっ☆」

170:創る名無しに見る名無し
09/10/27 01:54:53 hdTSgLv5
しえん

171: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 01:55:29 3KjWgBxH
顔を覗き込む。
亮子の眼は見開かれていた。
虚空を睨みつけたまま、その表情はもう動かない。
高町亮子の魂魄は、胡喜媚を恨んだままその肉体から抜け落ちていた。

「………」

胡喜媚はしばらく高町亮子の顔を眺めていたが、やがて立ちあがる。

「亮子ちゃんも壊れちゃった……喜媚、何か間違えり?☆」

小首をかしげる。
だが雉鶏精たる彼女は過去の事は気にしない。
済んでしまった事はしょうがないのだと頭を切り替える。

だが、頭の片隅で少し想う。
四不象を見つけたら、その復活の玉を使って貰って彼女たちを生き返らせ、また遊びたいと。


ズンチャラッカホーイホーイホヒッホヒッ♪
ズンチャラッカホーイホーイホヒッホヒッ♪

胡喜媚は元の姿に戻ると、踊りながらその場を後にする。
己の作り出した、酒池肉林の地獄に背を向けて……


【高町亮子@スパイラル ~推理の絆~ 死亡】
【浅月香介@スパイラル ~推理の絆~ 死亡】
【宮子@ひだまりスケッチ 死亡】

【F-3/森/1日目 昼】

【胡喜媚@封神演義】
[状態]:疲労(中)
[服装]:原作終盤の水色のケープ
[装備]:如意羽衣@封神演義
[道具]:支給品一式 、お酒の入った一斗缶×2
[思考]
基本方針:???
1:妲己姉様やスープーちゃん達、ついでにたいこーぼーを探しに行きっ☆
2:スープーちゃんの持ってた復活の玉で理緒ちゃんと亮子ちゃんを復活しっ☆
[備考]
※原作21巻、完全版17巻、184話「歴史の道標 十三-マジカル変身美少女胡喜媚七変化☆-」より参戦。
※首輪の特異性については気づいてません。
※或のFAXの内容を見ました。
※如意羽衣の素粒子や風など物や人物以外(首輪として拘束出来ないもの)への変化の制限に関しては不明です。
※『弟さん』を理緒自身の弟だと思っています。
※第一回放送をまったく聞いていませんでした。
※原型の力が制限されているようです

【お酒の入った一斗缶@現実】
病院で喜媚が見つけりっ☆
妲己姉サマにも飲ませてやりっ☆



※浅月香介と宮子のデイパックがその場に放置してあります。

172: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 02:00:16 3KjWgBxH
以上です
タイトルは「ちだまりスケッチ ~酒池肉林編~」

ちょっとやりすぎたかな?
伏字もwikiで使えるかどうか……

173:創る名無しに見る名無し
09/10/27 02:45:13 aMJHXMjL
>>172
と……投下乙です。

……どうしてこうなった? どうしてこうなった?
ど う し て こ う な っ た ッ ッ ッ !?

浅月ー!? 亮子ー!? 宮子ー!?
うわあああああ、好きだったキャラが次々と死んでいくううううう、あばばばばばばばば(ry

……本当に、どうしてこうなった……orz

174:創る名無しに見る名無し
09/10/27 02:53:17 1GjRTHED
投下乙

…さすが妲己の妹、純粋に邪悪だ

175:創る名無しに見る名無し
09/10/27 03:39:51 kX9WJ//t
な、なんという……
惨劇というのも生易しい……虐殺、惨殺……喜媚てめええええ!!

ものすごく感情を揺さぶられる作品でした!
ちっくしょおおお!!

176:創る名無しに見る名無し
09/10/27 03:53:32 iULv3vvk
乙!死亡ラッシュだな。
今思ったんだがガッツと沖田ってさげまんじゃね?

177:創る名無しに見る名無し
09/10/27 03:55:51 hdTSgLv5
>>176
さげまんの意味を知ってから出直せ

178:創る名無しに見る名無し
09/10/27 13:50:13 It4PpePE
投下乙です
こ、個人的にはここで殺すにはもったいないかなとは思うけどこれはこれでありか?
ああ、まだ前回なのは不幸な事故で済むかもとは思ったがこれはもう弁護できん
純粋に邪悪だな。喜媚死ね。氏ねじゃなくて死ねと思いました
凄い話だけどもったいない。もったいないけど凄い話でした

179:創る名無しに見る名無し
09/10/27 14:04:58 ODVUCFBO
これ亮子の死因は酒の飲み過ぎになるのか?

180:sage
09/10/27 14:16:18 Ee72JvJf
投下乙。香介は亮子に会えて良かったな。カップルで死亡はある意味幸運な気がする。

>>179
自分は香介死亡とそれによる怒りのあまりのショック死かと思ってたけど、
そういえばそれっぽいな。

181:180
09/10/27 14:19:57 Ee72JvJf
間違えてあげてしまった。すまんorz

182:創る名無しに見る名無し
09/10/27 14:42:35 It4PpePE
アルコール中毒でいいんじゃないか?
どこぞのへべれけへの当てつけみたいだw

183:創る名無しに見る名無し
09/10/27 17:29:14 xbyCBXer
喜媚……恐ろしい子
こないだまで普通の対主催だったのに
やっぱ妖怪だな、人間とは感覚が違う
それ故に無邪気なのがまた恐ろしいw
投下乙でした

184:創る名無しに見る名無し
09/10/27 17:45:42 9QLI+BQL
そういや原作でもうっかり太公望殺してたりするんだよなぁ
でも普通にここから対主催主戦力にもなり得るのが怖いw

185:創る名無しに見る名無し
09/10/27 18:34:39 zMFk/eDi
そしてこれで喜媚がトップマーダー
まさかこうなるとはw

186: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 18:48:58 3KjWgBxH
感想ありがとうございます
亮子の死因は、飲料用ではないアルコールを無理やり飲まされた事に因る中毒死ということで
お願いします
ちょっと描写がわかりにくかったかな

187:創る名無しに見る名無し
09/10/27 19:28:48 SKySWyDb
投下乙です
むしろ酒池肉林なんて教えた妲己が憎い

188:創る名無しに見る名無し
09/10/27 19:33:05 9QLI+BQL
>>186
ん?だとすると
>[道具]:支給品一式 、お酒の入った一斗缶×2
これ中身は酒じゃなくて別のアルコール類では?

189: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 19:35:11 3KjWgBxH
喜媚視点での認識で書いたのですが、客観的な情報のほうがいいですかねぇ
リレーだし。

190:創る名無しに見る名無し
09/10/27 19:41:48 9QLI+BQL
状態票は書き手向けメモなので客観視点の方がいいと思われます

191: ◆yuVy4gPLQo
09/10/27 19:46:56 3KjWgBxH
では
【エタノールの入った一斗缶@現実】
病院で喜媚が見つけりっ☆
妲己姉サマにも飲ませてやりっ☆

ということで。

192:創る名無しに見る名無し
09/10/28 12:10:08 kv7ZkLB1
妖怪姉妹こえー
亮子は信念ごと堕とされたな

193:創る名無しに見る名無し
09/10/28 13:38:33 F0SzHtCe
マーダー一人もいないのに血の雨が降る気しかしない予約が来たw
ハム逃げてーー

194:創る名無しに見る名無し
09/10/28 14:50:39 FtJRugRr
ハヤテは見事なバトル漫画だな伊澄が生き残ってたら、扱いが相当変わっただろうに

195:創る名無しに見る名無し
09/10/28 16:49:27 MtYAHlUG
自分以外のブレチルが全滅した事を知ったらカノンはどうするんだろう
まずこの危険地帯を抜け出さなけりゃ話にならんけどなw

196:創る名無しに見る名無し
09/10/28 18:15:24 ApKsCcSV
なんかまともな正統派対主催ばかり餌食になってるよなw
残った対主催のうち、未来日記勢はどいつもこいつも協調性ないし、
妖怪姉妹は言うに及ばず、安藤兄弟はどっちもダーク化フラグ……w

197:創る名無しに見る名無し
09/10/28 19:02:49 jECOyU9e
それでもきっと、雪路ととらなら何とかしてくれる……!

198:創る名無しに見る名無し
09/10/28 20:42:09 5atw2O4y
うわぁ
レガートまで……どうなるんだ
読めなくなったぞ

199:創る名無しに見る名無し
09/10/28 21:27:55 MtYAHlUG
逃げてー、ハム沢さん逃げてー

200:創る名無しに見る名無し
09/10/29 00:51:12 IbJBRPA9
パロロワwikiの新漫画バトルロワイアルの項目が更新されてたから見てみたが……
うん、確かにその通りだよ。
ここまで惨劇が連続して起こってるのも珍しいだろうな……

201:創る名無しに見る名無し
09/10/29 01:16:47 S8xPlraR
更新乙

202:創る名無しに見る名無し
09/10/29 09:15:18 jEixE0Ur
死因急性アルコール中毒って前代未聞だなw

203:創る名無しに見る名無し
09/10/29 10:22:46 7+O8zcuE
そういやもうカノンが殺せる相手誰もいないんだな。
本編で一番最初に死んだカノンがロワではブレチルで一番長生きってのも皮肉だなあ……www

204:創る名無しに見る名無し
09/10/30 00:41:48 r+cHeQDy
今月の未来日記カオス過ぎるだろw
由乃どうしようこれ・・・

205:創る名無しに見る名無し
09/10/30 01:04:41 C7tx+64O
バラすなよっ、絶対バラすなよっ

206:創る名無しに見る名無し
09/10/30 01:30:08 Q7sis+13
ついに人外だと判明したか?
むしろ今までの何処にも一般人だと思える要素が無かったけどな

207:創る名無しに見る名無し
09/10/30 01:37:21 r+cHeQDy
人外だったくらいなら別にいいんだが
読んでてポルナレフの気分だったw
下手すると「このロワに参戦してる由乃って誰?」なことに

208:創る名無しに見る名無し
09/10/30 08:58:28 zm8Fd4ML
あ、ありのままに起こった事を話すぜ。
禁則事項が禁則事項で禁則事項だった。
何を言ってるのか(ry
次回でどんな超設定が判明する事かwww

209:創る名無しに見る名無し
09/10/30 19:43:46 5qbI9bFX
むう、気になるではないかw
どこにいったらそのネタばれがみれる?
最悪の場合、原作と大きく乖離する前に殺すしかないな……

ところで作品に対する不満ってどうすればいい?
いままでいってなかったけど、唐突にいったら
「あの時はいってなかったじゃないか」的なことを言われたロワがあったから、
定期的に毒吐いて「こういう不満があったんだぜ」ってことは表に出しておきたいんだけど。

かといって本スレは荒らしたいわけではないからこういうこと言うんだけど。

210:創る名無しに見る名無し
09/10/30 20:34:57 F8uTtWbT
好きにしろ

211:創る名無しに見る名無し
09/10/30 20:49:26 qrhKXu2h
まあ落ち着け
毒はきの誤爆スレを使えばいいと思うよ

212:創る名無しに見る名無し
09/10/30 21:01:06 r+cHeQDy
本気で不満があるなら議論スレ
単に「俺にとっては不満」ってんなら何も言うべきではない
それでも我慢できないなら最悪の行為であることを理解した上で誤爆スレ

こんな感じで

213:創る名無しに見る名無し
09/10/30 23:55:57 C7tx+64O
本気でこれおかしいんじゃねって時は議論スレ行きだが、既に後続が書かれている時は
修正は難しい
まぁ俺は面白ければ少しくらいの問題は流すけどね

214:創る名無しに見る名無し
09/10/31 15:35:35 Hk7VeS/V
A読んだ
むしろ或が振り下ろされた日本刀の背を片手でつまんで止めたことに驚いた
しかしデウスのみねねへの仕掛けはなんだったんだろう

215:創る名無しに見る名無し
09/10/31 23:46:09 t92HY+Dn
用語集ワロタよ
GJ

216:創る名無しに見る名無し
09/10/31 23:56:35 D4FHNBbM
ついに用語集ができたか
GJ

217:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 15:57:08 yxYmQEpk
「…………」

「…………」

重苦しいまでの朝の沈黙が、無機質なリノリウムにこだましない。
“神”様の箱庭に集う生贄たちが、今日も奴隷のような辛辣な無表情で、背の低い天井に抑えつけられている。
汚れに満ち満ちた心身を包むのは、深い色の血化粧。
仇への殺意は乱さないように、黒い憎悪は翻らせないように、ゆっくり煮詰めるのがここでのたしなみ。
もちろん、禁止エリアギリギリで走り去るなどといった、はしたない参加者など存在していようはずもない。

ずかずかと入り込んできた女のことなど毛ほどの気にも留めず、目を眇めてミリオンズ・ナイブズは思索する。

やはり、あまりにも不自然すぎる。
それはもちろん、この島という存在そのものが、だ。

直径は約9km。
全周は30㎞弱、面積にしておよそ65?。
ナイブズには知る由もないが、この島の大きさは八丈島とほとんど変わらない。
なのに、博物館、水族館、研究所、デパート、工場、……研究所。
いくらそれなりの面積とはいえ、雑多かつ高密度に配置された施設は離島ひとつに全く必要ないものばかり。
設置する意味さえ見いだせない。
離島と断言するのは人目に付かないからという程度の理由ではあるが、いずれにせよ運用するにはコストが高すぎるものばかりだ。
しかもこの研究所を見る限り、一つ一つの施設の大きさは相当なものなのだろう。
あの人間の少女はここが体育館並みに大きいと評し、山の中に埋まっているとは信じられないとさえ言い切った。

要するに―あまりにも人工的すぎる。まるでシップ内部を見ているかのようだ。
この場所がこの殺し合いのためだけに創られた可能性はかなり高いと踏む。
『探偵日記』にはここがニッポンとやらではないかと記載されていたが、それは違うという確信がある。
むしろ“神”陣営の上層部にニッポン出身の人材が食い込んでいるのではないかとみた方が妥当だろう。
あるいは“神”本人がニッポン出身なのか。

いずれにせよここを設計した存在は、理知的ながらかなりの遊び好きだ。
配置された施設が娯楽と教養を兼ね備えた施設ばかりなのだ。
まるで自分がそういう性格ですよと言わんばかりの自己アピールに、静かに腸を煮え滾らせる。

そしてナイブズは誓いも新たに神との敵対の意思を確かめる。
『螺旋楽譜』の主の言葉を鵜呑みにするわけではないが、成程確かに与えられた情報だけでたどり着ける真実は単なる挑発でしかない。
今こうして自分が憤っていることそのものが掌の上という訳だ。
踊らされていることへの憤怒こそが思う壺だとは、何という悪循環。
分かっていながら堰を切ったように流れ出る感情を止められはしない。

いや、小難しい事はいい。自分の行動理念はシンプルだ。

これだけの島を創造し、今もなお維持し続けている。
なのにこの島にはそれらしい発電施設はない。
いや、地図に載っていないだけかもしれないが―、実際にも存在しないと断言できる。
何故なら、同胞たちの胎動が、悲鳴が、自分の耳に届いているからだ。
こんな事のためだけに、この島のどこかで彼女たちは今もなお搾取され続けている。

その苦しみの代弁者として、今一度刃を振るえばいい。

218:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 15:58:08 yxYmQEpk
斃すべき相手でしかない“神”の人となりを慮るなど余計な考えに至ったのは、放送と二つのblogという情報源に当たったからか。
……全く、自分が人間の言葉などに触発されるとは実に腑抜けていると、ナイブズは自嘲する。

ただまあ、それでも。
価値は認めてやるとしよう。

放送の女は“神”に反逆を試みて―、消された。
何を残したかったのかは知らないが、その心意気だけは買ってやってもいい。

そして、この『螺旋楽譜』。
ひたすらに自分への不信と“神”の思惑への警告を謳うだけの、無愛想な文面。
だが、そこには確かに抵抗の意思が感じられる。
“神”の傀儡の可能性はあるが、それでもこの記事の管理人は使えるかもしれない。
少なくとも行動の監視があっても碌なものではないだろうという考察は、それなりに理には適っている。

ただ、いずれにせよ彼らの行動の意味を推し量り、信じなければ何の価値もない代物にすぎない。

「―人間を信じる、か」

何という皮肉だろうか。
今の自分は、あまりに無力。
人間の言葉尻を信じ、盲になってでも“神”の尻尾を掴もうとしなければ戦うことすら―、
いや、“神”の輪郭を捉えることすらできない有様だ。

その無様さに不思議と嫌悪感は抱かなかったが、ただただ空虚な笑いを堪えるので精いっぱいだった。

ふと立ち返り、静かに目を瞑る。
人間から得た情報を信じようが信じまいが、自分の為すべきことは変わらない。

―名簿に、目を通す。
見知った名前がいくつもあったが、やはり一番に目に付いたのは弟の名前だった。
人間を信じるというならば、彼こそが適任だ。

“ヴァッシュ・ザ・スタンピード”

「お前は今―何処にいる?」

良く馴染みのあるゲートの拓いた感覚を得てからおよそ4時間。
それきり彼の行方は杳として知れず、ただ放送で無事に生き延びていることを理解できたのみ。
『探偵日記』とやらの管理人に利用されているのが彼なのかどうなのか、現状確かめる術はない。
コメント公開を要請しても返事は綺麗に飾り立てられた言葉で有耶無耶にされ、あらためて人間の愚劣さを思い知らされただけだった。
当然ながら『探偵日記』の管理人は信用に値しない。

「……度し難い」

本当は無視してしまいたいところだが、しかしヴァッシュが関わっている可能性もある以上そうはいかない。
とはいえ、まともな交渉などしてやるつもりもない。
ならば、どうするか。

219:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 15:59:15 yxYmQEpk
答えは情けないことだが、様子見の一手だ。
いや、一つだけ手を打っておいたが、あまり期待はできないだろう。
『螺旋楽譜』の出現に追随するかのごとくリンクの張られた掲示板に、自分を匂わせる書き込みをしただけでしかない。
あまり積極的に動かないのは、冷静に現状を分析してのこと。
放送直前に更新を行っていることから『探偵日記』の管理人はそれなりに安全な環境にいるはずだ。
ヴァッシュの能力を酷使するメリットはない。
ならば、下手に藪を突いて警戒させることもないだろう。
今後の『探偵日記』の更新を確認してから動けばいい。その為の端末―携帯電話とやらも既に調達している。
屈辱を押し殺して『探偵日記』の文面を信じたのは、敢えて口車に乗ってやった方が得られるものが多かった。それだけの話だ。
―今更、どんな顔をして弟の前に出ていけばいいのかという思いもある。

それに利用されているのがヴァッシュとも限らない。
自分の知る限り、名簿の中で見知らぬ人間に手を貸しそうなお人好しは3人だ。
そのうち一つは放送と同時に浮かび上がった多くの見知らぬ名前と共に真っ赤に染まっている。

“チャペル”

どういうことなのだ、と、一人口の中でその単語を転がす。
いや、彼だけではない。

レガート・ブルーサマーズ。
ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク。

最後まで自分への忠義を貫き続けた男と、自分を怖れ逃亡兵となることを選んだ男の二人の名が、確かにここにある。
―それを最初に目にした時、確かに自分の中の何かが疼いた気がした。

偽物かと疑るも、そうである意味はない。
悪趣味な“神”の成したこと、本物であるのだろう。
死んでいった男たちは、どうしてか今生きてここにいる。

“神”は蘇生の力でも持っているというのか?

可能性は0ではない。
……しかし、たとえそうだとしてもだからどうした、としか思い浮かばない。
その方法さえ皆目見当がつかないし、たとえ思い付いたとしてもどれほどのコストがかかることか。

それよりも現実味がありそうなのは、と一つの考えがナイブズの脳裏に浮かぶ。
かつて、銀河で初めて個人にして跳空間移動を可能としたナイブズだからこそ思いつける可能性。
時間と空間に精通しているからこそ、至れる可能性を。

―並行世界。
そこから彼らは連れてこられたのではないか。
蘇生の力よりは、こちらの方が色々な疑問に答えを付けることができる。
蘇生と並行世界移動、両方の能を持っている可能性も否定できないが。

ほんのわずかな間だけ、呼吸を止める。
理解している。これはただの逃げだ。

いずれこの殺し合いの場で彼らと巡り会ってしまったその時に―どう向き合えばいいのか。答えは出ない。

いや、そもそも自分は彼らと向き合ったことすらなかったのだ。
ただ利用するだけの存在として、軽蔑すべき人間の指の一本としてしか彼らは存在しなかった。

220:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 16:00:03 yxYmQEpk
向き合うなどということをあらためて考えてしまったのは、ヴァッシュに毒されたからだろう。
あるいは、彼の考えを認めてしまったからなのか。
その意味では最早、あの男たちが畏れ敬ったミリオンズ・ナイブズはとうに死んでしまったのだ。

それでも見知らぬ人間としてぞんざいに扱う事の出来る連中はまだ楽だ。
逃げを選んだミッドバレイも、捨て置けばいい。どう動いていようと追うつもりもない。

しかし、しかしだ。
―レガート・ブルーサマーズ。
あれ程の忠義を傾けてきた男を、これから自分はどう扱っていけばいい?
まず間違いなく自分にかしづくためだけに狂気を存分に振るっているであろう男に。

……既に自分には、人間を滅ぼそうという気もない。
だからあの男に特に何かを期待することもないが、それで鞘に納まっている男でもないだろう。
もしかしたら自分に失望し、妄念を暴走させる可能性すらある。
今の自分を見て、あの男がどうなるのか全くもって予想がつかないのだ。

得体の知れない不安のようなものを飲み込む。
馬鹿馬鹿しい。
仮に自分の邪魔となるのだとしたら、たとえレガートといえど排除すればいいだけの話だ。
きっと、それだけのことでしかない。

そのまま名簿をデイパックに放り込もうとして、最後に一つの名前に目が行った。
西沢歩―確か、そう名乗っていたか。
良く生き延びられたものだと僅かに心の端で思い、そんな思考ノイズをさっさと忘れることにする。
あの娘が口にしていた綾崎ハヤテとやらも死んだ。
ただの人間がこの場で生き延びられる道理はなく、故にあの娘も遠からず後を追うだろう。

あの道化男を始末した後、一瞬だけでもあの娘の後を追うなどと考えたこと自体がおかしいのだ。
今更人間とともに歩む道はない。
そしてまた、人と寄り添うことを示し続けたヴァッシュの前に出て行くことも出来はしない。
いくら弟の安寧を祈っても、おめおめと姿を見せる事を自分自身が許さない。

あの男が無事ならば、それでいい。

たとえここに招かれたのが並行世界のヴァッシュであっても、彼はただLOVE & PEACEを高らかに響かせ続けている筈だ。
どこであろうと弟は変わらないという確信がある。
あの娘がどんな末路を迎えても知ったことではないが、幸運にも弟に出会えたならば生き延びられるだろう。

……いつ以来だろうか、誰かの無事を願ったなどというのは。
ヴァッシュは、生きるべきなのだ。


「あー……、ヤツを殺ったのは、アンタか?」

先刻からずっと、敢えて無視していた存在からようやくのお声がかかる。
自分の背後で何やら唸っていたが、気にするほどの存在でもないと完全に意識の外に置いておいた。
そしてそれは詰まらない第一声の内容によってより確かな認識となる。
情報交換を持ちかけるなら持ちかけるなりに、単刀直入にそれに値する手札を提示するべきだろうに。

道化男の死体の周りをウロチョロしていたようだが、彼奴の同類だというなら先んじて始末しておくべきだろうか?
小蠅というのは潰しても潰しても沸いてくる上に、この上なく鬱陶しい。
人間全体への既に殺意は抱くことはないにしても、ただただ愚昧なだけの個人は己の存在が当然であるかのように生き恥を曝している。
奴原を消し去る面倒臭さを思えばナイブズは気付かれないほどの溜息を漏らさざるを得ない。

221:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 16:01:09 yxYmQEpk
***************


「おい、無視かよ。このみねね様相手に―」

ぞく……、と。

空気が変質し、雨流みねねは呼吸ができなくなる。
かたかたと勝手に体が震え、あたかも彼に跪くかのように足が体を支えられなくなった。
みっともなく、尻餅をつく。
震えを消そうとして腕を回し、それでようやく思い出した。
抑え込みたくても、その為のてのひらは吹っ飛んでしまったのだ。
痛くて痛くて凄い喪失感でいっぱいだったはずなのに、一睨みされただけでそんな事すっかり脳裏から消え去ってしまった。

こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい
こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい
こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい

「……人間か。さっさと立ち去れ、俺の機嫌が変わらんうちにな」

それきり興味を失ったかのように、みねねの目の前の男はPCの画面に向き直った。

呼吸が荒い。心臓の音が鐘のように五月蠅く鳴っている。
目の前に血の河が流れたように見えた。
生きていることが嬉しいのに、歯牙にも掛けられない自分が惨めで泣きそうになる。

這いつくばって、ずるずると部屋を離脱しようとして―、

「……逃げ出せるかよ」

このままほうほうのていで裸足で出ていったりすれば、みねね様の名が廃る。
ああ、怖い。確かに怖い。
けれどそれを抑え込む。
自分の人生は戦いの連続だった。
立ち向かわねば理不尽を捩じ伏せる事が出来ない事を、思い知っているのではなかったか。

それに考えようによっては、これは好機だ。
この男ならあの妲己に間違いなく対抗できる。
しかも、あの女が絶対に想定していないであろう札だ。
ヤバさはこの男の方が上かもしれないが、それでも逃してはならない。

どうすればいい? どうすれば引き込める?
考える時間は僅か。ヒントは男自身の言葉にあり、そこに切り入れば済む事だ。


「生憎だが、私は人間を辞めたのさ」

そう呟いて手近にあった適当な本を手にし―爆破。
男が、目だけをこちらに向けてきた。

222:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 16:02:02 yxYmQEpk
自分がもうまともなニンゲンではないという事実にチクリと痛む胸。
その棘に気付かないふりをして、みねねは男を睨み付ける。
一秒後には心臓に刃が突き刺さっているかもしれないという暴力的な緊張感と闘いながら。

「お互い人外同士、情報交換といこうじゃないか。
 立場はフィフティフィフティ、後腐れない取り引きを終えて、そのあと私は出て行く。
 そうすりゃ問題ないだろ? どっちにとってもメリットしかないはずだ」

見返りは十二分。
男はぐるりらと首を回し、見下ろす目線でみねねの方を検分してくる。
そのまままったく期待のこめられていない口調で投げ掛けられた問いが一つ。

「ヴァッシュ・ザ・スタンピードを知っているか?」

ちぃ、と舌打ちする。
おそらく人名だろうが、みねねにとっては聞きなれない代物でしかない。

「生憎だが心当たりは―、」

と、仕方なしにそれを告げようとして、何かが引っ掛かった。

「……いや、待った。確かに聞いた。どっかで聞いたぞ」

ある一人の女の顔と、失った自分の手がフラッシュバック。
耳にしたのはつい先刻。朦朧としていて聞き流していたが、あの女が自分を送り出す直前に口にしていたのだ。

「……そうだ。あの女が手当の時に訊いてきやがったんだ。
 どこかの死にかけがヴァッシュとやらは頼れるとか言い残したが、私に心当たりはあるか……って」

「女? ……何者だ」

目つきを変え、男が俄然と食いついてくる。
態度の変わりように驚きながらもみねねは悟る。

―これは、千載一遇のチャンスだと。
妲己を追い詰めるために、あの女について躊躇わずに所見を述べていく。

「妲己っていう自称妖怪のクソいけ好かねぇ女さ。性格的にも実力的にもあいつはヤバい。
 自分で言うのも情けねーが、奴に大切なものを握られててな。
 今の私は仕方なしにあいつの手駒に成り下がってる。
 飴も鞭もどっちも使って、周りの連中をみんな誑す悪女だよ」

「そいつが、ヴァッシュの名を口にしたのか?」

「そうだよ。ついでにそいつの特徴も私に教えて、探すよう言付かったぜ?
 金髪の赤いコート、だっけか」

ニィ、と口端を歪めて証拠を提示。
うろ覚えだが、どうでもいいと思った知識も意外と役に立つものだ。
妲己に感謝しようと一瞬思ったが、そもそもの元凶はあの女なのでやめておく。

223:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 16:03:22 yxYmQEpk
「何度も言うが、あの女は掛け値なしにヤバい。
 なにせ、私への命令が『これから会う奴全員に対して、自分が仲間を集めている事を伝えろ』だ。
 ……イカれた命令だよ。
 自分を餌に殺し合いに乗った奴も乗ってない奴も潰し合わせて、使えそうな奴を選びだそうとしてる。
 そのヴァッシュって奴も、奴の周りの騒乱に巻き込まれるかもな?」

最後の一言に、男は何を思ったのか。
全ての表情を無くして黙りこんだ後ずかずかと歩き出す。
みねねを全く無視する形でだ。

「―行くんだったらデパートだ。とりあえずそっちに向かうって言ってたぜ」

そうは問屋が卸さない。あの女を御すために、もう少しこの男に踏み込んでおかねば。

「これだけ教えたんだ。
 見返りとして、妲己の奴が持っている携帯電話を取り返しちゃくれないか?
 ちょっと大切なもんが入ってるのさ」

返事はない。
ただ、一瞬だけ先刻と同じように殺気が膨れ上がったのが肌身に突き刺さった。
二度目だから流石に尻をつきはしなかったものの―、

気付いた時には男の姿は影も形もなくなっており、滝のように流れ落ちる汗が自分が生きている事を教えてくれている。
思うのはシンプルなたった一つの事。

……助かった。それだけだった。

「……手はとりあえず、これで一つか。悪くない取り引きだったとは思うが、いかんせん心臓に悪すぎる」

はあ、と思いっきり息を吐き、くずおれる。

「つっても、まだまだこれじゃ足りないな。
 打てる手が残ってる以上は地獄の釜底であろうと足掻かせてもらうわよ」

目線の先にあるのは、男が使ったまま電源が付きっぱなしのPC。
その向こうにはブラウザが立ち上がっており、いくつかのサイトの内容が表示されている。
利用しない手はないとみねねの経験は告げていた。

「妲己。あんたの知らない私の世界の技術で、あんたを出し抜いてやる。
 のんびりとふんぞり返っていられるのも今のうちだぜ?」

汗まみれで口にしても我ながら説得力はないな―とみねねは愚痴を零し、苦笑した。

それが、命を握られてもなお立ち向かえる強さの証。
生きているから、戦えるのだ。


【F-05地下/研究棟/1日目/朝】


224:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 16:04:09 yxYmQEpk
【雨流みねね@未来日記】
[状態]:疲労(中)、左拳喪失(ほぼ止血完了、応急処置済み)、貧血(小)、爆弾人間
[服装]:
[装備]:メモ爆弾×6
[道具]:支給品一式、単分子鎖ナノ鋼糸×4@トライガン・マキシマム
[思考]
基本方針:神を殺す。
1:研究所のPCを用いて、情報戦を仕掛ける。
2:出会った人物に、妲己が主催に反抗する仲間を集めていると伝える。
3:首輪を外すため、神を殺すためならなんでも利用する。
4:妲己を出し抜いて逃亡日記を取り返すため、日記所有者を探す。
5:出来ればまともな治療をしたい。
6:恐怖しながらもナイブズが妲己を始末することに期待。
7:12thの蘇生について考察する。
[備考]
※ボムボムの実を食べて全身爆弾人間になりました。
※単行本5巻以降からの参戦です。
※妲己と情報交換をしました。封神演義の知識と申公豹、太公望について知りました。
※アルフォンスと情報交換をしました。錬金術についての知識とアルフォンスの人間関係について知りました。
※メモ爆弾は基本支給品のメモにみねねの体液を染みこませて作っています。


***************


―たぶん、だけど。
夢を見ていたと思う。

どんな夢だったかは思い出せない。
けど、きっとあんまりいい夢じゃなかったんじゃないかな。
普通はこういうときに見るのはいい夢じゃないかなって思うんだけど、私やっぱりついてないみたい。
というか、夢枕に誰かが立つってイベントすらすっ飛ばされてなかった事になっちゃうんだ、私……。
せめて夢の中でくらい幸せでもいいのになあ。

痛い夢。辛い夢。苦しい夢。

……怖いよ。

ハヤテくんがもういなくなった事を認めちゃって、私は生きているのが辛くなった。
大切なものがこころから融けるように消えてしまって、ぽっかりと大きな穴が開いた。

―孤独。

そう、だ。
多分だけど、私が自分の命を断とうとしたのは、たとえようもない寂しさを感じたからだ。
ここには誰もいない。
ほんとうの意味で言えば知っている人はまだ何人か生きているんだろうけど、今は誰ひとり私のそばにはいない。

私には特になんにもないけれど、それでもずっと私の周りには優しい人たちがいた。
お父さん、お母さん、一樹。
ちょっと不穏なところもあったけど、それでもかけがえのない家族。
ヒナさん―ともだち。
私なんかとは違って何でも持っているのに、何でもできるからこそ一皮剥けば可愛らしいところのある人。

225:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 16:05:10 yxYmQEpk
ナギちゃんはどうしているだろう。
わがままで意地っ張りだけど、あの子は多分すごく強い子。
大切なひとを失ったからって、私みたいに何もかも諦めちゃう訳じゃないんだろう。

そして、ハヤテくん。
……やめよう。大切だけど、大切だったけど。
だからこそあの人の事を考え続けると私は潰れちゃう。……壊れちゃう。

私は、強くない。ぜんぜん強くない。
大切なひとを失っても、悲しみを糧にしてもう一度立ち上がれるほど強くない。
大切なひとを失ったから、自分を忘れて怒りに身を任せられるほど強くない。

そう、私は強くないんだ。
気絶しちゃって、目が覚めて。
こうして落ち着いてしまった今、はっきりとそれを悟る。

……普段の私は、自分から死を選べるほども強くない。

この手で命を捨て去ろうとした激情に、体が震えだす。
ぶるぶるがたがたぐらぐらがくがく。
私は一体、何をしようとしていたんだろう。

死を選んだんじゃなくて、生を諦めた。
でもそれは―、死ぬことへの覚悟を決めたって訳じゃない。

死ぬってどういう事?
今考えているこの私が、消えてなくなるの?
私は、どこへ行くの?
どこにも行かないの?

まっくろな闇の中でまどろんでいるような感じ?
それとも、極楽って言われるように、これまでの亡くなった人すべてが集まる理想郷に辿り着く?
ううん、きっと違う。
そこにあるのは闇ですらない、完全なゼロ。
もちろん先に逝った人と永遠に穏やかな暮らしをする、なんて事だってありえない。

痛いのと怖いのが嫌だから、私は死のうとした。
確かに死ねば、痛いのも怖いのも0になる。

……でも、きっとそこには誰もいない。
私すらいない。
ハヤテくんだっていない。

ごめん、ハヤテくん。
あなたに会えるかもって理由で、さっきは命を捨てようとしたのに。


「私―、まだ、死にたくないよぉ」


…………、皮肉だなあ。

今度こそ助からないって、まさにその時になって気付くなんて。

226:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 16:06:08 yxYmQEpk
知らないお兄さんが、馬乗りになって私の首をぎりぎりと絞め上げていた。
5たす5。
十本の指の感触が、私の喉に食い込んでくる。

気がついたら、もうこんな状態だった。

自分が死ぬって事がまるで他人事のよう。
だって、そう思ってないと心が砕けちゃう。
人の心って本当に難しいね、ハヤテくん。ついさっきまで私はあなたのいるそこを信じていたんだよ?
なのに今は、死ぬのが怖くて、怖くて怖くて、死んだ後の世界を信じられないよ。
ほんの上っ面だけでも信じられたら、ずっとずっと楽になれるのに。

あはは。
これで死んだ人の魂の集まる場所が本当にあったのなら、つくづく私はついていないなあ。
“神”様がほんとうにかみさまなら、そのくらい用意してるかも。

あはは、はは、は……。
私、都合のいい妄想ばっかりだ。ずっとずっと、最後まで強くないまま。

何かがこきりと鳴った。
目の前が薄暗くなってくる。
苦しくて息ができなくて辛くて、私の首から伸びたお兄さんの手首を必死で掴んだ。
ぎゅうっと握りしめると自分のとは信じられないくらい強い力が出る。
それに驚いても、手は勝手に動く。
お兄さんの手に私の爪がぶすぶすと突き刺さった。
血に濡れる感触が気持ち悪いけど、それでもお兄さんの力の方がずっと強い。

口から泡が出てきた。つばを飲み込みたくても出来ないんだ。
私の死体には首に手の形の青あざがついちゃうかも、なんてどうでもいい事を考える。
少しづつ、体の力が抜けていく。一緒に私の命も抜けていく。
考えられる量が少なくなってきて楽なはずなのに、苦しいよ……。
息ができないって、こんなに苦しかったんだ。

お兄さんは焦点の合わない目で、私でない何かを見つめている。
今にも泣きだしそうに震えてて―、どこか悲しそうに感じられた。
なんでかわからないけど、私を殺そうとする人なのにまったく憎くなんてなかった。

だから、私はぱくぱくと口を動かす。
何を伝えたかったのかは、分からない。

でも、声が出なくても、意識が朦朧としていても。
確かに私はお兄さんに何かを言ったんだと思う。

―本当に突然だった。
お兄さんは不意に、怯えた顔をして首から手を離した。

ごほごほと、咳が出る。
いきなり肺の奥に流れ込んだ大量の空気とつばが、苦しいぐらいに痛い。
痛いのに、胸を掻き毟りたいのに、体がそれを許してくれない。
もうやめてって叫びだしたいくらいに、パンパンになるまで勝手に息を吸わされる。

でも生きてる。
まだ私は―、生きてる。

227:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 16:07:03 yxYmQEpk
お兄さんは呆然としながら、一歩、二歩と後ずさった。
頭を抱えてフラフラと掻き毟って、今にも風で吹き飛んでしまいそう。
そんな頼りない姿なのに、血の混じった痰を吐きだしたら、急に体中に戦慄が走った。
さっきまで体を委ねさえしたお兄さんが、急におぞましい化け物のように見えてくる。

「ひ、ぃ……っ」

まだぜんぜん覚束ないのに、お酒を飲んだお父さんのように千鳥足で逃げ出す。
走ろうとする。
早速転んだ。
膝小僧がずるりと剥けて、泥が肉に入り込んだ。けど立ち上がった。
また走り始めた。
すぐ転んだ。また、別のところが裂けた。けど立ち上がった。
後ろも見ず、お兄さんの動きも確認せず、とにかくここにいたくなかったから。
―私は、また逃げ出す。
森の道へと。逃げていく。
体中に擦り傷を作って、ぼろぼろになって。

……誰でもよかった。
私はガラガラに潰れた喉で助けを求め続けている。

「ヒナさん! ボンさん! 平坂さん! ブランドンさん! ハヤテくん!」

涙で顔をぐちょぐちょにして、喉に手形の青あざを作って。どんなにみっともない姿でも。

私は強くないから、素直に気持ちを吐き出してしまう。
ただ、死にたくないから。

「助けてよぉ……っ!」

その瞬間、目の前がオレンジ色に染まった。
花開いた炎と黒煙は―、本当に花火そっくりで、それが暴力の象徴だなんて思えなかった。

いつの間にか、私は空を飛んでる。
片方の耳が何にも聞こえない。
ただ、耳から首筋に血が流れてる感触がする。
鼓膜が破れたのかもしれない。

あ、爆発したんだ。

そう気付いたのは、地面に思いっきりぶつかってごろごろ転がった後だった。
なあるほど、といやに冷静にうなずく。
あのロボットもこうやって壊れちゃったんだ。
燃えていた服は泥にまみれたせいか次第に消えていったけど、繊維の燃える臭いが頭に響く。臭いよ。

寒い。
服が燃えていたのに、寒い。

何気なく頭に手を持っていってから目の前にかざすと、

べちょ。

「わあ、真っ赤……」

228:◇JvezCBil8U氏代理
09/11/03 16:07:56 yxYmQEpk
火が消えたのは、泥のせいなんかじゃなかった。
泥に見えたのは、

「私の……血だぁ」

血で濡れたから、火は燃えなくなった。子供でも知ってる当たり前のこと。
なのに私は、濡れているのに全く気付かなかった。
口の中が鉄臭いし、自分の肉の焼ける臭いも気持ち悪い。
ぱちぱちと、まだ何かが燃えている音がする。
ちょっと酸っぱい血の味が、気持ち悪い。
見える世界は白っぽくて、強い光を見て麻痺しているんだって生物で習った事を思い出した。

なのに、体が何かに触っている感覚が全くない。
触覚だけがぶつっと途切れて、それが際立って、自分はもう壊れてしまったんだって強く思い知らされた。

「あは、あはは……」

ずたぼろで使い物にならない服が、血に浸した雑巾になっただけ。
なのに、なぜか涙がこぼれてくる。
私だって、女の子だもの。
ぜんぜん似合わないけど、褒めてくれる人ももういないけど、かわいい服とか大好きだもん。
こんな酷い恰好は嫌だった。
こんな酷い恰好で終わりだなんて、あんまりにも辛すぎた。

辛すぎて―、なんでか笑ってしまう。
おかしいな。何がおかしいんだろ。
ああそうか、私自身がおかしくなっちゃったんだ。

「あはは、あは、あは。あは……、あははははっ!
 あはっ! あははは、あははははははははっ!」

こんな終わりじゃ、さっきのお兄さんに殺してもらった方がまだましだった。
だって、そうすれば独りじゃない。独りで死んでいったわけじゃない。

こんな誰にも見つけられないような暗い森の中で、おかしくなって独り死んでいく。
それが私の、最期。

……死にたく、ないよ。
でも、生きたいわけでもない。
独りで生きたくなんてない。

「あはははっ! あはは、あは……は……は……、う、ぁは、はぅ、
 ……ぅ、う、う、ひ、ぁ……」

なんにもなかった私が、今更何を望んでいるんだろう。

「ひ、……ひっ、ひっ、うぇ……、やぁ、うっ、ぁ、やだぁ。
 やだよぉ、うぁぁああぁ、あぁぁぁぁ、わぁぁあぁ……っ!
 わぁぁあぁ、やだぁっ! やだぁあぁっ!
 わぁあぁぁぁああぁああんっ! うわぁあぁぁぁああぁぁあん!」

……笑い続けるのも限界だった。
自分が自分であんまりに痛々しくて、狂った演技さえ最後までできなかった。

結局私は―、おかしくなれるほどさえ、強くなかった。

229:代理:Should Deny The Divine Destiny of The Destinies
09/11/03 16:52:39 WqXfHLsv
ざり、と、まだまともな方の耳に砂の擦れる音が届く。
カタツムリみたいにゆっくりと首を曲げると、そこにはここに来て出会った人の顔が一つ。
相変わらず鋭くてすくんじゃう目だなあ、と。こころの中で密かに思った。

「ぅあ……、あ、ブランドン、さん」

呼びかけても返事はない。
血まみれの体を見ても、涙でぐちょぐちょの顔を見ても、表情一つ変えてくれない。
それでも、何を考えているかもわからない人だけど、一つだけは確かだ。

「良か……た、まだ、生きて、たん、ですね」

「脆いな」

上から悠然と見下ろされて、一瞬痛みや苦しみを忘れるくらいに圧倒された。
物凄い存在感に、押し潰されそう。
……それも当然か。
ブランドンさんはきっと強い人で、殺し合いにも慣れているのだろう。

「あは、死んじゃう、みたい……です、私」

けれど、最後の最後で少しだけ、ツキが回ってきたのかも。
嬉しいな。だって―、

「あ、の……お願、いです。私が、死ぬまで、見てて、ほしいん、です。
 独りは……、寂しいまま、で、死んでくのは、やだか、ら……」

そういうの嫌いだってなんとなく分かりますけど。
そう言おうとして、もうまともに口が動かないのに気づいた。

この人はきっと冷徹で恐ろしい人で、もしかしたら平坂さんが言っていたみたいに、悪い人でもあるかもしれない。
でも、だけど、決して救いのない人ではないんじゃないかって思う。
役立たずで足手まといのはずの私を、完全に無視しきってはいなかったんだから。

ゆっくりと、何も言わず。ブランドンさんは手を掲げていく。

「…………」

ブランドンさんの手が、歪んでいく。
目の錯覚かと思ったけど、そうじゃない。
―まるで天使の羽のように、腕の中からいくつものいくつもの刃が創り出されていく。
一枚一枚の煌めきが、まるで星のようだった。

「綺麗……」

……ありがとう。って、うまく言えてるかな。
楽にしてくれるんだって、なんとなく気付いた。


最後が一人でなくって、よかった。


***************

230:代理:Should Deny The Divine Destiny of The Destinies
09/11/03 16:53:20 WqXfHLsv
どこでもない虚空を見つめたまま、カノン・ヒルベルトは頭を抱えて震えている。

「……今。僕は、何を……して、いた?」

途切れ途切れに、口を動かすことすら覚束ず。
まるで冷たいプールに放り込まれた時のように、ガタガタと歯の根がぶつかり合って落ち着いてはくれない。

誰が信じられることだろうか。
こんな捨て猫のような表情でうずくまっているのが、翼ある銃と呼ばれ、全てのブレード・チルドレンの中でも最強と謳われた男だと。

カノンの精神はもはや崖っぷちに立たされている。
……いや、そんな余裕のある状況じゃない。
崖の端っこに手をかけて、どうにか腕一本で奈落に落ちないよう踏ん張っているというべきか。

なにもしてないのに、と、あの女の子は呟いた。
そのおかげで正気に立ち返ることができたのに、自分の行動が原因で怯えた彼女は、文字通りの地雷原に突っ込んでいってしまった。
自分はその間ただ呆けていただけで―、結果起こったのは身も蓋もない爆発だ。
自分が殺したのだ。
殺したのだ。
殺したのと同じ事だ。

助かった見込みは、極めて低い。
だって、今も隣に転がっているカラクリ人形を破壊できるほどの威力なのだ、あのトラップは。
爆発音や目に見えた爆炎、火薬の臭いから、カノンの戦場での経験はまず助かるまいと断言している。

いやいや待て待て。
彼女は、ブレード・チルドレンの可能性が存在した。
だから彼女が死んでも、自分の“ルール”には抵触しない。

そうだ、そうだ!
失礼ながら女の子とはいえ触診させてもらった時、肋骨が一本足りなかったじゃあないか!

「……そうだ、ブレード・チルドレンだ。あの子はブレード・チルドレンなんだ」

何度も何度も、誰かに言い聞かせるように穏やかな口調で繰り返す。
……誰に?
そんな事は言うまでもない。
けれどもカノンは、そうせずにはいられない。

だって、彼女の名前も容姿も、カノンの知る如何なるブレード・チルドレンにも該当しないのだから。

彼女を調べた時に制服から零れ落ちた生徒手帳に記された名は―西沢歩。
何にも知らない、巻き込まれただけの、ごくごく普通に幸せな人生を送るべき少女にしか見えなかった。

分かっている、彼女がブレード・チルドレンである可能性が極めて低い事なんて。
自分たちと同年代で、肋骨の感触が一本足りなかった。
疑う理由はそれだけで、難癖と言っても過言ではない。
でも、そんな理由だけで今の自分を殺人衝動に駆らせるには十分すぎた。

薄っぺらい思い込みと理解していてそれに縋るのは、予感がするからだ。
もし自分が“ルール”を破っていたのなら、蜘蛛の糸が千切れるのにかかる時間はあまりに若い―と。
きっとそのままあたまのなかのたいせつななにかが弾け飛んで、自分が最も忌み嫌い恐れる殺戮者に堕ちてしまう。

231:代理:Should Deny The Divine Destiny of The Destinies
09/11/03 16:54:07 WqXfHLsv
ぼう、と少女の落としていったデイパック、その脇に落ちた名簿に目を落とす。
いくつかの名前が真っ赤に染まっていたが、カノンが手に取った瞬間それらは消えてしまった。
代わりとでもいうかのように、西沢歩、と、その名前だけが血の色へと変わる。

「……っ!」

赤い色の名前の意味は、何となくだがわかってしまう。

もう、限界だった。
彼女がブレード・チルドレンである保証が欲しい。
ブレード・チルドレンの中でも年長であるこの自分にも知らないブレード・チルドレン。
そんな都合のいい可能性が存在するのだろうか?

存在する。

カノンは、その可能性を知っている。

名簿の片隅に、その可能性はしっかりと鎮座していらっしゃる。

「“ミカナギファイル”だ……」

セイバー・ハンター・ウォッチャーのいずれの勢力にも所在不明となった13名のブレード・チルドレン。
その行方や個人情報を記し、『オルゴール連続殺人事件』の発端となった禁断の果実“ミカナギファイル”。
その“ミカナギファイル”を受け継いだ所持者が、この殺し合いにも招かれている。

浅月香介。

彼こそが、雨苗雪音より託された“ミカナギファイル”の後継者。

もし“ミカナギファイル”の中に西沢歩の名前がなければ、その時は―、

「浅月に僕を殺してもらおう」

ルールを破ったことを理解してからスイッチが入るまでのわずかな猶予。
だが、浅月ならばその刹那とも呼べる隙に自分を仕留めることは不可能じゃないだろう。
亮子には申し訳ないが、彼女にはできないことでもある。

ブレード・チルドレンの皆殺しを宣言しておいて、ブレード・チルドレンに引導を渡してもらう、なんて虫のいい考えだ。
けれどもうそれしか頼れるものはない。
目標を全く達成できてないのは心苦しいが、それでもただの血に飢えた獣と化すよりは―、


「人間として、兄弟の手で死にたいんだ」

それはきっと、誰にも看取られない獣の死よりもずっとしあわせなこと。




運命はそこまで優しくなんてないけれど。


【H-5/山道入り口/1日目/午前】

232:代理:Should Deny The Divine Destiny of The Destinies
09/11/03 16:54:50 WqXfHLsv
【カノン・ヒルベルト@スパイラル?推理の絆?】
[状態]:潜在的混乱(大)、精神的動揺、疲労(小)、全身にかすり傷、手首に青痣と創傷、“スイッチ”入りかけ
[装備]:理緒手製麻酔銃@スパイラル~推理の絆~、麻酔弾×16、パールの盾@ワンピース、五光石@封神演義
[道具]:支給品一式×3、不明支給品×1、大量の森あいの眼鏡@うえきの法則、研究所の研究棟のカードキー
[思考]
基本:ブレード・チルドレンは殺すが、それ以外の人は決して殺さない……?
0:浅月を、探そう。
1:浅月香介から“ミカナギファイル”を訊き出し、西沢歩の名と照会する。
2:歩を捜す為に、神社に向かう。(山道は使わない)
3:ブレード・チルドレンが参加しているなら殺す?
4:本当に死んだ人間が生き返るなんてあるのか――?
5:マシン番長の残骸から使えそうなパーツを回収したい。
[備考]
※剛力番長から死者蘇生の話を聞きました。内容自体には半信半疑です。
※思考の切り替えで戦闘に関係ない情報を意識外に置いている為混乱は収まっていますが、きっかけがあれば膨れ上がります。
※みねねのトラップフィールドの存在を把握しました。(竹内理緒によるものと推測、根拠はなし)
 戦術を考慮する際に利用する可能性があります。

***************


どこでもない虚空を見つめたまま、ミリオンズ・ナイブズは腕を組んでただ静かに息を吐き出す。

「俺は、何をしている……?」

……自分の行動が理解できない。
わざわざ死にかけた人間一匹の為に、時間を無駄に使ったなどと。
放っておけば勝手に死ぬだろうに、わざわざ手を煩わせたとはどういう了見なのだろうか。
単なる気まぐれと片付けるにはいささか干渉しすぎた。
それも、残り少ないプラントの力を用いてやる―など、自分のことながら正気の沙汰とは思えない。

……這いつくばって苦しんでいたから楽にしてやろうとでも考えたのだろうか?
人間相手にそんな慈悲が浮かんだとは、全く、弟に毒されすぎている。


『私ノ『正義日記』ノ告ゲル未来ニ間違イハナイ!
 今カラ貴様ヲ倒ス我々コソガ勝者デアリ、正義ナラバ。
 我々ニ倒サレル敗北者ノ貴様は間違イナク、悪ッ!
 引導ヲ渡シテクレルッ!』

『私ガ倒スノハ悪ダケダ! 私ノ未来日記『正義日記』ニAM2:43ヲ持ッテ貴様ガ悪トナルト予知ガデタノダ。
 ダカラ、ソノ前ニ貴様ヲ倒ス!』


ああ、成程と嫌々ながら納得する。
道化者のほざいた通り敗北者が悪というならば、まさしくあの時、AM2:43を以って自分は悪となったのだ。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードがこの場に招かれていると確信したその時に。

233:代理:Should Deny The Divine Destiny of The Destinies
09/11/03 16:55:31 WqXfHLsv
「なんで……私、生きてるの?」

―ほんの少しだけ馬鹿な戯言につきあってやるなどと考えてしまう程度に。
弟に負けたことを、あらためて認めてしまった。

傷一つないからだでこちらの方を唖然と見ている少女を完全に無視して、ナイブズはそれでもやはり眉をしかめる。

LOVE & PEACEを唱える気は更々ないが、ヴァッシュならばあの場面で少女を放っておくことはしないだろう。
そんな事を思ってしまい、魔が差したのだ。
最後の戦いでヴァッシュの胸を貫いた、即死確定の致命傷を塞いだ時のように―、

プラントの力を用いて、傷を癒した。
あるいは少女の独りは嫌だという嘆きが、またも誰かの言葉と重なったのが原因だろうか。

ナイブズを……、孤独(ひとり)にしないで。

そんな台詞を聞いた事などなかったのに、あたかも耳元に語りかけられたかのよう。
確かに“彼女”はそう誰かに託したのだと、生々しく“彼女”の声で再生された。

気まぐれはそこまでだ。
後の事は知ったことではない。

戸惑いと混乱を含んだ目で、ボロボロの服―服の体はもはや整っていないが―を着た少女はナイブズの方を向き続けている。
何を尋ねればいいのか、そもそも尋ねるという行為すら許されるのかも分からず、意味もなく手を上げては下げての繰り返し。

これ以上付き合っても時間の無駄だ。
そう判断して背を翻すナイブズに、慌てた様子で少女は声をかけることにした。
内容は何でもよかった、そう、例えば姿の見えない同行者について。

「平坂さんは、どうしたんですか?」

「始末した」

「……っ」

びくりと怯えを露わにし、少女はそのまま動きを止める。
だけど疑問は尽きないようで、目をつぶったまま何事か口にしようとして……呑み込んだ。
なぜ自分を生かしたのか、聞きたくて踏みとどまったといったところだろうか。

まあ、それを聞かれてもナイブズ自身にもよく分からないのは確かだ。
いちいち返事をする義理もないし、無駄口を叩くつもりもない。

少なくとも言えることは、今回の事はこの少女の為にやった事などでは決してない。
ヴァッシュという存在と彼に敗北したこと。その2つに対しての何がしかの想いが引き起こした奇行なのだろう。

少女は明らかに自分に恐怖している。
その事に何の感慨もなく、ナイブズは早々に立ち去ることを決めた。
この後少女が生き恥を曝そうが垂れ死のうが、それはナイブズとは無縁の話なのだ。

234:代理:The Destinies mend rifts in time as Man etches fate anew
09/11/03 16:57:02 WqXfHLsv
……だと、言うのに。

「ブランドンさん。恩返し……させてください」

少女ははだけかけた服を抑えて、とことことハムスターのように後ろをついてくる。
その表情には確かに理解できない存在への畏れと不信が渦巻いているのに、だ。

「私、死にたくないだけだけど。もう生きる目的なんてなくなっちゃったけど。
 それでも命を助けられたのは、事実だから……」

嘘ではないのだろうが、上っ面の体のいい綺麗事だ。
ナイブズはその眼の奥に存在するのが、
『単にこれからどうすればいいのか分からないから、とりあえずついていく―』
なんて雛鳥のような未熟な思考でしかないことを見通している。
少女の目は、それだけ空虚な代物だった。

返答はここにきて出会ったときとまったく同じだ。

「好きにしろ」

どうせ自分の周りにいれば戦いに巻き込まれる。
死に場所がそこでいいというのなら、自分が口を出してやることもない。

その時だった。

『Tough Boy! Tough Boy! Tough Boy! Tough Boy!』

女のがなり立てる騒音が、二人の耳に届いてきたのは。
はっとして少女がそちらの方を振り向いてみれば、目に届くのは信じられないほどに大きいけれど見た事のある誰かの姿。

「ヒナさんの、お姉さん……?」

一瞬全ての状況を忘れてきょとんとするも、訳のわからない馬鹿をやらかす友人の姉がどれだけ危険な事をしているのかをすぐに悟る。
……想い人を失い、姉さえ亡くした友人の悲嘆にくれる姿が、少女の脳裏に浮かぶ。

いてもたってもいられなくなった。
だから少女は、ナイブズの方に一歩踏み出す。

「……あの、ブランドンさん」

「ナイブズだ」

え? と聞きなれない単語を耳にして立ちつくす事数秒。
ようやくそれが彼の名前なのだと気づく。

「勘違いするな、別に貴様の為などではない」

そう呟いたナイブズは少女の方を見ようともせず、すでに天をも覆う人影の方に歩み出していた。

「お人好しの弟がまた進んで馬鹿を見ようとはしていないか、確かめてくるだけだ」


【H-6西端/森林/1日目/午前】

235:代理:The Destinies mend rifts in time as Man etches fate anew
09/11/03 16:57:48 WqXfHLsv
【ミリオンズ・ナイブズ@トライガン・マキシマム】
[状態]:黒髪化進行
[服装]:普段着にマント
[装備]:金糸雀@金剛番長
[道具]:支給品一式×2、エレザールの鎌(量産品)@うしおととら、正義日記@未来日記、
    秋葉流のモンタージュ入りファックス、携帯電話(研究所にて調達)
[思考]
基本:神を名乗る道化どもを嬲り殺す。その為に邪魔な者は排除。そうでない者は―?
0:……俺は何をしている?
1:騒いでいる馬鹿2人にヴァッシュが引き寄せられる可能性があるため、デパート方面に向かう。
2:デパートに向かったという妲己とやらを見極め、ヴァッシュを利用しかねないと判断したら殺す。
3:首輪の解除を進める。
4:搾取されている同胞を解放する。
5:エンジェル・アームの使用を可能な限り抑えつつ、厄介な相手は殺す。
6:レガートに対して―?
7:ヴァッシュを探し出す。が、今更弟の前に出ていくべきかどうか自問。
8:ヴァッシュを利用する人間は確実に殺す。
[備考]
※原作の最終登場シーン直後の参戦です。
※会場内の何処かにいる、あるいは支給品扱いのプラントの存在を感じ取っています。
※黒髪化が進行している為、エンジェル・アームの使用はラスト・ラン(最後の大生産)を除き約5回(残り約4回)が限界です。
 出力次第で回数は更に減少しますが、身体を再生させるアイテムや能力の効果、またはプラントとの融合で回数を増加させられる可能性があります。
※錬金術についての一定の知識を得ました。
※朝時点での探偵日記及び螺旋楽譜に書かれた情報を得ました。
※“神”が並行世界移動か蘇生、あるいは両方の力を持っていると考えています。

【西沢歩@ハヤテのごとく】
[状態]:健康、無気力
[服装]:焼け焦げた制服の残骸、血塗れ、ストレートの髪型
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:死にたくないけど、生きる目的もない。一人でいたくない。
0:ハヤテくん、まだ死にたくないよ……。
1:ナイブズとその力への恐怖と恩義。
2:デパート方面に向かって、ヒナギクの姉と合流したい。
3:孤独でいるのが怖い。
4:恥ずかしいので、できれば着替えたい。
[備考]:
※明確な参戦時期は不明。ただし、ヒナギクと友人になった後のどこか。

236:代理:The Destinies mend rifts in time as Man etches fate anew
09/11/03 16:58:31 WqXfHLsv
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1:【生きている人】尋ね人・待ち合わせ総合スレ【いますか】(Res:5?)
 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYArE
 スレタイ通り、人探しや待ち合わせの呼びかけをするためのスレです。
 どこで敵の目が光っているか分からないので、利用する際にはくれぐれも気をつけて!

 2 名前:厨二病な名無しさん 投稿日:1日目・朝 ID:NaiToYshR
 書き込みの確認を行う。

 3 名前:ブレードハッピーな名無しさん 投稿日:1日目・朝 ID:NaiToYshR
 かつて道を別った俺の片割れに聞く。あの砂漠の星を離れ、お前は今、何処にいる?

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 4? 名前:ゲンスルーな名無しさん 投稿日:1日目・午前 ID:NaiToYshR
 妲己って女が腕に自信のある奴を集めてる。あんたらの探し人もあいつに近づくかもしれねえ。
 だが、あいつは厄介だ。警戒しとけ。

 5? 名前:Legato Bluesummers 投稿日:1日目・午前 ID:NaiToYshR
 ナイブズ様がつい先ほどまでここにいらっしゃったことをこの肌で感じています……!
 僕に忠誠を示す機会をお与え下さい。
 すぐにでもナイブズ様の下へ馳せ参じ、ヴァッシュ・ザ・スタンピードをはじめとする御身の敵を必ずや葬って御覧にいれます。


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2:気のいい兄ちゃんに協力求めたら肺をブチ抜かれたんだけど(Res:3?)
 1 名前:Madoka★ 投稿日:1日目・早朝 ID:vIpdeYArE
 殺し合いのゲームに巻き込まれたのなら、危険な人に襲われたり、裏切られたりすることも多々あります。
 ここはそんな危険人物に関することを書き込み、注意を促すためのスレです。
 もちろん、扱う話題が話題なので、書き込まれたこと全てを鵜呑みにせず、
 詳しいことを質問するなどして、特に慎重に真偽を判断するようにしてくださいね。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 2? 名前:キラークイーンな名無しさん 投稿日:1日目・午前 ID:NaiToYshR
 妲己には注意しろ。隙を見せたら平気で人質やモノ質を取ってくるぜ。
 単純な戦闘能力も多分ヤバい。始末できる実力者なら早々に始末しといた方がいい。

 3? 名前:ニアデスハピネスな名無しさん 投稿日:1日目・午前 ID:NaiToYshR
 ふざけるなよ畜生畜生ちくしょぷなんだよなんあんだよこいつはかrらだだが勝手にうgおいてきnkにくがねじmがあっr1stこんおレgアーtってきtガイニハ気をちゅk

237:代理:The Destinies mend rifts in time as Man etches fate anew
09/11/03 16:59:12 WqXfHLsv
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しとしと、ぽたぽた。
しとしと、ぽたぽた。
しとしと、ぽたぽた。

リノリウムに紅の雫が僅か一瞬の王冠を作り出す。

壁にはおおきなおおきなあかいはな。
真っ赤な花が、咲いていた。

ううん、咲いているんじゃない。
実に見事な大輪の押し花が作られているのだ。

原形を留めないほどに叩き潰され広がった命の残骸は、かつて2本の根っこと2本の枝と一つの果実と、
それらをつなぐ幹に分かれていたとは俄かには信じられないだろう。
それだけ細かく薄皮の裏側から何もかもがミンチになっていた。
べっとりとへばりついたそれは、人間一人分の重さがあるのに一向にずり落ちる様子を見せない。
信じられない力でぎゅうぎゅうに叩きつけられたのだろう。
未だに電源が付いたまんまのPCの画面、その向こうの『探偵日記』とメールソフトは黄色とピンクの何かと赤い汁にお隠れ遊ばされている。

「あの方が貴様のような人間と―虫ケラと“取り引き”をしただって?」

圧倒的なまでの、暴力。
絶対的なまでの、狂信。

「口を慎め。小人如きがあの方と対等であるような戯言をさえずるだなんてね。
 生かしておくにはどうにも許しがたい……否。万死億死兆死―京死を以っても償えない重罪だ」

戦場を潜り抜けて得た経験も、一夜漬けで得た人外の力も。
口にするのもおぞましいなにかの前では、日の目を見ることさえ認められなかった。

その男は、自らの両手を眺めながらぶつぶつと独り言をつぶやいている。

僕ですら、あの方に認めてもらえた事などないというのに。
絶大なる忠誠を持ちながらも、一度として顧みて貰えてすらいないのに。

「もしあの方が僕以外の人間を認めることがあるとしたら。
 僕は、それを見て僕でいる自信がない」

先刻ようやく拾った己の得物を両の指で弄ぶ。
数はこれで計五本。
ただ、自分に課された制限により、同時に4人も操れば精度も持続時間も本来のそれに比してみすぼらしいことこの上ないだろう。
せいぜい数秒足を止める程度だろうか。

だが、それで充分だ。
己の忠誠こそが、何人たりとも防ぐ事叶わない唯一無二の鉄槌となるのだから。

レガート・ブルーサマーズは誰にも知られることなく恍惚を得て―、

ただ、嗤った。


【雨流みねね@未来日記 死亡】

238:代理:The Destinies mend rifts in time as Man etches fate anew
09/11/03 17:00:00 WqXfHLsv
【F-05地下/研究棟/1日目/午前】

【レガート・ブルーサマーズ@トライガン・マキシマム】
[状態]:全身にダメージ(小)、左拳骨折(応急処置済み、能力で動かせる)、異能の者たちへの興味と失望
[服装]:
[装備]:単分子鎖ナノ鋼糸×5@トライガン・マキシマム FN P90(50/50) パニッシャー(機関銃 100% ロケットランチャー 1/1)(外装剥離) @トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式×3、FN P90の予備弾倉×1、メモ爆弾、不明支給品1(武器ではないようです)
    拡声器、各種医療品 機関銃弾倉×2 ロケットランチャー予備弾×1
[思考]
基本:ナイブズの敵を皆殺しにし、ナイブズに自分の忠誠の強さを知ってもらう。
1:ヴァッシュ・ザ・スタンピードを探して殺す。
2:ナイブズを探し、合流する。
3:未知の異能を警戒。
[備考]
※11巻2話頃からの参戦です
※自分に使用している単分鎖子ナノ鋼糸が外れると、身動き一つできなくなります
※単分子鎖ナノ鋼糸の相手へ使用する際の最大射程は、後続の書き手さんにお任せします
※自分の技能の制限内容に気付きました。精度や効果時間は操る人数に反比例します。


※みねねが朝に『探偵日記』の管理人に向けてメールを送った痕跡がありますが、その内容は不明です。

239:創る名無しに見る名無し
09/11/03 17:01:57 WqXfHLsv
以上で投下終了。
>>501からのタイトルは『The Destinies mend rifts in time as Man etches fate anew』です。

作中の掲示板でのレス番号に?がついているのは時間帯上別の作品で書き込みが生じる可能性があるからなので、
一通りキャラの行動時間帯が出揃ったら修正します。

アライヴネタは出し渋らずもっと早く書いておけばよかったかも、まあ一応この時間帯ではまだこーすけは存命中ではありますがw


代理投下終了
というわけで、タイトルは>>230からが『The Destinies mend rifts in time as Man etches fate anew』です。
ミスして申し訳ない

240:創る名無しに見る名無し
09/11/03 17:21:42 yxYmQEpk
投下&代理投下の続き乙です。

前半のやりとりはほぼ予測の範囲内、カノンの動揺も予想通り……と思ったらみねね様死んだぁァァーー。
レガート容赦ねぇ。

ナイブズの死亡フラグが着々と積み重なってる気がする。
そしてシリアスぶちこわしにすんな雪路w


気になった点を二つ。

・みねねとレガートが研究棟に入ったときにカードキーが必要だったはずだが、状態表にそれが無い。
 (カードキー以外の方法で入ったならその描写が必要)
・カノンが手に取った名簿の赤文字が消えているが、これは以前の描写に矛盾する。
 (エドがアルの死を知らない状態で名簿を手にしたときには名簿の名は赤いままだった)

241:創る名無しに見る名無し
09/11/03 17:27:37 WqXfHLsv
感想と指摘をば

冒頭の血なまぐさいマリみてネタでワロタ
妲己情報を手に入れたナイブズ
危険な対主催二人が潰し合うか?

みねねのなんという本編とのシンクロシニティ
本編で腕がなくなったらこちらでも腕がなくなり、本編で死んだらこっちでも死んだ!

レガートは武装充実……ついに金属糸まで。
サラマンダーになりそうだなと思っていたけどキルスコア1を稼いだか。
掲示板にしっかり名前書き込んでるのにワロタ

そしてまた一人女の子の服が脱げたー!

指摘
研究棟は侵入にカードキーが必要なので、みねねが入るには爆破でもするしかないと思うんだけど
さすがにそこまでされたらナイブズも無視というわけにはいかんのでは?
侵入するならまずは医療棟からだと思うし。

あとナイブズの回復能力
これは原作でナイブズが生まれなおしたように、プラント同士の間でしか通用しないものなんじゃないかなぁ
ロワ的にも回数制限ありとはいえ、瀕死の人間を完全な健康体まで戻せるのはどうかと…

とはいえ、良くわからん能力なのでこのままでもいいかもしれませんが。
西沢さんに死んでほしくないしなぁ。

242:創る名無しに見る名無し
09/11/03 17:31:13 WqXfHLsv
おっとダブったか
主観に反応しはするけど、一端赤く染まった文字はそのままって事かな
可逆性はなしと。

243:創る名無しに見る名無し
09/11/03 18:27:20 5w9nOpXx
西沢さんは、作中では雪路に会ったことないはず。
西沢さんの家庭教師=雪路という説があるぐらい雪路と西沢さんの関係は原作でも謎に包まれている。
少なくとも、ヒナさんのお姉さんという表現はない。

244:創る名無しに見る名無し
09/11/03 19:18:58 WqXfHLsv
ああ、あと一つなんか忘れてたと思ったらそれだな
ギターやってた頃の話だから今の雪路見てもわからんかもなぁ
原作でもまだ踏み込んでない領域だし、ここはあんまり反応させないほうがいいかも。
なんか騒動の種っぽいイベントキター→ヴァッシュがくるかもしれんから行ってみるか
みたいなノリでどうか。

しかし原作といえば、連載中の作品みんな凄いことになってきてるなw

245:創る名無しに見る名無し
09/11/03 19:31:59 yxYmQEpk
ナイブズの回復能力については、無からリンゴの樹を生み出せるならそのくらい出来てもいいかな、と。
終盤のナイブズはほぼ完璧にプラントの力を使いこなしてますし。

原作は確かに色々面白いことに。
未来日記は花子と寓話のテラーの作者だけに何が起こるやらw
ハヤテはハヤテで「神になり損ねた云々」とか、「え?それロワで使えってこと?」な設定が。
ワンピースは漫画史上に残る超大乱戦。
鋼は完全に佳境に入ってそろそろ全ての真相が明らかになりそうな雰囲気。

246:創る名無しに見る名無し
09/11/03 19:49:23 R90PqUFt
投下乙
みねねここで死んだか・・・その状況で書き込むなw
原作読んだことないけどレガートの狂信ぶりは変態の領域だな。名前欄は書き込まなくていいんだよwww

247:創る名無しに見る名無し
09/11/03 19:54:43 WqXfHLsv
剛力や聞仲みたいな耐久力持ちにそれやられると首輪爆破→治療→解除みたいな事になりそうだけど
性格的にそう簡単に人の為に力使わんだろうしまぁ大丈夫かな。

個人的には人間の治癒は無理だと思うけど……出来ないと決めつける事も出来ないからな。

じゃあ修正ポイントは
・カードキー
・名簿
・雪路への西沢さんの反応ということでお願いします

248: ◆L62I.UGyuw
09/11/03 23:50:28 yxYmQEpk
対策無しに首輪爆破は即死だから大丈夫かと思います。

ではゾッド、Mr.2 ボン・クレー、柳生九兵衛を投下します。

249:F.O.E."Nosferatu" ◆L62I.UGyuw
09/11/03 23:51:46 yxYmQEpk
ノイズの乗った銃声。
女の言葉が不自然に途切れ、後には静寂だけが残った。
異常事態。
人智を超えた力を持つ『神』の陣営。そこに入った僅かな亀裂。
これを好機と捉えるか、さらなる困難と捉えるかは人それぞれだが―彼ら二人にはその事態は大した影響を及ぼさなかった。
理由は至極簡単。直前に、そんなことを気にする余裕は二人から失われていたからだ。



「麦ちゃん達が、死ィんだですって? ジョ~ダンじゃなーいわよーう……」

実感など湧かない。湧く訳がない。
笑い飛ばそうとして、しかしその語尾が力無く消えた。

忘れるはずもない。麦わら海賊団。その船長とコック。
彼らとは、国を二分する内乱で、敵同士として死闘を演じたのだ。
そして紆余曲折の末―何の因果か友情を育んだ。
共に戦った時間はほんの僅かではあるが、彼にとってそんなことは些細なことだった。
正しく彼らは彼―Mr.2の親友だったのだから。

その彼らが―死んだ?



「新八君……」

実感など湧かない。湧く訳がない。
知らず半開きとなっていた形のいい唇から、既に意味を失った名が零れ出た。

忘れるはずもない。妙の唯一の弟。志村新八。
彼とは、柳生家での騒動で、妙を巡って死闘を演じたのだ。
そして紆余曲折の末―何の因果か友情を育んだ。
深く関わったのはたった数度ではあったが、彼女にとってそんなことは些細なことだった。
正しく彼は彼女―柳生九兵衛の親友だったのだから。

その彼が―死んだ?



二人は工場を目前とした森の中で、地図と名簿を手に呆然と立ち尽くしていた。
目に沁みる空の白。木々のざわめきと朝を告げる鳥の声だけが森に響いている。

「……ボケっとしてる場合じゃ……ナッスィンッッ!」

沈黙を破ったのはMr.2。
ギュンと音を立ててその場で回転。
そして、がっしりと、まだ放心したように空を見上げている九兵衛の両肩を掴んで告げる。

「いいこと? よく聞きなサイ。たったの六時間で十六人よ? ジュ~~ウロク人。
 事故や自殺なんかで死ぬ人数じゃな~いわ。皆を殺して回ってる連中がいるのよう。
 つーーまり、こんなトコでの~~んびりしてる間にも、ドンドンこの数は増えていくっっっってことよーう。
 妙ちゃんを護るんでしょーう? だったらこんなところで落ち込んでるヒマなんて無いんじゃナ~イ?
 後悔なら後でいくらでも出来るわよう。だから、今は前を見なきゃダ~~メよーう」

励ます彼の目にこそ、光るものが浮かんでいるように見えるのは気のせいだろうか。
しかし実際、彼の言は正しい。もしかしたら九兵衛がここで呆けている間にも、大切な人が危険に晒されているかもしれない。
事態は刻一刻と動いているのだ。
九兵衛の、どこか気の抜けていた瞳に、すっと意志が戻る。


250:F.O.E."Nosferatu" ◆L62I.UGyuw
09/11/03 23:52:36 yxYmQEpk
「ああ……すまない。その通りだ。ボンちゃんだって辛いのに、な。
 ありがとう。目が覚めたよ。
 妙ちゃんを絶対に救い出す。それが―僕の出来る新八君への最大の弔いだ」

彼女らしく、素直に感謝の言葉と決意を述べる。

「ようし! それでこそあちしのダチだわ。
 でも焦るのもダ~~メよーう。こういうときこそ冷静にねい」

Mr.2の提案で、二人は改めて名簿を確認する。
知った名があれば今後の方針もいくらか変わってくるというものだろう。

「ふ~ん。変な名前が多いわねい」

名簿に目を落としてすぐ、自分を棚に上げた発言をするMr.2。
事実奇妙な名は多いし、一般的な日本人の名は彼から見れば珍妙に映るのだが―Mr.2自身、彼の世界の基準ですら『変な名前』である。

「あ、九ちゃん、ニコ・ロビンって女には注意した方がいいわよーう。
 バロック・ワークス社が滅んだ今、この女がナ~~ニを企んでるか分かったもんじゃないわ。
 他には……うーん、あちしの知ってるヤツはいないみたいねい」
「妙ちゃんと新八君の他に僕が知っている人は……坂田銀時と沖田総悟の二人だな。
 この二人は信用出来る。二人とも仲間のために柳生家に正面から乗り込んできた真の侍だ。
 彼らなら、他人を蹴落として一人だけ生き残ろうなんて汚い真似は絶対にしない。
 それで、ボンちゃん。……さっきの爆発の原因を調べたら、僕は妙ちゃんとこの二人を捜そうと思う。
 これは僕の我侭だから、ボンちゃんは―」

九兵衛の言葉を遮り、Mr.2が大きく口を開いた。

「ガッハッハッハ! 今更な~に水臭いこと言ってんのよう。
 ダチのダチはやっぱりダチに決まってんでしょ。
 あちしもモチロン協力するわよう」
「……かたじけない。それじゃあ―」



ふ、と。
二人の周りが翳った。

「上だ! ボンちゃん!」
「分~~かってるわよう!」

鋭く叫ぶと同時に、互いに正反対の向きに飛び退く二人。
地響き。
森が揺らぎ、鳥が一斉に羽ばたいて逃げる。
上空から高速で落下してきた影が、一瞬前まで二人のいた地点に小さなクレーターを作った。
立ち込める土煙。

「いい反応だ……。こうも次々に強者と巡り会えるとは、今日はなんと良き日か。嬉しいぞ」

クレーターの中心で、蹲ったままの黒い獣が静かな、それでいて暴力的な声を発する。

「不意打ちとは穏やかではないな」
「いきなりな~~んのつもり?」

獣を挟む形で、険しい表情の二人が向かい合う。
揺さぶられた木々から、はらはらと幾千枚もの葉が降り注ぐ。
葉の雨の中で、九兵衛は片手で羽を模した剣を構え、Mr.2は片足を上げたバレエダンサーのような奇妙なポーズを取っていた。


251:F.O.E."Nosferatu" ◆L62I.UGyuw
09/11/03 23:54:01 yxYmQEpk
ゆっくりと立ち上がる巨獣の右腕には斬撃、左腕には打撃の痕。
交錯の瞬間に放たれた二人の攻撃を腕で受けたのだ。

土煙が晴れていく。
闇を纏った分厚い巨体。鋭い爪。赤く濡れた牙。そして天を衝く一本角。
重機を思わせる両の腕には、業物の刀と槍とがそれぞれ握られている。

「何のつもり、だと? 知れたこと! 闘争こそ我らが掟! 死こそ我らが糧!
 強者が弱者を屠るに理由など要らぬ!
 さあ、人間共よ。死を逃れたくば―見事このオレを倒してみせよ!」

人間のゆうに数倍はあろうかという巨大な悪魔が、蝙蝠のそれに似た巨大な翼を広げて叫んだ。
大気が戦慄く。地が震える。氷点を遥か下回る敵意が暗黒の渦を成し押し寄せる。

『不死のゾッド』

歴戦の勇士をも震え上がらせるその堂々たる威容を仰ぎ、しかし二人は冷静だった。

「ボンちゃん、これも―この姿も、悪魔の実の能力、なのか?」

もしMr.2の知っている能力ならば、少しは戦い易くなるだろう。
そう期待して九兵衛は声を掛ける。しかし、

「こいつは……動物系の悪魔の実の能力かしらねい? でもあちしはこんなの聞いたコトなーいわよう。
 もしかして……これが古代種―それか幻獣種ってヤツなの?」

どうやら―ゾッドは悪魔の実の能力者ではないのだから当然ではあるが―Mr.2は知らないらしい。
だが、場の全てを圧倒する異質な存在感。嬉々として闘争を望む好戦的な姿勢。
そして何よりも、対峙しているだけで全身の肌が粟立つ絶対的な殺意。
その能力の詳細がどうあれ―強敵であることだけは間違いない。

じり、と慎重に間合いを測る二人。

一陣の風が二人と一体の間を奔り抜け、地に落ちた葉が舞い上がった。

二人を睥睨していたゾッドが焦れたように動き、

「どうした。来ないのか? ならば―オレから行くぞ!」

地を蹴った。
島を震わす咆哮を上げ、Mr.2を轢き殺さんばかりの勢いで迫る。

「アァンタ! ナ~~メンじゃな――いわよ―――う!!」

迎え撃つMr.2。
黒い暴風と化したゾッドの動きを見据え、

「アァン!」

腹を狙った槍の一撃を、身体を捻り回避。

「ドゥ!」

その勢いを利用して正面からゾッドの顔面に回し蹴りを叩き込んだ。だが、

「クルァッ?!」


252:F.O.E."Nosferatu" ◆L62I.UGyuw
09/11/03 23:55:04 yxYmQEpk
突進の勢いは殺せたものの、反動で軽々と吹き飛ばされて木に激突。
人の胴ほどもある幹がメキメキと音を立てて折れていく。

「ボンちゃん!」

風を纏い駆ける九兵衛が、ゾッドの背後―遥か射程外から剣を振るった。
その途端、剣から幾筋もの風の刃が生まれ、舞い散る葉を次々と斬り裂きながらゾッドに襲い掛かる。

「フン。下らぬ!」

だが風の刃はゾッドの振り向き様の一閃で消滅。

「死ねぇい!」

返す刀で間近に迫った九兵衛の無防備な胴を薙ぐ。
間合いが近過ぎるため刀は当たらない。それでも破城鎚の如き腕が胴に直撃すれば内臓という内臓が全て砕けることは確実。
だが凶器が九兵衛の身体を捉える寸前―彼女の姿がゾッドの視界から掻き消えた。

「ハァッ!!」

裂帛。
ゾッドの右脚から鮮血が噴き出す。

「ヌゥ!?」

片膝を突くゾッド。九兵衛はいつの間にかゾッドの背後へと抜けている。

ゾッドの反撃を予期していた九兵衛は、ゾッドの前で止まるのではなく、重力に任せて身体ごと沈み込み加速。
そのままゾッドの股を潜り抜けつつ脚を斬りつけたのだ。

「ボンちゃん、大丈夫か!?」

折れた木の横に倒れるMr.2に駆け寄る九兵衛。
Mr.2は痛みを堪えながら無理矢理笑顔を作って脚に力を込める。

「だ、だ~いじょうぶよう、これくらい……。ちょ~~っと、背中が痛いけどねい。
 ……それにしてもアイツ、とんでもない馬鹿力じゃな~~~~いかしら? このあちしが力負けするなんてねい。
 九ちゃん、アンタは絶っっっ対にアイツの攻撃を受けちゃだめよう?」
「ああ、分かっている。僕の力じゃあの攻撃は止められない。
 一撃でもまともに食らったら―僕の命は無いだろうな」

Mr.2の無事を確かめると、九兵衛はゾッドに向き直った。

「それにあのデタラメな頑丈さ……。今のは脚を斬り落とすつもりで剣を振り抜いたというのに……」

至近距離からの風の刃を集中させた斬撃でも、脚の肉を抉った程度に留まっている。
そしてその裂傷すら特に気にならぬと言わんばかりに平然と体勢を立て直し、巨獣は二人をねめつけた。
Mr.2の額に脂汗が一筋。

「ショージキ、分が悪そうだわねい……だけど」
「フ、フハハハハハ。よもやオレに膝を突かせるとは、な。
 素晴らしい、実に素晴らしいぞ!」



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