新漫画バトルロワイアル 第6巻at MITEMITE
新漫画バトルロワイアル 第6巻 - 暇つぶし2ch50: ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:04:35 coCAXvr4
ミッドバレイ投下します。

51:魔人、憐れなるかな ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:05:35 coCAXvr4
奏でるのはコンチェルト。

絶望の音。

恐怖の音。

苦しみの音。

それぞれが混ざり合い、紡がれる音のハーモニー。

奏者はGUNG-HO-GUNSの「音界の支配者」、ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク。

第一楽章は第一放送をもってカーテンフォール。

すばらしい演奏でした。

なんてったって二人も死の音に取り込んでしまったんですから。

続く第二楽章。

どんな演奏をしてくれるのでしょう。

では、第二幕の始まり、始まり。

決して抜け出すことのできない闇の底でのコンサートが――



♪ ♪ ♪




ミリオンズ・ナイブズ。

あれは人という存在から逸脱している。

52:魔人、憐れなるかな ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:07:19 coCAXvr4
常識的な所が全く無い。

あの方の目。

目がものすごく怖かった。
俺の仲間を何の感慨も無く殺していったあの目。
俺は恐怖に屈しGUNG-HO-GUNSとして邪魔になる者全てを葬った。
性別。年齢。職業。何でも問わずだ。
ただひたすらに殺した。
機械の如く淡々と。
それでも恐怖は募る一方だった。

あの目は変わらない。

結局俺はあの方の都合のいい道具に過ぎない。
いや、道具ですらないか。
ただの捨て駒。
あの方の掌で踊るこっけいなマリオネットだろう。
いや、俺だけじゃない。
GUNG-HO-GUNSが。
レガート・ブルーサマーズが。
あの方にとってこの世界全てをそのように見ている気がする。
しかし、俺は……

ここでもまた俺は怯えなきゃいけないのか―

ガタガタみっともなく震えて。
立ち向かう?
無理だ。震えが止まらない。
ああそうさ。
今もまだショックから立ち直れない俺は傍から見れば確かにみっともなく見えるだろう。
でも仕方ないじゃないか!!

怖いものは怖いんだよ!!!!

っ……!落ち着け…………落ち着くんだ!ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク!!

53:魔人、憐れなるかな ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:09:15 coCAXvr4
はぁ、はぁ…………。
素数……素数でも数えて落ち着こう。

2……3……5……7……11……13……17……19……

ふう。少しは落ち着いた。
クールに考えよう。
少なくとも自分が知ってる中ではあの方以外に二人『化け物』がいる。

一人目。
レガート・ブルーサマーズ。
あの方直属にして腹心の部下であり、GUNG-HO-GUNSのナンバーズとは一線を画す存在。
ただあの方への忠誠を示すことのみを唯一の存在意義としている心の『化け物』。

二人目。
ヴァッシュ・ザ・スタンピード
あの方と同じ次元の異なる存在で肉体的な『化け物』。

自分が知ってるだけでも三人。
それにそれ以外にもまだ『化け物』はたくさんいる。

ここは異常だ―

俺にここまで言わしめる狂気。
ふん、俺だって普通の人間から見れば充分に『化け物』なのにな。
戯言だな……

54:魔人、憐れなるかな ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:11:07 coCAXvr4



♪ ♪ ♪



ひたひたと。
朝日で照らされた道路を歩く。
しかし朝日が眩しいな。
燦燦と照っている朝日が恨めしい。
俺の心の中は闇で染まっているというのに。
あの方に対しては会わないことを祈るしかない。他の二人についても同様だ。
あれから俺は次の獲物を探そうと歩き始めた。
おっと、獲物から殺す前に先程動揺したせいであまり聞き取れなかった放送の内容を聞かなければ。
さぁ、どこへ向かうかな?


【B-5西部/路上/1日目 朝】

【ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク@トライガン・マキシマム】
[状態]:右足打撲
[服装]:
[装備]:イガラッパ@ONE PIECE(残弾60%)、エンフィールドNO.2(2/6)@現実
[道具]:支給品一式 真紅のベヘリット@ベルセルク、鳴海歩のピアノ曲の楽譜@スパイラル~推理の絆~、銀時の木刀@銀魂
[思考]
基本:ゲームには乗るし、無駄な抵抗はしない。しかし、人の身で運命を覆すようなヤツと出会ったら…?
0:ナイブズ、ヴァッシュ、レガートに対する強烈な恐怖。
1:積極的に参加者を襲って情報と武器(特に銃器)を得る。
2:強者と思しき相手には出来るだけ関わらない。特に人外の存在に強い恐怖と嫌悪。
3:愛用のサックスが欲しい。
[備考]
※ 死亡前後からの参戦。
※ ハヤテと情報交換し、ハヤテの世界や人間関係についての知識を得ています。
※ ひよのと太公望の情報交換を盗み聞きました。
   ひよのと歩について以外のスパイラル世界の知識を多少得ています。
   殷王朝滅亡時点で太公望の知る封神計画や、それに関わる人々の情報を大まかに知っています。
※呼吸音や心音などから、綾崎ハヤテ、太公望、名称不明の少女(結崎ひよの)の死亡を確認しています。
※ 放送の後半部分を聞いていません。

55: ◆28/Oz5n03M
09/10/16 21:12:11 coCAXvr4
短い話ですが投下終了。

56:創る名無しに見る名無し
09/10/16 22:24:56 LLm5pD16
投下乙です
とりあえずは落ち着いたが問題の先送りというかなんというか
何の解決にもなってないのがロワらしいかなw

57:創る名無しに見る名無し
09/10/16 22:30:23 Rm4rdGP3
投下乙
やっぱり動揺しているなw
リアリストがどうにもならない現実と対峙した時どうなるのか
これからが楽しみだ

58:創る名無しに見る名無し
09/10/17 02:30:47 c9pWa2sZ
>>20
H-3とありますが、G-2では?
とりあえずwikiにはH-3のまま収録しておきますので、間違っていたら報告お願いします。

59:創る名無しに見る名無し
09/10/17 14:36:19 c9pWa2sZ
しかし、もしかするとあの霊能者が死んでもその辺徘徊しているのかな……
金票さんあたりなら目撃出来そうだが

60: ◆lDtTkFh3nc
09/10/17 21:34:04 NAizBoWh
>>58
対応が遅れて申しわけないです。
ご指摘の通りですね、ありがとうございます。
wikiは自力で何とかしておきます。


61:創る名無しに見る名無し
09/10/18 02:41:19 sn9aoY9k
今気付いたけど、>>1の前スレが4巻だなw別にいいけど。
あとTOUGH BOY検索して吹いたwたっぽいたっぽいって歌詞かよw
んで、とらの状態表が本文中の描写と異なるのでは?
雪路に変身中はもういらなくね?

作品投票はもうこれで終了かな?
事前の話し合いにはもうちょっと人いたような気がしたけど、まぁ予想通りか。
したらばとか借りなくて良かったな
銀の意志Ⅰ~Ⅳ 8P
殺伐フレンズ   5P
夜明けだョ!全員集合(前後編) 3P
Men&Girl~ピカレスク~
Men&Woman&Boy&Girl~英雄譚~ 1P
指し手二人    1P
かな

62: ◆JvezCBil8U
09/10/18 22:56:36 VjFkrcDX
>>61
……とと、その通りですね。
ご指摘ありがとうございます。直しておかないと……。

63: ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:41:39 H5SmpRnj
いきなりですが、胡喜媚、高町亮子、竹内理緒、ミッドバレイ・ザ・ホーンフリークを投下します。

64:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:42:44 H5SmpRnj
彼は明確な理由があって病院を目指した訳ではない。
強いて言うなら、ケガ人などの弱者が集まる公算が大きいことと、現在地から比較的近いこと。
その程度の理由だった。
もし病院に辿り着くまでに別の獲物を見つけていたら、あっさりとそちらに狙いを切り替えたことだろう。
しかし、誰とも遭わなかった。
彼らの運命はそんなことで定まってしまった。

運命とは一体何なのだろうか?
そのリアリストに訊けば、きっと陰鬱な眼を向けてつまらなさそうにこう答えるのだろう。



『どうにもならない偶然のことだ』


***************


静かな病室に二つの寝息だけが響いている。

一つは高町亮子のもの。
故あって中学生かそれ以下のような姿になっているが、彼女はれっきとした高校生である。
彼女は川に落ちたためか肺炎にかかり、今ベッドで眠ることを余儀なくされている。

もう一つは胡喜媚のもの。
ナース服を着ているが、別に彼女に看護師としての能力があるわけではなく、単なる趣味である。
彼女は初めは真面目に亮子の汗を拭いたりタオルを換えたりしていたのだが、容態が安定したため、気が緩んで彼女の横で居眠りをしている。

病院独特の匂いが辺りに満ちていた。
ベッドが並んだ一般的な病室。
閉め切られた窓の外からは朝の柔らかな陽が射し込み、その向こうには青空が広がる。
やはり窓から見える背の高い常緑樹の枝には小鳥が留まり、歌っていた。
至極平和な光景。ここだけを見ればとても殺し合いの場とは思えない。



突然、病室のドアが無造作に開かれた。
だが、ドアノブを回す音も、蝶番が軋む音も聞こえない。
それもそのはず、ドアの発する音は全てキャンセルされていたのだから。
やはり音も無く正面から病室に侵入した長身の男、ミッドバレイ・ザ・ホーンフリークによって。

無音の演奏を続けながら、闖入者は歩く。
特に妨害も無く、彼は病室の中央のベッドに辿り着いた。
一旦演奏を止め、見下ろす。
ベッドの二人は気付かない。
もったいぶるように、無言で鈍く光る銃を取り出す。
まだ気付かない。
再び演奏を開始して、銃口を眠る喜媚の額にポイントした。
それでも、彼女は気持ち良さそうに寝ている。

引金に指を掛ける。
目を細めて、指先に殺意を込め――、


65:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:43:41 H5SmpRnj
いきなり、喜媚がバネ仕掛けの玩具のように跳ね起きた。

「何!?」

慌てて跳び退くミッドバレイ。
喜媚の頭に狙いを定めたまま、退がる。
様子がおかしい。彼女は薄目を開けているもののその焦点は定まらず、身体はゆらゆらと揺れている。
だがその隙だらけの見た目とは対照的に、発せられるプレッシャーは『魔人』ですら戦慄するほどのものだ。
ミッドバレイはさらに一歩後ずさる。

「Buu~ Buu~☆ 亮子ちゃんをいじめちゃダメなのっ☆
 ロリロリリン☆」

どろどろどろんっ☆

緊張感の無い掛け声と共に喜媚の姿が変化する。
ミッドバレイは思わず我が目を疑った。
少女の姿は掻き消え、代わりに立っていたのは漆黒の隻眼剣士。
鉄塊と見紛う程の巨大で分厚い剣を構え、黒い外套を翻す。
それは直前で喜媚達が別れた戦士、ガッツの姿そのものだった。

「チィ!」

直感的に、危機を察知した。
即座に身を翻し、開いたドアから逃げ出そうとするミッドバレイ。
そこに弾丸のような勢いで黒い剣士が突っ込む。横薙ぎに振るわれる大剣。
室内に風が奔る。
間一髪ドアから転がり出るミッドバレイ。

「く……このっ……」

背中の肉を僅かに抉られた。白いスーツに血が滲む。
ほんの少し反応が遅れていたら、今頃彼の身体は真っ二つになっていたことだろう。

「LlLOOoOOOooo!! LliIiiieEee!!!!」

野太い咆哮を上げながら、黒い剣士は廊下を突進する。
ミッドバレイは走りながら背後に向けて発砲。
だが弾は剣士の持つ巨大な剣に弾かれる。牽制にもならない。



クソッ。油断した。
不用意に近付いた俺が馬鹿だった。
あわよくばもう片方のガキから情報を引き出そう、などと欲を出すべきではなかった。
姿形など実力を判断する基準になどなりはしないというのに。
そんなことは嫌というほど知悉していたはずだったのに。

化け物め―。



逃げる。ただ逃げる。
リノリウムの廊下を無様に逃げる。
この距離では銃のアドバンテージは無きに等しい。
一旦引き離さねば殺される。
巨体に似合わぬ速さで追い縋る黒い剣士。距離は開かない。
苦し紛れに三叉路を左へ。
黒い剣士は―、


66:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:44:50 H5SmpRnj
「……何、だ?」

黒い剣士はミッドバレイが曲がった三叉路をそのまま直進し、その先にある扉を破壊し始めた。
分厚い金属がひしゃげる派手な音が聴こえる。
ミッドバレイは足を止めて困惑していた。

何が起こった? 目の前で曲がったんだぞ? まさか俺が見えていなかったとでもいうのか?
訳が分からない。分からないが―しかし逃げるチャンスであることは確かだ。
いつまた奴が戻ってくるか分からない。ここで考え事をするのは愚策というものだろう。
ならばここは状況が『聴こえる』ギリギリの距離まで遠ざかるべきだ。



時間にして数十秒。破壊の音が続き、生命の音が二つ失われた。
元来た道を戻る剣士の足音。それが途中から変質し、少女のそれと取って代わる。
そして破壊された部屋から唯一の命が、外へ。剣士の後を追って行く。



数分後、レントゲン室に一人佇むミッドバレイがいた。
竜巻が通ったかのような光景。精密機械の群れは今やスクラップの山と化していた。
スクラップの中の、頭を失った女と無残に切り裂かれた男の死体に目を遣る。
そしてむせ返る血の匂いを気にも留めずに、その二人が確実に死んでいることを確かめる。
―やはり死んでいる。ミッドバレイを誘き出すための見せ掛けの仲間割れ、というわけではない。

レントゲン室の中心で、彼は憮然とした様子で虚空に問い掛ける。

「結局、何だったというんだ……?」

彼の疑問に答える者はいない。
彼には『何が起こったか』は判っても『何故起きたか』は解らない。

だから喜媚は単に寝惚けていただけであり、彼が襲われたのは喜媚が殺意に反応した結果であり、
レントゲン室の惨状は彼女が理緒を助けようと思って暴れた結果であり、
目的を果たしたと思い込んだ喜媚はそれで満足して病室に帰ったのだ、などと思い至ることはない。

故に彼は考えるのを止めて必要な行動を開始した。
外に注意しながら部屋の中を物色する。程なくして二人分のデイパックが見つかった。

「悪く思うなよ。俺も余裕など無いんでな」

祈りの代わりにかそう呟くと、ミッドバレイは彼らの荷物を回収してその場を後にする。
空になった部屋で、バラバラになった機材からパチリと弱々しい放電が起こった。


***************


理緒が祈るように扉を開けると、そこには平穏があった。

ベッドの上で健やかな寝息を立てる亮子と、その布団にもたれかかるように眠る喜媚。

知らず零れ落ちる涙と共に、埒もない希望が頭をめぐる。

やっぱりさっきの光景はあたしの白昼夢だったんじゃない?
だってガッツさんとはちょっと前に別れたはずで。
彼はブラック・ジャック先生と妙さんの仲間だったはずで。


67:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:45:42 H5SmpRnj
ああ、いや、駄目だ。そんな甘い考えじゃいけない。
さっきのは、紛れもない現実だ。受け入れないと。
ガッツさんの事情なんて分からないけど……彼はもうあたし達の『敵』なんだ。

涙を制服の袖で拭って立ち上がる。

そう、呆けている場合ではない。
ガッツはこの病室の場所を知っている。とにかくまずはこの場から離れることだ。
だが彼の動きが見えない以上、鉢合わせする可能性の高い病院の出口へ向かうのは危険だろう。
とはいえ、その点は問題にならない。喜媚の能力があれば窓から空へ逃げられるのだから。
理緒は急いで生乾きの亮子の服をデイパックに詰め、肺炎の薬とついでに医学書も放り込む。
そして喜媚を揺り起こそうと彼女の肩に手を掛け―気付いた。




そうだ。先程の惨劇はガッツの仕業とは限らない。
もう一つ、可能性があった。もう一人、出来る者がいた。
理緒は別れる直前の、理性を持ったガッツの言葉を思い出す。

『おい、あの化け物女とは早いとこ別れといたほうがいいぜ。
 人間と、化け物じゃ所詮生きる世界が違うんだからな』

彼が化け物と呼んだ者。胡喜媚。
彼女の変身能力を使えば、ガッツの振りをすることも容易だろう。

つまり。
喜媚は、彼女は、実のところ全て計算尽くで行動していたのではないか?
亮子を見つけたのだって本当は偶然などではなかったのでは?
わざとガッツ達に発見されるような道を選んだ可能性は?
理緒を殺さなかったのもガッツに罪を擦り付けるためだったのでは?

首を振る。

いや、いやいや。そもそも喜媚ちゃんがそんな手の込んだことをする理由は?
ああ、でもそれはガッツさんだって同じことか。

喜媚の肩からゆっくりと手を離す。
そして―気持ち良さそうに上下する彼女の胸に銃口を向けた。

確証なんて無い。
確証は無いけど……連れ歩くにはこの子はやっぱり危険過ぎる―と思う。
それに、亮子ちゃんを護るため、という大義名分もある。
いっそ不確定要素はここで排除した方が……。

引金に指を掛ける。
目を細めて、指先に殺意を込め――、



なかった。



銃口を下げ、深い息を吐く。


68:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:46:28 H5SmpRnj
「らしくないなぁ……」

どうもさっきから判断が拙速過ぎる。事態に翻弄されていると感じる。
冷静に考えれば、やはり喜媚がそんな凶行に及ぶメリットは無いのだ。
それに殺すなら皆殺しの方が、後に禍根を残さない確実な選択だといえる。
こんな中途半端な殺し方はガッツへの嫌がらせ程度の意味しかない。

考えてみれば、実は喜媚と同じような変身能力を持つ第三者の仕業、という可能性だってある。
この場合は強敵である喜媚に対する間接的な攻撃となる。病室を襲わなかった理由にもなる。
まだこちらの方がマシな仮説かもしれない。
何にせよ喜媚の仕業だと決め付けるのは論理的ではない。

それに何より―、

「……ん~~~~ロリンロリン☆」

妙な寝言を呟きながら至福の表情で眠る、この態度が演技だとは思えない。

一度深呼吸をして、辺りを見回してみる。
院内は、先程の騒ぎが嘘のように静かだ。
今はもう、あのガッツのような人物が暴れまわっている様子はない。
念のため部屋は移動すべきではあるが、慌てて逃げ出すよりも、むしろ院内に留まった方が安全かもしれない。
それに気が動転して忘れるところだったが、ブラック・ジャック達の荷物も取って来なければ。
本当に、らしくない。
病室のドアを慎重に開いて一歩外に踏み出す。

顔が爆ぜた。

肉と頭蓋骨と脳のブレンドが壁や床に飛び散り抽象画を描く。目玉が一つ、遠くへと転がっていった。
何が起きたか理解出来ない、とでもいうように、背が低くなった理緒が立ち尽くす。
僅かな間。
彼女の身体は支えを失ったように廊下に崩れ落ちた。比較的大きな脳の欠片がその下敷きになって潰れた。

廊下の奥からミッドバレイが滲むように現れ、ゆっくりと理緒の傍まで歩いて来る。
一連の出来事に病室の中の二人は気付けない。良く出来たサイレント映画だった。
彼は、頭部を失った理緒には一瞥もくれずに、デイパックとベレッタを拾い上げる。
そして開いたままのドアから病室を覗いた。相も変わらず、まるで時が止まったように平穏な光景。
彼は珍獣を見つけたかのような面持ちでしばらく病室の中央で眠る二人を眺めて―やがて音も無く立ち去った。


【竹内理緒@スパイラル ~推理の絆~ 死亡】



69:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:47:31 H5SmpRnj
【D-2/病院/一日目 午前】


【胡喜媚@封神演義】
[状態]:疲労(中)、いねむり
[服装]:ナース服
[装備]:如意羽衣@封神演義
[道具]:支給品一式
[思考]
基本方針:???
1:妲己姉様やスープーちゃん達、ついでにたいこーぼーを探しに行きっ☆
2:理緒ちゃんと亮子ちゃんは喜媚が守りっ☆
[備考]
※原作21巻、完全版17巻、184話「歴史の道標 十三-マジカル変身美少女胡喜媚七変化☆-」より参戦。
※首輪の特異性については気づいてません。
※或のFAXの内容を見ました。
※如意羽衣の素粒子や風など物や人物以外(首輪として拘束出来ないもの)への変化の制限に関しては不明です。
※『弟さん』を理緒自身の弟だと思っています。
※第一回放送をまったく聞いていませんでした。
※原型の力が制限されているようです

【高町亮子@スパイラル ~推理の絆~】
[状態]:疲労(特大)、打撲&背中に打ち身(処置済み)、肺炎(処置済み)、睡眠中、若返り
[服装]:裸
[装備]:毛布
[道具]:なし
[思考]
基本:この殺し合いを止め、主催者達をぶっ飛ばす。
0:…………。
1:なんで子供に……
2:理緒や喜媚と協力してこの殺し合いを止める
3:ヒズミ(=火澄)って誰だ? 鳴海の弟とカノンは、あたし達に何を隠しているんだ?
4:できれば香介は巻き込まれていないといいんだけど……
5:あのおさげの娘(結崎ひよの)なら、パソコンから情報を引き出せるかも。
6:そういや、傷が治ってる……?
7:エドの力に興味。
8:エドや流、うしお、知らない女の子(咲夜)は助かったのだろうか。
9:流の行動に疑問。
[備考]
※第57話から第64話の間のどこかからの参戦です。身体の傷は完治しています。
※火澄のことは、ブレード・チルドレンの1人だと思っています。
 また、火澄が死んだ時の状況から、歩とカノンが参加していることに気付いています。
※秋瀬 或の残したメモを見つけました。4thとは秋瀬とその関係者にしか分からない暗号と推測しています。
※聞仲とエドの世界や人間関係の情報を得ました。半信半疑ですが、どちらかと言えば信じる方向性です。
※中1前後の年齢に若返っています。元に戻るかどうかは後続の書き手さんに任せます。


70:Spiral of Fortune ~ Reverse Position ~ ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:48:18 H5SmpRnj
【ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク@トライガン・マキシマム】
[状態]:右足打撲、背中に裂傷
[服装]:白いスーツ
[装備]:イガラッパ@ONE PIECE(残弾50%)、ベレッタM92F(15/15)@ゴルゴ13
[道具]:支給品一式×4、真紅のベヘリット@ベルセルク、鳴海歩のピアノ曲の楽譜@スパイラル~推理の絆~、
銀時の木刀@銀魂、月臣学園女子制服(生乾き)、肺炎の薬、医学書、ベレッタM92Fのマガジン(9mmパラベラム弾)x3、
エンフィールドNO.2(1/6)@現実、クリマ・タクト@ONE PIECE、ヒューズの投げナイフ(7/10)@鋼の錬金術師、ビニールプール@ひだまりスケッチ
[思考]
基本:ゲームには乗るし、無駄な抵抗はしない。しかし、人の身で運命を覆すようなヤツと出会ったら…?
0:ナイブズ、ヴァッシュ、レガートに対する強烈な恐怖。
1:積極的に参加者を襲って情報と武器(特に銃器)を得る。
2:強者と思しき相手には出来るだけ関わらない。特に人外の存在に強い恐怖と嫌悪。
3:愛用のサックスが欲しい。
[備考]
※死亡前後からの参戦。
※ハヤテと情報交換し、ハヤテの世界や人間関係についての知識を得ています。
※ひよのと太公望の情報交換を盗み聞きました。
   ひよのと歩について以外のスパイラル世界の知識を多少得ています。
   殷王朝滅亡時点で太公望の知る封神計画や、それに関わる人々の情報を大まかに知っています。
※呼吸音や心音などから、綾崎ハヤテ、太公望、名称不明の少女(結崎ひよの)の死亡を確認しています。
※放送の後半部分を聞いていません。

※病室の前に携帯電話を所持した理緒の死体が放置されています。

71: ◆L62I.UGyuw
09/10/19 10:49:20 H5SmpRnj
以上で投下終了です。

72:創る名無しに見る名無し
09/10/19 11:35:00 OItIWNmd
投下乙です
うわ、確かに喜媚犯人説は考えていたがこういうことだったのね
ミッドバレイは余計なことをしていきました。でも本人も何がどうなったのかわかりませんw
理緒は不運が続いて退場となったが喜媚殺害を思いとどまったか。ブレチルの運命に負けなかったと言うべきかな
ここで殺すのは惜しいかもしれないけどこれはこれで美味しいかも
眠り姫の二人が目を覚ましたらどうなるか? 次の放送が流れたらどうなるか?
先が気になる展開でした


73:創る名無しに見る名無し
09/10/19 15:01:08 xQhbewyU
やっとスパイラルキャラが死んだ。乙

74:創る名無しに見る名無し
09/10/19 16:26:18 x04X5Voq
投下乙
でもなんで、二人は始末しなかったんだろ?
化けものヤバいってんならそもそも手を出さないはず


75:創る名無しに見る名無し
09/10/19 19:26:13 5Gstdn6l
神視点の俺らだからそういえるけどあの状況だと迂闊に相手したくないぞ

76:創る名無しに見る名無し
09/10/19 19:31:23 WckOvRY1
投下乙です。
ミッドバレイは運があるんだかないんだか…
しかし、トラブルメイカーとは彼女のようなのを指すんでしょうね、喜媚w
理緒がつくづく残念ですが…マーダーにならなかったのがせめてもの救いですね。


77:創る名無しに見る名無し
09/10/19 21:12:11 YH/tMzoR
投下乙です
ガッツの忠告が最悪の形で実現したか・・・しかも当の本人は悪気なしときたもんだw

78:創る名無しに見る名無し
09/10/19 22:31:11 rTSkql8K
投下乙です
喜媚、お前ってやつは……

>>74
ミッドバレイは慎重かつ大胆だよ
まともにやったら負けるヴァッシュ&ウルフウッドにもブレながら挑んだ
確実に殺しにかかって、ちょっと相手の様子見て、また確実に殺しにかかって、相手の様子見て……という感じ

喜媚たちを絶対殺さないといけない状況じゃないから様子見たかと
戦闘狂じゃなくて殺し屋だし

79:創る名無しに見る名無し
09/10/19 22:37:57 L4iALr55
ああ、なるほど。
まだ病院内にいるもんな。
ってことは、今後の反応によっては皆殺しもありうるのか

80:創る名無しに見る名無し
09/10/19 22:44:24 g/vZrvOU
喜媚を倒せる算段次第だろうな
ラストの状況で正面からもう一度挑む程無謀じゃないだろうし

81:創る名無しに見る名無し
09/10/19 22:50:56 aO+Zi6x8
ミッドバレイは地味だけど堅実に強いからな。
今回で実はトップマーダーになってるしw
下手な勝負手打たず奇襲に徹すれば確実に対主催削っていける能力の持ち主だしなあ。

82:創る名無しに見る名無し
09/10/19 23:37:05 n51Wdh1R
無差別マーダーは命知らずが多いからな
ああいう暗殺者的なキャラは貴重だ

83:創る名無しに見る名無し
09/10/20 16:10:26 xr8uyulq
ギャグ漫画がバトル漫画になった件

84:創る名無しに見る名無し
09/10/20 16:15:28 KcmfEYCr
心当たりが多すぎて分からん
でもこのロワの関係だとハヤテか?
つーかハヤテも最近の展開見てると主催候補の一つだな

85:創る名無しに見る名無し
09/10/20 19:35:21 ECcI5JwO
主催やりそうな財団多すぎw

86: ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:43:41 1ktFSruH
安藤潤也、金剛晄(金剛番長)、白雪宮拳(剛力番長)、妲己投下します。
えーと、今回のお話は微グロなので、嫌悪感や不快感を示される方は注意してもらえればと。

87:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:45:17 1ktFSruH
死神の足音が聞こえる。
もう、すぐ傍だ。
たぶんこのまま自分は助かることもない。

さながらクラレッタのスカートを直すかのように、理不尽に立ち向かった結果がこの有様だ。

ああ……、なんという惨めな末路なのだろう。
文字通り臓物をブチ撒けて、脳天ど真ん中に開いた孔から命が流れ出していく。

これじゃあ、考えて、考えて、考えることすらできはしない。

知ったことか、と、本当にその一言だけで解決できたのならどれだけこの世は芳醇だったろうか。
つい先刻までの同道者の顔を思い出そうとして―、止めた。

振り返るべきは、ここに連れ去られる前にどうして辿り着けなかったのかという後悔だけでいい。

「……兄貴、どうして」

どうしてあんな行動に出たのかと、今わの際のここに至ってすら繰り返し、問う。
結局彼の真意にすら辿り付く事は出来なかった。

今まで出合ってきた様々な人間の顔が、走馬灯として流れていく。


バカジャナイノー、とすぐ近くで誰かが呟いた気がした。


消灯ですよ。



**********


時はしばし、遡る。


**********


「太公望ちゃんがやられたみたいねぇん。
 あはん、あの子はこの場にいる仙道の中でも最弱……。
 人間ごときに負けるとは道士の面汚しよん」

最悪、極悪、凶悪、劣悪。
蝿の王の如き暴言をあまりにもあっさりと告げた後。
悠然と泰然と、妲己は己が仇敵の存在とその死を一瞬だけ心に留め、それきり放り捨てて奥底に沈める事にした。
はや思い出すことはなく、浮上する事もなし。
無論彼にはそれなりに思い入れがあったが―、それも生きている太公望に対してであって死体と話す趣味はない。
結局それを意識するのが面倒くさいと、そう思うことすら面倒くさいと切り捨てた。
これが妲己なのだから、まあ、それについてとやかく言うのは止めておこう。

“そんな事”より今は別のことを考えるほうがずっとお得でポイントセール。
放送を噛み噛み口の中で転がし、一人ごちる。



88:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:46:48 1ktFSruH
「どうやら神の陣営も一枚岩じゃないのは確かみたいだけどぉん、あまりにも見せ方があからさますぎるわぁん。
 “わらわを拉致できるくらい”の存在が、こんな簡単に手下に出し抜かれるはずはない。絶対に、ね。
 ……と、なると」

くすくすと、哀れで惨めな道化女を嘲笑いながら鼻歌を。

「いい趣味してるわねぇん、“神”はわらわと気が合いそうだわん。
 わざわざ『付け入る隙を演出して』、大多数の参加者に幻の希望を見せ付けるなんて、わらわゾクゾクしちゃうん。
 必死になって、命を賭けて、ようやく何かを伝えようとした放送の女も、全部計算通りの動きしかしてないってことよねぇん」

どこか放送の趣向に相通じるものでも感じ取ったのか、妲己は朝霧の中を闊歩しながら素直に賞賛の言葉を送る。
それが自分を踊らせんとする存在であっても構わない。
むしろ、その手口が実に好ましいからこそ受け入れる。拍手する。
それこそが己の度量の広さと言わんばかりに。
ぱちぱちぱちぱち。

「最後の最後に奪い取る為だけに希望を与えるなんて、わらわでも作るのに一苦労する状況だわん。
 気づいていようと気付いていなかろうと、人間らしい感情の持ち主ならまず心が受け入れられないでしょうねぇん」

何の為にそんな事をするのか、それを推し量るのは無粋というもの。
答えなど一つしかない。
徹底的に自分達を屈服させて、“神”とやらの指図を受け入れざるを得ない心持ちにする為だ。

楽しみだ、とペンライトのように指を振り振り。
当然分かっていてそれに乗るつもりもないが、どこかワクワクする気分も確かにある。
この自分をそんな状況に追い込む事が出来るなら、是非ともやってみせて欲しいものだ。
そしてその自信があるからこそここに妲己を招き、アピールしてみせているのだろう。
申公豹をも従わせた“神”の不敵さが非常に心地よい。
鼻っ柱をヘシ折って、ぐじゅぐじゅに踏み潰してあげたいくらいに。

「さしあたっては喜媚との合流が当面の目的かしらぁん。
 あの子の事だから遊びが高じて味方を一人か二人殺しちゃってるかもだけど、まあそのくらいは多めに見ちゃうわん。
 どうせわらわの邪魔になる連中には死んでもらうことになるんだしぃん」

現状何だかんだ言ってまだまだ戦力が足りないのは確かだが、自分の妹は確かに頼りになるはずだ。
味方と書いて手駒と読む関係こそが妲己の望むもの。
必要なのは甘い夢に誑かされる純粋(おろか)さや、利用されるのを分かっていて敢えて操り糸を託してくるような狡猾さを持つ人材である。

無論、多少の跳ねっ返りも許容しないわけではない。
これから手駒を集めていく際、当然中にはあからさまに自分を嫌悪するものも出てくるだろう。
自分のやり方が好まれるものではないのは最初から織り込み済みだ。
上手く使えば、むしろ自分に敵意を持つものの方がいい働きをしてくれる場合すらある。使い捨てる場合なら特に。

自分を誘蛾灯にして“神”に対抗しようとする人材も危険人物も誘き寄せ、優秀な人材を選別する。
そこまでの過程で参加者同士が勝手に殺し合うのは目論見通りだ。
だがその後―、せっかく掌の上に集めた戦力を下らない小競り合いで零してしまっては元も子もない。
後々を見越した場合、頭角を現して、尚且つ迎合や協調を望めない芽は潰しておいた方が明らかに効率的である。
そう、例えば激昂した聞仲の様な。

―聞仲。
死んだはずの男が、今ここにいるという。



89:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:48:48 1ktFSruH
「……そうそう、あの二人の事も考慮に入れないといけないわねぇん。
 まあ、蘇生そのものはわらわ達の時代じゃありえない事じゃないから、そんなに気にする事でもないでしょうけどぉん。
 王天ちゃんはいい例だし、復活の玉なんてモノもあるわよねぇん。
 魂魄さえ残っていれば肉体を与えてやれば済む事でしかないわん」

とは言えあの男はそれなりに賢いから、刺激しすぎなければそれなりの共闘は可能かもしれない。
聞仲はひたすらに殷に執着していた。妄執といっても過言ではなかろう。
逆を言えば、結果的に殷の利になるならば、仇敵と手を組む事すら辞さない男なのである。
厄介なのはそういう損得計算にすら頭が回らず、人の言葉を理解できないお猿さんの類だ。

そして残る一人―趙公明は色々と使えるかもしれない。
なにせ女カの存在を知っていながら、それでもなお自分の趣味の命ずるままに動く人間なのだから。
あの男なら、舞台の上で踊らされるままのこんな殺し合いを否定するか?

否。
むしろ自分から連中に協力すると言いかねない。
踊らされるのではなく、自らの意志で舞台に飛び込み踊るのが趙公明だ。
この殺し合いを優雅にする為に、という理由だけで、あの男は好き放題やることだろう。

そ・れ・に・し・て・も。と、節操ない速度で思考が切り替わる。
死者といえば。

「……解せないわねぇん。どうしてわざわざ、『名簿に死者が自動で記される』のかしらん。
 これじゃあ、死んだ人間を生きていると偽って弄ぶ事ができないわぁん」

たとえば、
『自分が人を殺したと思い込んだ人間に放送を聞かせず、その勘違いのままに殺し合いに乗せる』
ような遊び方も出来ないではないか。
そもそもの放送の意味すら薄れてしまう。
“神”がそんな手落ちをするとは思えない。

「―首輪と合わせて、色々と確かめてみたいわねぇん」

多分この名簿は、単純に放送と同時に死者の名が赤く染まるわけではないはずだ。
どういう条件で名簿の名が赤く染まるかそれは大体想像がつくが、その検証の為には実験動物が必要となる。
首輪の研究と合わせてちょうどいい木人形が欲しい。
その意味では、さっきの死に掛けの男の首輪を回収しなかったのは完全にミスだった。
もう顔も思い出せないが。

「まあ、ヒロインにはドジっ娘属性があるのもお約束よねん♪」

てへ、と舌をだして失敗失敗と嘯く妲己。
どこまで本気なのか、あるいは狂言なのか。
多分正解は、後者。
あの時は近くにまだ例の男へ襲撃を敢行した輩がいたはずだ。
後れを取る事などないだろうが、あの男はそれなりの使い手だったろうし、言葉で説得する頭もあったはず。
なのにボロボロにされたという事は、襲撃者は話を聞く余地を持ち合わせないということ。
だとしたら、そんなのを相手取っても仕方ない。

それよりも気にするべきは首輪なのだ。


90:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:50:51 1ktFSruH
「多分、制限というのもこの首輪の機能だわぁん。
 体に密着した状態ならばチカラを奪い取る事が出来る。
 あはぁん、まさしく王天ちゃんの寄生宝貝と全く同じシステムの代物よねぇん。
 ……申公豹だけでなく、王天ちゃんも“神”とやらに手を貸してるのかしらん」

もしそうなら念入りにお仕置きしなくちゃねぇんと口ずさみ、首輪について思考を巡らす。
確定というわけではないが、力を制限している要因は首輪の可能性が高い。

「まあ、とにかくこの首輪は十中八九宝貝合金で出来てるわねん。
 仙道がこの舞台……ゲーム盤の作成を手がけたのは間違いないわん。
 他にも、これなんかも宝貝技術を使って作ってるわねぇん」

今度は大量にモノが詰め込まれているはずなのに、全く膨らみを見せないデイパックに視線を投げかける。

「――空間宝貝。
 このカバンの中にいくらでもモノが入るのはその恩恵。
 ひょっとしたら、この会場そのものも空間宝貝のチカラで作られたのかもぉん」

地図で見る限り、この位の閉鎖空間なら十分に作り出す事が出来そうだ。
とはいえ、普通の空間宝貝と考えると解せない点もいくつかあるのも確か。
たとえば空間宝貝の弱点である、相手が中に入り込むまでは完全に待ちに徹するしかないという前提。
それはあの見知らぬ聖堂からここに『入り込んだ』のではなく『いつの間にか飛ばされていた』事実と相反する。
故にここは普通の空間宝貝内ではない可能性が高い。
そして、弱点を克服した空間宝貝は非常に限られている。
通常空間そのものを自分の領域にする王天君の紅水陣や、蛇の形を取り自ら相手を呑み込む女カの山河社稷図。
そういった特殊な空間宝貝により、ここは作られているのかもしれない。

しかしそれでも―、自分の知る技術である事は、変わりない。
だが、首輪だけは違うのだ。

「この首輪だけはわらわ達の知る技術だけじゃあ出来ていない。
 そうよねぇん、“神”。じゃないと、さっさとわらわがこれを解除しちゃうものぉん。
 わらわ達が紂王さまを改造できる技術力を持つ事を、当然知っているはずでしょう?
 でも、あのみねねが口にしていた通り、わらわ達より未来の技術も使われている。
 つまりわらわだけじゃ迂闊に手を出せない。
 ……未来の技術とのハイブリッド技術。つまり、どっちにしろ必要なのは味方や知識、って事よねぇん」

最悪、必要な知識を持つ技術者はもうとっくに死んでいる可能性がある。
だとしたら色々自分で積極的に試していく必要があるだろう。
あらためて首輪の威力や禁止エリア進入時の性質を調べてみたい。
特に、爆発力については人体実験を行ってみたいところだ。

―例えば、聞仲などは核爆発にも耐える耐久力を持つ。
アレほど頑丈な仙人が、たかだかこの首輪一つの爆薬で生首を転がらせるとは思い難い。
しかしおそらく『今の聞仲』なら容易く首を落とせるのだろう。
課せられた制限とやらが、それを可能とする。


91:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:53:16 1ktFSruH
仮に、本当に制限が首輪の宝貝としての機能だったなら。

その場合、是非とも欲しいのはスーパー宝貝の一つ、太公望の太極図である。
あれがあれば、首輪の機能のうち少なくとも能力制限は無効化できる事だろう。
そうすればある程度の耐久力を持つものは爆発を気にせず首輪を破壊できるはずだ。
つまり、その『ある程度』を見極めさえできればいい。

もし大した事がないのであれば、人によっては『太極図を使わずともそのまま爆破して』解除してしまえるかもしれない。
流石に希望的観測が過ぎるとはいえ、頭の隅っこには置いておこう。


そんな事を考えながら、足を止める。
ようやくその建物に辿り着けば、妲己は誰に見止められることもなく、口元を三日月に歪めた。
妖艶に、淫靡に。


**********


どういう事だ?

どういう事だ!?


混乱の極みに陥りながら、それでも少年は為すべきことを過たない。


駆ける。駆ける。駆ける。駆ける。

逃げる。逃げる。逃げる。逃げる。

ずきんと折れた手首が体全てを軋ませる。
じくじくと鑢をかけるような痛みが、冷静な判断力を奪っていく。

近づくは突き当たり、延びる行き先は階下か階上。

進むべきは二択。
間違えれば、それはすぐ死に繋がる。

何故なら―、と考えるまでもなく、その答えは少年のすぐ傍に。

1、2、3、4、5、6、7。

7歩を数えたその瞬間、少年はいきなり横っ飛ぶ。

ぼひゅうと水蒸気の帯を靡かせて、脇腹のすぐ傍を砲弾が通過していった。
ホンのコンマ1秒でも遅れていれば糞の詰まったソーセージをぶち撒けていた事だろう。

1/10=1。
走り始めてからの歩数を10で割ったその余りは、必ず10以下となる。
次の投擲時までの総歩数÷10の余りは何歩になるのかを指定する。
あとはその余った歩数が来るたびに、回避行動を取ればいい。


92:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:55:04 1ktFSruH
だが、それが出来るのは回避するに十分なスペースがある場合だけだ。
このまま階段に突っ込んだ場合、上と下と、どちらに向かおうと必ず一瞬だけ動きを止めて方向転換しなければならない。
その隙をあの少女が見逃すはずはない。
どちらに進むのかを先読まれれば、確実に潰される。

―二択の勝負。

だから、少年こと安藤潤也の逃走は確定した。
少年が向かった階下とは見当違いの、昇り階段に鉄クズが突き刺さる。


これでしばらくは一安心。
金剛と戦いながらもこちらの動きを完全に把握し、機を見て投擲を仕掛けてくるあの動体視力は、まさしく人間のものじゃあない。
……あの金剛なら少なくともしばらくは持ちこたえるだろう。
剛力番長とやらに自分を追わせないよう、階段の前で時間を稼いでくれるはずだ。

その間に自分はどうすべきか。

具体的な行動案として浮かぶのは、2つ。
金剛があの剛力番長とやらを完全に無力化するのを待つか、ここから金剛を見捨てて逃げるか。

どちらを選んでもそれなりのリスクが付き纏う。
前者はもちろん、金剛が殺されてしまっては元も子もない。
さすれば座して待つは断頭台に首を預けるのと同じ事となる。
……おそらく勝負は金剛がやや有利か、互角といったところだろう。

金剛と剛力番長、どちらが勝つか、二択。
これについて1/2を1にしようと思考の海に沈んでも、どちらもしっくりこない。
なれば出される答えは、新たな選択肢である『決着がつかない』だ。
こうなると今後の展開が全く読めない。

だから、見えない未来よりも確実にこの場から脱出する後者の選択肢を選びたくなる。
されど後者もまた確かにリスクを孕んでいるのだ。
つまり、金剛番長を敵に回す―そこまでいかずとも悪印象を持たれるというリスク。

金剛は相当な実力者だ。だから、出来る事なら敵には回さず味方につけておきたい。
スジを通す、なんてつまらない理由で自由な行動を束縛される代償を支払ってもだ。
ついさっき、仲間を集めて脱出する事を心に決めたばかりでもあることだし。

……ああ、そうだ。
ついさっきまでは、それが全くの最善だった。最善だと思っていた。

だからもし今が放送前だとしたら、多分前者を選んでいたことだろう。

だけど、放送で全てがひっくり返された。

「……どうして、兄貴の名前があるんだよ……」



93:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:56:44 1ktFSruH
何分かぶりに、ぽつりと、ようやく言葉が漏れてくる。
気がつけばもう下りる階段はほとんどなくなっていて、一階まで辿り着いていた。

名前と言えば、土方という名前が名簿に見当たることもなかった。
だが、あんな男の事など今はどうでもいい。
見覚えのある名前として蝉の死亡も告げられたが、それすら今は気にならない。

「死んだ人間が生き返るとか、あの女の言葉は本当だって言うのかよ……!」

がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし
がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし
がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし
がしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがしがし

何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も。
まだ動く左の手でひたすらに頭を掻き毟り続ける。

血が出てきた。
でも止めない。
爪に肉が挟まる。
それがなんだ?

考えろ、考えろ、考えろ。

偽者、という可能性が一番高い。
だとしたら許しがたい。あるいは同姓同名か。
だがこの名簿を作ったのは“神”とやらだ。
あの連中が、わざわざそんなつまらないオチを持ってくるだろうか。

だが、本当にほんものの兄だとしたら?
自分はどうすべきなのだろう?

自分が脱出を志したのは、帰還して兄の仇を討つ為だ。
だが、兄が生きてここにいるというならば全ての前提は覆される。

兄には、生きていて欲しい。
その為ならば何でもしよう。
泥を啜り、草を食み、糞尿に塗れても兄を生かそう。

……もし兄を騙る何者かなら、殺す。
それは兄への最大の侮辱だからだ。

で、どうするんだ?

兄とともに脱出する為に、これまで通りの方針を貫徹する?
一刻も早く兄と合流する為に、さっさとあの男を見捨てるべきか。
あるいは、何が何でも兄を生かすために、敵を排除して排除して排除して、ひたすら攻勢に徹すべきか。


「俺は―」



**********

94:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:58:15 1ktFSruH
目を開けると同時に、ごふ、と血を吐いた。

仰向けに寝転がったまま口元に吹き零れた血を拭い、静かに肩の辺りに手を持っていく。
そこにはぱっくりと口を開いた傷口から黄色い体液と赤い血とピンクの肉と白い骨が見えていて、あるべきものがごっそりと抉り取られていた。
けれど、突き刺さっていたはずの馬鹿でかい剣はとっくに抜き取られている。

地べたの自分のものだった血に触れてみれば、まだ微妙に暖かい。
……倒れていたのは数十秒ではないにしても、そう長い時間ではないはずだ。

「……強くなったじゃねえか、剛力番長」

そのまま怪我人とは思えない動きで足をカチ上げ、振り子の要領で一気に立ち上がった。
どすん、とフロア全体に金剛の再起が知らしめられる。

「だったら……余計に放ってはおけねえな」

剛力番長は、おそらく潤也を追って下に向かったはずだ。
その潤也自身も、長い時間目を離しておくわけにもいかない。
危険な匂いを感じるのはむしろ剛力番長よりあの男の方であるとすら言えるのだから。

エレベーターは使えない。
剛力番長がデパートに入ってきてからすぐ、逃げ場を塞ぐ為に叩き潰してしまったからだ。

疾駆。疾走。大跳躍。
このデパートは吹き抜けの構造になっており、上の階の喫茶店に設けられたバルコニーから
一階のテラスを見下ろせる形になっている。

そこを、一息で飛び降りる。
下手に階段などを使うよりもそっちの方がよっぽど早い。

フロアの織り成す縞模様が、高速でスライドしていく。

着弾。

びりびりと建物全体が震え、砕けた床からもうもうと白煙が立ち込める。
すっくと背を伸ばして睥睨すれば、金剛の到着を待ちわびていたかのように近寄る影二つ。

「……!」

ふしだらな格好をした女と、体操服という出で立ちの少女の追いかけっこがこちらに向かって展開中。


「そこの人、助けて頂戴ん? わらわ怖ぁい女の子に追われているのぉん」

その台詞が終わるより早く金剛は己が大腿の筋肉を爆発させる。
轟、という音と共に暴風が吹き荒れ、二つの影を断ち割った。

「……! やはりまだ生きてらっしゃいましたか。
 今度こそ、引導を渡して差し上げます」

その言葉を無視。
金剛はじっと目線を剛力番長に合わせ、睨みを効かす。
放送を経ても、神に反逆を試みたあの勇気ある女性の意志を聞いても未だ、彼女は相も変わらずただ頑なに敵意を見せるだけ。
盲目である事を自ら望み、手段を目的に成り代わらせたままだ。



95:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 19:59:41 1ktFSruH
……ならば、その眼をこじ開ける。
昔の彼女自身を突きつける。

「女一人にテメエで培った暴力を叩き込むのが番長の仕事か? 剛力番長。
 ……違うだろうが。
 以前のお前の行動だって、結果的に迷惑をかける事になったとは言え全部住人の為にやったことだったろう!
 初心を忘れるんじゃねえ! それでも本当に、お前はあの剛力番長なのかッ!」


ぷつ、と、何かがキレた音がした。

「わ……、わた、私は……ッ!」

灼熱の憤怒を滾らせて大山が鳴動。

「私はッ! 剛力番長です! 白雪宮拳です!
 あなたなどの言う事を聞き入れなくても、誰に認められ―、」

噴火を目前としたその間際。


ぞく……。


金剛の芯に悪寒が走った。
背中に氷を入れられた―、などと、生易しいものではない。
鋭利に研ぎ澄まされたつららで心臓を一突きにされたような、この世のものとも思えない怖気。

何だ? 何なんだ?

振り向きたくとも振り向けない。
今、自分の後ろで何が起きているのか確認しようとしても、それをすれば剛力番長の暴走を許してしまう。

……いや、分かっている。
背後の女は特に何もしていない。ただじっとこちらを見ているだけに違いない。
なのにその目線がいやに自分の癇に障るのだ。

そして当の剛力番長は自分の後ろにいる女に目線を動かし、ハッと息を呑んだような―そんな気がした。

「…………、そうでしたわね。ええ。私は私です。
 “あなたのお言葉通り”その淑女さんには手を出すべきではありませんわね。
 ここは退いておきましょう」

そして余りにも唐突に、じりじりと後退。
何かを告げよう暇もなく、実に不自然な気持ち悪さと共に屋外へと、舞台袖へと剛力番長は引っ込んでいった。

それはまるで、大好きなプリンの中から生きた毒虫が這い出てきたかのような。
あるいは、自分以外誰一人いないはずの廃墟の食卓に、たった今焼きあがったばかりのほかほかのパンを見つけたような。
そんな得体の知れない不快さが拭えない。

茶番劇としか思えない一連の出来事に、金剛は剛力番長を追う事もなくその場に立ち尽くすだけだった。


その背中に対して届けられる、おぞましい猫撫で声。


96:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:01:45 1ktFSruH
「助かったわぁん。あの子を追い返すなんて、貴方、相当お強いみたいねぇん。
 くす、わらわの力になってもらえないかしら?」

ようやく振り返っての開口一番は、相手の要求を一切考慮しない訊問を。
 
「……俺と出会う前に剛力番長に何を吹き込んだ?」

されど目をすがめて覇気を発してみても、柳に風。暖簾に腕押し。
目の前の女は掴みどころなく、ただただ薄笑みを浮かべているだけだ。

「あん、わらわの過去が気になるのぉん?
 出会ったばかりで口説くなんてとっても大胆。
 でも御免なさいん、わらわの体は紂王さまだけのものなのん。もう死んじゃったけどねぇん」

戯言に混じって平然と言葉に出される、死という単語を耳にして思い出す。
そうだ、今はこの女よりも優先せねばならない事がある。

「お前、安藤潤也という男を見なかったか?
 俺より先にこっちに向かったはずだ」

―放送の時。
名簿に目を通してすぐ血相を変えたあの男は、どうしているのか。
どう考えてもまともな精神状態じゃあない。
何故なら、死んだはずの彼の兄がここにいると言うのだから。

「知らないわぁん? 貴方のお仲間なのぉん?」

手応えはない。
いつ崩れるかも分からない泥の橋を渡るような心持ちで、潤也について口を動かす。

「……奴は今危うくてな。放っておける状態じゃねえ。
 さっきの放送と同時に浮かび上がった名簿に、あいつの死んだはずの兄貴とやらの名前があったらしい。
 胡散臭え戯言に乗せられて変な考えに取り付かれてなきゃいいんだが」

……自分の兄を思い浮かべる。
安藤の気持ちも良く分かる、というのは言い過ぎかもしれないが、それに近い感情は確かに自分にもある。
今こそ自分と兄は敵対しているが、それも兄が家族だからこそ止めたいと思うが故の行動の結果だ。
大切だからこそ敵対することすら厭わないし……、その逆も、また然り。

「あらん、胡散臭いってどういうことかしらぁん?」

「言うまでもねえ事だろう。死んだ人間が生き返るはずが―」

「ある、わよん?」

―聞き捨てならない言葉が、差し込まれた。

「!? どういう事だ……?」

目を見開き詰め寄れば、女は嘲笑うようにチッチッチと指を振り振り。


97:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:04:01 1ktFSruH
「単純だわん、わらわ達の時代じゃあ、死人を蘇らせる方法もあるって事よん♪
 情報を集めた限り、他にも蘇生の技術を持つ人たちがいるみたいねぇん」

例えば、空想の中に住む全能の神の力とか。
例えば、真理の扉の向こうにある理とか。
例えば、友人たる鯨との再開を夢見た男の食した悪魔の実とか。

女の住む世界の様々な道具以外にも、存外生と死を弄ぶチカラは転がっている。

金剛はその真贋を見極めようとして女に手を伸ばすも、ひらりとかわされ行き場を失う。
……ただ、なんとなく理解する。
この女は掴み所がないが、こうも強気に断言する以上はそれなりの根拠があるのだろう、と。

「……剛力番長の言ってた事も、あながち嘘じゃねえって事か。
 だが、それでも蘇りなんぞを認める訳にはいかねえな」

「死んだ人間を生き返らせる。悔いを残して死んだ人も、彼らに未練を残す生者も救われるのにぃん?
 素晴らしいことだと思うけどねぇん?」

大きく、大きく息を吐く。
先刻から一々、この女の態度に吐き気を催してしょうがない。
まるで命をなんとも思っていないかのようだ。

きっと本能のレベルからしてこの女と自分は相容れない存在なのだろう。
生理的嫌悪というべきか、それくらいに何かが致命的なまでにズレてしまっているのを感じる。

怒りに身を任せてしまえば楽だが、向こうは確かに何もしていない。
己からスジを違えるのは流石に自分を許せない。
心を落ち着け、ただ愚直に毅然と相対する。

「そいつはスジが通らねぇな。命ってモンを弄んでるのと同じ事だぜ。
 死んだ人間に対しての最低限の義理すら果たしてねえ。
 仮にそんなふざけた事をエサにして人を釣る連中がいるってんなら、そいつらをぶっ潰すまでだ」

「……生きているものだけに許される傲慢ねぇん。
 死んだ人間が皆が皆満足して死んだとでも思ってるのかしらん?」

だが、一向構わず女は楽しげなまま。
それどころか遥か高みから値踏みするようにこちらに刺激を与えて反応を楽しんでいる風すら感じる。
一挙手一投足の品定めに、金剛は激情を滲ませないよう務めるので忙しい。

「何が言いてえんだ?」

「さて、それくらいは自分で考えて頂戴? わらわが教えられることなんてこのくらいしかないわぁん。
 ……生きとし生けるものは全て、永遠に生きることを望むものなのよん?」

いい加減、ふざけた態度が目に余りすぎた。

ぶゥん、と、渾身の、痛恨の、会心の一撃を以ってして、いきなり殴りかかる。

拳より出でる風は荒く猛り、しかしその速度をすら超えて風は生みの親にブチ破られた。

98:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:06:33 1ktFSruH
しかし、女はそれでも微動だにすることはない。
ぴたり。
まさしく文字通りに目の前で止まった拳を、さも当然の帰結であるかと言うように優しく優しく撫でてみせる。
こうして寸止めされることすら、きっと彼女の読んだ未来のシナリオ通り。

「……こんな事は言いたくねえが、どうにもお前は信用できねえ。
 悪ぃが、何か用があるってんならしばらく俺に同行してもらおうか。
 お前がスジの通った奴だって分かったんなら話を聞く。
 ちゃんとそれまでは身の安全も確保してやる。これで構わねぇだろ」

「酷い扱いねぇん、野蛮だわん。
 ……わらわ、束縛されるのって嫌いなのん。
 その潤也って子を探してあげるから、二手に分かれないかしらん?
 見つけて連れきたんなら、その時にわらわのお願いを聞いてほしいのぉん」

「…………」

何も答えることなく、さっさと歩きだす。
やましいところがないなら一緒に行動したって問題はないはずだ。
目のつかないところで得体の知れないことをされるより、同行して監視している方が好ましい。
それが嫌なら最初からお願いなどしなければいい。

分かっているのかいないのか、女はへらへらと表情を崩さず静かに後ろについてくる。

……どうしてか。
この女が特に何かをしているところを見たわけでもないというのに、結局。
スジが通らないと分かっていながらも、心の奥底から涌き出る汚泥を隠しきることは出来なかった――。


**********


意外とそれには時間がかからなかった。
僅か数分。
下る階段を乗り換えて、エスカレーターにて階下へ辿りつけばそれで仕舞い。
安藤潤也は、地下にいた。

「見つけたぜ、潤也。
 ……どうやら逃げ出しちゃあいなかったみてーだな。
 少し見直したぜ」

―生鮮食品などが本来は並べられていたであろう地階。
いわゆるデパ地下と呼ばれるエリアの、エスカレーターの真正面。
そこで潤也はあたかもその空間の主であるかのように、ぼうっと座して待っていた。

「―無事だったのか、金ご、う……?」

此方に振り向きの第一声は、当然の事ながら背後の女に対してのもの。
道すがらに妲己と名乗ったふざけた格好の女は、いつの間にやらその手にいくつもの服を抱えてどれを着ようかなどと暢気なことをほざいていた。

「……その女は誰だ?」

不信感をあからさま過ぎるほど見せ付けて、潤也はニヤニヤ笑いの狐を睨みつける。

99:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:09:25 1ktFSruH
「わらわはジャンプ史上究極にして至高のヒロイン、妲己ちゃんよん。
 よろしくねぇん、潤也ちゃん」

それに何を思ったのか。
挨拶に答えることなく、潤也はただただ最初から用意していたであろう台詞を繰り出した。

「まあいい。それより金剛、あの女がどうにかなったんなら、すぐにでも向かいたいところがあるんだ」

なに、と金剛は小さく息を呑む。
潤也の態度は、どう見てもこれまでの彼とは全く異質な雰囲気を纏っていて、金剛すら僅かに怯ませる意思が漲っていた。

―潤也曰く。
以前と同じく兄の名前を持つ人物の所在について地図上の各施設を調べたところ、旅館にその名前が該当したらしい。
死人であるはずの潤也の兄の存在は眉唾物であるが、名簿にはマシン番長の名も記されている。
もしそれが金剛の思うとおりの人物であるなら、妲己や剛力番長の言葉の信憑性を完全に零と断定することは出来ない。

潤也は告げる。
あの連中なら、死人を生き返らせる事が出来てもおかしくないだろう、と。
そうでないとしても兄を騙る人間を野放しにし、一秒たりとも生かしておきたくない。
制裁せねば、と、そう断言した。

……やはり、この男は危うい。
その確信を深めながらも、金剛はいつの間にか、彼のどこかに共感するものを感じていた。

口では物騒なことを言っていながらも、本心ではむしろ兄に生きていて欲しいと願っているようにさえ見える。
その感情が兄と敵対する自分にいつしか重なって見えていたのだろう。

たとえ、その決意がどれ程強固であろうとも。
やっぱり人殺しなんてしたくないという気持ちは、きっと潤也だって持っているはずなのだ。

「―本物か偽者かは置いといても、一刻も早く兄貴を見つけなきゃ。
 その為にも、俺は旅館に向かわなきゃならない」

とはいえそれでも、彼のギラギラとした目つきは金剛を不安にさせて止むことはない。
妲己と、潤也。
こんなのを二人も同道させることになるとは、自分はよほど運がないのだろう。
……いい加減自分も少し疲れてきた。
潤也の急く気持ちは確かに伝わってくるが、いつも全力疾走ではすぐにガタが来る。

「……考えは分からねえでもねえが、その前にそろそろメシを済ませといた方がいい。
 剛力番長は退いたが次にいつ敵が襲ってくるとも限らねえ。
 体力補給はこまめにやっておかないと体がもたねえぜ」

結局は、その当の剛力番長の説得も出来なかった。
どこに向かったか見当もつかない以上、見知らぬ誰かが被害を蒙っていなければいいのだが。

とりあえずの休息の提案に、しかし潤也はそれも予期していたといわんばかりにデイパックを逆さにする。
全部が全部、シナリオ通り。

「ああ、それは俺も考えてた。
 けど、このカバンの中の食料はいざという時にとっておくべきだと思う。
 だからとりあえずこのデパ地下で適当にカロリーの高そうな食いもんを集めといたんだ。
 おかげで菓子系ばっかりだけど、そこは我慢してくれ」

どさどさどさ、と、いくつかの洋菓子が零れ落ちてくる。
種類はどれも違っていて、確かに糖分補給には十分そうだ。

100:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:11:30 1ktFSruH
「ふぅん、スイーツがいっぱいねぇん。これは少しだけ楽しめそうだわん」

「……あんたの分は想定してなかった。
 まあいいや、さっさと自分の分を取ってくれよ。
 兄貴を名乗る奴はすぐにでも旅館から離れちまうかもしれない。
 ちんたら時間をかけて食ってる暇はないんだ」

不機嫌そうに潤也は妲己を一瞥したのち、顎で不動のままの金剛に意思表示。

「……金剛? 甘いものは嫌いか?」

「そんな事はねえさ。そのプリンをもらっとくぜ」

本当に時間が惜しいのだろう。
やれる事は全てやっておいたから、あとはここを発つだけとでも言いたげだ。
金剛がプリンを手に取った直後、潤也は床に並べた菓子の一つをまるで飲み物であるかのように掻き込み、咀嚼。
ウーロン茶で流し込むというパティシエに一番失礼な食べ方をして、息つく暇なくさっさと立ち上がった。

「さあ、早く行こうぜ」

「……いい加減余裕がなさすぎだぜ、潤也。なんか汗まみれじゃねえか。
 ちょっと待ってろ」

金剛の巨体には、こんな小さなプリンはそれこそひと呑みだ。
だからこそ時間はさほどかからないだろうが、それでも折角の好物くらいは味わいたい。
見れば、妲己はとうに自分の分を確保してトロけるような顔でそれを堪能している。

仕方ない、と諦める。
こんな事で不和を招いても無意味だ、ここは潤也の望み通りにしておこう。
それにもし妲己の言うとおり死者が蘇っているのだとしたら、潤也の兄はこの男のストッパーになってくれるかもしれない。

ぱくりと口腔に放り込む。
甘ぁいカラメルと卵の芳醇なハーモニーを舌の上で楽しみながら、内心潤也に感謝する。
まさかこんな殺伐とした場所でプリンを楽しめるとは思わなかった。
どうにも不信感ばかりが募る一方ではあるものの、これだけは素直に礼を言っておくことにしよう。

ありがとう、と呟こうとしたその瞬間、転がしていたプリンが気管に入り込んだ。

「……かはっ!?」

ごほごほごほ、と一気に咳き込む。
らしくない。全く以ってらしくない。

……いきなり訳の分からない状況に置かれて、殺し合いを強制されて。
存外、結構緊張していたのかもしれない。自分でも意外に思ってしまう。

「ぐっ……!」

こちらを今か今かと待ちながらさっきから掌に握ったままのウーロン茶を弄ぶ潤也。
そちらを向いて、慌てて手を伸ばし要求する。

「み、水……。それをよこせ。
 それも一台や二台ではない……、全部だ!」

何をやってるんだ金剛、と苦笑する潤也が差し出すペットボトルを掴もうとして、気付く。

101:創る名無しに見る名無し
09/10/20 20:16:40 +qzgsdwu
しえん

102:ともだちになるために ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:19:17 1ktFSruH
手が。
腕が。
肩が。
首が。腰が。腿が。臑が。足が。


何一つ、動かない。

この息苦しさは、プリンが喉に詰まったからなんかじゃあない。

ああ、そうだ。
予感はきっと、すぐ近くの女に感じた印象はきっと、間違っていなかったのだろう。


「ざァんねん♪ わらわに同行を指図しなければ手駒として生かしておいたのにぃん。
 下手に統率力があって我が強かったのが災いしたわねぇん」

1/10=1。
金剛がどの菓子を選ぶかなど、潤也には最初から周知の事。
さっさと目の前で自分の分を食事してみせたのは、この菓子類が金剛に安全だという印象を植え付けるため。

プリンの中に、生きた毒虫のその汁が仕込まれていた。
たぶん、その程度の事なのだろう。


「潤也ちゃんから話を聞いた時はまだ、利用されてくれる余地があるかもって考えてあげたのよぉん?
 なのに、せっかくのチャンスをフイにしちゃうなんて、わらわ悲しいん。
 それだけ強いなら色々便利だったでしょうに、わらわのお願いすら聞く耳持たないんだものぉん」


その程度の事で、自分は――、


意識が薄れていく。
けれど完全に消えることなく、崖っぷちに必死でぶら下がった状態で固定されたかのように、
ある一線の手前で貼り付けにされている。

―いっその事、完全に意識を失ってしまえれば楽だったのに。


「あはん、わらわ命令するのは好きだけど、されるのは大嫌いぃん。
 貴方みたいなのに同行されたら、色々動きにくくなっちゃうわん。あと貴方、わらわより目立ちすぎぃん。
 覚えておく事ねぇん、押し付けがましい男ってのはモテないのよん」

ああ、もし二手に分かれる事に同意していたのなら。
今となっては詮無いことで、その一言で金剛の命運は断ち切られた。


妲己と潤也とが、ドライアイスのような目で見下ろしている。
視線はもう人間に向けるそれではなく、養鶏場から出荷されるブロイラーを見るのと同じものだった。


「さぁて、あんまり簡単に壊れないでねぇん、木人形ちゃん?
 貴方の尊い犠牲が首輪を解除する一助になるんだけどん、
 その前に耐久力のテストをしとかないと参考にならないんだから、分かったぁん?」


103:僕らはみんな生きている ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:22:15 1ktFSruH
**********


ぶすり、と、もう何度目か数え切れないほどの、肉に鉄の塊を突き刺す音がした。
ぐりぐりと傷口を抉じ開け、体の中に切れ味の鈍い槍が奥へ奥へと入り込んでいく。

つい先刻の戦いで傷つけられた肩口を橋頭堡に、体の中を至る所を蹂躙される。
こんな感触は初めてで新鮮で、まったく実にエキサイティング。
尤も、それを楽しむには常人なら発狂して当たり前の痛みを堪えなくちゃいけないけれど。

ぐちゅぐちゅ、ぐちゅぐちゅ。

まず最初に、肺を一つ潰された。
感触で理解。
肺を形作る小さな小さな部屋の群れ、肺胞のひとつひとつがエアークッションのようにぷちぷちと潰されていく。
血液が流れ込んでは漏れ出して、まるでそれはホットケーキを焼くかのよう。

いきが、できない。
溺れて苦しんでいるのに、いくら藻掻いても海辺にはたどり着かない。
だってそれは当然のこと。
ここは馬鹿が見ても分かる陸の上で、息をする根本の器官が潰されたのだから、。
それはひたすらにヘリウムガスだけが充填された風船の中身のみを吸うのを強制されるのと同じコトなのだから。
違いといえば、ダックボイスではなく漏れるのはガラガラ声だってことくらい。

じくじくとかつて肺だったものと肋骨と、神経と血管とがハンバーグを作れそうなぐらいにミンチにされていく。
そこまで至って初めて、ようやくにして新たなステップに移行した。

傷口を下方向に押し広げて、腹を掻っ捌かれた。
びくびくと震える薄皮の上をつつぅ……、と撫でられた後、生きながらにリアル手術ごっこ。お肉屋さんごっこ。

横隔膜の鼓動を直に見物されている。
ハラミに相当するその部分の脈動だけで、信じられない量の血液が千切れた血管から体腔に零れ落ちていく。
腎臓やら肝臓やらが、糠に沈められるかのように血溜まりに浸っていた。

そんな状態で、腕を体の中に突っ込まれた。
それこそ糠みそを掻き混ぜるように胃から腸から捏ね繰り回される。
内臓を直に触られる感覚が、胸の裏側から骨の一本一本をなぞられる感覚が。
着実に確実に堅実に、その場に居合わせる全ての人間の理性を破壊していく。

痛みは最早、まっしろ、と形容するので精一杯の、未知との遭遇大フィーバー。

あんまりテンパリすぎたためにまだこの段階では傷つけるつもりはなかった大腸まで切り裂いてしまったのはちょっと失敗。
おかげで辺りは糞塗れ。
さっき食べたばかりの毒入りプリンもハミ出てきてしまっている。

104:僕らはみんな生きている ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:24:45 1ktFSruH
ここに至るまで。これだけの損壊を遂げるまで。
安藤潤也がその手で、これらの全てを執り行っていた。
金剛の解体を、行わされていた。

妲己の手持ちの支給品と、金剛に渡された二つの武器と。
耐久度テスト兼それらの武器の試し斬りとして、ありとあらゆる暴力を振るうことを強制された。
動かない右手の分は、気前のいいことに妲己ちゃんの御奉仕サービスで埋め合わせ。

虚ろな目で獣の槍を手に、潤也はただただ動かない。
ぴくりと震えることもない。
息を荒く、小刻みに吐き出すだけ。

それはたぶん、獣の槍を使わされた反動だけではないのだろう。
へらへらと、正気で浮かべられるはずもない笑みを顔に張り付かせていた。

「ねぇねぇ、今どんな気持ち? どんな気持ちぃん? ねぇねぇ、悔しいぃん?
 わらわみたいな貴方の一番嫌いな類の輩に弄ばれてどんな気持ち?
 自分よりずっと弱い潤也ちゃんに嬲られてどんな気持ちぃん?」

ビクンビクンと痙攣するだけの金剛の残骸を見下ろして、実に妲己はご満悦。
目的だとか手段だとかそんなものは置いておいて、彼女はこういうのがだぁいすきなのだ。
それにしてもこれだけイジってもまだまだ活きがいいとは驚愕である。
体の頑丈さは首輪のテストに実にもってこい。
死なないのではなく、死ねない。そして、死なされない。
そんな残酷さを心の髄から楽しんで、恍惚。

だけどこれは、金剛だけを弄んでいるのではない。

「潤也ちゃぁん?」

びく、と純也が身震いする。
顔の笑いは、恐怖から精神を守る為の防壁。
今まさに一線を越えつつある自分の残虐無比な行動に、怯えている。

もう後戻りなど出来ない事を、理解していながら認めたがっていない。

だって、当然だろう。
いくら道を踏み外しかけていたとは言え―、彼は、ついこの間まで普通の高校生だったのだ。

潤也は強い。確かに強い。
だから、表面上は従ったように見えてもいつ牙を剥くか分からない。
ことに脅迫という手段をとっているなら尚更だ。

だから、徹底して彼の理解できない闇の深遠を刻み込む。
潤也のこころをへし折り、従順な奴隷にするためだけに、常軌を逸した行動をその手で行わせる。
最初はちょっとだけ罪悪感を募らせるだけのものから、徐々に深みへ深みへと。
格の違いを、思い知らせてやる。

それだけの話なのである。

人体、というのはその為の道具に実に都合がいい。
かつて周の文王に息子伯邑考のハンバーグをご馳走してあげたのと同じやり方だ。
ただ今回は血の繋がりという強固な絆がないから、代わりとして潤也自身の手を汚させた。

105:創る名無しに見る名無し
09/10/20 20:26:27 ECcI5JwO
しえん

106:僕らはみんな生きている ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:27:41 1ktFSruH
……そろそろ、頃合だろう。

「聞いたかしらぁん? 潤也ちゃん。その首輪から流れた声を」

「……え?」

機械めいた動きで潤也はゆっくりと首をこちらに向けてくる。
顔の表情もまた、つくりものめいた笑みのまま。

どうやら全く聞いていかなっかようだ。
ある意味で見込み通り、この少年はどこまでも残酷なことに夢中になれる性質を潜めているらしい。
それはそれで面白いけれども、今は少しばかり手間を増やす結果となった。

「『当地区は、残り十分で禁止エリアに変更されるわ。速やかに脱出しなさい』
 そうさっきの放送の女の声でメッセージが流れたのぉん。
 だから金剛ちゃんで遊ぶのはもうお終い。
 良く頑張ったわねぇん、ご褒美をあげるわぁん」

もうじき7:30。デパートに隣接したこの地区、I-06に金剛を運び込んだ本当の目的を果たさねばなるまい。
安全地域との境界は数メートル先。
そこからなら、首輪が爆発する様をじっくり観察できるというわけだ。

「あ……」

ようやく解放されるのか、と安堵の吐息を漏らした潤也にしなだれかかり、妲己は笑みを湛えて頷いてみせる。

「……さて、これがご褒美よぉん」


そう呟いて、ずぶりと金剛の額のど真ん中に研ぎ澄まされた指先を埋め込んだ。

「――!」

悲鳴は誰のものだったろう。
金剛か、潤也か。はたまた両者のものか。

皮膚と骨を貫通して、灰色の脳細胞が侵食される。
頭蓋骨の裏側から、前頭葉が豆腐のようにぐずぐずに崩されていく。
はてさて、本来ありえない場所からの圧迫感というのはどれ程気持ち悪く、不気味な代物なのか。
それはあまりに筆舌に尽くし難い。

程よくかき回したのち取り出せば、指の先にはたっぷりとディップがこびり付いている。
トロリとした粘性がいかにも生々しい。

それを静かに妲己は潤也の口元へと持っていって―、
何をされるのか、とうとう潤也は気付いた。

気付いて、しまった。


107:僕らはみんな生きている ◆JvezCBil8U
09/10/20 20:30:39 1ktFSruH
まあ、気付かなくてもすぐに身をもって思い知らされることになるのだけど。

「ん――っ、んん―! むぐ、ん、ふぅ、やべ、が、あべろぉ……、かっ!
 むんぐぐぐ、ああ、やえ、やぶぇ、やべろぉぉぉおおおおおおぉぉおぉぉっ!」

必死に閉じようとした口を無理やり抉じ開けられて、どれだけじたばた暴れても束縛から抜け出す事叶わなくて。


男の子は何で出来ているの?

蛙に蝸牛、子犬の尻尾。

女の子って何で出来ているの?

砂糖とスパイスと素敵なモノ全部さ。

じゃあじゃあ、金剛の脳ミソは何で出来ているの?

プリンに生ウニ、煮詰まった醤油に違いない!


ふんだんにべ……っとりと、取れたて新鮮そのものな金剛の脳ミソを口内の至るところに塗りたくられる。
ウニのような、醤油のかかったプリンのようなそれを、
頬肉に、
歯茎に、
顎裏に、
口蓋に、
舌全体に、
余すところなく満遍なく、擦り込まれる。

生臭くて、やけにコクがあって、ぬるぬるした感触が不快さを手繰り寄せる。
飲み込もうとしないから唾液がたっぷり溜まってきて、それで余計に血の香りが口の中に充満する。

ちゅぽっと指を引き抜かれた拍子に耐え切れず、とうとうごくりと嚥下してしまうと同時―
こころの奥で何か大切なものが砕けてしまったと、潤也はまざまざと感じさせられる。


あとはもう、がく、と膝を突いて、口元の脳ミソを拭おうともせずあらぬ方向を見つめているだけだ。
そうして、数秒。

「おご、ぅぅうぅええげ、げ、えげげげうぅおおぉぅぇえええええぇぇぇええぇぇっ!
 げっ、げえっ、おうぅるろぉぉおおぉぉげぇぇぇぇ……」

吐いた。
臓腑に溜まった何もかもを吐き出した。

……それでは皆さんお待ちかね。
ずるずると純也を引きずって、妲己は安全な観客席へと退避する。


108:代理
09/10/20 20:39:43 ECcI5JwO
爽やかな朝の風が吹き抜ける。
空は青く、まるで南国の海のよう。
走る街を見下ろして、のんびり雲が泳いでく。
さわさわとコンクリートの上に必死に根を張る雑草が揺れるなか、金剛の首輪から流れる女の声がそれを告げた。

『貴方は進入禁止エリアに入り込んでいるわ。
 この警告が終了してから一分以内に当地区から退避しないと、首輪が爆発してしまう。
 至急、退避してちょうだい』


そして、一分。


ぼぉん。

肺を潰されて、臓物を掻き回されて、脳ミソをシェイクされて。
それでもなお意識を失うことのなかった金剛は、ようやく生き地獄を抜け出す事が出来た。

おめでとう。


【金剛晄(金剛番長)@金剛番長 死亡】



**********


爆発は小規模。
しかし、普通の人間相手なら十分に致命傷だろう。

少なくとも金剛の損傷は思ったより少なくて、死体はだいぶ綺麗ではあるけれど。
首の肉が一部こそげ取られただけとはいえ延髄が吹っ飛んでいるのは確実だ。
どうやらその部分に重点的に爆薬が仕掛けられているらしい。
傍目から見ても間違いなく死んでいる。

「バカジャナイノー」

その余りにもあっけない死に様を見て、何故か潤也はそう呟いていた。
まだ、生臭い。金剛の脳ミソフレーバーは、一生口の中から消えてくれる気がしない。

まるで料金未満の価値しかない映画の感想でも吐き出すかのような潤也とは対照的に、
妲己は依然として今にも鼻歌でも始めそうな調子を変えることはない。
手に持つ名簿をためつすがめつ、一人推論を呟いてみせる。

そこでは、金剛の名前が確かに赤く染まっていた。

「……思ったとおりだわぁん。
 この名簿の死人の名前は、『本人が確かに死亡したのを確認した』その時点で赤く染まるのねぇん。
 つまり、実際に死体をその目で見るか、放送を聞くかしない限りこの名簿は黒字のままってことぉん。
 伝聞情報とかは確度が低いからきっと色は変わらない。死んだ人の名前を知らない場合もきっと同じでしょうねぇん。
 放送を聞き逃しちゃったらそれまでってことかしらん」

109:代理
09/10/20 20:42:25 ECcI5JwO
知らないところで生き返った場合とかはどうなるのかしら、と洩らすも、考えても分かるはずはない。
それよりもこの名簿は、黒字の上から赤いペンでなぞったり、あるいはその逆をすることで面白い使い方ができるかもしれない。

けれど、今は情報整理が先だ。

「くすくすくすくす。金剛ちゃんのおかげで他にもいろいろ面白い事が分かったわぁん。
 たとえばこの槍の力ねぇん。
 上手く使えば人体に全く影響を与えず、首輪の宝貝合金だけに干渉できるみたいん。
 でも、どこが貫いてもいい場所か、ってのはまだまだ分からないわねぇん。

延髄付近に爆薬がセットされていることは分かったが、斬ってはいけないコードとかが他の場所にある可能性も高い。
破壊に着手するのは時期尚早が過ぎるだろう。
金剛の死に様を見る限り、制限さえ無効化すれば爆破されても耐え切れる見込みは結構高い。
とはいえ肝心の制限を無効化する方法が問題だ。

「この槍を使った方があるかないかも分からない太極図を使うより確実かもねぇん。
 でも、まだまだ情報を集めないとぉん」


如何せん、それは不意打ちに過ぎた。

妲己の背中に影が差す。


たとえ内臓が全部零れて、腹の中が空っぽになっていたとしても。

潰れた肺のせいで酸素が行き渡らず、四肢が壊死し始めていたとしても。

考える為の前頭葉が、破壊しつくされていたとしても。

運動系を支える延髄が、吹っ飛ばされていたとしても。

プラント融合体すら押さえ込む、砂虫の切り札たる筋弛緩系の毒が回っていたとしても。

生物学的に、間違いなく死んでいるのだとしても。


「知った……ことかァ――ッ!!」


この女だけは、生かしておくわけにはいかないと――!


「蛮漢魔王陀(バンカラバスター)ぁぁぁぁあああぁぁぁあぁぁぁぁぁっ」


回避不能。
防御不可。
迎撃無視。
必殺必滅。

潤也にも、妲己自身にも、最早かつて金剛番長と呼ばれたソレを、止めるはおろか減衰させることすら出来はしない。

だから、妲己が生き残る道理はない。

110:代理
09/10/20 20:43:56 ECcI5JwO
……ただ、まあ。

「死人は動かないものよぉん? 金剛ちゃん。
 それこそ貴方の一番嫌いなスジが通らないことよねぇん」

そんな奇跡が許される道理の方が、よっぽど認められるよーな代物でもないという。


「終わりですわ」

ドラゴンころしが生ける屍にめり込んだ。
それが、今回のお話の終わり。


単純な話だ。
金剛の巨体を禁止エリアに運び込むなんて力仕事、妲己がすると思うかい?
手首を骨折した潤也に出来ることと思うかい?


【I-6~I-7境界/デパート付近/1日目/朝】

【妲己@封神演義】
【状態】:健康
【服装】:
【装備】:獣の槍@うしおととら、逃亡日記@未来日記
【道具】:支給品一式×6、再会の才@うえきの法則、砂虫の筋弛緩毒(注射器×2)@トライガン・マキシマム
    マスター・Cの銃(残弾数50%・銃身射出済)@トライガン・マキシマム、
    デザートイーグル(残弾数7/12)@現実、
    マスター・Cの銃の予備弾丸3セット、不明支給品×4(うち2つは武器)
    詳細不明衣服(デパートで調達)×?
【思考]】
基本方針:神の力を取り込む。手駒を集める。
1:旅館に向かって潤也の兄と接触するか、獣の槍の反応する方に向かい本来の持ち主を見極めてみるか考える。
2:対主催志向の仲間を集める。
3:喜媚たちと会いたい。
4:この殺し合いの主催が何者かを確かめ、力を奪う対策を練る。
5:獣の槍と、その関係者らしい白面の者と蒼月が気になる。
6:“神”の側の情報を得たい。
7:剛力番長を具体的な脅威としての槍玉に挙げて、仲間を集める口実にする。
【備]】
※胡喜媚と同時期からの参戦です。
※ウルフウッドからヴァッシュの容姿についての情報を得ました。
※みねねと情報交換をしました。未来日記の所持者(12th以外)、デウス、ムルムルについて知りました。
※みねねとアル及び剛力番長の一連の会話内容を立ち聞きしました。
 錬金術に関する知識やアルの人間関係に関する情報も得ています。
※獣の槍が本来の持ち主(潮)のいる方向に反応しています。
※みねねから首輪に使われている爆薬(プラスチック爆薬)について聞きました。
 首輪は宝貝合金製だが未来の技術も使われており、獣の槍や太極図が解除に使える可能性があると考えています。
※不明支給品は全て治療・回復効果のある道具ではありません。

111:代理
09/10/20 20:45:18 ECcI5JwO
【安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX】
【状態】:疲労(大)、精神的疲労(特大)、情緒不安定、吐き気、
     右手首骨折(応急処置済み)、たんこぶ一つ、体の数箇所に軽い切り傷
【服装】:返り血で真っ赤、特に左手。吐瀉物まみれ。
【装備】:首輪@銀魂(片方の首輪をはめている)
【所持品】:空の注射器×1
【思考】
基本:兄の仇を討つ……? 妲己に屈服。
0:旅館に向かって兄の名を名乗る人間が本物か見極めたい。本物なら取引通り妲己に兄を守らせる。
1:兄の仇がこの場にいれば、あらゆる方法を使って殺す。いなければ、確実で最速なやり方でここから脱出する。
2:ひとまず脱出の為に殺し合いにのっていない参加者を集め、協力してもらう。
3:その集団を、能力を活かして確実最速な脱出方法へ導く。
【備考】
※参戦時期は少なくとも7巻以降(蝉と対面以降)。
※土方が偽名であることに気付きました。
※能力そのものは制限されていませんが、副作用が課されている可能性があります。
※キンブリーを危険人物として認識していたはずが……?
※人殺しや裏切り、残虐行為に完全に抵抗感が無くなりました。


【白雪宮拳(剛力番長)@金剛番長】
【状態】:疲労(中) ダメージ(中) ホムンクルス 『最強の眼』
【服装】:キツめの体操服、紺のブルマ
【装備】:ドラゴンころし@ベルセルク
【道具】:支給品一式、アルフォンスの残骸×3、ボイスレコーダー@現実
【思考】
基本:全員を救うため、キンブリーか妲己を優勝させる、という正義を実行する。妲己に心酔。
1:自らの意思のままに行動し、自分が剛力番長であるという確信を得る。
2:見知らぬ人間とであるたびに、妲己の集めた仲間であるかどうかを聞く。
3:キンブリーと妲己の同志以外は殺す。
4:強者を優先して殺す。
5:蘇らせた人間の中で悪がいたら、責任を持って倒す。
6:ボイスレコーダー(正義日記)に自分の行動を記録。
【備考】
※キンブリーか妲己がここから脱出すれば全員を蘇生できると信じ直しました。
※錬金術について知識を得ました。
※身体能力の低下に気がついています。
※主催者に逆らえばバケモノに姿を変えられるという情報にだけは、疑問を抱きつつあります
※参戦時期は金剛番長と出会う直前です。
※妲己がみねねの敵であり、みねねは妲己に従ったと思っています。
※賢者の石の注入により、記憶が微妙に「自分の物でない」ような感覚になっています。
 正義の実行にアイデンティティを見出し、無視を決め込むつもりですが、果たして出来るかはわかりません。
※ボイスレコーダーには、剛力番長と出会うまでのマシン番長の行動記録と、
 剛力番長の島に来てからの日記が記録されています。

112:代理
09/10/20 20:47:18 ECcI5JwO
【砂虫の筋弛緩毒@トライガン・マキシマム】
GUNG-HO-GUNSが12、ザジ・ザ・ビーストの切り札。
ミリオンズ・ナイブズ融合体やエレンディラ・ザ・クリムゾンネイルを完全に無力化できるほどの筋弛緩系の毒。
ただしレガートのように無理やり肉体を操作する力の持ち主は封じることは出来ない。
また、ナイブズもプラントの力で毒素そのものを消去することにより行動が可能になった。
投与された場合、意識は僅かに残るが体を動かす事が殆ど出来なくなる。
エレンディラの場合投与されてから約12時間後には後遺症もなく動き回れるようになっているので、持続時間は数時間程度だろう。
注射器に入れられたものが3本セットで支給されているが、直接注射する以外にも食べ物に混入させる、武器に塗布する、などの使い方もできる。


**********


くすくすくすくす。地図なんか取り出してなァにをやってるのん?

あらあらん、どういうつもり? そんな怖い目で睨んじゃってぇん。
わらわ臆病だから、そんな目をされると暴れちゃうかもん。
仲良くしましょう? 貴方の首と胴体みたいに、ね。

さて、もう一度聞くわねぇん。『貴方は誰で、何をやっている』のかしらぁん?


ふぅん、そうなのぉん。正直者でわらわ嬉しいわぁん。
運が良かったわねぇん、気が変わったわん。
あなたのそのチカラ、わらわの為に役立てて頂戴ぃん?


ぅん? 気が変わったとはどういうことかって聞きたいのん?

……もうすぐ、7:30よねぇん。
そしてここからすぐの所に禁止エリアがあるでしょぉん。
つまり、そういう事。
平凡なつまらないコだったら、足手纏いなりに役に立ってもらおうかと思ってたのぉん。

でも困ったわねぇん。時間が圧してるのに、都合のいいモルモットちゃんがいないのぉん。
貴方、何かしら心当たりはないかしらん?


……いいわねぇん、そんな態度、素敵よぉん。
と、なると。貴方には同行者がいるって見た方が自然よねぇん。それも相当の実力者。
貴方一人じゃあ出来ることなんて限られてるのに、わらわ相手に強気に出てくるってだけで十分それくらい分かっちゃうのよぉん?

でも、あなたはもっと賢くなった方がいいわぁん。
わらわにだって選択肢はたくさんあるのぉん。

わらわのご機嫌を損ねたら、決していい事が起こらないのは貴方や同行者の人だけじゃないわぁん。
た・と・え・ば。
これから先、わらわが貴方のご家族―この名簿の同じ苗字の人に出会ったとして。
“偶然不幸な事故を目撃”しちゃう可能性は0じゃないのよん?

113:代理
09/10/20 20:48:58 ECcI5JwO
なるほど、ねぇん。
あなたの兄貴さんとやら、もしかしてもうとっくに死んでるはずなのぉん?

くすくすくす、ドンピシャリみたいねぇん。
ついさっき名簿を確認してみて、そのせいで動転している、ってとこかしらぁん?

ひとつ、アドバイスしてあげるわん。
たぶんソレ、本物の貴方のお兄さんよぉん。
理由はカンタン。わらわの時代には人を生き返らせる手段が実際にあるんだもぉん。

……まあ、こんな言葉が信用できないのも当然だけどねぇん。
でも、信じようと信じなかろうとどっちでもいいのぉん。
貴方、偽者なら追い詰めて殺してやる、って考えてるでしょう?
負の感情はわらわにはぜぇんぶ、お見通しなのぉん。


なるほど、金剛ちゃん、ねぇん。
そんなに強いなら、首輪の爆発力を試すいい素材かもん。

あらん、金剛ちゃんに義理でも感じているのぉん?
安心して頂戴ん。
わらわ、まだその金剛ちゃんとやらに会ったことないからモルモットちゃんになってもらうと決めたわけじゃないわぁん。
ただ、話を聞く限り、どうにもわらわのお邪魔虫になりそうな予感がするのは確かねぇん。


さぁて、ようく考えてぇん?
考えて、考えて、考えて。
どっちがお得なのか、をねぇん。

わらわを満足させて、空気を吸える喜びを噛み締めて、お兄さんを助ける心強ぉい味方を手に入れるか。
わらわを悲しませて、考えることすらできなくなって、お兄さんに二回も死ぬ恐怖をプレゼントするか。


貴方は、ちゃあんとモノを考えられる子よねぇん?


**********


あらん、また会えて嬉しいわぁん。無事に生き延びられたのねぇん。
もしかして、この“再会の才”とやらのおかげかしらぁん。


……迷うことは無いわぁん。
わらわがあなたの邪魔になると思うなら、好きにして結構よぉん、くすくす。
だって、あとあと生き返らせてくれるんでしょぉん?


他の人はみんな否定したのに、どうして蘇りを信じてくれるのかって?
あたりまえよん。
だって、わらわはあなたの言うことが全部、本当だってわかってるんだからねぇん。
信じるとか信じない、とかじゃなくて、わらわの時代にも蘇らせる力は存在してるのよん。
錬金術、とやらとはまた別にねぇん。

114:代理
09/10/20 20:50:54 ECcI5JwO
……どうしたのぉん、不安そうな顔をして。
自分の記憶が信じられないのぉん?

わらわが保証してあげるわぁん。
貴方は、貴方。
思う存分貴方の正義を執行なさいん、それは決して誰にも咎めることなど出来ないのぉん。

誰が否定しても、世界中が敵になっても、わらわ“だけ”は貴方の行いを認めてあげるわぁん。
でもねぇん、だからと言ってわらわは貴方に同行しろとも言わないし、指図なんてするつもりもないわよぉん。
ただ、いくつかの選択肢を教えるだけ。
どの真実をその中から選ぶのか、それは貴方次第なのん。

そうすれば、ちゃんと貴方が自分の意思で決めたことになるでしょぉん?
だったらわらわが口を挟む権利なんかないじゃなぃん。


くすくす、そう、今はわらわを殺さないでいてくれるのねぇん、ありがとぉん。
それでもわらわが貴方を助けた借りには全然足りない?
あはん、それじゃあ数時間前と今―貴方を助けた回数と同じだけ、2つだけお願いを聞いてくれないかしらぁん。

一つは、もしこれから貴方が知らない相手と出会うたびに、
『もしかして妲己の集めた仲間か』、って聞いて欲しいのぉん。
聞くだけよぉん、それ以上は余計な気を利かさなくっていいわぁん。


そしてもう一つは、ちょっとした雑用なのぉん。
今から7:30くらいになるまで付き合ってもらうことになるんだけど、構わないかしらぁん……?
それから後は、貴方の好きにしていいからぁん。

それじゃあ、よろしく頼むわねぇん。

115:代理
09/10/20 20:57:32 ECcI5JwO
: ◆JvezCBil8U:2009/10/20(火) 20:46:37 ID:c2RPz3ts0
以上、投下終了です。

名簿の仕様と首輪などについて、ご意見を伺いたいところ。
特に名簿ですが、放送と同時に死者が自動で浮かび上がるという仕様だと、キンブリーの森への作戦などが台無しになりかねないので……。
なので、いつでも正確な死亡者を知る事はできないようにしておきたいな、と。放送の意味合いも薄れますし。
これはポータルサイトの名簿機能にも共通する懸念ですね。

代理投下終わりです

金剛が剛力をどうにかしてくれる。潤也もどうにかしてくれると考えてた俺が甘かった……
妲己……そこまでやっちゃうのか……
何だろう、潤也も剛力ももう妲己の掌の上だな。もう死んでくれた方がマシじゃないのか?
このまま妲己の独壇場か? これは銀時逃げてー

116:創る名無しに見る名無し
09/10/20 21:03:26 ujBerwWb
うわぁ。人肉ハンバーグ食べさせちゃうネタはいつかあるだろうなと思ってたけど
予想をはるかに上回る妲己ちゃんの外道ぶり
お前のどこが対主催だ!
投下乙でした

まぁキンブリーなら未だ放心状態のあいの所持する名簿の練成とかして、軽く対処出来ると思うけど
名簿の真実で説得失敗して爆弾とかにされちゃってもそれはそれでいいんでないかな

117:創る名無しに見る名無し
09/10/20 21:05:56 ujBerwWb
ところでこれはキルスコアは誰につくんだろう

118:創る名無しに見る名無し
09/10/20 21:23:23 95LoDL2F
投下乙
ダッキちゃんマジ外道
流石ジャンプ誌上で人肉ハンバーグ作っただけはあるw
潤也はもうダメかこれは

名簿について
無駄に複雑化すると書きにくくなるような
あとリンの見た名簿がエドのだからこのままだとマズイのでは?

119:創る名無しに見る名無し
09/10/20 21:35:05 ujBerwWb
まぁ放送を聞いていた人間が名簿を見た場合、名簿の文字が変わるって仕様なら有りかな
全自動ではないと言う事で

120: ◆UjRqenNurc
09/10/21 00:03:01 //B5/INB
未来日記のように読んだ本人の主観が影響するようにすればいいのでは?
何の情報も知らなければ黒文字のまま
死んだ!?と信じたら赤くなるとか

短いですが、グリフィス投下行きます

121:白き鷹 ◆UjRqenNurc
09/10/21 00:03:47 //B5/INB
人間にとって、大空とは見上げるものでしかなかった時代。
その絶対的才能から、人々の手の届かない存在という畏怖を込め「白き鷹」と呼ばれた一人の英雄がいた。

今、まさにその異名通りグリフィスは空を翔る。
もはやそれは比喩ではない。
宝貝「風火輪」。
人による飛行を可能とする宝貝。
その新たな道具に、グリフィスは夢中になっていたのだ……


       ◇       ◇       ◇


地面と水平に飛ぶ軌道から、足の向きを変え上昇へと転じる。
円弧を描くような軌跡。
だが、その頂点に達しようかというその瞬間。
風火輪が突如、力を失いグリフィスの身体は引力に引き寄せられる。
迫る地面。
激突まであと、3、2、1……再点火!
再び揚力を得て、地面スレスレを飛行―浮上!
グリフィスは再び大空へと舞い上がる。

「ハハハハハ!」

あと一瞬で命を失うところだったと言うのにグリフィスの顔に恐怖の色はない。
むしろ休日の遊園地、ジェットコースターで遊ぶ子供のような満面の笑みだ。
そう、今の失速は風火輪の性能を試す為の意図的な機動。
この短時間の内に、グリフィスはこの宝貝を使いこなしつつあった。

力を抜き、滑空。
風に乗り、旋回。
刀を抜き、燕の如く翻りながら斬撃。
好奇心の赴くまま、空中での動き方を試してみる。
まるで遊ぶ子供のような風情であったが、グリフィスの専心は手に入れたこの道具を
如何に効率的に運用するかということにある。

とはいえ、ニヤケ笑いは止まらない。
これをつけてガッツに会ったなら、奴は一体どんな顔をするだろう。
驚くだろうか。うらやましがるだろうか。それとも奴にもこんなおかしな物が支給されているのだろうか。
決めた、再会シーンは空からだ。

心に決めるとグリフィスは南へと向かう。
とりあえず確認しておかなければならぬ事を、確かめる為に。


       ◇       ◇       ◇

122:白き鷹 ◆UjRqenNurc
09/10/21 00:04:29 //B5/INB


地図の南端。
島と外界とを分つ大海原。
水面は静かに光をはね返し、その深さをうかがい知る事は出来ない。
その上空にグリフィスは佇む。
目の前の物を検分するために。

それは乳白色の壁。
遠目にはどこまでも続く海原に見えたが、近くで見てみると逆に壁の向こうの様子がよく見えない。
またしてもグリフィスの知識にはない未知のものだった。

刀の柄で叩いてみる。

パィン!

乾いた音を立てて弾き返される。
さほど強く叩いたわけでもないのに、その反発力は凄まじかった。
おそらく切っても無駄だろう。

自分たちを逃さぬために、島という舞台を用意したのだと思っていた。
だが、それではゾッドのような空を飛ぶ参加者や、こんな支給品が渡された説明が付かない。
不審に思い、調べに来た結果がこれ。
島は完全に「神の力」により封鎖されていたのだ。

そして、いったいどこから聞こえてくるというのだろうか。
こんな箱庭の世界の果てまでも聞こえてくるピアノのメロディー。
第一回の放送が始まる……


       ◇       ◇       ◇


「鷹の団から連れてこられたのは、オレとガッツだけだったか」

名簿にあった70名のなかでグリフィスの知る名はわずか2名。
ガッツ、そして不死のゾッド。
いや、「知っている」だけの名前ならばまだある。
先ほどまでの同行者ゆのの知り合いだ。
その内一人は死者として名が呼ばれている。
これを聞いた彼女が大人しく旅館で待っていてくれればいいのだが。


そして禁止エリアの情報。
今回禁止されたエリアはI-6、F-7、B-4。
この、目の前の壁の存在と合わせて考えるなら主催たちの考えは明らかだろう。
それは逃げ場を塞ぎ、参加者たちに背水の陣で戦わせる事だ。
自分もそんな状況に兵を追い込んだことがあるからよくわかる。
人間、逃げ場がないとなれば死に物狂いで戦うものなのだ。


だがこの禁止エリアを、ただ脅威とだけ捉えるのは戦の機微のわからん人間の考えと言えるだろう。
これはゾッドのような人外の存在に対する武器ともなるはずだ。
片腕を切り落とされようが、たやすく再生するあの不死のゾッドと言えども首輪が爆発すればただでは済むまい。

そうでなければ……このような戦いの大前提が成り立たないこととなる。

123:白き鷹 ◆UjRqenNurc
09/10/21 00:05:12 //B5/INB

故に、先ほど為すすべもなかった人外の存在に対する策がここに成る。
それは禁止エリアへと誘い込む事。
そして、そのためのカード。
機動力という手札がこちらにはある。
だが、敵とてバカではない。
露骨に誘い込んでも禁止エリアに気付かれては策は成らない。
それを如何に相手に気付かせずに成し遂げるか、だが……
いくつもの策略を成り立たせてきたグリフィスにはその自信があった。

「しかし、念入りな事だな……」

人知を超えた神、もしくは悪魔……か。
どちらにせよこれほどの力を持つ存在ならば、こんな大掛かりな真似をせずとも参加者たちを逃さぬことなど
たやすいはずだ。
神とやらは、よほどオレたちの「殺し合い」をご所望と見える。
この分では、他にもいくつか悪辣な仕掛けがあってもおかしくない。
オレたち参加者がどう動こうが、所詮は神の書いた脚本通り。
神の掌の上で踊る道化に過ぎんと言う事か。。


面白い……

かつて、奴にだけ話した事がある。

この世には、人の定めた身分や階級とは関係なく世界を動かす鍵として生まれついた人間がいる。
それこそが宇宙の黄金律が定めた、真実の特権階級。
神の権力を持ち得た者だ。

もしオレがこんな戦いも乗り越えられず、ここで死ぬと言うのであれば、それはオレが選ばれし
人間ではなかったという事。
他の凡百の人間と同じように、運命に押し流されて生きるしかない人間だったということだ。
失った「夢」に焦がれ、「夢」を忘れて生きていくしかない敗残兵たち……
そんな存在と伍するようになるくらいならここで神に殺されるのも悪くはない。

グリフィスは、神のくれた試金石に感謝する。
「国取り」も秒読み段階に入った今、政治屋どもとの戦いに正直退屈を感じつつあったところだ。
ガッツも力を持て余していたに違いない。
なぁ、ガッツ。どうやらオレたちの戦いは、まだまだ続くらしい。

さて、これからの方針だが……
どうやらずいぶんと出遅れたようだ。
兵は拙速を尊ぶ。
考えすぎて動きを止めるより、まずは動くべきだった。
これだけの死者が出て、また名簿が公開された今となっては見知らぬ参加者たちを集め、指揮を取るのは難しいだろう。

ここはまず、ガッツとの合流を優先するか。
奴もまた、主催どもの喉笛を食い千切ろうと動いているに違いない。

グリフィスは足に装備した宝貝に力を注ぎ、再び空を駆る。

オレとお前の二人しかいなくとも、オレたちは鷹の団だ。
まだまだお前の力を貸してもらうぞ、ガッツ。
オレたちは生きてミッドランドに戻る。
皆で夢を掴むためにな。

124:白き鷹 ◆UjRqenNurc
09/10/21 00:06:05 //B5/INB





【J-8北部/上空/1日目 朝】

【グリフィス@ベルセルク】
[状態]:健康
[装備]:居合番長の刀@金剛番長、風火輪@封神演義
[道具]:支給品一式
[思考] ガッツと合流
1:ガッツと合流
2:殺し合いに乗っていない者を見つけ、情報の交換、首輪を外す手段を見つける
3:役に立ちそうな他の参加者と繋ぎをつけておく。ゆのとの再合流は状況次第
4:未知の存在やテクノロジーに興味
5:ゾッドは何を考えている?
[備考]
※登場時期は8巻の旅立ちの日。
 ガッツが鷹の団離脱を宣言する直前です。
※ゆのと情報交換をしました。
 ゆのの仲間の情報やその世界の情報について一部把握しました。
※自分の世界とは異なる存在が実在すると認識しました。
※会場を囲む壁を認識しました。

125: ◆UjRqenNurc
09/10/21 00:08:22 //B5/INB
以上です

126:創る名無しに見る名無し
09/10/21 00:23:22 uSPle9W+
投下乙
なんという爽やかなグリフィスw
そういや過去編ではこんな奴だったな

127:創る名無しに見る名無し
09/10/21 00:42:42 CiNw4RcU
投下乙です。
あぁ、何て綺麗なグリフィスw
ガッツはあんなに荒れてるのにねぇ…

あと、名簿について。
赤字=死者とは明記されてませんよね?
なら放送を聞いてない人間には意味がわからないから問題ない気もします。
普通はたやすく推察できるでしょうが…
しかし未来日記風の設定というのも惹かれますね…そうすれば矛盾も大体収まるでしょうし。

意見を見て、書き手氏本人が最終判断を下せばいいと思います。

128:創る名無しに見る名無し
09/10/21 10:20:58 OSWlPdyP
投下乙
爽やかなグリフィスw
でもガッツに会う前に死ぬかもw

129: ◆JvezCBil8U
09/10/21 21:23:05 JoNpfh3z
まず、代理投下してくださった方と支援をしてくださった方に感謝を。
ありがとうございました。

次に、感想をば。
こんなグリフィスを見られるとは、何とフレッシュな……w
地味に危険地帯に突っ込んでるけど、上空にいるというのが色々生かせそうで面白く使えそうです。
投下お疲れ様でした!

そして、ご意見感謝です。
確かに未来日記という前例もあることですし、主観情報に左右されるというのが無難かつ展開にも絡んできそうですね。
そういう方向で修正したいと思います。
wiki上で直接修正で大丈夫……かな?

ただ、ポータルサイトの死者名簿機能の扱いが難しくなりそうなので、そこはどうしましょう。
名簿と同様アクセスした人間の主観情報に左右されるのか、いっそ機能に含まれないことにするか。
前者は自分で意見を出しておいてなんですが、ネット上の共通ソースなのにどう主観情報を判別しているのか……という問題が出て余計ややこしくなるかもですね。
お手数ながら、◆9L.gxDzakI氏にご意見をお聞きしたく思います。

>>117
キルスコアは……妲己ちゃんでいいんじゃないかとw
剛力が最後に一撃加えた時点で既に生物学的には死亡している設定ですし、潤也は下手人とはいえ支持を全部妲己ちゃんが出してましたし。


130:創る名無しに見る名無し
09/10/21 21:31:50 wVaSrw2z
>>129
「触れた人間の主観」に左右されるとすれば修正する必要はないかもしれません
妲己ちゃんが少し勘違いしてるってことで
次以降の書き手がもう少し詳しく突っ込む余地も生まれますし

ポータルサイトの方はややこしいですね

131:創る名無しに見る名無し
09/10/21 21:40:25 JoNpfh3z
>>130
ああなるほど、触れた人間の主観情報、の方が確かに具体的で分かりやすいかもです。
けれど『触れる』という条件については今回の話では検証する必要はないですかねぇ……。

ただまあ、あのまんまですとやっぱり読みにくいですし、妲己ちゃんがそういうミスをするのもらしくないですし。
今回の修正はそんな大した手間じゃないので、とりあえずは着手してしまおうと思います。

132: ◆JvezCBil8U
09/10/21 21:41:19 JoNpfh3z
……とと、トリ忘れ。
IDが同じだから平気でしょうが、一応>>131は私ですw

133: ◆9L.gxDzakI
09/10/22 09:36:28 ZdcRo0O5
えーっとですね、ポータルサイトの死亡者表記は、「最新の放送までに発表された人間のみ」ということで書いてあります。
これは放送を聞き逃した人のために、っていう意味合いなので。
ですから、放送でまだ名前の出ていない死者までどんどん追加されていくのは、ちょっとどうかと思うのですが。

134: ◆JvezCBil8U
09/10/22 21:57:05 yC5D8bWO
返信ありがとうございます。
その、大変申し上げにくいんですけど、『放送を聞き逃した人のために』というのが今後一部の展開を書きづらくしてしまいかねないのが問題点かなー、と。
放送を聞き逃した事で成り立つ状況、例えばキンブリーが森に対して取ったような作戦や、それとは逆にとっくに死亡している人間を生きていると思い込んでいるが故に成立する行動。
また、放送の情報をカードにした取引など。

こうした展開が、『主催者に保証された、誰にでも共有できる情報』として『いつ何時でも』確認できてしまう事で成り立たなくなってしまいます。
名簿の方はこれを『あくまで見た人の主観情報に左右される』代物にした事で回避できますが、ネット上ではそうはいかないのが難点かと。
これが主催者が用意した機能でなく、参加者がblogや掲示板に書き込んだ情報であるのなら疑われる余地が生じますが、主催者自らの手によるものとなると信じる以外になくなってしまいますし。

それらを考えると、殺し合いをさせたい主催側がこうした機能を用意するメリットはあまりないわけでして……。
また、キンブリーの作戦に対してジョーカーである趙公明が何も言わなかったのがおかしくなってしまいます。

アクセスした人間の主観情報に左右されるという案は、なので単純に名前の出ていない死者が追加されるというわけではないです。
上に挙げたような矛盾や展開の不成立を回避する為の一案としてお考えください。

135:創る名無しに見る名無し
09/10/24 02:19:17 srqWbmeZ
よくわからないけど、この話って『俺はこの展開好き/嫌い』って話でいいの?

136:創る名無しに見る名無し
09/10/24 02:26:33 XH3QBjkW
馬鹿かお前は

137: ◆9L.gxDzakI
09/10/24 09:49:41 afde9G2B
>>134
了解しました。
ただ、実を言うと、何をどうすれば解決するのか、自分もよく分かっていないわけでして……
……もういっそ、死者一覧と地図一覧は、サイトからとっぱらっちゃった方がいいかな?
その場合は、近日中に修正案を用意します。

138:創る名無しに見る名無し
09/10/24 10:41:15 rkMcWuWW
>>137
それでいいんじゃないかな

んで名簿の仕組みなんですが、情報を反映させる事が出来るのは自分の名簿のみでいい?
他人の名簿でも触れば情報の更新が出来るとかだと、例えば他人の名簿奪った時とかに
情報の誤差に気付く事がなくなると思うんだけど。

エド・リンも、リンが放送の時エドの名簿で参加者確認しても全員の名前が見れただけだったけど
リンの話を聞いたエドが名簿確認したら赤文字に変化してリンもびっくりみたいな展開に出来ると思う

139: ◆9L.gxDzakI
09/10/24 11:50:52 afde9G2B
了解です。

あと、キリエちゃんごめんなさい、年齢1つ間違えてたorz
拙作「盤上の駒」でのキリエの年齢を、28から27に直しておきました。
ここで報告すべきかどうか、そもそも報告がいるのかどうかは、正直微妙なところなのだけど

140: ◆JvezCBil8U
09/10/24 19:07:57 Z6+2ZBOB
>>◆9L.gxDzakI 氏
お疲れ様です。
その案でおそらく問題ないかとは思われます。
一応他の案としては、アクセスした人間の主観情報を判別する方法として、首輪にcookieと電波発信機能のようなものがある、
というものなども考えてみましたが……少々複雑になりすぎる気もしますね。
その辺りはお任せいたします。

>>138
名簿の情報は一次ソースでなく主観によるものですから、それで構わないと思います。
他の人の名簿を見てもあくまで他の人はこう思っている、という情報が手に入るだけですしね。

141:創る名無しに見る名無し
09/10/24 22:04:39 m6lp1nYC
次で100話か

142: ◆L62I.UGyuw
09/10/25 00:12:38 SdB7C0l2
沖田総悟、ガッツを投下します。

143:天は人の上に人をつくらず俺をつくりました ◆L62I.UGyuw
09/10/25 00:13:40 SdB7C0l2
放送が終わって数分。
沖田総悟は名前が浮き出した名簿を眺めながら、島の南西部の道を北へと歩いていた。
周囲の木々はまばらになってきており、道の先には畑が見える。
辺りはすっかり明るい。そのためか、同じ道であるにも関わらず、先程通ったときとは随分違った印象を受ける。

「オイオイ、万屋のメガネはもう死んじまったのかィ。
 ……まァ長生きしそうなタイプじゃなかったけどよ」

そう言って、赤く染まった『志村新八』の文字を指で弾く。
真選組の隊士にとって、死は常にその身の隣に在るものだ。知り合いの死には慣れている。
それでも僅かに表情が曇ったのは、この場にいるらしい彼の姉、志村妙の心境を慮ったからだろうか。

「……ま、それはそれとして、だ。どうやらここにいる真選組は俺だけみてーだな。
 ったく。こういうのに巻き込まれるのァ土方のヤローの方が適任だろってんだ。
 ……さて、これからどうすっかなァ」

警察署で仲間と合流出来る可能性はこれでかなり低まった訳だ。
名簿を信じる限り、デパートにいるらしい銀時の他に、元から沖田が知っている者は三人のみ。
そのうちの二人は志村姉弟。
そしてもう一人は柳生九兵衛だ。
九兵衛の性格を考えると、彼女がこんなゲームに乗る可能性は低い。それに彼女は沖田に匹敵する剣の腕も持っている。
可能ならば優先して合流したいところだが……。

「だから、んな簡単に見つかりゃ苦労しねーんだって」

結局、そこに行き着く。妙についても同様だ。

「かったりィなァ……」

元来、彼は勤勉な性質ではない。
地道な人探しなど彼の性には合わない。考えるだけで気が滅入るのだ。
それに訳の分からないことに巻き込まれ、夜通し歩き、変な連中に絡まれ―そろそろ嫌気が差してきていたらしく、

「まァいいか。警察署まで行きゃ誰かいるかもしれねーし。
 あとやっぱ武器も要るよなァ。バズーカ的なモノとかよ」

作戦の立案を放棄して引き続き警察署に向かうことを決定。
そして名簿をデイパックに仕舞い込もうとして―あることに気付いた。
潤也から没収した支給品。その中の名簿。それに浮き出た文字が、全て黒で表示されている。

「ん? こいつァ……」

どういうことだ、と呟きながら、潤也の物だった名簿を手に取る。
しかし名簿を摘み上げた瞬間、死者の名前が一斉に赤く変色した。驚いて目を見開く沖田。

「目の錯覚―なわけねーな。どうなってんだこりゃ?」

首を傾げる。名簿を太陽に透かしてみたり、指で擦ってみたりするが、特に変化は無い。
両側を畑に挟まれた道路の路肩に立って、沖田は名簿を凝視する。
放送中は死者の名前が読み上げられる度にその名が赤く染まっていった。
そして今度は触れた瞬間に死亡者全ての名が赤く変化。
素直に考えるとこれはつまり、

「こんな紙っきれが、触った奴の頭ン中を読んでる、ってことかィ? 気色悪ィぜ」

文字色の変化が可逆か不可逆か、までは判らないが、そうとしか考えられない。
どこぞの天人が開発したものなのだろうか。いかにもありそうな話だ。
そうだとすると、この下衆なゲームは腐った特権階級の連中を楽しませるための催しといったところか。
例えば―本物の殺し合いを見世物としていた地下闘技場『煉獄関』のような。
……どうもしっくり来ないと感じるが、他に心当たりも無い。


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